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小説掲載プログ
03 2024/04 29 30 05

始祖なる者、ヴァンパイアマスター45-2

そのまま、30階層の財宝の間で、パーティーは夜を迎えた。

浮竹と京楽はテントの中に布団と毛布を敷いて寝て、もう1つのテントには恋次が白哉の抱き枕を手に寝ていた。

白哉は、天蓋つきのべッドを取り出した。

流石にそんなもの入れいると知らなかった浮竹と京楽はびびった。

恋次は、やっぱりかと、うなっていた。

枕どころか、ベッドが変わると眠れないらしい。

すーすー眠る白哉に、忍び寄る影があった。

「私は女神オリガ。さぁ、朽木白哉、あの忌まわしい魔神を倒しなさい。これは宿命です。今倒さなければ、いずれあの魔神はあなたの大切な妹、ルキアを殺し、その魂を食うことでしょう」

「ん・・・・」

目覚めた白哉は、完全に洗脳されていた。

女神オリガは、女神アルテナの末の妹であった。

念のため、女神オリガは白哉の体に憑依した。

次の日の朝、白哉の様子がおかしいと、恋次が浮竹と京楽に訴えた。

「大丈夫か、白哉」

「問題ない」

「大丈夫だろう」

60階層にいき、エンシェントドラゴンを退治した時、白哉が京楽に刀を向けた。

「白哉クン!?」

「兄は、このまま生きると私の妹ルキアの魂を喰らう。ここで、死んでもらう。散れ、千本桜」

千本桜は、億の刃となって京楽に襲い掛かった。

いきなりのことだったので、シールドを張ることもできず、腹をやられた。

「何を言ってるんだい、白哉クン!」

「白哉さん、しっかりしてください!」

「白哉に・・・何かついているな。姿を現せ!」

「うふふふ」

白哉の体からじわりと現れてきたのは、女神だった。

「女神か!女神アルテナの手下か!」

「私は女神オリガ。アルテナ姉さまの末の妹。さぁ白哉、憎きこの魔神を殺すのよ!」

「散れ、千本桜・・・・」

「白哉さん!」

白哉はまず、恋次の心臓を貫いていた。

「ぐふっ」

恋次は倒れ、血の海に沈む。

「やめろ、白哉!」

浮竹が京楽を庇う。

桜の血の花びらは、器用に浮竹を避けて、京楽のみを攻撃した。

「ぐっ」

「京楽!」

「こうなったら、少し荒っぽい方法になるけど、いいかな、浮竹」

「仕方ない。白哉には後で俺から謝っておく」

「ただの魔王だの勇者だの女神なんかより、君の方が厄介だよ、白哉クン」

「死ね!」

血の花びらを、同じように血の花びらで返した。

「ルキアを死なせるわけには、いかぬ」

「そんな未来は、起こりえないから!」

白哉の体を、サンダースピアで貫く。

体をわずかに焦げさせただけで、白哉はまだ意識をもって、京楽を殺そうとしていた。

(殺シテシマエ。オマエノ敵ダ)

「うるさいよ!」

魔神としての京楽の本能が、目の前の白哉を殺せと訴えてくる。

「僕は、心まで魔神になったつもりはない!」

魔剣ラグナロクを手に、白哉と向き合う。

「散れ、千本桜・・・・」

「白哉クン、ごめんね!サンダーボルテックス!!!」

「あああああ!!!」

大量の雷を浴びせられて、白哉は気絶していた。それでも主を守ろうと、千本桜は刃を京楽に向ける。

それを、魔剣ラグナロクで叩き折った。

「ち、使えない皇族王だ」

「僕に僕の友達を傷つけさせたこと、後悔させてあげる・・・・」

京楽は、魔神の咢(あぎと)で、女神オリガに食いついた。

「いやああ、私の体が!」

魂の一部を食われて、女神オリガは逃げていった。

「白哉クンは大丈夫!?」

「ああ、幸い命に別状はない。それより恋次君が・・・・」

恋次は心臓を貫かれて、息絶えていた。

けれど、時間が逆流するかのように血の海は心臓に戻っていき、元のままの、タトゥーを1つ増やした恋次がいた。

「あっぶね。不老不死じゃなかったら、死んでた」

「いや、君一度死んでたんだけどね?」

「まぁ、始祖だから不老不死の呪いがある」

「俺より白哉さんは!」

全身を焦げさせた白哉は、けれどすでに浮竹が血を与えたので、再生を始めていた。

「ん・・・私は?」

「目覚めたか、白哉」

「白哉さん!」

恋次に泣きながら抱きつかれて、白哉は戸惑っていた。

「恋次。私はお前を手にかけて・・・・」

「そんなことどうってことないっす!白哉さんが無事でよかった」

「京楽、すまぬ。私は兄を殺そうとした。女神であろうが、体を乗っ取られて操られたのも、私の鍛錬が足らぬからだ。すまぬ、京楽」

「いいよ、もう。白哉クンが無事なら、それでいいんだよ」

「そうだぞ、白哉。次の70階層まで降りよう。そこがラスボスがいる場所だ」

60階層の財宝の間の財宝を全てアイテムポケットに入れて、70階層の深層にまで降りてきた。

そこにいたのは、雷の精霊王だった。

金の髪に金色の瞳の、10歳くらいの少年だった。

「これは・・・僕と浮竹の出番だね」

「気をつけろ。相手は精霊王だ。神に匹敵する」

白哉は、恋次に支えられながら歩いていた。

浮竹の血をもらったが、京楽の雷は絶大で、ダメージが残っていた。

もっと血を与えようとする浮竹を拒み、後は自然治癒に任せた。白哉とて皇族王。濃いヴァンパイアロードの血をもっている。少しずつではあるが、自力で走れるくらいには回復していた。

「やんのかコラ。上等じゃねぇかコラ。いてまうぞーー」

雷の精霊王は、ビリビリと雷を発生させて、浮竹と京楽を睨んだ。

「サンダージャベリン!」

「「ゴッドフェニックス!!」」

「なんやコラ。そんな炎の魔法なんてか効くわけねーだろーコラ!あちゃちゃ!!何すんねん!」

「「カイザーフェニックス」」

「ぴぎゃーーー」

「「エターナルフェニックス」」

「ぎゃああああ。うわああああああああん」

「あ、浮竹さんと京楽さんが、雷の精霊王泣かせた!」

「え」

「わ、泣かないでよ!」

「うわああああああん!俺と契約してくれなきゃ、お前らの頭上にいつも雷落としてやるーー」

「契約すればいいんだろう」

「契約するよ」

浮竹と京楽は、仕方なく雷の精霊王と契約し、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラといった、雷系の精霊とも契約させられた。

「へへーん。これで俺も召還者もちや。いつまでも、炎と氷の精霊王にでかい顔させへんで~」

雷の精霊王は、精霊界に帰ってしまった。

「これ、絶対雷の精霊王が仕組んだことと思うんだけど」

「そうなるだろうな。精霊王は、戦闘に勝った相手に契約をすすめるからな」

財宝の間が開く。

財宝は、1つの赤く輝く大きなルビーだった。

「魂のルビー。聖帝国にいる、神族の皇族の心臓をくり抜いてできる、世界三大秘宝の一つか」

「世界三大秘宝!?うえっ、値段高そう」

「大金貨500万枚はいくだろうな」

「ひえー。流石に値段が値段すぎて、俺いらないっす」

恋次は、あまりの値段にぶんぶんと顔を横に振った。

「大金貨500万枚程度、屋敷の家財を売ればすぐにできる。いらん」

「じゃあ、これは俺がもらっておこう。血の帝国でオークションにかける」

「うわー。きっと、ブラッディ・ネイあたりが高額で競り落としそうだね」

「かもな。それにしても女神オリガか。今度から気をつけよう。白哉も気をつけてくれ」

「気をつけたところで、焼け石に水かもしれぬが、ルキアに他者に憑依されぬよう護符でも作ってもらおう」

「そうしてくれ。恋次君の分も頼む」

「分かった」

こうして一行は、70階層の未踏破Sダンジョンをクリアした。


後日、オークションに例の魂のルビーが出された。

出品者は浮竹ということで、ブラッディ・ネイが大金貨600万枚で競り落としていった。

「やっぱりな。ブラッディ・ネイが競り落とすと思ったんだ」

翌日には、魂のルビーを加工した髪飾りをつけて、ブラッディ・ネイは古城を訪れた。

「見て見て兄様。ボクにぴったりでしょう!」

「はいはい、似合ってる」

「嬉しい兄様、ボクとバカンスの旅に出ない?」

「出ない」

「なんでさー。こんなひげもじゃなんて放置して、ボクの後宮で寵姫たちと遊ぼうよ」

「100万年後にな」

「兄様のけち!でもそこがまたいい・・・ツンデレな兄様、ボクは大好きだよ」

ちゅっと、ほっぺにキスされて、浮竹はハリセンで実の妹の頭をはたいた。

「酷い、兄様!」

「ブラッディ・ネイ?僕の浮竹に手を出すなら、その魂、食っても・・・・」

「ボク、用事を思い出したので帰るね!」

魔神の京楽が本気を出す前に、ブラッディ・ネイは逃げていった。

「京楽、ほっぺにキスくらいで」

「嫌なものは嫌なの。僕の浮竹には誰も触れて欲しくない」

「お前の俺への執着心も、相当なものだな」

「そうだよ。だから、僕は魂を喰らいまくって邪神にならない。君への執着だけで、魔神であり続けれる」

魔神の上位存在は邪神だ。数十万という魂を喰らった魔神が、辿り着く先の道。それが邪神。

邪神は、神々の敵である。

滅ぼされたり、封印された邪神の数は意外と多い。

「女神オリガか・・・・」

女神アルテナの末妹。はたして、またくるのだろうか。

浮竹と京楽の悩みはつきないが、少なくとも暇を持て余して休眠することはないだろう。

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「姉さま」

「なあに、オリガ」

「あの魔神に、無理やり数十万の魂を食わせて、いっそ邪神にしてしまえば?そうすれば、あの魔神は他の神々に滅ぼされる」

「そんなことが簡単にできるのなら、すでにやっているわ」

女神アルテナは、新しく藍染の寵姫の中から選んだ美女の魂を抜き去って、器として使ってる美女の胸を抑えた。

「あの魔神は、魂を喰らうでしょう。しかも、あろうことか神々の魂を!普通の魔神は、神の魂など喰えないというのに!」

忌々しそうに、女神アルテナは美しい美貌を歪めて、頭を掻きむしった。

「あの魔神のせいで、あの始祖に手を出せない。ええい、口惜しい」

「あの魔神は怖いわ」

ぶるぶると、女神オリガが震えた。

「大丈夫よ、オリガ。あなたには上位神である創造神イクシードがいるじゃない」

「イクシードは、この世界に手を出すなら、私を愛することを止めると言っていたわ」

「そんなの、ただの口約束よ。ようは、ばれなければいいのよ。あなた・・・・」

「なんだい、女神アルテナ」

藍染は、ゆっくりと視線をアルテナに向けた。

「このオリガとの間に子をもうけて」

「何を言うの、姉さま!私にはイクシードがいるのよ!嫌よ、嫌よ!始祖魔族如きに汚されるなんて!いやあああああああああ!!!!!!」

オリガの悲鳴は、魔国アルカンシェルにある、藍染の城中に響き渡るのだった。




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