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愛の果ての

愛の果てには何があるのか。

そんなことを、ふいに思う。

「おい、ルキア、ルキア」

「え、なんだ恋次!?」

「てめぇーなぁ、せっかく花見に来ようって言ったのがてめぇじゃねえか」

「す、すまぬ。少し考えごとをしていた」

「また一護のことか?」

恋次の機嫌が急速に悪くなる。

一護とはけっこう仲がよくなって、告白されたのだ。

それを、恋次がいるからと断ったのはつい、先日の出来事だった。

「いや、そういうわけでは・・・」

「お前、嘘つくのへたくそだからな」

確かに、一護のことを考えていた。

愛の果てにあるのは幸せだ、俺と幸せにならないかと告白された。

「ええい、何もかも貴様が悪いのだ!」

ルキアは、恋次がいるせいだと、恋次を力のこもらぬ拳でぽかぽかと殴った。

「全然痛くねぇ」

恋次は、ルキアの尻を触った。

「ひゃあ!このばか恋次!」

ばきっ。

ストレートパンチが決まって、恋次は桜の花の海に沈みこんだ。

「へっ、やればできるじゃねぇか・・・・ガクッ」

「おい、恋次、恋次!?」

その頬をぺちぺちとしてやるが、恋次は意識を取り戻さない。

まさか頭でも打ったのかと、恋次の頭を膝の上にもってきた。

「へへっ・・・ルキアのバーカ」

「なっ」

真っ赤になるルキアに、恋次は起き上がって、チュ、と音がなるだけのキスをした。

「きききき貴様!私は初めてなのだぞ!」

「だから、俺がいただいんだよ。一護になんか渡してたまるか」

ちらちらと、桜の海が降っていく。

その下で、抱き締められた。

「ずっとずっと、子供の頃からお前が好きだった、ルキア」

「恋次・・・・」

「ガキの頃は、いつかでっかくなってお前を迎えにいくとか考えてた。でも、今じゃ俺もお前も副隊長だ。差はねぇ」

「うむ・・・・」

「でも、想いの深さなら負けねぇ。もう100年以上もお前を思ってるんだぜ?」

「私は・・・・」

何と言えばいいのか逡巡するルキア。

「お前は、俺を選べ」

「選べとか何様だ、貴様!で、でも、私も恋次、貴様のことが好きだ・・・・」

「やっぱりな。昔から、お前は俺をずっと目で追ってた」

「ぐ・・・・」

言い返せなくて、ルキアは真っ赤になった。

誰かに告白されるのは、これで2回目だった。

「一護のことは断ったんだろう?だったら、俺にしとけ」

「一護のことがなくとも、貴様を選んでいる、恋次。好きだ」

真っ直ぐ射貫いてくるアメジストの瞳に、恋次は紅蓮の髪と同じ色の瞳で見つめ返した。

それから、恋次も真っ赤になった。

「なんか、勢いで言っちまったけど、案外恥ずかしいな・・・・」

「たわけ。なら、初めから言わぬことだ」

「でも、俺が思いを伝えなけりゃ、お前は一護の方に行きそうで・・・」

「たわけ。どれだけの間貴様といると思っているのだ。確かに一護はとても大切だ。でも、恋愛観感情で好きかと言われると、恋次、貴様のほうが好きだ」

ルキアも、言ってから真っ赤になった。

「ほ、ほら、花見するんだろ?」

「そ、そうであったな!」

ギクシャクと、桜の花を見上げる。

桜の雨はちらちらと降り注いでくる。

朽木家お抱えの料理人が作ってくれた重箱のお弁当を食べ、酒を飲みながら、ルキアは言う。

「貴様とこういう二人きりで花見もいいものだな。また、できれば来年もこよう」

「ああ、そうだな」

ルキアは、そっと恋次の横に寄り添った。

「今日から、貴様は彼氏だ。彼女である私を大事にしろ」

「お、おう」

恋次は、顔を朱くしながらも、ルキアと手を繋いだ。

ずっと近くにいたけれど、こうやって改めて意識すると、ルキアも女の子なのだと思った。

いい匂いがして、柔らかい。

恋次は、ルキアを抱き締めていた。

「恋次?」

「もう、絶対に離さねぇ」

ルキアが処刑されそうになった時、もう少しで見捨ててしまう形になったのだ。

力が及ばずに。

「もっと強くなって、お前を守る」

「たわけ。私は守られてばかりではない。背中を任す」

「おう!」

恋次は、桜の花びらの下で、ルキアとキスをした。

「ん・・・・恋次・・」

愛の果ては幸せ。

この果てにあるものは幸せなら、それはそれでいいかもしれないと、ルキアは思うのだった。





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