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始祖なる者、ヴァンパイアマスターお料理大会

そこは古城だった。

西洋と東洋の浮竹と京楽で別れて、料理大会をすることになった。

それを決めたのは、西洋の浮竹だった。

なんでも東洋の京楽はゲテモノ食いだと聞いて、是非、ゲテモノになる自分のものを食べて欲しいからしかった。

「お題は、卵を使った料理だ!」

「僕は親子丼かな」

(ボクはオムライスかな)

(俺も参加するのか?)

「強制参加だ」

東洋の浮竹は料理ができないで、少しもじもじした。

(じゃあ、卵粥を)

「俺は卵焼きだな」

「ちょっと、浮竹たち。そんな簡単な料理で」

言葉の途中で、西洋の浮竹が西洋の京楽の頭をハリセンで殴った。

「卵を使用すればいいルールだろ。別に問題はないはずだ」

(そうだね。卵粥も卵焼きも、卵を使った立派な料理だよ)

ほれ見ろとドヤ顔する西洋の浮竹に、西洋の京楽は東洋に京楽に「南無阿弥陀仏」と唱えて、合掌した。

(ボクは、こう見えてもなんでも食べれるよ)

「浮竹の料理というか錬金術は殺人級だよ」


こうして、それぞれ西洋と東洋で別れて、料理が始まった。

西洋の京楽は、軽やかにオムライスの具をつくり、トマトケチャップで味付けをする。味見を任された東洋の浮竹は、「おいしい」とにこにこしていた。

さて、西洋のほうはというと。

鶏の肉をある程度の大きさに切る。

玉ねぎをきって、フライパンで炒める。卵をボウルで溶かす。 フライパンにサラダ油をぬって、鶏のもも肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。

「さぁ、完成だよ」

「ボクも完成だよ」

あつあつの親子丼に、ホクホクのオムライスができていた。

東洋の浮竹は、温度調節が難しいのか、卵粥を少し焦がしてしまったが、一応完成となった。

皆、西洋の浮竹を見ていた。

卵を大量に混ぜたボウルの中に、隠し味だと「うおおお」と悲鳴をあげるマンドレイクをぶちこんだ。あとは、レッドスライムの粉末をぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんだ。

ほいほいといろいろぶちこんでいく姿を、東洋の京楽を除く二人が、かなり引き気味で眺めていた。

「ねぇ、見てよ浮竹の釜の中身。料理なのに、錬金術使ってるんだよ!錬金術の材料ぶちこんで、料理しているんだよ」

(西洋の俺、思っていたのとは違う意味で壊滅的だな)

てっきり、東洋の浮竹は自分と同じように料理ができないものと思っていたのだ。

「料理はできるけど、いらない材料をぶちこむんだよね、僕の浮竹」

(ボクの浮竹は、ただ純粋に料理が苦手なだけだからね)

錬金術の釜でぐつぐつ似ていた液体を、フライパンに乗せて焼いて、それで西洋の浮竹の料理も完成であった。

「ああああ~~ひいい~~~~」

「料理がしゃべってる!」

(西洋の俺の卵やき、なんか足生えてるんだが)

「さぁ、試食といこうか」

(うう、緊張する)

「うわぁ、食べたくないなぁ」

(ボクはけっこう美味しそうに見えたけどね)

「ええ、君、本気かい?」

東洋の京楽は、自分のオムライス、親子丼、次に卵粥を食べた。

(東洋のボクの料理は完璧だね。十四郎は、もっと火力を落としたらいいと思うよ)

(なぁ、春水。本当に、あれたべるのか?)

(食べるよ。美味しそうじゃない)

「うわぁ、勇気あるなぁ。ちなみに僕はたまに浮竹の手料理食わせられるけど、その度に生死の境を彷徨っているよ」

「ウヴァ~~~~ヴァヴァア~~~~」

足をはやして、かさかさ逃げていこうとする卵焼きを、西洋の京楽はフォークで突き刺した。

「ギャアアアア」

「南無阿弥陀仏」

(平気だって)

西洋の京楽は、悲鳴をあげる卵焼きを口に入れてしまった。

(んー辛さの中にツーンとした刺激があり、甘酸っぱい後、口の中がイガイガする。けど、美味しいよ?)

「ええっ、そんな食えるもののはずが!」

西洋の京楽は、足の生えた卵焼きを一口食べて、昇天した。

(しっかりしろ、西洋の京楽!)

「東洋の浮竹も食べてくれ」

期待の眼差しで見られて、東洋の浮竹は困った。

(これ美味しいから、ボクに全部ちょうだい?)

そう、東洋の京楽から助け船を出されて、東洋の浮竹は安堵した。

(うん、病みつきになりそう。この味)

「やっぱり、マンドレイクとドラゴンの血の隠し味が効いているな」

西洋の浮竹は、他のメンバーの料理も食べてから、自分が作った卵焼きを食べた。

「ぎゃあああああ」

悲鳴をあげる卵焼きを咀嚼して、飲みこむ。

「うん。うまい」

(・・・・・西洋の京楽、大丈夫か?)

倒れた西洋の京楽を、東洋の浮竹が癒しの力で治してくれた。

そして、東洋の浮竹は西洋の京楽の作った親子丼を食べた。

目をきらきらさせていた。

「おかわりなら、そっちにあるから」

復活した西洋の京楽からおかわりをもらって、もっきゅもっきゅと食べていく。

その姿がかわいくて、3人とも微笑ましそうに見ていた。


「俺もオムライスとやらを作ってみる」

「ちょっと、浮竹!?」

「さっき、西洋の京楽が作っていた手順で作ればいいんだな」

(そうだよ)

「お願いだから、マンドレイクは・・・・・」

白飯をなべにいれた瞬間、西洋の浮竹はフライパンにマンドレイクをぶちこんだ。

「ああああ!せめて刻んでからにして!」

「マンドレイクはそのままぶちこむほうが、生きがいい」

「オムライスに変な鮮度求めないで!」

(そこで、卵をいれてつつむんだよ)

「こうか?」

(そうそう)

浮竹は、隠し味だと、ドライアドという植物型のモンスターの葉をぶちこんだ。

葉はくねくねとうねっていたが、フライパンの火力にまけて静かになった。

「できた、オムライスだ」

ツーンとした刺激臭がした。

どうにも、それはマンドレイクのせいらしい。

「東洋の俺には、マンドレイクとドライアドの葉抜きのものをやろう」

(ありがとう!)

東洋の浮竹は、それを受け取っておそるおそる食べた。

(ん、意外とおいしい!)

「そうだろう。そこにマンドレイクをぶちこめばもっと美味しくなるんだ。西洋と東洋の京楽には、マンドレイクをぶちこんだものをやろう。マンドレイク、最近高いんだぞ。一本で金貨3枚になる」

マンドレイクをぶちこんだオムライスはくねって、皿の上で踊っていた。

「いただきます・・・・ぐふっ」

西洋の京楽は、数口食べてテーブルの上で白目をむいていた。

(いただきます・・・お、さっきよりツーンとした刺激があっていいね。マンドレイクのせいかな)

「ドライアドの葉っぱも、効いているだろう。炭酸水のように弾けるはずだ」

(お、ほんとだ。口の中でぱちぱちいってる。はじめての食感だね)

東洋の浮竹も、自分のオムライスを食べる。

「こんなにおいしいのに、何故俺のところの京楽は白目をむいて気絶するんだろう」

ある意味、西洋の浮竹もゲテモノ食いだった。

自分の料理を食べて、それを美味いと感じていた。


「うーーーん」

「あ、気が付いたか?東洋の俺に礼を言えよ。治癒してもらったんだ」

「ああ、ありがとう東洋の浮竹」

(いや、別にいいんだ。それより、マンドレイクとドライアドの葉をぬきした西洋の俺のオムライスは美味しかったぞ)

「ええ!じゃあ、変なものをぶちこまないと、浮竹はそれなりに料理できるってこと!?」

「バカをいうな。俺が作る料理は全てマンドレイクをぶちこむ!」

信念があるようだった。

料理=マンドレイク。

それが西洋の浮竹の考え方だった。

「ほら、生きのいいマンドレイクだ。今日の朝、中庭の畑から収穫したものだ」

そう言って、東洋の浮竹と京楽に手土産だと渡そうする、マンドレイクのつったまたビニール袋を奪い取った。

「何をする、京楽!」

「それはこっちの台詞だよ。マンドレイクはこっちにしか存在しない食材だし、その死の悲鳴を聞いた者は、普通命を落とす」

(俺たちはどうってことなかったが)

(ボクもだね)

「あくまで対象は普通の人間だよ。とにかく、こんな厄介な代物は禁止。それより、こっちを持って行って」

西洋の京楽が渡してきたのは、餃子だった。

「東洋の僕からもらったレシピで作ってみたんだ。味は、うちの浮竹が保証して・・・なんか、浮竹の保証が怖くなってきた」

マンドレイクをぶちこんだなんともいえぬ料理を、美味いと食う西洋の浮竹であった。

(ありがとう。食べるの楽しみだなぁ。こっちの春水は、俺の春水と同じくらい料理ができるから)

「俺はマンドレイクに水をやってくる。途中まで、送ろう」

「あ、見送りなら僕もついていくよ」

そうして、二人のヴァンパイアに見送られて、東洋の浮竹と京楽は元いた世界に戻っていった。


「さて、マンドレイクの育ちは順調が見ようか」

「こっちのマンドレイク、しなびれかけてるよ」

「それは大変だ。俺の血を混ぜた水をかけよう」

じょうろいっぱいの水に、浮竹は一滴だけ血を垂らした。

しなびれていたり、枯れかけいたマンドレイクが持ち直し、ツヤツヤと輝いて、日の光を浴びていた。

「ねぇ、浮竹。こんなにマンドレイク育ててどうするの」

「猫の魔女、乱菊に安めに売るんだ。最近マンドレイクが高いから、不足しがちだと言っていた」

「なんだ、料理に使うわけじゃなかったんだね。安心したよ」

「料理にも使うぞ?」

「え?」

「今日の夕飯は俺つくろう。牛肉とマンドレイクのビーフシチューだ」

想像するだけで、昇天しそうだった。

「マンドレイク入れないで~~」

「ばか、マンドレイクを入れなきゃ料理にならんだろう」

そんなやりとりを中庭で広げていた。

浮竹の血のお陰か、マンドレイクはどれもツヤツヤ輝いて、おいしそうだと、浮竹は思うのだった。ちなみに、京楽にはすごい怨念のこもったマンドレイクに見えていたそうな。


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