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好きなものは好き2 

ルキアは、約束した通り、金曜の夜には現世にやってきて、月曜の朝には尸魂界へと戻っていった。

大学生活も残りあと1年。

土日はバイトでつぶれそうだったのを、なるべくあけるようにして、大学が休みの日にバイトをいれまくった。 週末になり、金曜の夜にルキアがやってきた。

「ルキア、おかえり」

「ああ、ただいま」

金曜の夜は、仕事が終わり次第こちらにきているので、夕食は現世で食べることになる。

現世の豊富な、食べたことのないメニューを食べるルキアは、とても幸せそうだった。

今日はカルボナーラだ。 パスタ系はあまり食べたことのないルキアは、できあがるのをまだかまだかと待っていた。

ベーコンと玉ねぎを炒めたものに、濃厚な卵黄のコクがスパゲティに絡んだカルボナーラに、粉チーズをかけた。ドレッシングをいれたサラダと、デザートにパイナップルを出した。

「美味い!初めて食べたが美味いな!これは外国の料理なのだろう?」

「そうだぜ。本場はイタリアだったかな」

「おかわり!」

「へいへい」

大目に作っておいて正解だった。

ルキアは、ぺろりと二人前を食べてしまった。

サラダとパイナップルも食べた。

「このドレッシングも美味いし、パイナップルというデザートも美味い。ああ、現世は美味いものの宝庫だな」

「スパゲッティ、結構買ったから、明日はペペロンチーノを作ってやるよ」

ルキアは顔を輝かせた。また、食べたことのないメニューを食べれるのだ。

「スパゲッティ・・・この細い麺のことか」

「そうだ」

「ふむ。尸魂界でいえばうどんか蕎麦のようなものか」

「まぁかなり違うけど、麺類であることにはかわりねーな」

「私も、作れるであろうか?」

ルキアがきらきらした顔で、聞いてくる。

「作りたいのか?」

「兄様に、作ってさしあげたいのだ」

「じゃあ、ここにレシピ書いとくから・・・・材料はスパゲッティとベーコンをもっていけば、あとは卵は尸魂界にあるとして・・・粉チーズもいるか。けっこう材料現世にしかないものだが、いいのか?」

「構わぬ!」

白哉ラブのルキアにとって、現世の料理はぜひとも朽木家で、白哉にも食べさせたいものであった。

そのまま、土日は水族館と美術館と図書館でデートして、月曜の朝に尸魂界へとルキアは戻っていった。

「また金曜な!」

「ああ。カルボナーラの材料もすまないな」

ルキアは、カルボナーラを作る材料として、ベーコンとスパゲッティ、粉チーズを手に尸魂界へと戻っていった。

尸魂界に戻ったルキアは、夕飯の一部を自分で作る許可を白哉にもらい、13番隊の執務室に向かった。

夜になり戻ってくると、カルボナーラをレシピ通りにつくった。辛いものが好きな白哉のために、塩味を少しきつめにしておいた。

「兄様、現世の外国料理だそうです。味はどうですか」

「ふむ・・・変わった味だが、美味いな」

「ありがとうございます」

ふと、白哉の方を見る。

「兄様・・・私が、一護と付き合っているのを、何も言わぬのですか」

「それはルキアの選んだ道であろう。ルキアが望むのであれば、止めはせぬ」

「兄様!今度、一護を連れてきます!」

「分かった」

その次の週、一護はルキアに連れられて尸魂界の朽木家に来ていた。

「兄は、ルキアを幸せにできるか?」

白哉の開口一番の声に、はっきりと答えた。

「ああ、できる。ルキアを幸せにしてみせる」

「ならば許そう。ルキアと付き合うことを」

「ありがとう、白哉」

白哉とはもっともめると思っていたので、あまりにもあっさりすぎて、一護は内心驚いていた。

「次は恋次だ」

恋次を呼び出すと、恋次は厳しい顔つきで現れた。

「ルキアと付き合ってるんだってな。泣かしたら、どうなるか分かっているんだろうな?」

「泣かさねーよ」

「俺も、ルキアのこと好きだったんだけどな。一護にまんまとさらわれちまった」

「な、な、な、恋次、私のことを恋愛感情で好いていたというのか?」

ルキアが、吃驚していた。

「何度も好きだっていっただろう」

「いや、言われていたが・・・友人として好かれているのだと思っていた」

「恋次、ルキアのやつは、白哉と恋次と俺が好きって言っておいて、俺だけ恋愛感情で好きだといったつもりだったというくらい、好きだという言葉を伝えるのが苦手なんだ。ちょっとやそっとの告白じゃあ、動かねぇぜ」

恋次は天を仰いだ。

「もっと強く押しとくべきだったか」

「ばーか。ルキアの中にいるのは俺だ」

「ばかとはなんだ、ばかとは」

恋次は、紅蓮の髪を揺らした。

「まぁ、ルキアが自分の意思で一護を選んだんだ。ルキア、一護が嫌になったら言え。俺はルキアなら大歓迎だ」

「そんなことなるかよ。ルキアは手放さない」

恋次の目の前で、ルキアを抱き寄せた。

「い、一護・・・・・」

「お前が好きなのは誰だ?」

「い、一護だ・・・たわけ」

恋次は、ガクリと項垂れて帰って行った。

「たまには、朽木家で泊まれ。今夜は尸魂界で過ごせ」

「いいのか?」

「ああ。兄様には後からになるが、許可をとる」

白哉から許可をもらい、ルキアの寝室に泊まった。

2つの布団で寝ていたが、一護はルキアを腕の中にかき抱くようにして眠った。ルキアがいつも一護のベッドで寝る体勢と同じだった。

「ふあーよく寝た」

次の日、一護は日曜ということもあって、ゆっくりしていた。

「たまには、尸魂界で過ごすのも悪くないであろう?」

「ああ」

起きると、休日なだけあって、少し高価そうな着物をきたルキアがいた。髪を珍しく結っており、花が飾られていた。

「ルキア、すっげーかわいい。おしゃれに目覚めたか?」

現世にいるときは、いつも同じようなワンピース姿を見てきたので、着物姿のルキアは新鮮だった。

「ちよが・・・・好きな殿方の前では、着飾るのが普通だと、このような恰好にされた」

「ああ、前に言ってた付き人の人か」

「うむ」

そんなルキアを抱き上げて、くるりくるりと回った。

「わあ」

「ほんとにお姫様みてぇ。4大貴族の姫君だったな」

そっとルキアを下ろした。

「なんなのだ、一護」

「いや、俺の彼女はめちゃくちゃかわいいなと思って」

ぼふんと音を立てて、ルキアが真っ赤になる。

「き、貴様はずるい。私とて、貴様のことはかっこいいと思っておるぞ」

「おう」

その日は、尸魂界の瀞霊廷をいろいろ案内してもらった。

やがて日が暮れて、一護は現世に戻ることにした。ルキアは、一護の髪をひっぱって、かがませた。

「なんだ?」

「目を閉じろ」

精一杯背伸びして、触れるだけのキスをした。

「ルキア・・・じゃあ、また来週な」

「うむ」

ルキアと一護は、朽木家の庭で別れた。穿界門が開かれる。

「また来週な、一護!」

「ああ、また来週な!」

たとえ生きる世界が違っても、好きなものは好きなんだから、しょうがない。

白哉の許しも得たし、恋次にもきっぱりと諦めてもらった。

「ふふっ」

唇を指でなぞる。

まだ一護の唇の感触があった。

幸せだと思う。生きる世界が違うのに、交際を許可されたのだ。愛の果ては幸せだと思う。きっと、もうすでに愛の果てなのだ。

こんなに幸せなのだから。



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