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尻に火がつく

「年末年始だー。休みだー!ごろごろするぞおおおお!」

「俺は実家に帰りますけど、ちゃんと朝に起きてくださいよ。京楽隊長、あとは頼みます」

海燕はそういって、雨乾堂から出て行ってしまった。

「京楽、一緒にだらだらしよう」

浮竹に誘われて、ついつい布団に横になってしまった。

浮竹も京楽も、午前中からさっそくだらけ始めた。

「忘れ物・・・ってああ!隊長も京楽隊長も、何午前中から二度寝しようとしてるんですか!」

うるさい副官にばれても、浮竹は舌打ちした。

「今、舌打ちしましたね!?布団はたたんでください!」

海燕が荷物を置いて、浮竹と京楽が寝転がっていた布団を片付けてしまった。

「寒い!」

ぬくぬくの布団がなくなって。火鉢にあたった。

「毛布くらい、いいよね?」

京楽がそう言って、薄い毛布で浮竹を包み込んだ。

「まぁ、今日の最高気温は7度だし・・・毛布を被るくらいは、許しましょう。いいですか、俺がいってもまたごろごろしないでくださいね!?」

「おう、早くいってこい」

海燕が完全にいなくなったのを見守ってから、また布団をしきだす二人。

布団の中でぬくぬくしながら、軽く襲ってきた睡魔に身を任せた。

気づくと、昼餉の時間を過ぎていた。午後の2時だった。

「京楽、おい京楽」

「ん~七緒ちゃん、あと1時間・・・・」

「こら、京楽、何が七緒ちゃんだ!」

ぽかりと頭を殴られて、京楽は目覚める。

「え、あれ・・・ああ、僕も寝ちゃってたのか」

「俺は朝飯も食っていないんだ。流石に腹が減ってきた。13番隊の食堂にいこう」

京楽も昼飯がまだなので、一緒に食堂にいった。

「あ、隊長お疲れさまです」

ルキアがいた。

「朽木じゃないか。どうだ、隊には馴染んできたか?」

「はい。海燕殿が、直々に稽古をつけてくれています」

「そうか。朽木、お前は席官じゃないが実力はあるんだ。頑張ってもっと上をめざそうな」

「はい!」

ルキアは目を輝かせて、去っていった。

「あの子・・・確かルキアちゃんだっけ。朽木隊長の義妹の」

「ああ。白夜の義妹だ。最近隊に入ったんだ・・・・実力は席官クラスなんだが、白哉から席官にしないようにと言われていてな。仲は冷めきってるそうだが、裏ではけっこう朽木のことを思っているらしい、白哉は」

その関係が完全に雪解け水になるのは、藍染の反乱発覚後である。

「朽木隊長も、素直じゃないかねぇ」

二人して、食堂の空いている席に座った。

年末年始の休みを出勤するかわりに、年始あけから休みをもらう者が中心に働いていた。

隊長副隊長も、お盆と年末年始は休みだった。

適当に頼んだ、定食を食べる。

今日はちらし寿司とウナギのかば焼きだった。

「あ、そっちのウナギのほうがでかい」

「はいはい。交換してあげるから」

なんだかんだで昼食をとり、雨乾堂に戻った。

布団でごろごろしながら、思う。

「仕事がないと、暇だなあ」

「まぁ、ないにこしたことないんじゃないの」

「ごろごろするのも、いい加減飽きてきた。花札か将棋か囲碁か・・・・麻雀でもしよう」

「麻雀しようか。何か賭けよう」

「じゃあ、夕食のデザートを賭ける」

「それじゃああ物足りないから、おやつにとっておいたおはぎも賭けよう」

キランと、浮竹の目が光った。

麻雀は、本気を出した浮竹の圧勝だった。

「勝ったぞ。おはぎをくれ」

「仕方ないねぇ」

戸棚のなに隠してあった、おはぎを浮竹のまえにおくと、1分もしないで食べてしまった。

「ちょ、早くない?」

「3個しかなかったからな」

「それにしても、一瞬じゃないの。当分甘味屋も休みだから、おはぎしばらく買えないよ」

その言葉にショックを受ける浮竹。

「く・・・年末年始の罠がこんなところに・・・・もっと味わって食べればよかった・・・・」

「まぁまぁ。1週間もすれば、甘味屋もまたあくし。なんなら、義骸に入って現世でスイーツでも食べにいくかい?」

「義骸がない。あっても、隊長格が無断で現世にはいけないし、どのみち現世でも店は休みだろう」

「現世では年末年始でもやってる店多いよ」

「本当か」

「義骸は12番隊にいけば、管理してもらってるのがあるから、なんとかなるでしょ」

「先生なんて怖くないぞ・・・そうと決まったら、いざ現世へ!」

12番隊に行き、霊圧封印の刻まれた特殊な義骸に入って、二人は現世にやってきたのだが、現世は世界大戦から復旧が進んでいて、甘味屋も開いていた。

「お、開いてる」

「ほとんとだ。入ってみよう」

店は繁盛してるのか、けっこう人がいた。

「おい、こっちの貨幣通貨、持ってきているだろうな」

「あちゃー。忘れちゃったよ。そうか、現世とは貨幣価値が違うんだった」

店の主人を呼んで、砂金の大きな塊を見せると、上客扱いで2階にあがっていいと言われた。

「砂金とか・・・・抜け目ないないな。いつも持ち歩いているのか?」

「まあ、金がいることもあるだろうから、砂金はどこかに出かける時は持ち歩いているよ」

やがて、おはぎとぜんざいがやってきた。白玉餡蜜はなかったので、他に羊羹や団子も頼んだ。

「結構美味しいな」

「代金は砂金の塊だから、きっといっぱいおつりが出そうなくらいを払うことになるから、いっぱ食べてって」

浮竹は、4人前食べた。

京楽もぜんざいとおはぎを食べた。

砂金の大きな粒を店主にあげて、尸魂界に帰還する。

山本総隊長が待っていた。

「こりゃ、春水、十四郎!年末年始だからと、ばれないとでも思っておったか!」

「うわああ、山じいだ。逃げろ!」

「先生、すみません」

脱兎の如く逃げ出した二人の尻に、火をつけた。

「あちちちち」

「あちゃーー」

そう叫んで、尻の火を消しながら雨乾堂に瞬歩で逃げていく浮竹と京楽を、山本総隊長は追わなかった。

「全く・・・・困った奴らじゃ」

山本総隊長は、長い溜息をついた。



「山じい、何も火をつけなくてもいいのに」

「服の尻の部分が焦げてない。どうなってるんだろう」

皮膚は、見事に小さいが火傷を負っていた。

それも軽度のもので、山本総隊長が本気で怒ってないのは分かっていた。

「今度から、現世にいきたいときは、やっぱり山じいの許可をとってからにしようか」

「そうだな」

多分、そう簡単に許可はもらえないだろうが。

その後も、山本総隊長に許可を願い出て、通らなかったら勝手に現世にいってしまうので、山本総隊長は渋い顔をしながらも、二人の現世行を承諾するようになるのであった。







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