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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝 ヴァンパイア殺人事件

「えー、容疑者は二人いるようだ」

そこは古城のある、ガイア王国だった。

あろうことか、浮竹の住まう城で、ヴァンパイアの殺人事件が起きたのだ。

被害者は血の帝国に住む、上流階級の女性だった。

容疑者は二人。

被害者となったヴァンパイアの夫と、その愛人であった。

まるでテレビのアナウンサーのように、マイクを構えて西洋の浮竹は、西洋の京楽に聞いた。

「どっちが犯人だと思う?」

「僕は愛人のほうが怪しいと思うね。夫がいるのに逆上して、殺したんだと思う」

「東洋の浮竹はどう思う?」

(自殺の可能性はないのか。銀の武器で頸動脈を切られたことによる失血死だそうだが、普通のヴァンパイアは銀が毒なのだろう?容疑者の二人とも、手に火傷を負っていなかった)

「東洋の京楽はどう思う?」

(ボクは、夫のほうが犯人だと思うね。妻に内緒で多額の借金を抱えていた。相続する財産目当てだと思う」

「うーむ。2人ともアリバイがある。死後約6時間。夫のほうは血の帝国でカジノに行っていたし、愛人のほうは他の恋人のところにいた。むう、難事件の予感だ」

「あの、俺たちいつまでここにいればいいですか」

「そうですよ。ちゃんとした警察を呼んでくれ!」

「警察なら、今目の前にいるだろうが」

「え、どこに?」

「どこですか」

きょろきょろと辺りを見回す容疑者二人に、西洋の浮竹は自分を指さした。

「俺だ。今日の1時間前に、血の帝国の警察に式を飛ばして、警察の職についた。この事件が解決すると同時に退職する」

「めちゃくちゃだ」

「そうだそうだ」

容疑者の二人は、西洋の浮竹の抗議して、殴りかかろうとした。

それを、東洋の京楽は、血の糸で戒めた。

「かわいそうだけど、暴れるみたいだから、縄をかけさせてもらうよ」

そんじょそこらの魔法では解けない、戒めの魔法をかけられて、容疑者の二人は古城の床に転がった。

手足全部、体ごと戒められて、容疑者の二人は床をうねうねしていた。

「こいつが犯人だ!式を飛ばして、殺したんだ!妻の金目当てに!」

「そういうこいつこそ、犯人だ!多額の借金を抱えていたというじゃないか!」

二人の言い合いは、続いた。

「東洋の僕たちなら、何か分かる?」

(うーん、妖なら分かるんだけど、ヴァンパイアだしねぇ。おまけに、こっちのヴァンパイアは血の帝国に住んでいて、人間とあまり大差がない。血が欲しくて殺したんじゃないなら、やっぱり怨恨か金銭トラブルだろうね)

(あの、愛人という男の影にもやもやが見える、被害者に、少なからず恨みを抱いていたみたいだ)

「東洋の俺は、そんなことが分かるのか。すごいな」

西洋の浮竹に頭を撫でられて、東洋の浮竹は恥ずかしそうにしていた。

「えへへ」

そんな二人を、西洋と東洋の京楽は、和やかに見るのだった。


「金ならやる!だから、釈放してくれ!」

「一人だけずるいぞ。どうせ、あの女の遺産なんだろうが!」

「そういう貴様こそ、妻の金を湯水のように使いやがって!目障りなんだよ!」

「お前みたいなハゲでデブと結婚したのが間違いだったと、ステラは言っていた。ステラを返せ!」

「そういうお前こそ、妻を返せ!」

被害者は、ステラという名前だった。

血の帝国の貴族の血を引く、上流階級の女性で、夫がいるのに愛人が途切れたことはなかった。

「古城の庭で、この銀のナイフを見つけた。血がついていた。残念ながら、指紋はついていなかった」

西洋の浮竹が、古城を戦闘人形に探させて、見つけた加害武器であった。

「特殊な銀でできているね。手袋をはめないと、火傷するよ。それも、酷く。この特殊な銀のせいで、被害者は血の再生ができなかったんだろうね」

西洋の京楽が、自分の指をその銀の短剣で切ってみる。通常はすぐに再生が始まるのだが、なかなか再生が始まらず、滲み出た血はそのままだった。

「もったいない」

西洋の浮竹が、西洋の京楽の指を口に含んで、その血を舐めとった。

ごくりと、容疑者の二人が唾を飲みこむ。

血を啜る西洋の浮竹は、淫らでエロかった。

(ちょっと、西洋の俺!俺たちがいるから、そこらへんにしてくれ!)

(ボクは別に構わないけどね?」

東洋の浮竹と京楽の態度は、正反対であった。

東洋の浮竹は、赤くなった。

そんな東洋の頭を、また西洋の浮竹が撫でる。

「もう今日はしないから、大丈夫だ」

(ああ・・・西洋の俺は、優しいな)

(ちょっと、ボクの十四郎はあげないよ)

「ケチ」

そんなやりとりをする二人を、西洋の京楽は仕方なさそうに、東洋の浮竹はハラハラと見守るであった。

ふと、西洋の浮竹が、容疑者の夫と愛人の手を見た。

「この二人、式を使えるようだ。血の帝国のアリバイは崩れるな。式を使って殺すこともできるし、式を使って自分を装うこともできる」

「誤解だ!俺は式なんて使えない!」

「じゃあ、その手の紋章はなんだい?力のない者でも式を使えるようにする、特別な紋章でしょ」

容疑者の夫の手を、西洋の京楽は広げてみせた。

「やっぱり、その夫が犯人だ!」

愛人の男が、まくしたてる。

「それがねぇ。君も、同じ紋章、左手にもってるでしょ」

西洋の京楽が、今度は愛人の男のほうの左手を開かせた。

男の手の平には、被害者の夫と同じ紋章があった。

「これでアリバイは崩れ去った。あとは、どちかが犯人であるかを、明かすだけだね」

「式を呼んでもらおう。式を使ったとしたら、血で汚れているはずだ」

「誰がそんな!」

シャオオオ。

東洋の京楽が、影から複数の蛇を向けると、容疑者の二人はそれに恐怖して、式を呼んだ。

(おや。2人とも、黒のようだね)

(そうなるな)

容疑者の式は、2つとも真っ赤な鮮血に塗れていた。

「どうせもうこうなっては隠し通せない。ハニー」

被害者の夫は、被害者の愛人をハニーと呼んだ。

「ううう、せっかくうまくいきそうだったのに、ダーリン。古城で事件を起こせば、警察の手も伸びないし、他国まで逃亡できるからって、古城を選んだ俺のミスだ、ダーリン」

((まさかできてた!?))

東洋の浮竹と京楽は、見事にはもった。

「ああ、血の帝国は恋愛は自由だからな。同性を愛する者は、お前たちの世界の3倍くらいいる」

(3倍も・・・凄い世界だ)

(じゃあ、犯人はこの二人ということだね?)

「そうなるな。本物の警察を呼んでおいた。身柄は、そちらに引き渡そう」

「僕たちの古城で事件を起こしたのが、そもそもの間違いだったね。血の帝国でも、いずれ捕まってたとは思うけど」


こうして、古城のヴァンパイア殺人事件は、終末を迎えた。

結局、被害者の夫と愛人はできており、被害者の財産目あてで殺したと、自供した。


「事件解決に貢献したとして、警察から謝礼金が出た。俺たちはいらないから、二人でもっていけ」

(え、でもいいのか!金貨だぞ!)

「僕と浮竹は金には困ってないからね。事件に貢献したのは確かなんだから、もらっていきなよ」

(でもやっぱり悪い。受け取れない)

「じゃあ、そのお金で、町にいって食材を買ってきて。僕とそっちの僕で、料理作るから。それなら、いいでしょ?」

(あ、うん。それならいい。預かって、食材買ってくる)

「そっちの浮竹は、節約家だね。質素が好きみたい」

「俺とは正反対だな。俺は豪華なのが好みだ」

東洋の京楽は、金貨を珍しそうに見ている、東洋の浮竹の頭を撫でていた。

西洋の浮竹も撫でたそうで、うずうずしていたが、お互い恋人いるのだしと、納得させた。

「なぁ、京楽。東洋の俺って、なんか小動物のようでかわいくないか」

「あーうん。僕もそう思ったけど、まさか浮竹までそう思ってたなんて」

「思わず、何か食べ物をあげたくなるんだよな」

「その気持ちは、分からないでもないね。すごくおいしそうに食べてくれるから」

認識阻害の魔法をかけられて、東洋の二人は町に買い出しにいった。

戻ってきた二人は、ちょうど金貨を使い果たしていた。

残ったのは銅貨が数枚。

銅貨くらいならいいかと、東洋の浮竹も京楽も、記念に持って帰ることにした。

「さて、腕によりをかけて作りますか」

(ボクはメイン料理作るから、キミはデザートをお願い)

「分かったよ」

今日のメニューは寄せ鍋だった。

西洋の京楽は、食材を切っていく。

戦闘人形を下げさせて、二人の京楽は四人分の夕食とデザートを作ってくれた。

デザートはチョコレートパフェで、東洋の浮竹はおいしそうに食べていた。西洋の浮竹も美味しそうに食べていた。

西洋の京楽はそのまま自分で食べて、東洋の京楽は手をつけなかった。

(それ、食べていいか?)

キラキラした目で、チョコレートパフェをみる東洋の浮竹に、東洋の京楽が頷いた。

(君が欲しがると思って残しておいたんだよ。さぁ、好きなだけ食べていいよ)

(ありがとう、春水!)

その様子を見て、3人ともかわいいなぁと思うのであった。


次の日、視察だとブラッディ・ネイが寵姫ロゼを連れて古城を訪問してきた。

「兄様、会いたかった!兄様、愛してるよ!」

そんな様子のブラッディ・ネイを見て、東洋の浮竹は東洋の京楽の背に隠れると、じーっと様子を見ていた。

「ああ、違う世界の兄様もいるの」

「ブラッディ・ネイ。彼はお前のことを苦手としているから、ちょっかいを出すなよ」

「はーい」

そう言いつつ、ブラッディ・ネイは東洋の浮竹を食い入るように見つめていた。

東洋の浮竹は警戒して、更に東洋の京楽の影に隠れた。東洋の京楽の服の裾を掴む。

(ブラッディ・ネイだっけ。ボクの十四郎が怯えるから、あっちに行ってくれない?)

「向こうの世界のひげもじゃも生意気そうだね。まぁいいや。兄様、今回はヴァパイアの殺人事件に貢献したそうだね。血の帝国中で噂になってるよ」

「そうか。じゃあ、帰れ!」

「早いし、酷くない!?」

「お前がいると、騒ぎが起きそうだ。何か起きる前に帰れ」

「仕方ないなぁ。じゃあ、兄様も、また血の帝国の宮殿にきてね。じゃあ、もう一人の兄様も、バイバイ」

何気に、東洋の浮竹は手だけはかろうじで振っていた。

「ブラッディ・ネイがすまない。あの愚昧には、俺も苦労させられている」

(あ、うん)

東洋の浮竹は、去っていたブラッディ・ネイの背中を見ていた。

西洋の浮竹の実の妹なのが、未だに信じられずにいた。

「東洋の俺は妹がいないからな。警戒したくなる気持ちも分かる」

(ごめん。でも、苦手なんだ)

「気にするな。俺も苦手だ」

二人は、クスリと笑い合った。

そんな二人を、微笑ましそうに、二人の京楽が見守るのであった。












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