始祖なる者、ヴァンパイアマスター45-2
そのまま、30階層の財宝の間で、パーティーは夜を迎えた。
浮竹と京楽はテントの中に布団と毛布を敷いて寝て、もう1つのテントには恋次が白哉の抱き枕を手に寝ていた。
白哉は、天蓋つきのべッドを取り出した。
流石にそんなもの入れいると知らなかった浮竹と京楽はびびった。
恋次は、やっぱりかと、うなっていた。
枕どころか、ベッドが変わると眠れないらしい。
すーすー眠る白哉に、忍び寄る影があった。
「私は女神オリガ。さぁ、朽木白哉、あの忌まわしい魔神を倒しなさい。これは宿命です。今倒さなければ、いずれあの魔神はあなたの大切な妹、ルキアを殺し、その魂を食うことでしょう」
「ん・・・・」
目覚めた白哉は、完全に洗脳されていた。
女神オリガは、女神アルテナの末の妹であった。
念のため、女神オリガは白哉の体に憑依した。
次の日の朝、白哉の様子がおかしいと、恋次が浮竹と京楽に訴えた。
「大丈夫か、白哉」
「問題ない」
「大丈夫だろう」
60階層にいき、エンシェントドラゴンを退治した時、白哉が京楽に刀を向けた。
「白哉クン!?」
「兄は、このまま生きると私の妹ルキアの魂を喰らう。ここで、死んでもらう。散れ、千本桜」
千本桜は、億の刃となって京楽に襲い掛かった。
いきなりのことだったので、シールドを張ることもできず、腹をやられた。
「何を言ってるんだい、白哉クン!」
「白哉さん、しっかりしてください!」
「白哉に・・・何かついているな。姿を現せ!」
「うふふふ」
白哉の体からじわりと現れてきたのは、女神だった。
「女神か!女神アルテナの手下か!」
「私は女神オリガ。アルテナ姉さまの末の妹。さぁ白哉、憎きこの魔神を殺すのよ!」
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉さん!」
白哉はまず、恋次の心臓を貫いていた。
「ぐふっ」
恋次は倒れ、血の海に沈む。
「やめろ、白哉!」
浮竹が京楽を庇う。
桜の血の花びらは、器用に浮竹を避けて、京楽のみを攻撃した。
「ぐっ」
「京楽!」
「こうなったら、少し荒っぽい方法になるけど、いいかな、浮竹」
「仕方ない。白哉には後で俺から謝っておく」
「ただの魔王だの勇者だの女神なんかより、君の方が厄介だよ、白哉クン」
「死ね!」
血の花びらを、同じように血の花びらで返した。
「ルキアを死なせるわけには、いかぬ」
「そんな未来は、起こりえないから!」
白哉の体を、サンダースピアで貫く。
体をわずかに焦げさせただけで、白哉はまだ意識をもって、京楽を殺そうとしていた。
(殺シテシマエ。オマエノ敵ダ)
「うるさいよ!」
魔神としての京楽の本能が、目の前の白哉を殺せと訴えてくる。
「僕は、心まで魔神になったつもりはない!」
魔剣ラグナロクを手に、白哉と向き合う。
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉クン、ごめんね!サンダーボルテックス!!!」
「あああああ!!!」
大量の雷を浴びせられて、白哉は気絶していた。それでも主を守ろうと、千本桜は刃を京楽に向ける。
それを、魔剣ラグナロクで叩き折った。
「ち、使えない皇族王だ」
「僕に僕の友達を傷つけさせたこと、後悔させてあげる・・・・」
京楽は、魔神の咢(あぎと)で、女神オリガに食いついた。
「いやああ、私の体が!」
魂の一部を食われて、女神オリガは逃げていった。
「白哉クンは大丈夫!?」
「ああ、幸い命に別状はない。それより恋次君が・・・・」
恋次は心臓を貫かれて、息絶えていた。
けれど、時間が逆流するかのように血の海は心臓に戻っていき、元のままの、タトゥーを1つ増やした恋次がいた。
「あっぶね。不老不死じゃなかったら、死んでた」
「いや、君一度死んでたんだけどね?」
「まぁ、始祖だから不老不死の呪いがある」
「俺より白哉さんは!」
全身を焦げさせた白哉は、けれどすでに浮竹が血を与えたので、再生を始めていた。
「ん・・・私は?」
「目覚めたか、白哉」
「白哉さん!」
恋次に泣きながら抱きつかれて、白哉は戸惑っていた。
「恋次。私はお前を手にかけて・・・・」
「そんなことどうってことないっす!白哉さんが無事でよかった」
「京楽、すまぬ。私は兄を殺そうとした。女神であろうが、体を乗っ取られて操られたのも、私の鍛錬が足らぬからだ。すまぬ、京楽」
「いいよ、もう。白哉クンが無事なら、それでいいんだよ」
「そうだぞ、白哉。次の70階層まで降りよう。そこがラスボスがいる場所だ」
60階層の財宝の間の財宝を全てアイテムポケットに入れて、70階層の深層にまで降りてきた。
そこにいたのは、雷の精霊王だった。
金の髪に金色の瞳の、10歳くらいの少年だった。
「これは・・・僕と浮竹の出番だね」
「気をつけろ。相手は精霊王だ。神に匹敵する」
白哉は、恋次に支えられながら歩いていた。
浮竹の血をもらったが、京楽の雷は絶大で、ダメージが残っていた。
もっと血を与えようとする浮竹を拒み、後は自然治癒に任せた。白哉とて皇族王。濃いヴァンパイアロードの血をもっている。少しずつではあるが、自力で走れるくらいには回復していた。
「やんのかコラ。上等じゃねぇかコラ。いてまうぞーー」
雷の精霊王は、ビリビリと雷を発生させて、浮竹と京楽を睨んだ。
「サンダージャベリン!」
「「ゴッドフェニックス!!」」
「なんやコラ。そんな炎の魔法なんてか効くわけねーだろーコラ!あちゃちゃ!!何すんねん!」
「「カイザーフェニックス」」
「ぴぎゃーーー」
「「エターナルフェニックス」」
「ぎゃああああ。うわああああああああん」
「あ、浮竹さんと京楽さんが、雷の精霊王泣かせた!」
「え」
「わ、泣かないでよ!」
「うわああああああん!俺と契約してくれなきゃ、お前らの頭上にいつも雷落としてやるーー」
「契約すればいいんだろう」
「契約するよ」
浮竹と京楽は、仕方なく雷の精霊王と契約し、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラといった、雷系の精霊とも契約させられた。
浮竹と京楽はテントの中に布団と毛布を敷いて寝て、もう1つのテントには恋次が白哉の抱き枕を手に寝ていた。
白哉は、天蓋つきのべッドを取り出した。
流石にそんなもの入れいると知らなかった浮竹と京楽はびびった。
恋次は、やっぱりかと、うなっていた。
枕どころか、ベッドが変わると眠れないらしい。
すーすー眠る白哉に、忍び寄る影があった。
「私は女神オリガ。さぁ、朽木白哉、あの忌まわしい魔神を倒しなさい。これは宿命です。今倒さなければ、いずれあの魔神はあなたの大切な妹、ルキアを殺し、その魂を食うことでしょう」
「ん・・・・」
目覚めた白哉は、完全に洗脳されていた。
女神オリガは、女神アルテナの末の妹であった。
念のため、女神オリガは白哉の体に憑依した。
次の日の朝、白哉の様子がおかしいと、恋次が浮竹と京楽に訴えた。
「大丈夫か、白哉」
「問題ない」
「大丈夫だろう」
60階層にいき、エンシェントドラゴンを退治した時、白哉が京楽に刀を向けた。
「白哉クン!?」
「兄は、このまま生きると私の妹ルキアの魂を喰らう。ここで、死んでもらう。散れ、千本桜」
千本桜は、億の刃となって京楽に襲い掛かった。
いきなりのことだったので、シールドを張ることもできず、腹をやられた。
「何を言ってるんだい、白哉クン!」
「白哉さん、しっかりしてください!」
「白哉に・・・何かついているな。姿を現せ!」
「うふふふ」
白哉の体からじわりと現れてきたのは、女神だった。
「女神か!女神アルテナの手下か!」
「私は女神オリガ。アルテナ姉さまの末の妹。さぁ白哉、憎きこの魔神を殺すのよ!」
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉さん!」
白哉はまず、恋次の心臓を貫いていた。
「ぐふっ」
恋次は倒れ、血の海に沈む。
「やめろ、白哉!」
浮竹が京楽を庇う。
桜の血の花びらは、器用に浮竹を避けて、京楽のみを攻撃した。
「ぐっ」
「京楽!」
「こうなったら、少し荒っぽい方法になるけど、いいかな、浮竹」
「仕方ない。白哉には後で俺から謝っておく」
「ただの魔王だの勇者だの女神なんかより、君の方が厄介だよ、白哉クン」
「死ね!」
血の花びらを、同じように血の花びらで返した。
「ルキアを死なせるわけには、いかぬ」
「そんな未来は、起こりえないから!」
白哉の体を、サンダースピアで貫く。
体をわずかに焦げさせただけで、白哉はまだ意識をもって、京楽を殺そうとしていた。
(殺シテシマエ。オマエノ敵ダ)
「うるさいよ!」
魔神としての京楽の本能が、目の前の白哉を殺せと訴えてくる。
「僕は、心まで魔神になったつもりはない!」
魔剣ラグナロクを手に、白哉と向き合う。
「散れ、千本桜・・・・」
「白哉クン、ごめんね!サンダーボルテックス!!!」
「あああああ!!!」
大量の雷を浴びせられて、白哉は気絶していた。それでも主を守ろうと、千本桜は刃を京楽に向ける。
それを、魔剣ラグナロクで叩き折った。
「ち、使えない皇族王だ」
「僕に僕の友達を傷つけさせたこと、後悔させてあげる・・・・」
京楽は、魔神の咢(あぎと)で、女神オリガに食いついた。
「いやああ、私の体が!」
魂の一部を食われて、女神オリガは逃げていった。
「白哉クンは大丈夫!?」
「ああ、幸い命に別状はない。それより恋次君が・・・・」
恋次は心臓を貫かれて、息絶えていた。
けれど、時間が逆流するかのように血の海は心臓に戻っていき、元のままの、タトゥーを1つ増やした恋次がいた。
「あっぶね。不老不死じゃなかったら、死んでた」
「いや、君一度死んでたんだけどね?」
「まぁ、始祖だから不老不死の呪いがある」
「俺より白哉さんは!」
全身を焦げさせた白哉は、けれどすでに浮竹が血を与えたので、再生を始めていた。
「ん・・・私は?」
「目覚めたか、白哉」
「白哉さん!」
恋次に泣きながら抱きつかれて、白哉は戸惑っていた。
「恋次。私はお前を手にかけて・・・・」
「そんなことどうってことないっす!白哉さんが無事でよかった」
「京楽、すまぬ。私は兄を殺そうとした。女神であろうが、体を乗っ取られて操られたのも、私の鍛錬が足らぬからだ。すまぬ、京楽」
「いいよ、もう。白哉クンが無事なら、それでいいんだよ」
「そうだぞ、白哉。次の70階層まで降りよう。そこがラスボスがいる場所だ」
60階層の財宝の間の財宝を全てアイテムポケットに入れて、70階層の深層にまで降りてきた。
そこにいたのは、雷の精霊王だった。
金の髪に金色の瞳の、10歳くらいの少年だった。
「これは・・・僕と浮竹の出番だね」
「気をつけろ。相手は精霊王だ。神に匹敵する」
白哉は、恋次に支えられながら歩いていた。
浮竹の血をもらったが、京楽の雷は絶大で、ダメージが残っていた。
もっと血を与えようとする浮竹を拒み、後は自然治癒に任せた。白哉とて皇族王。濃いヴァンパイアロードの血をもっている。少しずつではあるが、自力で走れるくらいには回復していた。
「やんのかコラ。上等じゃねぇかコラ。いてまうぞーー」
雷の精霊王は、ビリビリと雷を発生させて、浮竹と京楽を睨んだ。
「サンダージャベリン!」
「「ゴッドフェニックス!!」」
「なんやコラ。そんな炎の魔法なんてか効くわけねーだろーコラ!あちゃちゃ!!何すんねん!」
「「カイザーフェニックス」」
「ぴぎゃーーー」
「「エターナルフェニックス」」
「ぎゃああああ。うわああああああああん」
「あ、浮竹さんと京楽さんが、雷の精霊王泣かせた!」
「え」
「わ、泣かないでよ!」
「うわああああああん!俺と契約してくれなきゃ、お前らの頭上にいつも雷落としてやるーー」
「契約すればいいんだろう」
「契約するよ」
浮竹と京楽は、仕方なく雷の精霊王と契約し、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラといった、雷系の精霊とも契約させられた。
「へへーん。これで俺も召還者もちや。いつまでも、炎と氷の精霊王にでかい顔させへんで~」
雷の精霊王は、精霊界に帰ってしまった。
「これ、絶対雷の精霊王が仕組んだことと思うんだけど」
「そうなるだろうな。精霊王は、戦闘に勝った相手に契約をすすめるからな」
財宝の間が開く。
財宝は、1つの赤く輝く大きなルビーだった。
「魂のルビー。聖帝国にいる、神族の皇族の心臓をくり抜いてできる、世界三大秘宝の一つか」
「世界三大秘宝!?うえっ、値段高そう」
「大金貨500万枚はいくだろうな」
「ひえー。流石に値段が値段すぎて、俺いらないっす」
恋次は、あまりの値段にぶんぶんと顔を横に振った。
「大金貨500万枚程度、屋敷の家財を売ればすぐにできる。いらん」
「じゃあ、これは俺がもらっておこう。血の帝国でオークションにかける」
「うわー。きっと、ブラッディ・ネイあたりが高額で競り落としそうだね」
「かもな。それにしても女神オリガか。今度から気をつけよう。白哉も気をつけてくれ」
「気をつけたところで、焼け石に水かもしれぬが、ルキアに他者に憑依されぬよう護符でも作ってもらおう」
「そうしてくれ。恋次君の分も頼む」
「分かった」
こうして一行は、70階層の未踏破Sダンジョンをクリアした。
後日、オークションに例の魂のルビーが出された。
出品者は浮竹ということで、ブラッディ・ネイが大金貨600万枚で競り落としていった。
「やっぱりな。ブラッディ・ネイが競り落とすと思ったんだ」
翌日には、魂のルビーを加工した髪飾りをつけて、ブラッディ・ネイは古城を訪れた。
「見て見て兄様。ボクにぴったりでしょう!」
「はいはい、似合ってる」
「嬉しい兄様、ボクとバカンスの旅に出ない?」
「出ない」
「なんでさー。こんなひげもじゃなんて放置して、ボクの後宮で寵姫たちと遊ぼうよ」
「100万年後にな」
「兄様のけち!でもそこがまたいい・・・ツンデレな兄様、ボクは大好きだよ」
ちゅっと、ほっぺにキスされて、浮竹はハリセンで実の妹の頭をはたいた。
「酷い、兄様!」
「ブラッディ・ネイ?僕の浮竹に手を出すなら、その魂、食っても・・・・」
「ボク、用事を思い出したので帰るね!」
魔神の京楽が本気を出す前に、ブラッディ・ネイは逃げていった。
「京楽、ほっぺにキスくらいで」
「嫌なものは嫌なの。僕の浮竹には誰も触れて欲しくない」
「お前の俺への執着心も、相当なものだな」
「そうだよ。だから、僕は魂を喰らいまくって邪神にならない。君への執着だけで、魔神であり続けれる」
魔神の上位存在は邪神だ。数十万という魂を喰らった魔神が、辿り着く先の道。それが邪神。
邪神は、神々の敵である。
滅ぼされたり、封印された邪神の数は意外と多い。
「女神オリガか・・・・」
女神アルテナの末妹。はたして、またくるのだろうか。
浮竹と京楽の悩みはつきないが、少なくとも暇を持て余して休眠することはないだろう。
----------------------------------------------------
「姉さま」
「なあに、オリガ」
「あの魔神に、無理やり数十万の魂を食わせて、いっそ邪神にしてしまえば?そうすれば、あの魔神は他の神々に滅ぼされる」
「そんなことが簡単にできるのなら、すでにやっているわ」
女神アルテナは、新しく藍染の寵姫の中から選んだ美女の魂を抜き去って、器として使ってる美女の胸を抑えた。
「あの魔神は、魂を喰らうでしょう。しかも、あろうことか神々の魂を!普通の魔神は、神の魂など喰えないというのに!」
忌々しそうに、女神アルテナは美しい美貌を歪めて、頭を掻きむしった。
「あの魔神のせいで、あの始祖に手を出せない。ええい、口惜しい」
「あの魔神は怖いわ」
ぶるぶると、女神オリガが震えた。
「大丈夫よ、オリガ。あなたには上位神である創造神イクシードがいるじゃない」
「イクシードは、この世界に手を出すなら、私を愛することを止めると言っていたわ」
「そんなの、ただの口約束よ。ようは、ばれなければいいのよ。あなた・・・・」
「なんだい、女神アルテナ」
藍染は、ゆっくりと視線をアルテナに向けた。
「このオリガとの間に子をもうけて」
「何を言うの、姉さま!私にはイクシードがいるのよ!嫌よ、嫌よ!始祖魔族如きに汚されるなんて!いやあああああああああ!!!!!!」
オリガの悲鳴は、魔国アルカンシェルにある、藍染の城中に響き渡るのだった。
雷の精霊王は、精霊界に帰ってしまった。
「これ、絶対雷の精霊王が仕組んだことと思うんだけど」
「そうなるだろうな。精霊王は、戦闘に勝った相手に契約をすすめるからな」
財宝の間が開く。
財宝は、1つの赤く輝く大きなルビーだった。
「魂のルビー。聖帝国にいる、神族の皇族の心臓をくり抜いてできる、世界三大秘宝の一つか」
「世界三大秘宝!?うえっ、値段高そう」
「大金貨500万枚はいくだろうな」
「ひえー。流石に値段が値段すぎて、俺いらないっす」
恋次は、あまりの値段にぶんぶんと顔を横に振った。
「大金貨500万枚程度、屋敷の家財を売ればすぐにできる。いらん」
「じゃあ、これは俺がもらっておこう。血の帝国でオークションにかける」
「うわー。きっと、ブラッディ・ネイあたりが高額で競り落としそうだね」
「かもな。それにしても女神オリガか。今度から気をつけよう。白哉も気をつけてくれ」
「気をつけたところで、焼け石に水かもしれぬが、ルキアに他者に憑依されぬよう護符でも作ってもらおう」
「そうしてくれ。恋次君の分も頼む」
「分かった」
こうして一行は、70階層の未踏破Sダンジョンをクリアした。
後日、オークションに例の魂のルビーが出された。
出品者は浮竹ということで、ブラッディ・ネイが大金貨600万枚で競り落としていった。
「やっぱりな。ブラッディ・ネイが競り落とすと思ったんだ」
翌日には、魂のルビーを加工した髪飾りをつけて、ブラッディ・ネイは古城を訪れた。
「見て見て兄様。ボクにぴったりでしょう!」
「はいはい、似合ってる」
「嬉しい兄様、ボクとバカンスの旅に出ない?」
「出ない」
「なんでさー。こんなひげもじゃなんて放置して、ボクの後宮で寵姫たちと遊ぼうよ」
「100万年後にな」
「兄様のけち!でもそこがまたいい・・・ツンデレな兄様、ボクは大好きだよ」
ちゅっと、ほっぺにキスされて、浮竹はハリセンで実の妹の頭をはたいた。
「酷い、兄様!」
「ブラッディ・ネイ?僕の浮竹に手を出すなら、その魂、食っても・・・・」
「ボク、用事を思い出したので帰るね!」
魔神の京楽が本気を出す前に、ブラッディ・ネイは逃げていった。
「京楽、ほっぺにキスくらいで」
「嫌なものは嫌なの。僕の浮竹には誰も触れて欲しくない」
「お前の俺への執着心も、相当なものだな」
「そうだよ。だから、僕は魂を喰らいまくって邪神にならない。君への執着だけで、魔神であり続けれる」
魔神の上位存在は邪神だ。数十万という魂を喰らった魔神が、辿り着く先の道。それが邪神。
邪神は、神々の敵である。
滅ぼされたり、封印された邪神の数は意外と多い。
「女神オリガか・・・・」
女神アルテナの末妹。はたして、またくるのだろうか。
浮竹と京楽の悩みはつきないが、少なくとも暇を持て余して休眠することはないだろう。
----------------------------------------------------
「姉さま」
「なあに、オリガ」
「あの魔神に、無理やり数十万の魂を食わせて、いっそ邪神にしてしまえば?そうすれば、あの魔神は他の神々に滅ぼされる」
「そんなことが簡単にできるのなら、すでにやっているわ」
女神アルテナは、新しく藍染の寵姫の中から選んだ美女の魂を抜き去って、器として使ってる美女の胸を抑えた。
「あの魔神は、魂を喰らうでしょう。しかも、あろうことか神々の魂を!普通の魔神は、神の魂など喰えないというのに!」
忌々しそうに、女神アルテナは美しい美貌を歪めて、頭を掻きむしった。
「あの魔神のせいで、あの始祖に手を出せない。ええい、口惜しい」
「あの魔神は怖いわ」
ぶるぶると、女神オリガが震えた。
「大丈夫よ、オリガ。あなたには上位神である創造神イクシードがいるじゃない」
「イクシードは、この世界に手を出すなら、私を愛することを止めると言っていたわ」
「そんなの、ただの口約束よ。ようは、ばれなければいいのよ。あなた・・・・」
「なんだい、女神アルテナ」
藍染は、ゆっくりと視線をアルテナに向けた。
「このオリガとの間に子をもうけて」
「何を言うの、姉さま!私にはイクシードがいるのよ!嫌よ、嫌よ!始祖魔族如きに汚されるなんて!いやあああああああああ!!!!!!」
オリガの悲鳴は、魔国アルカンシェルにある、藍染の城中に響き渡るのだった。
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