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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

古城に訪問者がいた。

東洋の浮竹と京楽だった。

(また遊びにきた)

(お菓子もってきたよ。たい焼きだ。お茶をしよう)

東洋の浮竹と京楽だった。東洋の浮竹と京楽は、存在する世界が違うのに、よく遊びにきてくれた。

「ああ、なんてことだ。今、俺の妹が来てるんだ」

「東洋の僕らまで巻き込むことになっちゃうね?」

(何、西洋の俺の妹だって!すごく会いたい)

(なんか嫌な予感がするんだけど・・・)

「兄様、お客さんって誰」

現れたブラッディ・ネイは、東洋の浮竹と京楽の存在に驚いた。

「この世界の存在じゃないね。違う匂いがする。でも、兄様がもう一人。愛してるよ、兄様!」

東洋の浮竹に抱き着くブラッディ・ネイに東洋の京楽は言霊に近づくなと命令して、ブラッディ・ネイは東洋の浮竹から引きはがされた。

「その、西洋の俺の妹なんだよな?仲良くしよう」

「兄様がボクに仲良くしようだって!鼻血ものだね!」

ぶばっと鼻血を噴き出して、ブラッディ・ネイはティッシュを鼻につめた。

「ボクの名前はブラッディ・ネイ。兄様である浮竹十四郎の実の妹にして、血の帝国の女帝をしている。ちなみに、死ぬたびに10代の少女の中に転生するから、見た目は全然兄様ににてないよ」

(へー、そうなのか?じゃあ、ここにお菓子あるんだがいらないよな・・・・女帝だと、食べ物にもこだわりそうだし)

東洋の浮竹はしょんぼりしながらも懐から出したお菓子を見せる。対して、東洋の京楽は目を金色にさせてブラッディ・ネイを睨みつけている。

「大好きだよ兄様!東洋の兄様でも大好きなんだから!」

ブラッディ・ネイは全力で東洋の浮竹に抱き着いた。

(僕の十四郎に何するの!)

東洋の京楽は、言霊でまたブラッディ・ネイを引きはがした。

「こら、ブラッディ・ネイ!東洋の俺が困っているだろう!」

西洋の浮竹が、ブラッディ・ネイに拳骨をくれるが、ブラッディ・ネイにはそれもご褒美にしかならなかった。

拳骨に嬉しがるブラッディ・ネイに、東洋の浮竹は引き気味で、東洋の京楽も引いていた。

(なんかこの子、やばいんだけど)

そんなことを無視して、ブラッディ・ネイは西洋の浮竹が東洋の浮竹を庇うことににまにましていた。

「やだなぁ、兄様。嫉妬してくれてるの?」

「誰が嫉妬などするか!」

「あ、東洋の兄様、ボクは女帝だから、何か欲しいものあったらあげるよ」

(なんか、始祖ヴァンパイアの妹だけあって、女帝とかすごいことになってるな)

(この子、十四郎のこともそっちの十四郎のことも大好きみたいだね)

「ああ、いつも俺を愛してるとかいって、兄弟愛じゃなくって伴侶としての愛を囁くんだ」

「ブラデッイ・ネイがいるときに遊びにくるなんて、タイミングが悪いね」

西洋の京楽が落胆する。

(まぁ、西洋の妹も交えて、お茶かいをしよう)

(そうそう、存在をないものとして扱えばいいだけなんだから)

「東洋のひげもじゃは、西洋のひげもじゃより辛辣だね」

(ひげもじゃって何。ボクには京楽っていう名前がちゃんとあるんだから)

東洋の京楽は、呆れ気味にブラッディ・ネイを睨んだ。

「おお怖い。西洋も東洋のもひげもじゃは兄様に一途なんだから。でも、ボクも負けてないよ!愛してるからね、兄様!」

「はいはい」

西洋の浮竹は、適当に聞き流した。

「今日は緑茶を用意したよ。そっちの僕がくれたレシピで、白玉餡蜜を作ってみたんだよ。それと、そっちの君たちがもってきてくれたたい屋きも食べよう」

「もちろん、ボクの分もあるよね?」

ブラッディ・ネイの分がないと言い出すと、この非常識な存在は何をしでかすのか分からないので、ブラッディ・ネイの分も用意した。

「今日だけだぞ、ブラッディ・ネイ。茶会が終わったら、すぐ戻れ」

「えー。兄様が二人もいる楽園を置いて去れって?いやだよ」

「去らないなら、もう茶会などしない」

「ちぇっ。分かったよ」

西洋の京楽が、5人分のお茶とスィーツを用意した。

「白玉餡蜜は、ルキア君の好物なんだよな」

(わあ、こっちの世界にもルキアはいるのか)

「え、やっぱりそっちの世界にもいるのか」

(たまに稽古をつけてやっている)

「こっちの世界では聖女をしていて、この前一緒に冒険したな」

(聖女か。同じ存在がいても、全然役割は違うんだな)

東洋の浮竹は、せっかく西洋の浮竹の妹に会ったのだからと、お土産にもってきて、いまふるまわれているタイ焼きをブラッディ・ネイにあげた。

(西洋の俺の妹は、美人だな。愛を囁かれるのは困るけど、タイ焼きまだたくさんあるから食え)

「東洋の兄様優しい!」

(ぎゃああああああああ)

ブラッディ・ネイは東洋の浮竹に襲い掛かった。

それに西洋の浮竹が顔を青くする。

(ちょっと、ボクの十四郎に何するの!手を二度と触れないようにしてあげようか?

「そうだよ。東洋の浮竹から離れてよ!」

東洋の京楽は、ブラッディ・ネイを手にかけたがっていたが、一応西洋の浮竹の妹であるのだからと、自分を戒めた。

二人の京楽につまみあげられて、ブラッディ・ネイはポイッと捨てられた。

「ああ、兄様が二人・・・ひげもじゃも二人だけど、いい・・・・」

自分の世界に入りだしたブラッディ・ネイを無視して、4人はお茶を飲んでスィーツを食べた。

(ああ、この白玉餡蜜、キミがつくったね?)

「ああ、うん。分かるんだ?」

(友人のことだから、たいていのことは分かるよ。美味しくできてるよ)

「君に褒めてもらえるのは嬉しいね」

「京楽、おかわり」

(俺も)

おかわりを所望する二人に、白玉餡蜜をあげて、西洋と東洋の京楽は新しいレシピについて話あっていた。

「兄様の使ったスプーン・・・・」

「おい、ブラッディ・ネイ!何変態的なことをしている!」

西洋の浮竹の使用済みのスプーンを舐める実に妹に、実の兄である西洋の浮竹が、頭をハリセンで叩いた。

「ああ、兄様の愛を感じる」

「もういいから、お前はとっとと帰れ。そのスプーンはやるから」

「兄様成分をもっと補充したい!」

「ぎゃあああああああ」

西洋の浮竹は、悲鳴をあげていた。

衣服を脱がしてくるブラッディ・ネイを、西洋と東洋の京楽が、額に血管マークを浮かべて、べりっと、西洋の浮竹から引きはがした。

「た、助かった・・・」

「何浮竹に手を出してるの。ブラッディ・ネイでも許さないよ」

(実の妹か何かしらないけど、西洋の浮竹に手を出すのは許せないね)

ゴゴゴゴゴ。

二人の怒りを買い、ブラッディ・ネイは東洋の京楽の蛇でぐるぐる巻きにされて、西洋の京楽に使用済みのスプーンをとりあげられた。

「覚えてろ、ひげもじゃ!ボクは、こんなことでは屈しないんだからね!」

血となって、ブラッディ・ネイは戒めを解くと、そのまま血の形で移動して、血の帝国に戻っていった。

「すごいな、東洋の京楽。あのブラッディ・ネイを拘束できるなんて」

(大したことじゃないよ。同じ東洋の浮竹にもできることだよ)

「蛇かー。札をもらったが、つい使うことを忘れるんだよな」

(つ、使ってくれ!使ってくれないと俺みたいに拗ねるからな!)

「ああ、ごめん。でも、この前の遺跡探検では十分に使わせてもらったぞ?」

(それならいいんだ。俺の蛇は、使ってもらわないと拗ねるからな。されより、いいのか西洋の俺。実の妹にあんなふうに接して)

心配してくる東洋の浮竹を、西洋の浮竹が頭を撫でた。

「あの妹は、性格が破綻している上に、いろいろと厄介なんだ。西洋の俺が気にすることじゃない」

そんな二人を見て、西洋と東洋の京楽は、ほっこり二人を見つめていた。

(西洋と東洋の京楽の視線が気になる)

「俺たちが仲良くしていると、何か熱い視線を感じるな」

「いやぁ、いいね。西洋と東洋の君たちが仲良くしてるのは、心が和む」

(まぁ、西洋の浮竹だから許してあげる)

東洋の京楽は、自分の浮竹に誰かが触れることを嫌っていた。自分だけのものだと、知らしめてやりたくなる。

「やっぱり、浮竹こっちにおいで?」

「なんだ、京楽?」

(十四郎もこっちにおいで?)

(春水?)

二人は、それぞれ伴侶を抱きしめた。西洋と東洋の浮竹が仲良くしているのは心が和むが、やはり隣には自分がいたいのだと、西洋と東洋の京楽は思うのであった。

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「東洋の俺は、いつも同じ着物を着ているな?近くに町があるから、服を買いに行こう」

(え、でも、俺たちはこの国の通貨をもっていないぞ)

「それくらい、俺が出してやる。金なら腐るほどあるからな)

(でも、悪い・・・・)

(十四郎、言葉に甘えたら?西洋のキミが、気遣ってくれてるんだ。たまには甘えもいいんじゃないかあ)

「そうだよ、東洋の浮竹。東洋の僕の服も、一緒に買いに行こう」

そうして、ガイア王国の一番近い街に、4人はきていた。

それぞれ認識阻害の魔法をかけていたので、お互い双子のようであったが、周囲の人間から見たら完全に違う姿に見えた。

東洋の京楽は、念のためにと、東洋の浮竹の影に黒蛇をもぐらせて、守護にあたっていた。

「これなんか似合うな。これもどうだ?」

あれこれと選んでくる西洋の浮竹に、東洋の浮竹はされるがままになっていたが、東洋の浮竹も自分で服を選びはじめた。

それを見守る西洋の京楽と、巨大な黒蛇の姿で見守る東洋の京楽。

「こっちもいいな。そうだ、せっかくなんだから、同じ服を買ってペアルックってのはどうだ?」

「お、いいね。じゃあこの服を2着買ってきなよ」

西洋の浮竹は、ラフな格好の衣服を2枚分買って、東洋の浮竹と試着室でそれぞれ着替えた。

その間に、西洋の京楽は、東洋の京楽に上下セットの衣服を買ってやった。

(ボクの分まで、ありがとう。いいのかい?)

「友人でしょ。そう硬くならないでよ」

(そうだね)

試着室から出てきた西洋と東洋の浮竹は、ファンタジー風味のするこの世界の衣服がよく似合っていた。

「わぁ、いいね、双子でどっちがどっちだが、一瞬分からなくなったよ」

(こっちが、ボクの十四郎だね)

「見た目も同じだけど、纏っている雰囲気が違うからね。こっちが僕の浮竹だね。血の匂いで分かる」

そのまま着て帰るからと、合計で金貨4枚を支払った。

(金貨が4枚・・・・金貨・・・・・)

「東洋の俺、金貨はこの世界の貨幣だ。多分、そっちの世界の金より価値は低いぞ」

(でも、金貨だぞ!)

節約家の東洋の浮竹には、金貨の存在そのものがだめらしい。

「まぁ、この服屋は高いからな。普通は銀貨20枚ってところだ。俺は金銭感覚が一般常識からずれているらしい」

(まぁ、とにかく古城へ戻ろう)

Sランク冒険者の浮竹と京楽がきていると、少しだけ騒がれはじめたのだ。

早めに古城に戻り、西洋の京楽はダージリンのお茶を4人分注いだ。

「お茶でも飲んで、一息つこうよ」

東洋の京楽は、フルーツタルトを作ってもってきてくれた。

みんな、それを味わいながら食べる。

「おいしいな」

「うん、おいしいね。東洋の僕、後でレシピちょうだいね」

(さすがにおかわりはないか。少し残念)

(元の世界に戻ったら、いくらでも作ってあげるから)

そんな東洋の浮竹と京楽に、西洋の浮竹が申し訳なさそうにしていた。

「あの街には冒険者ギルドがあるんだ。Sランク冒険者で登録しているから、顔が認識阻害の魔法をかけていても、知られているんだ」

(びっくりした)

(ボクもだよ)

「夕飯は食べていくか?」

(いや、お茶をしにきただけだから、そろそろお暇する)

「その服、元の世界では着れないデザインかもしれないな。こちらの世界では普通なんだが」

「文化が違うからねぇ。そっちの世界は文明が進んでいるけど、こっちはそっちでいう、異世界ファンタジーの世界だし」

(大切に保管しておく。こっちに来るときにでも、着てくるさ)

(ボクも、西洋のボクから服を買ってもらったんだよね。また遊びに来る時にでも、十四郎と一緒に着てくるよ)

「ああ、気をつけてな。お土産だ。京楽」

「苺のショートケーキだよ。そっちの世界に戻ったら、食べてよ」

ショートケーキを受け取って、東洋の浮竹もお土産だと、白蛇の置き物を取り出した。

(運気逃げそうだが・・・置物はこれくいらしかなくて)

「・・・・まぁいいか。黄金のハニワの傍に飾っておく」


(ありがとう。世話になった。またお茶をしに遊びにくる)

(十四郎、楽しそうだったし、ボクもまた来るよ)

「ああ、じゃあな!」

西洋の浮竹は、ぶんぶんと手を大きく振った。

少しずつ、東洋の二人が透けていく。

やがて完全に消えてしまい、浮竹と京楽は、お茶の続きだとばかりに、二人で友人たちのことに花を咲かせて、ダージリンンの茶を飲むのであった。

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「母様、父様?」

ブラッディ・エターナルは、自分の実の親になる浮竹と京楽を見ていた。

「俺たちは、お前の母親でも父親でもない」

「血が繋がっているかもしれないけど、僕たちに娘はいない。いたのは、昔養女にしたエメラルドだけだよ」

かつて、娘として愛した、ヴァンピールの少女がいた。

ヴァンパイアハンターに利用されて殺された。

「お前は、俺たちの娘じゃない」

「僕たちには、娘はいない」

ブラッディ・エターナルは、浮竹によく似た顔で、囁く。

「始祖なんて、いらないのに」

浮竹と京楽は、身構える。

ブラッディ・エターナル。

永遠の血の名をもつ少女は、母親に値する始祖の浮竹を睨むのだった。




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