浮竹と京楽と海燕と 安心の空気
「起きろおおおおおおおお」
「もう春だし、起きてる」
ずさーーーー。
海燕は、畳の上を滑った。
浮竹が意地汚く10時とか11時とかまで寝るのは、決まって寒い冬だった。冬眠する動物のようだ。
春がくると、自分から8時には起き出した。
桜の花が舞い散る季節。
雨乾堂の庭に植えてある、少し大きな桜の木も今が満開だった。
「桜かぁ・・・・春ですね」
「そうだな。腹が減った。飯はまだか」
「はいはい。今用意しますから」
ぼけーっと桜の花を見ながら、浮竹は朝食を食べだした。
のろーりとした動きで、見ていて非常に腹立たしかった。
「もっときびきびしてください!」
「だって、春なんだぞ・・・・・」
「あんたは、冬眠から起きた熊かなんかか!」
「はぁ・・・春は眠くなる」
食事をしながら、途中から浮竹は寝落ちしていた。
「ああ、全く手のかかる!」
水でぬれたタオルで、浮竹の鼻と口を抑えた。
「ぶは!死ぬ!」
「どうですか。これなら、目が覚めるでしょう」
「お前、上司を殺す気か!」
浮竹は、窒息させた海燕に文句を言う。だが、確かに目が覚めた。さっきまでの眠気など、どこかに吹き飛んでしまった。
「はぁ・・・もう朝食はいい。さげてくれ」
珍しく残した浮竹を見て、海燕は額に手を当てる。
ほんのり熱かった。
「熱がありますね。今日の仕事は中止です。寝てください」
「お前な、あんな起こし方をしておいて、次は寝ろって滅茶苦茶だな」
「あんたの熱があるのが悪いんです」
「春でも熱が出る自分が疎ましい」
布団をしいて、薬を飲んで横になった。
「入るよ~~~」
呑気な声で、京楽が暖簾をあげて入ってきた。
右手には、仕事を抱えていた。
今日も、いつのものように雨乾堂で仕事をして、浮竹と同じ時間を過ごすつもりだったのだろう。だが、肝心の浮竹が額にタオルを置かれて寝ているのを見て、仕事の書類を自分用に置いてもらっている黒檀の文机の上に乗せる。
「大丈夫?熱あるの?辛くない?」
「寝てないといけないのが辛い」
「気分はいいんだね。熱があるわりには元気そうで安心したよ」
京楽はほっとして、浮竹の頬に手を当てる。
その手に、浮竹は手を重ねた。
「お前の体温、心地よいな」
「僕の手でいいなら、いくらでも触っていていいよ」
「はいはい。仕事をもってきたんでしょう、京楽隊長。一人で仕事してくださいね」
「海燕君のけちーーーーー」
海燕にそういいながら、京楽は仕方なく仕事をはじめた。
その姿を見ながら、浮竹が時折京楽の名を呼ぶ。
「京楽」
「ん、どうしたの?」
「好きだ」
「うん、僕も好きだよ」
また仕事を始める京楽。
「京楽」
「なぁに?」
「昼飯は、一緒に食べよう」
「そうだね」
京楽は優しく微笑みながら、浮竹と会話をする。
時折仕事を放りだして、寝ている浮竹にキスをしたりしてくるが、熱があるのでキスやハグまでで、それ以上はしてこない。
海燕は、そんな二人を不思議そうに見ながら、仕事をしていた。
数百年と一緒にいたら、こうも自然体でいれるのだろうか。そんなことを考えた。
「京楽隊長は、俺がいなかったら、もっと隊長といちゃついてますか?」
「いや、そんなことないよ。熱がある浮竹に無理はさせられないからね。それに、いちゃついてる時は僕にとって海燕君は空気だから」
空気。
そう言われて、そうだろうなぁと納得した。
海燕がいるのに、堂々と浮竹にキスをするのだ。空気か、似たような扱いじゃないと、キスできたりしないだろう。
「でも、とってもできた空気だと思ってるよ」
「空気空気って、連呼しないでください」
「あ、ごめん。でも、海燕君がいるお陰で、僕も安心できるからね」
海燕は、その言葉にくらりときた。
女ったらしと言われる京楽であるが、副官たらしだ。海燕は京楽の言葉に胸がほっこりした。
自分がいる場所は、ここしかない。
同時にそう思うのだった。
「もう春だし、起きてる」
ずさーーーー。
海燕は、畳の上を滑った。
浮竹が意地汚く10時とか11時とかまで寝るのは、決まって寒い冬だった。冬眠する動物のようだ。
春がくると、自分から8時には起き出した。
桜の花が舞い散る季節。
雨乾堂の庭に植えてある、少し大きな桜の木も今が満開だった。
「桜かぁ・・・・春ですね」
「そうだな。腹が減った。飯はまだか」
「はいはい。今用意しますから」
ぼけーっと桜の花を見ながら、浮竹は朝食を食べだした。
のろーりとした動きで、見ていて非常に腹立たしかった。
「もっときびきびしてください!」
「だって、春なんだぞ・・・・・」
「あんたは、冬眠から起きた熊かなんかか!」
「はぁ・・・春は眠くなる」
食事をしながら、途中から浮竹は寝落ちしていた。
「ああ、全く手のかかる!」
水でぬれたタオルで、浮竹の鼻と口を抑えた。
「ぶは!死ぬ!」
「どうですか。これなら、目が覚めるでしょう」
「お前、上司を殺す気か!」
浮竹は、窒息させた海燕に文句を言う。だが、確かに目が覚めた。さっきまでの眠気など、どこかに吹き飛んでしまった。
「はぁ・・・もう朝食はいい。さげてくれ」
珍しく残した浮竹を見て、海燕は額に手を当てる。
ほんのり熱かった。
「熱がありますね。今日の仕事は中止です。寝てください」
「お前な、あんな起こし方をしておいて、次は寝ろって滅茶苦茶だな」
「あんたの熱があるのが悪いんです」
「春でも熱が出る自分が疎ましい」
布団をしいて、薬を飲んで横になった。
「入るよ~~~」
呑気な声で、京楽が暖簾をあげて入ってきた。
右手には、仕事を抱えていた。
今日も、いつのものように雨乾堂で仕事をして、浮竹と同じ時間を過ごすつもりだったのだろう。だが、肝心の浮竹が額にタオルを置かれて寝ているのを見て、仕事の書類を自分用に置いてもらっている黒檀の文机の上に乗せる。
「大丈夫?熱あるの?辛くない?」
「寝てないといけないのが辛い」
「気分はいいんだね。熱があるわりには元気そうで安心したよ」
京楽はほっとして、浮竹の頬に手を当てる。
その手に、浮竹は手を重ねた。
「お前の体温、心地よいな」
「僕の手でいいなら、いくらでも触っていていいよ」
「はいはい。仕事をもってきたんでしょう、京楽隊長。一人で仕事してくださいね」
「海燕君のけちーーーーー」
海燕にそういいながら、京楽は仕方なく仕事をはじめた。
その姿を見ながら、浮竹が時折京楽の名を呼ぶ。
「京楽」
「ん、どうしたの?」
「好きだ」
「うん、僕も好きだよ」
また仕事を始める京楽。
「京楽」
「なぁに?」
「昼飯は、一緒に食べよう」
「そうだね」
京楽は優しく微笑みながら、浮竹と会話をする。
時折仕事を放りだして、寝ている浮竹にキスをしたりしてくるが、熱があるのでキスやハグまでで、それ以上はしてこない。
海燕は、そんな二人を不思議そうに見ながら、仕事をしていた。
数百年と一緒にいたら、こうも自然体でいれるのだろうか。そんなことを考えた。
「京楽隊長は、俺がいなかったら、もっと隊長といちゃついてますか?」
「いや、そんなことないよ。熱がある浮竹に無理はさせられないからね。それに、いちゃついてる時は僕にとって海燕君は空気だから」
空気。
そう言われて、そうだろうなぁと納得した。
海燕がいるのに、堂々と浮竹にキスをするのだ。空気か、似たような扱いじゃないと、キスできたりしないだろう。
「でも、とってもできた空気だと思ってるよ」
「空気空気って、連呼しないでください」
「あ、ごめん。でも、海燕君がいるお陰で、僕も安心できるからね」
海燕は、その言葉にくらりときた。
女ったらしと言われる京楽であるが、副官たらしだ。海燕は京楽の言葉に胸がほっこりした。
自分がいる場所は、ここしかない。
同時にそう思うのだった。
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