始祖なる者、ヴァンパイアマスター27
浮竹は、東洋の浮竹からもらった浴衣を大事そうにクローゼットにしまった。
そして同じようにもらった金魚を金魚鉢にいれて、玄関に飾った。
「うーん、黄金のハニワとのミスマッチがまたいい」
浮竹は、一人悦に浸っていた。
「この金魚、すぐに死んじゃうのかな?」
「死なせない。俺の血を、一滴金魚鉢に注ぎ込む」
そう言って、浮竹は牙で自分の指を噛むと、滲み出た血を一滴、金魚鉢にたらした。
金魚はパシャンとはねて、赤い鱗が更に赤くなる。
「眷属化しちゃったようだよ」
「金魚の眷属か。それはそれで、面白い」
使い魔にはなりそうもないが、大切に育ってくれるだろう。
浮竹は満足して、京楽は金魚に餌をあげていた。
「ああ、よく食べるね。これなら、死ぬ心配もなさそうだ」
「金魚の世話は俺とお前でしよう。戦闘人形に任せることもできるが、せっかく東洋の友人から譲り受けたものだ」
「うん、そうだね」
ほのぼのとした時間が、過ぎていく。
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夢見せの魔女ハルキュリア。
かつて数年前、女帝ブラッディ・ネイを夢で操り、血の帝国を自分のものにしようとした魔女の名であった。
ブラッディ・ネイの怒りを買った後、どうなったかは知らない。
「一護君、ルキア君と冬獅郎君は今どこに?」
「ブラッディ・ネイの宮殿にいます」
「京楽、俺たちも血の帝国の、ブラッディ・ネイの宮殿に向かうぞ」
一護を伴って、浮竹と京楽は血の帝国まできていた。
ベッドには、ルキアと冬獅郎が寝かされていた。
幸せそうな顔をしていた。
点滴の管がつけらており、昏睡状態になって数日が経過しているのが分かった。
ルキアと冬獅郎の胸元を見る。
百合の文様があった。
「間違いない、夢見せの魔女ハルキュリアに夢を見せられている証だ。ハルキュリアは、自分の魔法で夢を見させた者の胸元に、百合の文様を刻む」
「助かる方法はあるんすか!?」
「まず、普通の方法では無理だ。魔女ハルキュリアを殺すか、術を解かせないと。もしくは、こちらから夢の中に干渉して、起こすかだな」
「居場所、分かりますか?」
「分からない。もしかすると、魔女の里からかもしれない」
「じゃあ、どうすれば・・・」
一護は、おろおろとしていた。
「俺と京楽で、夢の中に潜ってみる。うまくいけば、それで目が覚めるはずだ」
「お願いします!ルキアと冬獅郎を助けてやってください!」
「分かっている。いつ何処で昏睡状態になったんだ?」」
「ああ、宮殿をぬけたところに森があって、湖が広がってるんです。その湖の水が、聖水を作るのに一番適してるって、ルキアが冬獅郎連れて出て行って。俺は雑務したので、迎えにいったら、二人とも意識をなくしてたんす」
「ふむ。血の帝国内にいる可能性が高いな。多分、ルキア君の聖女としての力を削ぎたいんだろう。ルキア君の癒しの力は、魔女の作るポーションの比じゃないからな」
ルキアは聖女として、血の帝国内だけでなく、国外からも患者を受け入れていた。
魔女の里は閉鎖的だし、魔女の作るポーションは高い。
ルキアは魔女のポーションに比べると、安い値段で治癒を行っていた。
疫病などが起こった時は、無料で患者を診て、病気を癒した。
それは、元々魔女の役割だった。
「夢の中に入る。俺と京楽の分のベッドを用意してくれ」
「浮竹、大丈夫なの?夢の中は精神体で入るんでしょ。何かあったら・・・」
「京楽も、俺を信じろ。俺は5千年も眠っていたんだぞ。好きに夢を操るくらい、造作もなことだ」
「なら、いいんだけど」
そして、浮竹と京楽は眠り薬を飲んで、ルキアと冬獅郎の体に触れて、夢の中に潜っていった。
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冬獅郎の見ている夢は、両親が生きている夢だった。
「冬獅郎君、それはただの夢だよ」
まず、夢の中にもぐりこんだ京楽が、冬獅郎の目を覚まさせようと、そう言うと、冬獅郎は氷輪丸という氷を操れる剣で、京楽を斬り裂いた。
「これは夢じゃねぇ、現実だ」
斬り裂かれても、夢なので痛くなかった。
「冬獅郎君、ルキア君を、雛森君を一人にしていいのか?」
浮竹の言葉に、冬獅郎の耳がピクリと動く。
「ルキアと雛森がどうしたんだ」
「このまま、君が夢から覚めないと、二人に一生会えないよ」
「そんな馬鹿なことが・・・・・」
「ほら、一緒に帰ろう。ルキア君と一護君が待っているぞ」
冬獅郎は、父と母を見た。その姿は溶けていき、ただの人形が残った。
「俺は・・・父さん、母さん、さよならだ。俺は戻る」
がばりと、冬獅郎は起き上がった。
「ルキア、一護!」
「ルキアはまだ寝ている。冬獅郎、よかった、目が覚めたんだな」
「京楽と浮竹が・・・・って、何してるんだ、こいつら」
眠っている浮竹と京楽を見る。
「冬獅郎とルキアは、夢見せの魔女ハルキュリアの手で眠らされていたんだ。今、浮竹さんと京楽さんが、起こしてくれるために夢に潜り込んでる」
「そうか。だから、あんな幸せな夢を見ていたのに、浮竹と京楽が登場してきたのか」
「どんな夢を見ていたんだ?」
「両親が生きている夢だ」
「ハルキュリアって、酷いことする奴だな、冬獅郎が孤児だってことにつけこんで・・・」
一護は、本気で怒っていた。
「次は、ルキアを起こしに、夢の中に潜りこんでいるんのか?」
「そうだと思うぜ」
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ルキアが見ている夢は、チャッピーといううさぎのキャラクターが生き生きとしている夢だった。
ルキアはというと、チャッピーと会話しながら、大好物の白玉餡蜜を、一護と一緒に食べていた。
「一護クンのことが好きだから、夢の中にもいるんだねぇ」
「誰だ!」
「ルキア君、これは夢だ」
「分かっている」
ルキアは、紫紺の瞳を瞬かせた。
「なら、目覚めないと」
「一護が、目覚めるなというのだ。一護を置いていくわけにはいかぬ」
「一護君なら、夢の外にいるよ。今の君は、魔女ハルキュリアに夢を見せられているんだよ」
「一護が、行ってはいけないと・・・」
ルキアの元に一護がやってきて、キスをして去っていった。
「これは、その!」
「さあ、ルキアちゃん目覚めよう。本物の一護クンが、君を待っているよ」
ルキアは目覚めた。
「目覚めたのか、ルキア!」
一護が、ルキアに抱き着いた。
「ええい、この大馬鹿者め!」
ルキアは、一護にアッパーをかませた。
「なんで。俺なんもしてねえのに」
ルキアは真っ赤になっていた。
「浮竹殿と京楽殿は?」
「まだ眠ってる」
「もう、起きたぞ」
「僕もだよ」
----------------------------------------------
「浮竹殿、京楽殿、ご迷惑をおかけしました。私と冬獅郎が魔女などに眠らされるとは・・・・」
「いや、ハルキュリアはブラッディ・ネイさえも眠りに落とし、操ろうとした実力者だ。今回のことは仕方ない」
「湖で、聖水を作っていたのです。そこに魔女が現れて、私と冬獅郎は術をかけられ、眠りの中に・・・・・・」
浮竹と京楽は、ルキアと冬獅郎の胸元に百合の文様がなくなっいるのを確認して、話を進める。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる」
「京楽殿の言う通りです」
「俺には、東洋の友人がくれた、呪術を跳ね返すお札がある。ハルキュリアの夢を見せ魔法は呪術に近い。跳ね返るだろう」
「それなら、一応は安心かな。でも、僕もいくからね」
「京楽にもお守りの効果はきいてくれると思う」
「兄様が眠りつき、危険だったら、ボクが動くからね」
今まで黙ってことの成り行きを見守っていた、ブラッディ・ネイがそう言った。
「とりあえず、森の湖にまで行こう。そう遠くまでは行っていないはすだ」
浮竹と京楽は、二人だけで魔女ハルキュリアの元に行くことになった。
「多分、隠れ家を作っている。魔法が解かれたとまだ気づいていないだろう。そこを叩こう」
「うん、分かったよ」
森をすすみ、湖まできた。
探したが、どこにも魔女ハルキュリアの姿はなかった。
「もう、魔女の里へ帰ったか?」
「浮竹、見て、湖が!」
湖全体が紫色になって、浮竹と京楽を襲った。
水中で呼吸できなくて、このまま溺死かと思ったら、浮竹はがいつだったか覚えた、水中で呼吸できる魔法を唱えてくれて、京楽は水に飲みこまれたまま呼吸をした。
「うふふふふ。さあ、くたばっちまいな、ヴァンパイアども」
京楽と浮竹は、死んだふりをした。
「あはははは!ヴァンパイアももろいものだ。夢を見せずに、最初からこうして殺したほうがよかったかもしれない」
どさりと、浮竹と京楽は折り重なって倒れた。
「ヴァンパイアにしては美しい男だ。顔を、もらってやろう」
伸びてきたハルキュリアの手を、京楽が掴んだ。
「浮竹に手を出すのは、許さないよ?」
「ちっ、まだ生きてたのか。夢見の魔法を喰らいな!ギャッ!」
魔法を反射されて、ハルキュリアは甲高い声をあげていた。
「魔法を反射だと!?反射の護符でももっているのか!」
「当たりだ」
浮竹が、血の刃でハルキュリアの顔面を切った。
「いやああああ、あたしの、あたしの顔が!」
「燃え尽きろ。バーストロンド!」
「ぎゃああああああ!!!」
ハルキュリアは、灰をとなった。
「一段落だね」
「いや、まだだ」
「え?」
「魔女の里に行くぞ。このハルキュリアは分身体だ」
「でも、灰が・・・・」
灰は、見る見るうちに消えてしまった。
「水鏡で、のぞいているんだろう、ハルキュリア?どこに逃げても無駄だからな。ルキア君と冬獅郎君を魔法で眠りにつかせ、殺そうとしたんだ。代償を、払ってもらおうか」
「浮竹、魔女の里になんてどうやっていくんだい?」
「猫の魔女がいるだろう。彼女に案内してもらう」
「そうか、乱菊ちゃんか」
---------------------------------------------------------------------------
「あたし、仲間を売るような真似はしたくないけど、浮竹さんと京楽さんを怒らせた相手なら、話が別ね。放置しておいたら、きっと魔女の里ごと消されちゃうかもしれないわ」
「俺はそこまでしないぞ」
「ううん、しそうだもの」
「確かに、浮竹なら禁呪の一つでもかまして、魔女の里ごと吹っ飛ばしそうだね」
「お前らの中の俺って・・・・・」
「しいてういなら、破壊神」
「魔法の極みの禁呪を平気で発動する、兵器」
「俺っていったい・・・・・」
浮竹は、がっくりと項垂れた。
「あら、過去が見えたわ。あなたの妹さん、一度ハルキュリアの術にかかって、命を落としそうになったのね。怒っても、無理はないわね」
乱菊は、過去を見るオッドアイを持っている。
白い金と銀の目をした猫の姿になることもある、猫の魔女だった。
「そんな昔のことはどうでもいい。俺は、俺の友人に手を出したことに怒っているんだ」
「ついた。ここが、魔女の里よ」
乱菊の魔法で、空を飛んで血の帝国をぬけて、遥か西にある魔女の里に着ていた。
閉鎖的な空間を出していて、魔女たちは扉を固く閉ざして、侵入者を拒んでいた。
「あの、中央の館があたしの家。んで、右にずっといったところにあるのが、ハルキュリアの館よ」
「乱菊君、ありがとう」
「ありがとね、乱菊ちゃん」
浮竹と京楽は、ハルキュリアの館の扉を開いた。
中には、5歳くらいの女の子と、3歳くらいの男の子がいた。
「母さんに、何の用だ!」
「殺しにきただけだ」
「この悪魔め!」
ホウキを手に、殴りかかってくる男の子を、浮竹の血の刃が首を刎ねた。
「う、浮竹?」
京楽が、浮竹を見る。
「ここはハルキュリアのテリトリー。強すぎて、お守りでは反射できなかったようだ。ここは、ハルキュリアの見せる、夢の中だ」
「でも、僕と浮竹を、同じ夢に?」
「お前は、俺の京楽じゃない」
浮竹は、京楽の首を刎ねた。
「どうして。愛しているのに、浮竹」
足に縋りついてくる京楽を、冷めた目で浮竹は見ていた。
「俺の京楽は、そんな香水の匂いなんてさせない。俺を見ると愛しそうに笑って、浮竹と名を呼んで、抱き着いてくる」
「でも、本物だったら?」
「そんなことはあり得ない」
「本物かも、しれないよ?」
複数の京楽が現れた。
浮竹は、血の刃で京楽を消していく。
「俺に京楽を殺させるような真似をしてくれたことにも、礼を言わないとな」
浮竹は冷酷に笑って、魔女ハルキュリアの存在を探した。
ふと一体の京楽が、浮竹を抱き寄せた。
ふっと耳に息を吹き込まれて、その京楽に浮竹はハリセンをお見舞いしていた、
「お前は本物だ。魂が他と違う」
「君って、僕の姿をしている偽物の首、平気で刎ねるんだから、僕が肝が冷えたよ」
「魔女ハルキュリア。出てこい。出てこないのなら、この里の一角ごと、消し去る」
「いやだわ。そんなことされたら、反魂でも蘇れないじゃない」
すでに、ハルキュリアは反魂の用意をしていた。
死んでも構わないと、浮竹と京楽の元に出てくる。
「炎と踊れ。バーストフレイム」
館全体に火の魔法をかけて、反魂の札を燃やしていく。
「なんなのよ!たかが、ヴァンパイアの小娘とガキに、魔法をかけて殺そうとしたくらいで!」
浮竹は瞳を真紅にして、ハルキュリアを血の刃でズタズタに斬り裂いた。
「あはははは、そんなのきかない。だって、ここは夢の中!夢の・・・・・ぎゃあああ、何故痛い!?夢のはずが!」
「ハルキュリア。始祖のヴァンパイアが、夢見の魔法を破る魔法を持っていても不思議じゃないと、思わないか?」
「ひいいい、始祖ヴァンパイア!浮竹十四郎!」
ハルキュリアは、失禁していた。
ただのヴァンパイアだと思っていたのだ。
「浮竹を怒らせた、君が悪いよ」
京楽は、興味なさそうに、縋りついてくるハルキュリアを見ていた。
「なんでもする!なんでもするから、命だけは助けて!」
「そうか。なら、命だけは助けてやろう。お前は、今日からカエルになるといい」
ぼふん。
音を立てて、ハルキュリアはカエルになっていた。
「いやああああああああ!!!」
「あ、黒蛇!」
浮竹を守っていた黒蛇が、影からしゅるしゅると出て、カエルにされたハルキュリアを美味しそうに見つめていた。
「こんなの食べたら、腹痛を起こすぞ?」
しゅるるる。
黒蛇は、それでも食べたそうにしていた。
「言葉さえしゃべれるのなら、人間の姿にだって戻れる!」
ハルキュリアは、カエルから元の魔女の姿に戻っていた。
しゅるるる。
「そうか、そこまで食べたいのか」
浮竹は、もう一度ハルキュリアをカエルにした。
「わあああああああ」
しゅるしゅると音をたてて、黒蛇が近付いてくる。
「いやあああ、食べられる!」
黒蛇は、ハルキュリアを丸のみしてしまった。
「ああ、消化不良を起こさないといいんだが」
魔女ハルキュリアは、反魂も燃やされて効かずカエルとなって、東洋の浮竹からもらった札から出てきた黒蛇に食べられてしまった。
命だけは助けてやると言ったのだが、黒蛇が珍しそうに食べたそうにしていたので、与えてしまったのだ。
黒蛇に取り込まれた魔女ハルキュリアの魔力が、浮竹に注ぎこまれた。
「魔力なんて、これ以上いらない気もするが・・・・まぁ、受け取っておこう」
魔女ハルキュリアの魔力も多かった。
京楽ほどではないが、京楽の半分くらいの魔力があった。
「これで、もう魔女ハルキュリアに夢を見せられることはないね」
「ああ」
焼け焦げた館を見て、心配そうにしていた乱菊と会った。
「大丈夫だったの!いきなり館が燃えたから、心配していたのよ?」
「魔女ハルキュリアは、カエルになって最後は黒蛇に食べられた」
「黒蛇?」
「俺を守護してくれる、使役魔みたいなものだ」
「カエルにされた魔女。かわいそうだけど、浮竹さんの知り合いに手を出したハルキュリアが悪いわね」
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魔女乱菊は、魔女集会に呼ばれた。
「始祖ヴァンパイアは危険だ!排除すべきだ!」
「魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも、始祖のヴァンパイアにやられてしまった。報復に出るべきだ!」
他の魔女たちの意見に、乱菊が反論した。
「始祖ヴァンパイアは、手を出さない限り襲ってこないわ」
ざわざわ。
他の魔女たちのさざめきが起こる。
「それにあの人は始祖ヴァンパイア。不老不死。私たちの力では、殺せないわよ?」
「我ら魔女が一団となれば、封印くらいは・・・・・」
「どうでしょうね。そんなに簡単に封印されるくらいなら、もうとっくに封印されてると思うのだけど?」
ざわざわ。
またざわめきが起こる。
「猫の魔女、松本乱菊」
「はい」
「お主には、始祖のヴァンパイアと友好関係を続けることを命令する」
「あら、あたしはそんな命令されなくても、始祖ヴァンパイアとはもう友達ですもの。魔女会議には、もう今度からあたしは出ないわよ。閉鎖的な魔女の里なんてうんざり。ガイア王国にでも館を構えて、錬金術士兼魔女として、生きていくわ」
「魔女の里をぬけるだと!そんなこと、許されると・・・・・」
「あら、あたしに殺されたいの長老?今のあたしは、始祖のヴァンパイアの血を少しだけもらっていて、強いわよ?」
浮竹は、猫の魔女乱菊に、敵対する者の手が伸びないように、数滴の血を分け与えていた。
「魔女の里は、もう終わりかもしれぬ。乱菊がぬけ、魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも失った」
「もっと、里を開いて開放的になることね。薬だけの売買のやりとりじゃあ、魔女の里はいつまでたっても閉鎖的だわ」
「今後のことについて、話合おう」
魔女の長老たちの会議はまだ続きそうなので、乱菊は抜け出して浮竹と京楽の元へ来ていた。
「いろいろあって、あたし、ガイア王国で暮らすことにしたから!引っ越し、手伝ってね?」
にーっこりと微笑まれながら、拒否するわけにもいかず、浮竹と京楽は、アイテムポケットを利用して、乱菊の引っ越しを手伝うのであった。
そして同じようにもらった金魚を金魚鉢にいれて、玄関に飾った。
「うーん、黄金のハニワとのミスマッチがまたいい」
浮竹は、一人悦に浸っていた。
「この金魚、すぐに死んじゃうのかな?」
「死なせない。俺の血を、一滴金魚鉢に注ぎ込む」
そう言って、浮竹は牙で自分の指を噛むと、滲み出た血を一滴、金魚鉢にたらした。
金魚はパシャンとはねて、赤い鱗が更に赤くなる。
「眷属化しちゃったようだよ」
「金魚の眷属か。それはそれで、面白い」
使い魔にはなりそうもないが、大切に育ってくれるだろう。
浮竹は満足して、京楽は金魚に餌をあげていた。
「ああ、よく食べるね。これなら、死ぬ心配もなさそうだ」
「金魚の世話は俺とお前でしよう。戦闘人形に任せることもできるが、せっかく東洋の友人から譲り受けたものだ」
「うん、そうだね」
ほのぼのとした時間が、過ぎていく。
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夢見せの魔女ハルキュリア。
かつて数年前、女帝ブラッディ・ネイを夢で操り、血の帝国を自分のものにしようとした魔女の名であった。
ブラッディ・ネイの怒りを買った後、どうなったかは知らない。
「一護君、ルキア君と冬獅郎君は今どこに?」
「ブラッディ・ネイの宮殿にいます」
「京楽、俺たちも血の帝国の、ブラッディ・ネイの宮殿に向かうぞ」
一護を伴って、浮竹と京楽は血の帝国まできていた。
ベッドには、ルキアと冬獅郎が寝かされていた。
幸せそうな顔をしていた。
点滴の管がつけらており、昏睡状態になって数日が経過しているのが分かった。
ルキアと冬獅郎の胸元を見る。
百合の文様があった。
「間違いない、夢見せの魔女ハルキュリアに夢を見せられている証だ。ハルキュリアは、自分の魔法で夢を見させた者の胸元に、百合の文様を刻む」
「助かる方法はあるんすか!?」
「まず、普通の方法では無理だ。魔女ハルキュリアを殺すか、術を解かせないと。もしくは、こちらから夢の中に干渉して、起こすかだな」
「居場所、分かりますか?」
「分からない。もしかすると、魔女の里からかもしれない」
「じゃあ、どうすれば・・・」
一護は、おろおろとしていた。
「俺と京楽で、夢の中に潜ってみる。うまくいけば、それで目が覚めるはずだ」
「お願いします!ルキアと冬獅郎を助けてやってください!」
「分かっている。いつ何処で昏睡状態になったんだ?」」
「ああ、宮殿をぬけたところに森があって、湖が広がってるんです。その湖の水が、聖水を作るのに一番適してるって、ルキアが冬獅郎連れて出て行って。俺は雑務したので、迎えにいったら、二人とも意識をなくしてたんす」
「ふむ。血の帝国内にいる可能性が高いな。多分、ルキア君の聖女としての力を削ぎたいんだろう。ルキア君の癒しの力は、魔女の作るポーションの比じゃないからな」
ルキアは聖女として、血の帝国内だけでなく、国外からも患者を受け入れていた。
魔女の里は閉鎖的だし、魔女の作るポーションは高い。
ルキアは魔女のポーションに比べると、安い値段で治癒を行っていた。
疫病などが起こった時は、無料で患者を診て、病気を癒した。
それは、元々魔女の役割だった。
「夢の中に入る。俺と京楽の分のベッドを用意してくれ」
「浮竹、大丈夫なの?夢の中は精神体で入るんでしょ。何かあったら・・・」
「京楽も、俺を信じろ。俺は5千年も眠っていたんだぞ。好きに夢を操るくらい、造作もなことだ」
「なら、いいんだけど」
そして、浮竹と京楽は眠り薬を飲んで、ルキアと冬獅郎の体に触れて、夢の中に潜っていった。
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冬獅郎の見ている夢は、両親が生きている夢だった。
「冬獅郎君、それはただの夢だよ」
まず、夢の中にもぐりこんだ京楽が、冬獅郎の目を覚まさせようと、そう言うと、冬獅郎は氷輪丸という氷を操れる剣で、京楽を斬り裂いた。
「これは夢じゃねぇ、現実だ」
斬り裂かれても、夢なので痛くなかった。
「冬獅郎君、ルキア君を、雛森君を一人にしていいのか?」
浮竹の言葉に、冬獅郎の耳がピクリと動く。
「ルキアと雛森がどうしたんだ」
「このまま、君が夢から覚めないと、二人に一生会えないよ」
「そんな馬鹿なことが・・・・・」
「ほら、一緒に帰ろう。ルキア君と一護君が待っているぞ」
冬獅郎は、父と母を見た。その姿は溶けていき、ただの人形が残った。
「俺は・・・父さん、母さん、さよならだ。俺は戻る」
がばりと、冬獅郎は起き上がった。
「ルキア、一護!」
「ルキアはまだ寝ている。冬獅郎、よかった、目が覚めたんだな」
「京楽と浮竹が・・・・って、何してるんだ、こいつら」
眠っている浮竹と京楽を見る。
「冬獅郎とルキアは、夢見せの魔女ハルキュリアの手で眠らされていたんだ。今、浮竹さんと京楽さんが、起こしてくれるために夢に潜り込んでる」
「そうか。だから、あんな幸せな夢を見ていたのに、浮竹と京楽が登場してきたのか」
「どんな夢を見ていたんだ?」
「両親が生きている夢だ」
「ハルキュリアって、酷いことする奴だな、冬獅郎が孤児だってことにつけこんで・・・」
一護は、本気で怒っていた。
「次は、ルキアを起こしに、夢の中に潜りこんでいるんのか?」
「そうだと思うぜ」
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ルキアが見ている夢は、チャッピーといううさぎのキャラクターが生き生きとしている夢だった。
ルキアはというと、チャッピーと会話しながら、大好物の白玉餡蜜を、一護と一緒に食べていた。
「一護クンのことが好きだから、夢の中にもいるんだねぇ」
「誰だ!」
「ルキア君、これは夢だ」
「分かっている」
ルキアは、紫紺の瞳を瞬かせた。
「なら、目覚めないと」
「一護が、目覚めるなというのだ。一護を置いていくわけにはいかぬ」
「一護君なら、夢の外にいるよ。今の君は、魔女ハルキュリアに夢を見せられているんだよ」
「一護が、行ってはいけないと・・・」
ルキアの元に一護がやってきて、キスをして去っていった。
「これは、その!」
「さあ、ルキアちゃん目覚めよう。本物の一護クンが、君を待っているよ」
ルキアは目覚めた。
「目覚めたのか、ルキア!」
一護が、ルキアに抱き着いた。
「ええい、この大馬鹿者め!」
ルキアは、一護にアッパーをかませた。
「なんで。俺なんもしてねえのに」
ルキアは真っ赤になっていた。
「浮竹殿と京楽殿は?」
「まだ眠ってる」
「もう、起きたぞ」
「僕もだよ」
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「浮竹殿、京楽殿、ご迷惑をおかけしました。私と冬獅郎が魔女などに眠らされるとは・・・・」
「いや、ハルキュリアはブラッディ・ネイさえも眠りに落とし、操ろうとした実力者だ。今回のことは仕方ない」
「湖で、聖水を作っていたのです。そこに魔女が現れて、私と冬獅郎は術をかけられ、眠りの中に・・・・・・」
浮竹と京楽は、ルキアと冬獅郎の胸元に百合の文様がなくなっいるのを確認して、話を進める。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる」
「京楽殿の言う通りです」
「俺には、東洋の友人がくれた、呪術を跳ね返すお札がある。ハルキュリアの夢を見せ魔法は呪術に近い。跳ね返るだろう」
「それなら、一応は安心かな。でも、僕もいくからね」
「京楽にもお守りの効果はきいてくれると思う」
「兄様が眠りつき、危険だったら、ボクが動くからね」
今まで黙ってことの成り行きを見守っていた、ブラッディ・ネイがそう言った。
「とりあえず、森の湖にまで行こう。そう遠くまでは行っていないはすだ」
浮竹と京楽は、二人だけで魔女ハルキュリアの元に行くことになった。
「多分、隠れ家を作っている。魔法が解かれたとまだ気づいていないだろう。そこを叩こう」
「うん、分かったよ」
森をすすみ、湖まできた。
探したが、どこにも魔女ハルキュリアの姿はなかった。
「もう、魔女の里へ帰ったか?」
「浮竹、見て、湖が!」
湖全体が紫色になって、浮竹と京楽を襲った。
水中で呼吸できなくて、このまま溺死かと思ったら、浮竹はがいつだったか覚えた、水中で呼吸できる魔法を唱えてくれて、京楽は水に飲みこまれたまま呼吸をした。
「うふふふふ。さあ、くたばっちまいな、ヴァンパイアども」
京楽と浮竹は、死んだふりをした。
「あはははは!ヴァンパイアももろいものだ。夢を見せずに、最初からこうして殺したほうがよかったかもしれない」
どさりと、浮竹と京楽は折り重なって倒れた。
「ヴァンパイアにしては美しい男だ。顔を、もらってやろう」
伸びてきたハルキュリアの手を、京楽が掴んだ。
「浮竹に手を出すのは、許さないよ?」
「ちっ、まだ生きてたのか。夢見の魔法を喰らいな!ギャッ!」
魔法を反射されて、ハルキュリアは甲高い声をあげていた。
「魔法を反射だと!?反射の護符でももっているのか!」
「当たりだ」
浮竹が、血の刃でハルキュリアの顔面を切った。
「いやああああ、あたしの、あたしの顔が!」
「燃え尽きろ。バーストロンド!」
「ぎゃああああああ!!!」
ハルキュリアは、灰をとなった。
「一段落だね」
「いや、まだだ」
「え?」
「魔女の里に行くぞ。このハルキュリアは分身体だ」
「でも、灰が・・・・」
灰は、見る見るうちに消えてしまった。
「水鏡で、のぞいているんだろう、ハルキュリア?どこに逃げても無駄だからな。ルキア君と冬獅郎君を魔法で眠りにつかせ、殺そうとしたんだ。代償を、払ってもらおうか」
「浮竹、魔女の里になんてどうやっていくんだい?」
「猫の魔女がいるだろう。彼女に案内してもらう」
「そうか、乱菊ちゃんか」
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「あたし、仲間を売るような真似はしたくないけど、浮竹さんと京楽さんを怒らせた相手なら、話が別ね。放置しておいたら、きっと魔女の里ごと消されちゃうかもしれないわ」
「俺はそこまでしないぞ」
「ううん、しそうだもの」
「確かに、浮竹なら禁呪の一つでもかまして、魔女の里ごと吹っ飛ばしそうだね」
「お前らの中の俺って・・・・・」
「しいてういなら、破壊神」
「魔法の極みの禁呪を平気で発動する、兵器」
「俺っていったい・・・・・」
浮竹は、がっくりと項垂れた。
「あら、過去が見えたわ。あなたの妹さん、一度ハルキュリアの術にかかって、命を落としそうになったのね。怒っても、無理はないわね」
乱菊は、過去を見るオッドアイを持っている。
白い金と銀の目をした猫の姿になることもある、猫の魔女だった。
「そんな昔のことはどうでもいい。俺は、俺の友人に手を出したことに怒っているんだ」
「ついた。ここが、魔女の里よ」
乱菊の魔法で、空を飛んで血の帝国をぬけて、遥か西にある魔女の里に着ていた。
閉鎖的な空間を出していて、魔女たちは扉を固く閉ざして、侵入者を拒んでいた。
「あの、中央の館があたしの家。んで、右にずっといったところにあるのが、ハルキュリアの館よ」
「乱菊君、ありがとう」
「ありがとね、乱菊ちゃん」
浮竹と京楽は、ハルキュリアの館の扉を開いた。
中には、5歳くらいの女の子と、3歳くらいの男の子がいた。
「母さんに、何の用だ!」
「殺しにきただけだ」
「この悪魔め!」
ホウキを手に、殴りかかってくる男の子を、浮竹の血の刃が首を刎ねた。
「う、浮竹?」
京楽が、浮竹を見る。
「ここはハルキュリアのテリトリー。強すぎて、お守りでは反射できなかったようだ。ここは、ハルキュリアの見せる、夢の中だ」
「でも、僕と浮竹を、同じ夢に?」
「お前は、俺の京楽じゃない」
浮竹は、京楽の首を刎ねた。
「どうして。愛しているのに、浮竹」
足に縋りついてくる京楽を、冷めた目で浮竹は見ていた。
「俺の京楽は、そんな香水の匂いなんてさせない。俺を見ると愛しそうに笑って、浮竹と名を呼んで、抱き着いてくる」
「でも、本物だったら?」
「そんなことはあり得ない」
「本物かも、しれないよ?」
複数の京楽が現れた。
浮竹は、血の刃で京楽を消していく。
「俺に京楽を殺させるような真似をしてくれたことにも、礼を言わないとな」
浮竹は冷酷に笑って、魔女ハルキュリアの存在を探した。
ふと一体の京楽が、浮竹を抱き寄せた。
ふっと耳に息を吹き込まれて、その京楽に浮竹はハリセンをお見舞いしていた、
「お前は本物だ。魂が他と違う」
「君って、僕の姿をしている偽物の首、平気で刎ねるんだから、僕が肝が冷えたよ」
「魔女ハルキュリア。出てこい。出てこないのなら、この里の一角ごと、消し去る」
「いやだわ。そんなことされたら、反魂でも蘇れないじゃない」
すでに、ハルキュリアは反魂の用意をしていた。
死んでも構わないと、浮竹と京楽の元に出てくる。
「炎と踊れ。バーストフレイム」
館全体に火の魔法をかけて、反魂の札を燃やしていく。
「なんなのよ!たかが、ヴァンパイアの小娘とガキに、魔法をかけて殺そうとしたくらいで!」
浮竹は瞳を真紅にして、ハルキュリアを血の刃でズタズタに斬り裂いた。
「あはははは、そんなのきかない。だって、ここは夢の中!夢の・・・・・ぎゃあああ、何故痛い!?夢のはずが!」
「ハルキュリア。始祖のヴァンパイアが、夢見の魔法を破る魔法を持っていても不思議じゃないと、思わないか?」
「ひいいい、始祖ヴァンパイア!浮竹十四郎!」
ハルキュリアは、失禁していた。
ただのヴァンパイアだと思っていたのだ。
「浮竹を怒らせた、君が悪いよ」
京楽は、興味なさそうに、縋りついてくるハルキュリアを見ていた。
「なんでもする!なんでもするから、命だけは助けて!」
「そうか。なら、命だけは助けてやろう。お前は、今日からカエルになるといい」
ぼふん。
音を立てて、ハルキュリアはカエルになっていた。
「いやああああああああ!!!」
「あ、黒蛇!」
浮竹を守っていた黒蛇が、影からしゅるしゅると出て、カエルにされたハルキュリアを美味しそうに見つめていた。
「こんなの食べたら、腹痛を起こすぞ?」
しゅるるる。
黒蛇は、それでも食べたそうにしていた。
「言葉さえしゃべれるのなら、人間の姿にだって戻れる!」
ハルキュリアは、カエルから元の魔女の姿に戻っていた。
しゅるるる。
「そうか、そこまで食べたいのか」
浮竹は、もう一度ハルキュリアをカエルにした。
「わあああああああ」
しゅるしゅると音をたてて、黒蛇が近付いてくる。
「いやあああ、食べられる!」
黒蛇は、ハルキュリアを丸のみしてしまった。
「ああ、消化不良を起こさないといいんだが」
魔女ハルキュリアは、反魂も燃やされて効かずカエルとなって、東洋の浮竹からもらった札から出てきた黒蛇に食べられてしまった。
命だけは助けてやると言ったのだが、黒蛇が珍しそうに食べたそうにしていたので、与えてしまったのだ。
黒蛇に取り込まれた魔女ハルキュリアの魔力が、浮竹に注ぎこまれた。
「魔力なんて、これ以上いらない気もするが・・・・まぁ、受け取っておこう」
魔女ハルキュリアの魔力も多かった。
京楽ほどではないが、京楽の半分くらいの魔力があった。
「これで、もう魔女ハルキュリアに夢を見せられることはないね」
「ああ」
焼け焦げた館を見て、心配そうにしていた乱菊と会った。
「大丈夫だったの!いきなり館が燃えたから、心配していたのよ?」
「魔女ハルキュリアは、カエルになって最後は黒蛇に食べられた」
「黒蛇?」
「俺を守護してくれる、使役魔みたいなものだ」
「カエルにされた魔女。かわいそうだけど、浮竹さんの知り合いに手を出したハルキュリアが悪いわね」
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魔女乱菊は、魔女集会に呼ばれた。
「始祖ヴァンパイアは危険だ!排除すべきだ!」
「魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも、始祖のヴァンパイアにやられてしまった。報復に出るべきだ!」
他の魔女たちの意見に、乱菊が反論した。
「始祖ヴァンパイアは、手を出さない限り襲ってこないわ」
ざわざわ。
他の魔女たちのさざめきが起こる。
「それにあの人は始祖ヴァンパイア。不老不死。私たちの力では、殺せないわよ?」
「我ら魔女が一団となれば、封印くらいは・・・・・」
「どうでしょうね。そんなに簡単に封印されるくらいなら、もうとっくに封印されてると思うのだけど?」
ざわざわ。
またざわめきが起こる。
「猫の魔女、松本乱菊」
「はい」
「お主には、始祖のヴァンパイアと友好関係を続けることを命令する」
「あら、あたしはそんな命令されなくても、始祖ヴァンパイアとはもう友達ですもの。魔女会議には、もう今度からあたしは出ないわよ。閉鎖的な魔女の里なんてうんざり。ガイア王国にでも館を構えて、錬金術士兼魔女として、生きていくわ」
「魔女の里をぬけるだと!そんなこと、許されると・・・・・」
「あら、あたしに殺されたいの長老?今のあたしは、始祖のヴァンパイアの血を少しだけもらっていて、強いわよ?」
浮竹は、猫の魔女乱菊に、敵対する者の手が伸びないように、数滴の血を分け与えていた。
「魔女の里は、もう終わりかもしれぬ。乱菊がぬけ、魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも失った」
「もっと、里を開いて開放的になることね。薬だけの売買のやりとりじゃあ、魔女の里はいつまでたっても閉鎖的だわ」
「今後のことについて、話合おう」
魔女の長老たちの会議はまだ続きそうなので、乱菊は抜け出して浮竹と京楽の元へ来ていた。
「いろいろあって、あたし、ガイア王国で暮らすことにしたから!引っ越し、手伝ってね?」
にーっこりと微笑まれながら、拒否するわけにもいかず、浮竹と京楽は、アイテムポケットを利用して、乱菊の引っ越しを手伝うのであった。
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