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始祖なる者、ヴァンパイアマスター60

邪神ザナドゥは、藍染の血により意識を侵食されていく。

藍染の呪いは少しずつザナドゥを蝕んでいくか、期限にはまだ日数があった。

藍染が肉便器という奇妙な肉体にザナドゥの子種を注ぐと、数日で子は生まれ落ちた。

邪神ザナドゥさえ、嫌悪しそうなくらい醜い肉の塊が生まれた。

性別はどちから分からなかった。

「ほう、邪神の子といっても、邪神が生まれるわけではないのか。それになんて醜い。この世界に呪われて生まれ落ちたかのようだ」

「あああ・・・・・あたしは、う、美しくなりたい・・・・・」

自我は女性であるらしかった。

数日で立ち上がり、母親である肉便器に縋りついた。

「ああああ!太陽が、太陽が眩しい!!

太陽の光を嫌い、夜の闇の中で動いた。

「こんなもの、使えるかどうか分からんが、一応駒として使ってみるか」

「あああ!う、美しくなりたい」

「美しくなれる方法がある。始祖ヴァンパイアの血を浴びれば、お前は美しくなれる」

「本当に?」

「ああ、本当だ。名を与えていなかったな。醜いからミニクだ。それがお前の名前だ」

「ミニク・・・あたしは醜い。だから、美しくなる」

とぷんと、藍染の影の中にもぐりこんだ。

「なんだ!?」

「あたしは、影と影を移動できる。この力があれば、始祖ヴァンパイアの血を浴びれる?」

「ほう、面白い能力だ。せいぜい、がんばっておいで」

ミニクは、影の中を移動しながら、ガイア王国に向かう。

古城にいくと、そこは廃墟になっていた。

「始祖ヴァンパイア・・・・何処に住んでいるの」

ミニクは、辺りを探したけれど分からなかった。

「きゃあああああああ!!!」

通行人にみられて、ミニクはすぐに建物の影に潜り込んだ。

その日のうちに、アラルの町の冒険者ギルドでモンスターの手配書が回った。

「醜い、肉塊のような生き物だったそうだ。影を中を移動するらしい」

「影ねぇ・・・・」

京楽はどうでもよさそうだった。

「とりあえず、まだ被害でてないんだろう。見つけ次第退治する。それでいいだろう」

「ああ、そうしてくてれ」

ギルドマスターに用があると呼び出されたら、前の古城の廃墟の近くで蠢く醜い肉塊が目撃されたのだという。

藍染の手下の者という可能性が限りなく高かったが、少し探れば近くの古城に引っ越したことくらい分かるだろう。

「それより、明日のガイア王国の女王生誕祭に呼ばれているんだろう。行ってこい」

「何故それを・・・・」

「すっぽかしから、俺に咎がいくようにされてしまった。ギルドマスターとしての命令だ。明日の卯ノ花女王の生誕祭に参加すること」

ギルドマスターは、名誉貴族ということにされていた。

「女王とか貴族とか、そういう柵に捕らわれるのは嫌いなんだがな」

「まぁ、浮竹は卯ノ花に気に入られるみたいだし」

「また、夜の誘いをされるかもしれんぞ」

「それは許さないよ、浮竹!」

京楽が真剣な顔で諭してくるものだから、浮竹は笑った。

「このスタールビーにかけて、お前以外を愛さないと誓う」

「浮竹、愛しているよ!」

ギルドマスターの前で抱きついてくる京楽の頭をハリセンで殴って、浮竹と京楽は明日の女王生誕祭のために、正装するのだが、どの衣装にするのか困るのであった。


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結局、京楽は黒のスーツを。浮竹は極東の衣服の袴と羽織を着ていた。

「君がそういう服着ると思わなかった」

「スーツは窮屈で嫌いだ。この姿は、東洋の正装にもなるそうだ。京楽こそ、もっと着飾ればいいのに」

「いや、僕はこれで十分だよ。浮竹、こっちにおいで」

手招きされると、京楽の傍にいくと京楽は白いレースのリボンをとりだし、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでリボンで結んだ。

「ほら、かわいい」

「俺は女じゃないぞ」

「でも、似合ってるよ」

そこへ、リンリンと来訪者を告げるベルが鳴った。

「はいはい、今行くから。ほら、浮竹も」

迎えの馬車がやってきたのだ。

卯ノ花は浮竹と京楽のことを気に入り、生誕祭に招いたが、こない可能性もあるでギルドマスターに手を回していた。

「わあ、豪華な馬車だねぇ」

二頭引きの馬車は、金細工が美しかった。

先に京楽がのり、エスコートするように浮竹の手を取る。

「さぁ、生誕祭の夜会に行こうか、僕のお姫様」

「誰がお姫様だ」

京楽のほっぺをつねって、浮竹と京楽を乗せた馬車は宮殿に向かって出発した。

「宮殿っていっても、ブラッディ・ネイの宮殿ほど広くないんだね」

馬車の外から、近くなっていく宮殿を見る。

「あれは、後宮が広いからな。寵姫をいつも40人前後は侍らしている」

「うわー、そんな後宮、浮竹はいっちゃだめだよ!」

「頼まれてもいかん」

一度狙われた京楽のために後宮に入ったことはあるが、それ以外だと女同士になって入ったことを除いて、普通の浮竹が後宮に足を伸ばすとこはあれど、ブラッディ・ネイのために後宮に入ったことなど一度もなかった。

後宮に入ったが最後、女になる魔女の秘薬を飲まされ続け、ブラッディ・ネイ好みの外見年齢にさせられて、子を孕めさせられるに違いない。

浮竹が、ブラッディ・ネイを避けるのは、ブラッディ・ネイが家族愛ではなく、伴侶としての愛を浮竹に囁くからであった。

「到着しました、浮竹様、京楽様」

馬車のドアを開けられて、まずが京楽が外にでた。

浮竹に手を差し出す。

浮竹は何も言わず、その手に手を重ねて、京楽にエスコートされて生誕祭の夜会が行われている広間にやってきた。

「まぁ、浮竹さん、京楽さん、きてくれたのですね」

卯ノ花は、とても3人の大きな子供がいるとは思えない、若々しい姿だった。

艶やかに笑みを浮かべる女王のドレスは真紅だった。

首飾りにピジョンブラッドのスタールビーの大きなものがついているのが見えた。

「あら、ペアリングをなさっているのですね。結婚式は挙げられましたか?」

「いや、まだだ。そういうことは、平和になってからしようと思って・・・・」

浮竹が頬を赤らめながらそう言う。

「果報者ですね、京楽さん」

京楽も赤くなりながら、卯ノ花を見る。

「今日は一段とお綺麗だね」

「ありがとうございます。でも、浮竹さんの出で立ちも可憐ですね。男性にしておくのがもったいないです」

「これは京楽が!」

「わたしと、一曲踊ってくださりませんこと?」

卯ノ花が、浮竹に手を差し出す。

無下にもできないので、その手をとって、広間の中心に来て、オーケストラを鳴らす楽器たちの音色に合わせて踊った。

「まぁ、どこの殿方でしょう。可憐で麗しいわ」

貴族の女性たちが、浮竹に視線を集める。

浮竹は夜会には慣れているのが、見事に踊り終わると、卯ノ花の手にキスをして別れた。

わっと、貴族の女性たちに、浮竹が取り囲まれる。

その間をぬって、京楽が浮竹の手に口づけた。

「俺と一曲踊ってくれないかい?」

浮竹がその手をとると、別に意味で貴族の女性たちはきゃあきゃあと騒ぎ始めた。

貴族の男性も、浮竹を見つめていた。

踊り終わり、貴族に囲まれるのを抜け出して、二人はバルコニーまでやってきた。

シャンパンのグラスを手に、中身を飲み干していく。

「夜会は頼んでいただけるでしょうか?」

「卯ノ花・・・びっくりさせないでくれ」

「あら、これは失礼しました。あなたたちが伴侶であると知らない貴族たちが、迷惑をかけましたね」

「いや、別にそれはいい・・・・」

浮竹は、スィーツ置いてある場所に移動して、次々にスィーツを平らげていく。

「京楽さんは、食べないのですか?」

「いや、僕もある態度食べたから。スィーツに関しては、浮竹の胃はブラックホールなんだよね」

「あら、まぁ。持って帰れるように、手配しましょうか?」

「え、いいの?でも貴族って普通持って帰らないんじゃ」

「あななたちは貴族ではないでしょう?まぁこの国では平民ということになっていますが、血の帝国の皇族でしょう」

「それはそうなんだけど・・・・浮竹、持って帰れると知ったら、大量に持ち帰るよ?」

「別に、構いません」

卯ノ花は、あまり食べられていないスィーツを持ち帰れるように手配してくれた。

アイスなどは溶けるので、その場で食べた。

「これはおみやけどいうことで。ではまた、遊びにきてくださいね」

卯ノ花の微笑みは、あったかい陽だまりのようで、浮竹も京楽もほわんとなった。

「母上!この方たちが、例のヴァンパイアの?」

「ジエ、失礼のないように。紹介しおくれました王太子のジエルド・ルドワール・レ・ガイアです」

「ジエルドと申します。お気軽にジエとお呼びください」

卯ノ花は3人の子が出来が悪いと言っていたが、少なくともこの皇太子のジエルドは普通に見えた。

「浮竹さん、ああ麗しい。どうか、僕と一晩の甘い夜を過ごしませんか」

実の母である卯ノ花と恋人でる京楽を目の前に、そんなことを言いだした。

「酷いわ、ジエ様!今日の夜はわたくしと過ごしてくれる約束だったはず」

貴族の少女が、ジエルドの手を取った。

「ああ、そうだった。君と約束をしていたね。でも、新しい麗し人を見つけたんだ。今日は3Pでどうだろうか」

「あら、それも悪くはないわね」

「どうしてそこに俺の数が入っている!このあほ皇太子が!」

見事な浮竹のアッパーを受けて、ジエルドは床に沈んだ。

「きゃああ、ジエ様!」

「悪いのはジエですよ。反省なさい。すみません、浮竹さん京楽さん。私のバカ息子どもは性欲が強くて、許嫁のいる相手にも手を出してしまうのです」

「そうかい・・・・・・」

「帰るぞ、京楽!」

スィーツのお土産を全部アイテムポケットに入れて、怒った浮竹はそのまま京楽と一緒に帰ってしまった。

帰りも馬車だったが、馬車が急に立ち止まって、浮竹と京楽は前につんのめった。

「何が起きた!?」

「何か、影の中に何かがいるんです!!」

御者の男性は、怖がっていた。

馬も怖がって、蹄で地面の影を蹴っていた。

「これは・・・・フレアロンド!」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

青い火花が生まれていき、影に向かって攻撃する。

「熱いいいいい!!あたしは、熱いの嫌い、ひいいい」

出てきたのは、醜悪な肉の塊だった。

生きているのだと認識はできるが、変な匂いもして、生理的に受け付けれなかった。

「始祖ヴァンパイアの血を浴びればぁ、あたしは美しくなるの。そう藍染様がおしゃったのだから!」

「こんな肉の塊が今回の敵か?」

「すごい醜いね。女の子の言葉を使うから、女なのかな?」

肉塊は、裸だった。

どこもうねっていて、女の特徴らしいものは見えなかったし、男にも見えなかった。

ただうねるだけの肉塊だった。

どうやってしゃべっているのかも、分からなかった。

「始祖ヴァンパイアぁぁあ。血をよこせえぇぇぇぇ」

浮竹は、気まぐれをおこしてミニクに数滴の血を滴らせた。

「あああ、始祖ヴァンパイアの血ぃ!これで、ミニクは醜いじゃない。美しいから、名前はウツクよ!」

何分たっても、肉塊は肉塊のままだった。

「嘘おおおお!なんにも起きない、どうして!!」

ミニクは、ねばねばした液体をどこからか吐き出した。

浮竹と京楽は避けるが、馬車の御者と馬がそのねばねばした液体をかけられて、シューシューと肉が腐っていき、骨になった。

「浮竹、こいつ見た目もやばいけど、能力もやばいよ!」

「攻撃する暇を与えず、攻めるしかないな!エターナルフェニックス!!」

「サンダーボルテックス!」

「いやあああ!ぎゃあああ、熱い、熱い!!」

その巨体を焦げさせて、燃やされて、ミニクは影に沈んだ。

「どこからくる?」

「京楽、後ろだ!」

ねばねばした液体が、さっきまえ京楽のいた空間の地面を腐らせていた。

「ふふふ、影を、利用すれば、あなたたちなんて倒せる」

「こいつ、影を利用するつもりだ」

「影がなくなればいいんだな。サンシャイン!」

かっと、疑似太陽が浮かびあがる。

それはちょうど浮竹と京楽の頭上に輝き、影がなくなった。

「いやああああ、太陽の光は、光は嫌い!!」

失われた影から、ミニクが飛び出してきた。

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

「いやああ、寒い・・・さむい・・・・」

ミニクは完全に凍り付いた。

生命活動の停止を確認して、炎の精霊フェニックスではなく、イフリートを呼んだ。

「イフリート、あれを灰にしてくれ」

燃え上がる紅蓮の乙女は、頷いて氷を溶かしていき、ミニクを灰にかえた。

あんな醜いものを、もう一度この世界で違う何かとして生きさせるのがいやだったから、フェニックスではなくイフリートを呼んだ。

「主・・・完了しました」

ミニクは、完全な灰となった。

「分かった、戻ってくれイフリート」

イフリートは、浮竹の胸に吸い込まれていった。

「藍染にしては、えらく醜い化け物をよこしてきたもんだね」

「おまけに、馬と御者が死んでしまった。卯ノ花に詫びをいれないといけないな」

馬車も、腐り、ドロドロだった。

普通黄金は腐らないのに、黄金も腐っていた。

「これが、普通の意思をもって攻撃してきたら厄介だった」

「そうだね。黄金まで腐らせる液体なんて、聞いたことがないよ」

「名前は、醜いからミニクって名前だったんだろう。藍染らしい名づけ方だ」

「少し、可愛そうだね」

京楽が、灰となったミニクを見下ろす。

「藍染の手中で生まれたのが運の尽きだ」

「うん。とりあえずどうする?古城まで時間かかりそうだけど」

「ヴァンパイアの翼で飛んで帰ろう。あとは、式で馬車がだめになったことと、馬と業者を死なせてしまったことも報告しよう」

「ああ、そういえば、影に潜むモンスターの退治依頼があったよね。あれって、さっきの子じゃないの?」

「そうだな。まぁ、今日は遅い。明日、報告に行こう」

その日は風呂に入り、そのまま寝た。

翌日になって、浮竹と京楽は冒険者ギルドにいき、モンスター退治をしたと報告して、大金貨500枚をもらった。

古城に戻ると、式が帰ってきていた。

馬と馬車はいいが、御者の死には驚いたようで、王宮で追悼式が行われることとなり、浮竹と京楽も、喪服を着て参加した。

「卯ノ花すまない。俺たちの戦いに巻き込んでしまった」

「人の死はいつか訪れるもの。今は、黙祷してやってください」

皆で黙祷した。

身寄りはなかったらしく、王家が管理する墓場の片隅に墓が建てられることになった。

「おお、浮竹殿。喪服を着ていても美しい!この僕と、一晩の熱い夜を!!」

「浮竹は僕のものだよ!」

「では京楽さん、あなたも混ぜて3Pで!」

王太子のジエルドに常識は通用しないようで、京楽が怒ってジエルドの股間を蹴りあげた。

「ああん、僕の愛しいたまたまが」

「君には、これをあげよう」

京楽は、浮竹が悪戯で作ったモレ草の薬をジエルドに渡した。

「これは精強剤だ。飲めば効果はばつぐん」

「おお、それはすぐに飲まねば!」

ジエルドは、モレ草の薬をその場で飲んだ。

「のあああああああ!!漏れるうううううう!!!」

ジエルドはトイレにかけこみ、それから3時間は戻ってこなかった。

「京楽、さっき飲ませたのはモレ草の・・・」

「だって、浮竹に手を出そうとしたんだよ」

「効果は薄めてあるだろうな?原液を使うと、人なら死ぬことがる」

「その辺は大丈夫。3日もすれば効果は切れるよ。原液を20倍に薄めた薬を盛ったから」

「なら、いいんだ」

ちなみに、その会話は卯ノ花に筒抜けであった。

「そうですか、王太子のジエルドに、強力な下剤を・・・・・」

「浮竹、逃げよう」

「京楽、足が竦んで・・・・・」

「あら、私は褒めているのですよ?あのくそ息子に下剤をもるなんて、やりますね」

にーっこりと微笑む卯ノ花が怖くて、二人は王宮を去り、古城に戻るのだった。


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「ミニクは死んだか。死んだわりには、ガイア王国で懸賞金がかかるモンスターになるなんて、醜いわりには頑張ったものだ」

「次には、俺にいけというのか」

邪神ザナドゥは、やる気はあまりなさそうだった。

「そうだよ。嫌だと言っても、呪いの侵食まであと1週間。このまま呪いで死ぬか、浮竹と京楽を殺すか・・・・・それは君の自由意思に任せよう」

「では、俺もいくとしよう。ミニクが先に待っている。俺もすぐ、そこにいくさ」

「おや、すでに死ぬ覚悟をしているのかい?」

「あの始祖ヴァンパイアと血族の神喰らいの魔神京楽の力は歪(いびつ)だ。上位神の力をもっている。いずれ、お前も滅ぼされるだろう」

藍染は笑った。

「あれらが、上位神の力があるだって?笑わせないでくれるか」

「好きなようにとるといい。私は、滅ぼされにいく。安寧の死が欲しい・・・・・」

「私が世界で唯一無二の絶対神になるのだ!はははは!!」

邪神ザナドゥは死を見据えて。

藍染は欲望だけを輝かせて。

それぞれ、前へ前へと進んでいくのであった。

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