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恋する瞬間 恋と気づいた時

ルキアは、水曜に現世に戻ってきた。

「義骸の具合、どうだった?」

「あ、ああ。それはもうよいのだ」

「そっか。京楽さんの話を聞いていてさ。京楽さんは浮竹さんの大切な相手で。それを考えていたら、俺の大切な相手はルキアなんだなって思ったんだ」

ルキアは、顔を真っ赤にした。

「たわけ!なんだそれは!」

「いや、なんか魂のレベルで繋がりあってるっつーか。とにかく、ルキアは俺にとって「特別」なんだなーって思って・・・・・・」

「たわけが・・・・」

ルキアは、平静に戻っていた。

ルキアにとっても、一護は特別だ。

だが、特別すぎて、好きとか嫌いとか、そんな感情が沸いてこなかった。

「そのな・・・・見合いを、したのだ」

「え・・・・」

「桐蔭那由他という方で・・・13番隊を立て直すのに尽力を尽くしてくださった方で・・・」

「ルキア、そいつと結婚するのか?」

「このままいけば、そうなるだろうな。貴様には井上がいることだし、私は大人しく貴族としての責務を果たすよ」

ルキアの言葉に、一護が叫ぶ。

「井上とはなんでもない!告白されたけど、断った!」

「え・・・・・・」

今度は、ルキアが困惑する番だった。

「だって、貴様は井上のことを好いて・・・・・・」

「ああ、仲間として大切だ。好きだ。でも恋愛感情じゃない。恋愛感情で誰を好きだって聞かれると・・・・多分、ルキアだ」

ぶわりと。

ルキアの大きな紫紺の瞳から、涙が零れた。

「貴様は・・・・こんな私を、好きだというのか?」

「ああ。大好きだ。きっと、これは恋だ。今、恋してる瞬間なんだ」

「貴様は、わけのわからぬことを・・・・・」

「見合いなんてやめろ。俺を選べ!」

「私は・・・・・」

ルキアは逡巡する。

でも、魂まで繋がった仲なのだ。

答えは、初めから決まっていたのだ。

「貴様が、好きだ・・・・・・」

「ルキア。俺も、お前が好きだ・・・・・」

影が重なる。

初めて、異性とキスをした。

ルキアの細い体を抱き締めて、一護は思った。

ルキアを大切にしたい。ずっと一緒にいたい。でも、高校の残りの生活は5か月だ。

「なぁ。付き合おう、俺ら」

「う、うむ・・・・・・」

ルキアは真っ赤になりながら、頷いた。

「それでな。高校を卒業したら、定期的に俺のところに来い。好きなら、それくらいできるだろう?」

「貴様は、無理難題を、軽くおしつけるな・・・・」

「ルキアが会いにこいななら、俺が定期的に尸魂界に行く」

一護は、本当に尸魂界に出向くつもりだった。

「貴様ならしかねぬな。分かった、なんとか月に数回は会えるように、上とかけあってみよう」

「それに、会えないときはメールとかで、連絡取り合うことも今じゃできるし・・・空白の17カ月を思えば、毎日会えないことくらい、なんでもないさ」

「そうだな」

告白しあって、心が軽くなった。

「桐蔭殿には、悪いが見合いはなかったことにしてもらおう」

「お前が見合いしてそのまま結婚するってんなら、俺はお前をさらっていく」

一護は、本気だった。

尸魂界からルキアをさらって、現世も捨てて、虚圏にでも行こうとするだろう。

「帰ってきてあれだが・・・話は早いほうがよい。今日、もう一度尸魂界に戻り、桐蔭殿と話しをつけてくる」

「俺も一緒に行く」

「しかし・・・・・」

「俺の大切な恋人だ。見合いを断るのには俺の責任もある。俺もちゃんとその人と話をしたい」

一護の決意に、ルキアは止めることができないと判断して、尸魂界から戻ってきたばかりなのに、また尸魂界に行くために、穿界門を開けてもらった。

先週のように、一護と一緒に尸魂界に行く。

でも、行く場所は同じだ。

まず朽木家に行き、白哉にルキアは自分の心を正直に告げた。

白哉は許してくれた。一護と付き合うことも。

「黒崎一護・・・・兄は、ルキアの「特別」であることは知っていた。恋愛感情に至っていなくとも、いずれそうなるだろうと思っていた」

「白哉・・・・・・」

「妹を、幸せにしてやってくれ」

「ああ、約束する。俺は、ルキアのために生きる」

少し遠いが、桐蔭家まで一護とルキアと白哉は訪れた。

「どうしたのですか、ルキアさん」

那由他は、一護を見て、ああと納得した。

「愛する人がいることに気づいたのですね。私との縁談は、なかったことで、大丈夫です」

「自分勝手ですみません、那由他殿・・・・・」

「よいのです。幸せに、なってくださいね」

暖かな手で頭を撫でられて、ルキアは嗚咽を漏らした。

「すっげー紳士・・・・・」

一護も、ルキアの相手に選ばれるわけだと、納得してしまった。

「どうか、永久(とこしえ)の愛が、あなたたちにあらんことを」

「ありがとうございます、那由他殿・・・・・」

「ありがとう」

一護も、礼を言っていた。

「兄には、迷惑をかけた」

白哉が頭を下げる。それに驚いて、那由他は慌てた。

「そんな、白哉殿、顔をあげてください。ただ、縁がなかった。それだけのことです。桐蔭家は、これからも13番隊を支持します」

はらはらと、ルキアは泣きっぱなしだった。

まるで自分が悪いような錯覚を覚えて、一護はルキアを抱き寄せた。

「幸せになるから。ありがとう、那由他さん」

ルキアと一護と白哉は、朽木家にまで戻ってきた。

「今日はもう遅い。兄は、今日は朽木家に泊まっていけ」

「え、いいのか白哉」

そんな許しが出るなんて思っていなかったので、一護は驚いた。

「兄は、いずれ義弟になるかもしれない者。放りだすわけにもいくまい」

まだ、付き合うことを決めたばかりなのに、話は先へ先へと進んでしまっていて、ルキアも一護も、なんともいえない顔をしていた。





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