始祖なる者、ヴァンパイアマスター31後編「
「何を言ってるんだい、浮竹?」
京楽は、震え出すラニとレニを放置して、浮竹の心臓をもう一度癒した。
「計画は失敗よ、レニ。逃げましょう!」
「待って、ラニ姉さま!」
「逃がさないよ」
京楽が血の結界を作り出して、二人を閉じ込めた。
「私の名はユーハバッハ。人は私を魔人と呼ぶ。私は千年の封印を破り、この始祖ヴァンパイアの体を手に入れた!ははははは!!」
哄笑する浮竹を、信じられないような目つきで、京楽は眺めていた。
「浮竹の体を返せ!」
「もう、この体は私のもの・・・ぐっ、抗うか始祖ヴァンパイアよ」
「浮竹、負けないで!魔人ユーハバッハの血液の欠片を心臓に入れられたんだね!?ほとんどを僕の血液にしたから、ユーハバッハが居続けられるほど、血はまじっていないよ!」
「京楽・・・・ぐっ、ごほっ」
浮竹は、瞳を真紅にしたり、翠色に戻したりして、自分の中の血と戦っていた。
「京楽・・・もしも俺が、魔人ユーハバッハに完全になったら、お前が封印しろ。これをお前に預ける」
それは、黒水晶の結晶だった。
「精霊界にいき、精霊王たちを集めて、俺を封印しろ・・・・ぐっ」
浮竹は頭をかきむしった。
「私はユーハバッハだ!」
「違う、浮竹だ!」
京楽は、血を暴走させて狂暴になった。
「君の心臓が駄目だというなら、抜き取ってやる」
「な、正気か!愛する者をその手にかけるというのか!」
「ユーハバッハに渡すくらいなら!」
京楽は、本当に浮竹の心臓をくり抜いた。
「がはっ」
大きく血を吐く浮竹。
抜き取られた心臓は、赤い結晶にまみれていた。
「私の体が、私の体があああああああ!!」
倒れる浮竹を、京楽は抱きしめた。
「浮竹、戻っておいで、浮竹!」
狂暴な血の暴走は、己の体も巻き込んで、血の竜巻となった。
その様子を、ラニとレニは震えながら見ていた。
浮竹は目覚めない。
心臓は再生を始めているが、また赤い結晶を・・・ユーハバッハの血が混じっていた。
「うわあああああああ!!」
京楽は、絶望した。
何もかもが、どうでもよくなった。
浮竹以外、何もいらない。
浮竹をユーハバッハになど、渡したくはなかった。
「うわああああああ!!」
京楽の絶望に呼応して、古城に罅が入る。
「今だ、逃げようラニ!」
レニが、放心状態のラニを引っ張って、古城を抜け出す。
古城は、京楽の凄まじい魔力の衝撃を受けて、消し飛んでいた。
辺り一帯が、瓦礫にまみれる。
京楽の絶望は、深かった。
浮竹の体をユーハバッハに渡すくらいなら、いっそ一緒に休眠するか封印するか・・・・。
「一緒に行こう・・・・・」
黒い水晶の結晶が、精霊界への扉を開いてくれた。
精霊界に向かわずとも、8人の精霊王が向こう側からやってきた。
「我が友が、我が最も古き友と戦っている」
炎の精霊王はそう言った。
「封印を・・・・」
絶望の中にいる京楽が出した答えは、一緒に封印されることだった。
「待て、我が友の血族よ。ユーハバッハの器には、まだ我が友はなっていない。まだ、可能性はある」
「浮竹が元に戻ると?」
「我らに任せよ。古の封印を解く」
8人の精霊王は、合体して精霊神となった。
「我は神。我は絶対。さぁ、ヴァンパイアの子よ。始祖をこちらに・・・・・」
「浮竹を頼むよ」
精霊神は、浮竹の体に入り込み、浮竹の中から魔人の血を完全に消し去った。
「我は神。我の選択は神の意思。ヴァンパイアの子よ、汝の始祖は、汝を必要としている。いこうとするな」
死の向こう側に旅立ちそうな、京楽を精霊神が呼び止めた。
京楽は、絶望の淵にいた。
愛していた者を傷つけてしまった。
ユーハバッハになる浮竹など、見ていられなかった。
「でも、僕は浮竹を傷つけた。浮竹の血族でいる値など・・・・」
「それを決めるのは、汝ではなく、汝の主だ」
「浮竹・・・・・・」
「ん・・・・」
「浮竹!?」
「京楽・・・・俺は?封印は?」
「8人の精霊王が合体して、精錬神になってくれたんだ。その力で、君を救ってくれた。でも、僕は君を傷つけてしまった。血族を解いてくれ」
浮竹は、泣きながら京楽の頭をポカポカ殴った。
「勝手に俺の血族をやめようとするな!お前になら、殺されてもいい。それくらい愛してるんだ、京楽」
「浮竹・・・僕は、君の血族であり続けていいのかい?」
「当たり前のことを言うな!」
泣きじゃくる浮竹を抱きしめながら、京楽は浮竹の血族でいられることを、神に感謝した。
「では、我はこれで帰る」
精霊神は、8人の精霊王に戻ると、精霊界のに戻っていった。
「浮竹、守れなくてごめんね」
「ラニとレニは?」
「さぁ、どっかに行っちゃった。戻ってきたら、殺すけどね」
「ラニとレニは、短いが娘だった。許してやれ」
「君がそれを望むなら」
ラニとレニは、それ以後浮竹と京楽の元に戻ってくることはなかった。
ガイア王国の冒険者のパーティーにラニとレニによく似た、魔法使いが二人いると風の噂で聞いたが、浮竹と京楽はもう関係ないのだと、放置しておいた。
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「ラニもレニも私を裏切った!」
魔国アルカンシェルで、藍染はいらだっていた。
もう少しで、浮竹と京楽を封印にまで追いこめれたのに。
水鏡で、藍染は全てを見ていた。
「こうなったら、私がユーハバッハの血を・・・しかし、飲みこまれるには不愉快だ」
藍染は。寵姫を一人呼ぶと、その場で犯した。
「私の子を孕ませた。10日でその子は臨月を迎える。子を産んだら、お前は解放してやろう」
「本当ですか、藍染様!故郷に戻っていいのですか!」
犯された寵姫は、元々魔族ではなく魔女であった。藍染の思うままに玩具にされて、絶望していたが、故郷に戻っていいと聞いて、腹を撫でた。
「早く生まれておいで、愛しい子。私の贄となれ。
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ラニとレニがいなくなって、半月が過ぎた。
古城は、カイザードラゴンである恋次の時間回帰の魔法で元通りになった。
しばらくの間、京楽はずっと浮竹の後をついてきた。
まるで、孵化して初めて人間を見たカルガモのひなのように、後ろをついて回った。
「ええい、気が散る!たまには一人でいさせろ」
「やだよ。浮竹が何処かへ行ってしまう」
「行こうとしたのは、お前の方だろう!俺との血族を放棄しようとした!」
「あれはなかったことにして?」
ちゅっとリップ音を立てて、京楽は浮竹の額にキスをした。
「今日、君を抱いてもいいかい?」
「好きにしろ」
浮竹は、久しぶり過ぎて赤くなっていた。
釣られて、京楽も赤くなった。
お風呂に入り、本当に浮竹を抱くのは久しぶりだった。
ラニとレニを預かってから、ずっと禁欲生活を送っていたのだ。
浮竹を抱くのは、実に4カ月ぶりくいらいになる。
「君を初めて抱いた日を思い出すね」
「そんなこと、忘れた」
「100年以上も、昔のことだからね」
浮竹と向かい合って、正座をする。
ぺこりとおじぎをして、まずは唇を重ねた。
「んんっ・・・・」
京楽の舌がは熱く、浮竹の情欲をそそった。
「あ・・・・・」
薄い胸板を撫でられて、胸の先端をかりかりと引っかかれた。
「あ!」
浮竹は、感じているのかもどかしそうにしていた。
「今、触ってあげるから」
服の上からでも分かるほどに勃ちあがり、蜜を零して下着を濡らしていた。
「あ!」
京楽は、服の上から浮竹のものを刺激した。
それだけで、浮竹はいってしまい、精液で下着を濡らしてしまっていた。
「今、服を脱がせるから」
浮竹の着ている服を全てはぎとった。
「綺麗だよ、十四郎」
「あ、や・・・・」
見られるその視線に堪え切れず、浮竹は瞳を閉じた。
鎖骨を噛まれて、吸血される。
「あああああ!!」
襲ってきた快感の波を受けながら、京楽をローションを手に、浮竹の蕾に手はわせた。
「あ!」
浮竹は、たまらずシーツを握りしめた。
「んんっ」
浮竹の下が、蕾に入ってくる。
「やああ!」
次に、ローションにまみれた指が入ってきた。
「んんん!」
京楽の指は、ばらばらに動いた。
そのうちの一本が前立腺を刺激して、浮竹はまた欲望を自分の腹にぶちまけていた。
「あああ!」
「指だけでいっちゃうなんて、昔だと考えられなかったよね?」
「知るか」
「いれるよ?」
「ああああああ!!」
京楽の熱に引き裂かれて、浮竹は涙を零していた。
「あ、春水、春水。俺の前から、いなくなるな」
「うん。もう絶対、血族を解いてなんていわないから」
「春水・・・・」
突き上げてくる熱を感じながら、浮竹はドライのオーガズムでいっていた。
「ひああああ!!」
最奥を抉られて、びくんと浮竹の体が反応する。
「あああ!」
背をしならせて、浮竹はシーツにぱたぱたと精液を零した。
「君の奥で注ぐからね?受け止めてね?」
「ひああああ!!!」
愛奥の結腸をゴリゴリ刺激されて、浮竹はまたいっていた。
熱い京楽のものを胎の奥に受け止めて、幸せを噛みしめていた。
「もう1回、いくね?」
「何度でもこい。お前の全てを注げ」
言われるがままに浮竹を犯して、精液を全て浮竹の体に注いだ。
「ああ、久しぶりすぎて出し過ぎだね」
浮竹の下腹部は、京楽が出したものでかすかに膨らんでいた。、
「いい、お前の子種だ」
「お風呂、いこっか」
「ああ」
二人は風呂でも睦み合った。
そして、浮竹はお風呂からあがり、髪を乾かすと、幸せな眠りへとついていくのだった。
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「君の血を抜くのは、何回目だろうね?」
「知らぬ。始祖魔族如きが」
「おや、言うねぇ。身動きもとれないくせに」
藍染とユーハバッハは、そんなやりとりをしていた。
「次の子には、自由意思をもたせない。君の血を、たっぷりあげるのさ」
「魔人と呼ばれた私も落ちたものだ。始祖魔族如きに、血を抜かれ続けるとは」
海の底で、ユーハバッハはまた微睡み始めた。
「始祖浮竹・・・・・あの体、悪くはなかった。次の器には、あれがいい・・・・」
始祖の体に一度は意識は宿った。
不老不死の神の愛の呪いをもつ、素晴らしい肉体だった。あえて文句があるとするならば、もっと魔力が高ければいい。それぐらいだろうか。
ユーハバッハは、また封印の眠りにつく。それを起こすのは、藍染くらいだ。
かつて栄華を極めた古代魔法文明を思いながら、眠りにつくのであった。
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