恋する瞬間 魂よりも深い場所で
「ねぇ、一護」
たつきの問いかけに、ぶっきらぼうに答える一護。
「なんだよ」
「あんたと朽木さん、できてるでしょ」
ぶーーーーー。
飲みかけだったパックジュースの中身を、一護は吹き出していた。
屋上で、一護、たつき、水色、啓吾と、友人であるメンバーで昼食をとっていた。
いつもならその場にたつきはいないで、代わりにルキアがいたのだが、ルキアは義骸の調子が悪いとかで、今日は浦原商店にいっており、休みだった。
「な、どっからそんな答えが出てくるんだよ!」
「だって、あんた織姫振ったじゃない!好きな人がいるからって!」
井上から、先週告白された。
今は高校3年生。高校時代の終わりまで、あと5か月というところだろうか。
ルキアは、一護の我儘で、総隊長である京楽に、高校卒業までは現世にさせてほしいという我儘を受け入れてくれて、高校生として生きていた。
ルキアはそれに感謝していた。
同じ仲間として戦った戦友たちと、あるいは高校でできた友人たちと過ごす時間がまたできて、それを一護に感謝をしていた。
「またこうして、貴様と一緒に高校に通えるなど思ってもいなかった。貴様には本当に感謝しているのだ」
そう言っていたルキアの言葉を思い出す。
「俺とルキアは、そんなんじゃねーよ。もっと深い・・・なんつーか、魂が繋がってるみたいな・・・・・・」
「おおおお!それは、それほど朽木さんのことを思っているって考えていいんだね!」
「おい、水色」
「いやぁ、一護も大人になったねぇ。やっと女性のよさが分かるようになったんだね」
「ばか、そんなんじゃねぇ!だから、ルキアとはできてねぇって!」
一護がむきになればなるほど、水色はにんまりと笑い、たつきはにやにやして、啓吾は一人取り残されたと涙を流していた。
「なんていうか、ルキアは特別なんだ。好きとか嫌いとかじゃなしに・・・・・」
「織姫を振るほどに、朽木さんのこと好きなんでしょ!だったら、当たって砕けなよ!粉々になったら、回収してボンドでくっつけてあげるから!」
たつきの強い言葉に、一護の心に葛藤が生まれる、
ルキアのことが好きなのだろうか?
確かにルキアは特別だ。ルキアのお陰で死神代行になれて、ルキアのお陰で強くなれて、ルキアのお陰で守る力を手に入れて、ルキアのお陰で守る者たちができた。
全部、ルキアのお陰。
ルキアがいなければ、今頃くすぶって、なんの変化のもない高校生活を送って、それはそれで平和であるだろうが、今の一護から考えてみればそんな生活はありえない。
ルキア。
ルキア、ルキア、ルキア。
誰よりも特別で-------------。
好きとか嫌いとか、考えたことがなかった。
ルキアを、好きなのだろうか。
考え込んで、一護は唸った。
「んー。俺がルキアを好きねぇ・・・・・」
「織姫振ったんでしょ!他に誰が好きっていうのさ!」
確かに、井上を振った。
他に好きな人がいるからと。
その時、心に思い描いた人物は・・・・・ルキア、だった。
「あーもう、たつきうるせぇ!」
「なによ!織姫を振るあんたが悪いんだから!織姫、ずっと泣いてたんだから!」
「井上には、悪いことをしたと思ってる」
「じゃあ、付き合ってあげなよ」
たつきの言葉に、一護が首を横に振る。
「たつき、お前は好きでもない相手に告白されて、それを受け入れるか?」
「受け入れるわけないじゃん」
「それと同じだ。井上のことは好きじゃねぇ。大切な仲間で友人だとは思ってる。でも、それ以上でもそれ以下でもない」
「あーあ。織姫のやつ、こんな一護のどこがいいんだか」
たつきは大きなため息をついた。
「そりゃこっちの台詞だ。俺の何処がいいんだか」
「ま、あんたは見かけだけならいいし、優しいし、面倒見いいし、頼り甲斐あるし・・・・織姫が、好きになる気もち、分からなくもないけど」
「買いかぶりすぎだろ」
「あ、言っててあたしもそう思った」
「あーあ。結局朽木さんとはなんでもないのかー。つまんないなー」
「おい、水色」
茶々をいれてきた水色は、一人会話の中に入れず、涙を流している啓吾を見た。
「ふ、男女恋愛なんて、どうせ俺には縁がないんだ」
「啓吾、しっかりしろよ」
「一護ーーーーー!朽木さんを俺にくれーーーー!」
ばきっ。
音が立つほどに、啓吾を殴った。
「ルキアはものじゃねぇ」
ルキア。
今頃、どうしているだろう。
浦原商店から帰って、黒崎家に帰宅しているだろうか。
チャイムがなり、急いで残りのパンを食べて、一護たちは午後の授業に出た。
授業が終わり、校門のところでルキアが待っていた。
「一護」
「どうしたんだ、ルキア」
「その、義骸の調子が悪くてな・・・・すまぬが、一度、尸魂界に戻ろうと思うのだ」
「急だな。いつ戻ってこれる?」
「多分、来週の水曜には」
「そっか。戻るのはいつだ?」
「明日の昼過ぎだ」
明日は休日だ。
ルキアを見送ってやろうと思った。
「明日か・・・そうだ、俺も尸魂界にちょっと用事があるから、俺もついてく」
「一護?」
「京楽さんに、ルキアの高校生活を許してくれたこと、お礼を直接言いたいんだ」
「そうか。ならば、明日共に尸魂界に戻ろう」
「ああ」
その日の夜も、一護はルキアと同じベッドで眠った。
付き合っているわけでもないのに、抱き締めあいながら寝ていた。その距離の近さに、別段意味があるわけではなかったが、これで付き合っていないというには無理があると、たつきや水色、啓吾たちに見られたら、言われるだろう。
「ルキア、起きろ。朝だぞ」
「ん・・・・もう少し、寝る」
「おい、ルキア」
ベッドの上でもぞもぞしたルキアは、一護の服の裾をしっかりと掴んでいた。
「仕方ねーな」
一護も、また横になった。
1時間ほどが経ち、ルキアが完全に覚醒する。
「ん・・・一護?」
「俺の服の端、ずっと握ったままだったから、俺も二度寝しちまった」
「す、すまぬ!無理やり起こしてくれてよかったのに」
「義骸の調子が悪いんだろう?無理させられねぇよ」
「義骸はまぁ・・・・いや、なんでもない」
ルキアと一護は起きて、少し遅めの朝食をとった。とりとめのない会話をして、昼食をとり、昼過ぎになった。
「さて、いくか」
「ああ」
黒崎家から出ると、穿界門が目の前に現れる。
それをくぐって、一護とルキアは尸魂界に向かった。
尸魂界は、少しずつ復旧が進んでいるが、まだ戦火の爪痕が大きく残っており、仮に建てられた一番隊の隊舎の前で、ルキアと別れた。
「じゃあ、俺は、京楽さんとこ行ってくるから」
「ああ、私は朽木家に戻る。それから、13番隊の様子を見てから、少し溜まっているだろう仕事を片付ける。来週の水曜には、現世に戻るから」
「ああ、しばしの別れだな。じゃあ、またな、ルキア!」
「一護、京楽総隊長に、私も感謝していると伝えておいてくれ」
「そんなの、自分で言えばいいじゃないか」
「京楽総隊長はお忙しいのだ」
そんなに忙しいのに、会いにいって大丈夫だろうかと一護は思ったが、ルキアが背中を押してくれた。
「京楽総隊長は、尸魂界を救ってくれた恩人と会話をする時間くらい作れるさ」
「ああ、そうだな」
ルキアと、別れる。
また、来週の水曜に現世で会うことになるが。
一護は、知らなかった。
ルキアの義骸の調子が悪いのではなく、ルキアに断れぬ見合いが持ち込まれていることを。
たつきの問いかけに、ぶっきらぼうに答える一護。
「なんだよ」
「あんたと朽木さん、できてるでしょ」
ぶーーーーー。
飲みかけだったパックジュースの中身を、一護は吹き出していた。
屋上で、一護、たつき、水色、啓吾と、友人であるメンバーで昼食をとっていた。
いつもならその場にたつきはいないで、代わりにルキアがいたのだが、ルキアは義骸の調子が悪いとかで、今日は浦原商店にいっており、休みだった。
「な、どっからそんな答えが出てくるんだよ!」
「だって、あんた織姫振ったじゃない!好きな人がいるからって!」
井上から、先週告白された。
今は高校3年生。高校時代の終わりまで、あと5か月というところだろうか。
ルキアは、一護の我儘で、総隊長である京楽に、高校卒業までは現世にさせてほしいという我儘を受け入れてくれて、高校生として生きていた。
ルキアはそれに感謝していた。
同じ仲間として戦った戦友たちと、あるいは高校でできた友人たちと過ごす時間がまたできて、それを一護に感謝をしていた。
「またこうして、貴様と一緒に高校に通えるなど思ってもいなかった。貴様には本当に感謝しているのだ」
そう言っていたルキアの言葉を思い出す。
「俺とルキアは、そんなんじゃねーよ。もっと深い・・・なんつーか、魂が繋がってるみたいな・・・・・・」
「おおおお!それは、それほど朽木さんのことを思っているって考えていいんだね!」
「おい、水色」
「いやぁ、一護も大人になったねぇ。やっと女性のよさが分かるようになったんだね」
「ばか、そんなんじゃねぇ!だから、ルキアとはできてねぇって!」
一護がむきになればなるほど、水色はにんまりと笑い、たつきはにやにやして、啓吾は一人取り残されたと涙を流していた。
「なんていうか、ルキアは特別なんだ。好きとか嫌いとかじゃなしに・・・・・」
「織姫を振るほどに、朽木さんのこと好きなんでしょ!だったら、当たって砕けなよ!粉々になったら、回収してボンドでくっつけてあげるから!」
たつきの強い言葉に、一護の心に葛藤が生まれる、
ルキアのことが好きなのだろうか?
確かにルキアは特別だ。ルキアのお陰で死神代行になれて、ルキアのお陰で強くなれて、ルキアのお陰で守る力を手に入れて、ルキアのお陰で守る者たちができた。
全部、ルキアのお陰。
ルキアがいなければ、今頃くすぶって、なんの変化のもない高校生活を送って、それはそれで平和であるだろうが、今の一護から考えてみればそんな生活はありえない。
ルキア。
ルキア、ルキア、ルキア。
誰よりも特別で-------------。
好きとか嫌いとか、考えたことがなかった。
ルキアを、好きなのだろうか。
考え込んで、一護は唸った。
「んー。俺がルキアを好きねぇ・・・・・」
「織姫振ったんでしょ!他に誰が好きっていうのさ!」
確かに、井上を振った。
他に好きな人がいるからと。
その時、心に思い描いた人物は・・・・・ルキア、だった。
「あーもう、たつきうるせぇ!」
「なによ!織姫を振るあんたが悪いんだから!織姫、ずっと泣いてたんだから!」
「井上には、悪いことをしたと思ってる」
「じゃあ、付き合ってあげなよ」
たつきの言葉に、一護が首を横に振る。
「たつき、お前は好きでもない相手に告白されて、それを受け入れるか?」
「受け入れるわけないじゃん」
「それと同じだ。井上のことは好きじゃねぇ。大切な仲間で友人だとは思ってる。でも、それ以上でもそれ以下でもない」
「あーあ。織姫のやつ、こんな一護のどこがいいんだか」
たつきは大きなため息をついた。
「そりゃこっちの台詞だ。俺の何処がいいんだか」
「ま、あんたは見かけだけならいいし、優しいし、面倒見いいし、頼り甲斐あるし・・・・織姫が、好きになる気もち、分からなくもないけど」
「買いかぶりすぎだろ」
「あ、言っててあたしもそう思った」
「あーあ。結局朽木さんとはなんでもないのかー。つまんないなー」
「おい、水色」
茶々をいれてきた水色は、一人会話の中に入れず、涙を流している啓吾を見た。
「ふ、男女恋愛なんて、どうせ俺には縁がないんだ」
「啓吾、しっかりしろよ」
「一護ーーーーー!朽木さんを俺にくれーーーー!」
ばきっ。
音が立つほどに、啓吾を殴った。
「ルキアはものじゃねぇ」
ルキア。
今頃、どうしているだろう。
浦原商店から帰って、黒崎家に帰宅しているだろうか。
チャイムがなり、急いで残りのパンを食べて、一護たちは午後の授業に出た。
授業が終わり、校門のところでルキアが待っていた。
「一護」
「どうしたんだ、ルキア」
「その、義骸の調子が悪くてな・・・・すまぬが、一度、尸魂界に戻ろうと思うのだ」
「急だな。いつ戻ってこれる?」
「多分、来週の水曜には」
「そっか。戻るのはいつだ?」
「明日の昼過ぎだ」
明日は休日だ。
ルキアを見送ってやろうと思った。
「明日か・・・そうだ、俺も尸魂界にちょっと用事があるから、俺もついてく」
「一護?」
「京楽さんに、ルキアの高校生活を許してくれたこと、お礼を直接言いたいんだ」
「そうか。ならば、明日共に尸魂界に戻ろう」
「ああ」
その日の夜も、一護はルキアと同じベッドで眠った。
付き合っているわけでもないのに、抱き締めあいながら寝ていた。その距離の近さに、別段意味があるわけではなかったが、これで付き合っていないというには無理があると、たつきや水色、啓吾たちに見られたら、言われるだろう。
「ルキア、起きろ。朝だぞ」
「ん・・・・もう少し、寝る」
「おい、ルキア」
ベッドの上でもぞもぞしたルキアは、一護の服の裾をしっかりと掴んでいた。
「仕方ねーな」
一護も、また横になった。
1時間ほどが経ち、ルキアが完全に覚醒する。
「ん・・・一護?」
「俺の服の端、ずっと握ったままだったから、俺も二度寝しちまった」
「す、すまぬ!無理やり起こしてくれてよかったのに」
「義骸の調子が悪いんだろう?無理させられねぇよ」
「義骸はまぁ・・・・いや、なんでもない」
ルキアと一護は起きて、少し遅めの朝食をとった。とりとめのない会話をして、昼食をとり、昼過ぎになった。
「さて、いくか」
「ああ」
黒崎家から出ると、穿界門が目の前に現れる。
それをくぐって、一護とルキアは尸魂界に向かった。
尸魂界は、少しずつ復旧が進んでいるが、まだ戦火の爪痕が大きく残っており、仮に建てられた一番隊の隊舎の前で、ルキアと別れた。
「じゃあ、俺は、京楽さんとこ行ってくるから」
「ああ、私は朽木家に戻る。それから、13番隊の様子を見てから、少し溜まっているだろう仕事を片付ける。来週の水曜には、現世に戻るから」
「ああ、しばしの別れだな。じゃあ、またな、ルキア!」
「一護、京楽総隊長に、私も感謝していると伝えておいてくれ」
「そんなの、自分で言えばいいじゃないか」
「京楽総隊長はお忙しいのだ」
そんなに忙しいのに、会いにいって大丈夫だろうかと一護は思ったが、ルキアが背中を押してくれた。
「京楽総隊長は、尸魂界を救ってくれた恩人と会話をする時間くらい作れるさ」
「ああ、そうだな」
ルキアと、別れる。
また、来週の水曜に現世で会うことになるが。
一護は、知らなかった。
ルキアの義骸の調子が悪いのではなく、ルキアに断れぬ見合いが持ち込まれていることを。
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