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当たって砕けろ

「当たって砕けろ、だ!」

恋次に思い切りぶつかって、砕けないけどルキアは尻もちをついた。

「おいおい、ルキア何してんだよ」

「当たって砕けろを実践していたのだ」

「はぁ?」

「何事も、当たって砕けろというだろう。だから恋次に当たって、この身は砕けなかったが、砕けたつもりなのだ」

「また、何か変な本でも読んだか?」

ルキアが持っていた本をとりあげる。

彼氏ができる100の方法という本だった。

栞が挟まれていたページをみる。当たって砕けろ作戦。好きな相手とぶつかって、交流を深めましょう。

「ルキア、あのなぁ。こんなことしなくても、俺はお前のこと好きだし大切だぞ?」

「なななななな」

真っ赤になるルキア。

自分からしかけておいて、いざそういう態度をとられると極度に緊張した。

「このゴミ虫め!貴様など、茶わんにいれて蒸し殺してやる!」

もはや、自分でも何を言っているのかわかっていない。

「ゴミ虫・・・・どんな虫だ」

「ち、違うのだ!別に恋次がゴミ虫のようであるからとかそういうわけではなく!」

「ルキア、とりあず落ち着け」

そう言われて、ルキアは深呼吸をするが、ラマーズ法になっていた。

「いや、それ妊婦の呼吸だから。普通に息を深く吸ってはいてを何度か繰り返してみろ」

何度か深呼吸を繰り替えずと、ドクドクと打っていた心臓の鼓動が和らいだ。

恋次が、しゃがみこんで視線を合わせてくる。

「俺はな、ルキア、お前が好きだし大事だ」

「そ、そんなこと知っておる!」

「へぇ。じゃあ、この本はなんだろうな?」

「あ、返せ!現世で買ったのだ」

ルキアもかわいいところがあるなぁと、恋次は思った。そうでなくてもかわいいのに、余計にかわいく見えてくる。

ルキアを抱き上げた。

「恋次?」

「お前の口から、言ってくれよ。俺をどう思っているのか」

「このたわけが!・・・・・す、す、すきやき!」

ルキアの言葉に、そういえば久しくすき焼きなど食べていないなとい思い出す。

「今日すき焼き食いに行くか」

「す、す、隙がある!」

「がんばれ、ルキア」

「す、す、す・・・・・・好きだ」

か細い声でそうぽつりとつぶやいた。

「上出来」

ルキアを抱き上げたままくるくると回る。

「め、目が回る!」

ルキアは小さく細い。恋次の鍛え上げられた体の3分の2ほどしかないように見える。

くるくる回るのを止めると、恋次はルキアを抱き締めた。

「ずっとずっと好きだったぜ。それくらい、知ってるよな?」

いくら鈍感なルキアとはいえ、恋次の接してくる態度で自分に気があるのではないかとは、思っていたのだ。

でも、確かめようがなかった。

さっき、現世の本の変な方法であったが、確かめれてほっとした。

「恋次・・・私も、ずっと貴様が好きだった・・・」

流魂街の頃から。

朽木家に養子としてもらわれていき、一時は離別した。

でも、また線は交じわった。

ルキアの処刑が決まり、恋次は白哉に牙をむいた。結局は勝てなかったが、自分の上官である白哉にたてつくことほどに、ルキアの処刑を止めたがっていた。

藍染の反乱、ユーハバッハの侵攻。

たくさんのことに傷つき、血まみれになりながらも、二人は戦友として共に戦い、そして打ち勝ってきた。

瀞霊廷の復興も大分進み、もう穏やかな時間が流れるだけだった。

「ルキア。俺と、結婚前提で付き合ってくれ!」

差し出された恋次の手を、ルキアはとっていた。

「本当に、私でいいのか?」

「お前じゃないとだめなんだ。ガキの頃からずっと好きだった。お前を幸せにしたい」

恋次の言葉の一つ一つに赤くなる。

「れん・・・・・」

言葉は、唇で塞がれた。

「んう・・・」

浅く、深く。

そんな経験のないルキアは、目を白黒させていた。

やがて息が苦しくなり、恋次の胸を叩く。

「あ、すまねぇ。初めてだったよな」

恋次は、何度か廓で女を抱いたことがあるので、始めてではなかった。

女の喜ばし方というのを学んだ。

ルキアという好きな存在がいながら、他の女を抱くのは、なんともいえぬ背徳感があった。

「ルキア・・・俺は、今までに何度か廓の女を抱いてきた。それでも、俺を好きでいてくれるか?」

「恋次とて、男。欲求を解消するにはその手の店にいくことも仕方なかろう。それでも、私は恋次が好きだ」

「隊長に、結婚前提でお付き合いしていいですかって、聞かないと・・・・・・」

「兄様は厳しいぞ」

「知ってる」

白哉のことだ。その覚悟はあるのかと、剣を交えてくるかもしれない。

それでも、ルキアのことが好きだ。

ちょっとやそっとのことでは、引くつもりはない。

「ルキア、今日から正式に交際スタートだ」

「う、うむ」

手を握りあった。

普段でもよくあったが、こうして意識して握りあっていると、恥ずかしかった。

「白玉餡蜜が食べたい」

ぽつりとそう呟く。最近食べていない。

「おし、甘味屋までいくか。おごってやるよ」

「本当か!」

「これが俗にいうデートってやつだな」

「ででででデート!?」

ルキアが真っ赤になったりふらふらしらりしていた。

「しっかしろよ、ルキア。デートなんて今後何度でもするんだぞ」

「恋次とデート・・・恋次とデート・・・茶碗で蒸す・・・・・」

ルキアの頭の回路はショート寸前であった。

なんとか甘味屋にいき、白玉餡蜜を食べるとルキアも元気を出した。

「今度、現世にデートにいかぬか」

「現世か。ちょっと手続きがややこしいけど、いいかもな」

「一護の井上に茶虎と石田にも会いたい」

ここ4年ばかり、ほとんど会いにいっていない。

もう彼らは社会人となり、新しい人生を歩み出している。

ルキアも13番隊隊長になった。

やがてルキア恋次と婚礼をあげて、苺花という女児を授かるが、それはまた別のお話である。

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