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好きなものは好き9

金曜になっても、ルキアが一護の家に帰ってこなかった。

何故だろうと思いつつ、ルキアのメルアドにメールをいれる。返信はなかった。

土曜になった。ルキアはやっぱり、現世にこなかった。

まさかルキアの身に何かおきたのかと、いてもたってもいられずに、浦原に頼んで穿界門を開けてもらい、尸魂界に足を運ぶ。

もう慣れてしまった朽木邸までの道を歩いていく。

朽木邸では、梅の花が満開に咲いていた。4月になれば、きっと桜の花も満開になって、お花見とかでもするのに使われるのかもしれない。

「よお、白哉」

「兄は・・・何故、尸魂界にいる」

朽木邸に入った一護は、無断で屋敷内に入ることもできないので、とりあえず白哉を呼んだ。

白哉も今日は休日のようで、朽木邸にいた。

「ルキアか?」

「ああ。帰ってこないんだ。いつもなら、金曜の夜には現世にくるのに」

「インフルエンザにかかって、臥せっておる」

「そうかーインフルエンザかー・・・・・って、全然よくねぇ!会えるか?」

「よかろう。屋敷内に入るがよい。ルキアは寝室にいる」

何度か足を踏み入れたことのある、ルキアの寝室にやってきた。

中に入ると、ルキアが布団の上で寝ていた。

「ルキア・・・・寝てるのか?」

「ん・・・いちご?ついには幻聴と幻覚まで現れ出したか・・・私の命も、もう長くないな」

「インフルエンザ程度で、何不吉なこといってやがる」

ルキアの髪に手を伸ばす。

「いちご?本物なのか?」

ルキアが吃驚して、半身を起き上がらせた。

「ああ、いいから寝てろ!熱あるんだろ?」

「すまぬ・・・・金曜には帰ろうと思っていたのだが、この通りインフルエンザにかかってしまってな・・・・熱が下がらぬので、現世にいくのは中止にしたのだ。メールを送ろうと思っていたのだが、眩暈がして打てなかった」

ルキアは、一護の言葉に甘えて横になった。

「事情は理解したから、もういい。メールもなかったし、ルキアの身に何か危険なことが起きたのかと思ったけど、インフルエンザなら、治れば大丈夫だしな」

「すまぬ。せめて、メールだけでも送るべきだった。私の身を案じてわざわざ尸魂界まできてくれたのであろう?」

「ああ、そうだけど。まぁインフルエンザも病気だけど、命に関わるものじゃないから・・・本当に、よかった」

布団に寝ているルキアを自分のほうに抱き締めた。

「ばか、うつるぞ」

「俺、予防注射打ってるから、多分大丈夫だ」

「だが・・・・・」

ルキアの頬にキスをする。

予防接種を受けているからといって、100%かからないわけではないので、唇にキスしたかったが、頬にした。

「身の周りのことはどうしてるんだ?」

「それは、ちよが・・・・」

「ああ、ルキアお付きのあの女の人か」

時間が少し経ち、そのちよが消化によさそうなお粥をもってきてくれた。

「ああ、そこにおいてくれ。俺が食べさせるから」

「はい、一護様。ルキア様、何か他に欲しい物はございませんか?」

「特にない。ありがとうちよ」

「かしこまりました。では、夕方には夕食と、お風呂に入れませんので体を清めるための蒸しタオルを用意しますね」

「ああ」

一護は、ルキアのお粥を手にすると、スプーンを一口もって、ルキアの口元にもっていた。

ルキアは雛鳥のように、一護からお粥を食べていく。

「なんか、親鳥になった気分だ」

「私は雛鳥になった気分だ」

互いに、笑いあった。

お粥を食べ終えたルキアに、解熱剤を含んだ薬を飲ませた。

「一護、現世には戻らぬのか?」

「今日はルキアの部屋に泊まる」

「でも、インフルエンザがうつってしまうと・・・・」

「そん時はそん時だ」

一護は、寝てばかりで暇なルキアに、自分の子供の頃の話をしてやった。

やがて夕方になり、一護の分も含めた食事が出された。

ルキアの熱は大分下がり、普通の食事になった。

「やっぱ美味いな、お前んとこの家の食事って」

「それは、4大貴族朽木家お抱えの料理人だからな」

「なんかルキアの家に泊まるのって、ちょっとした旅館に泊まる気分になる」

「ふふ・・・じゃあ、しばらく泊まるか?」

「まぁ、月曜の朝までなら」

食事を一緒にとり、まだ熱が少しあり、風呂に入れないのでルキアの体を一護がふいてやった。その後、一護は風呂を借りた。

浴衣を出してもらい、着ていたものは洗濯されることになった。男用の新しい下着をもらい、それを着ているのだが、いつものはきなれたボクサーパンツではない、トランクスタイプで、ちょっと違和感があったが文句はいえない。

ふんどしじゃないだけましだ。

ルキアの隣に布団をしいて、ルキアと一緒に眠った。

ルキアは、薬がきいているのか、日中も眠っていたのに、すうすうと静かな寝息を立てていた。

そんなルキアの髪をかきあげて、額にキスをした。

「尸魂界にきてよかった・・・ルキアが無事だって分かったから」

一護も、眠りについた。

次の日も熱はまだあったが、ルキアは元気そうだった。一護が傍にいるせいかもしれない。

半身を起こし、一護と背中合わせで適当に見繕ってもらった書物を読んでいた。

「あははは!」

ルキアは、最近売り出され始めた漫画を読んで笑っていた。一護は、感動する小説を読んで涙ぐんでいた。

「それ、そんなに笑えるのか?その漫画」

「そういう貴様こそ、そのような小説で泣けるのか?」

日曜は、退屈といえば退屈だが、ルキアの傍にいるだけで幸せな気分になれた。

互いに読み終わり、それぞれ読んでいたものを交換する。

一護は大爆笑し、ルキアはボロボロと大泣きした。

「なんか、尸魂界の読み物も侮れないな・・・・・・」

一護は、笑いすぎで腹の筋肉が痛かった。ルキアは泣きすぎて、目がはれていた。

「ルキア、あんま泣くな。小説のせいだって分かってるけど、俺が泣かしてる気分になってくる」

「だって・・・パトラッシュが・・・・・」

現世の物語を多少ぱくってはいたが、泣けた。

「ああ、パトラッシュ・・・・一護は、どこかパトラッシュに似ているな」

「誰がパトラッシュだ」

小説の中のパトラッシュも犬だった。

「熱は?」

ルキアの額に額を当てると、もう平熱だった。一護にインフルエンザがうつった様子もない。

「明日には、俺も現世に戻るから。今日も泊まってく」

「ああ。そうしろ、一護。たまには我が家で週末を過ごすのもよいな」

白哉は、一護が泊まることについて、何も言わなかった。

すでに嫁に出したようなものとして、考えているのだろう。

いつか、ルキアと結婚式を挙げよう。

一護はそう思った。尸魂界でも現世でも。

でも、大学を卒業するまでの間は、彼氏彼女の関係が続くのだろう。それでもいいと、思った。

結婚したところで、今の関係が強固になるだけで、周囲にルキアは俺のものだと知らしめるもので・・・・・急ぐ必要もない気がした。

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