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梅の花

「隊長見てください、梅の花が満開ですよ」

そんな恋次の言葉に、そうか、暦は2月かと思い出す白哉。

寒い日がまだ続くが、それでも正月の頃の寒波を考えると大分、寒さも和らいだ。

「梅の花か・・・・緋真が好きだったな・・・」

亡くした愛しい妻、緋真は梅の花が好きだった。桜の花もすきだが、冬の寒さ中でも凛として咲きほこる梅の花が好きだった。

「隊長・・・・・・」

恋次が、昔に想いを馳せる白哉に何かいいたげだった。

「案ずるな。緋真の元にいきたいなどとは思わぬ。今は、お前がいる」

恋次に思い切り抱きしめられた。

いつもより強い力に、白哉が眉を寄せる。

「恋次、痛い」

「痛いくらいに抱きしめてるから、そりゃ痛いでしょうね」

「恋次」

「緋真さんのことは俺が忘れさせてやるって言いたいところですが、隊長の思いの強さは知っています。でも、今は目の前にいる俺のことを考えてください」

そこは、睦み合うために密かに使われている館だった。

いつも、そこで恋次と白哉は同じ夜を過ごす。

なるべく次の日、白哉が非番の日にしていた。

白哉に思いの丈をぶつけるのはいいが、肝心の白哉はあまり行為になれておらず、恋次が完全に何もでなくなるまで抱いた日には、白哉は大抵意識を飛ばした。

「梅の花・・・確かに、綺麗ですね」

「私個人は桜の花の方が好きだがな」

「そりゃ、千本桜もってるくらいですからね」

自分の斬魄刀が桜なら、桜を好きになるのは当たり前だろう。

「だが、あれは梅の花がすきだった・・・少し、枝を手折ってくれぬか」

言われて、恋次は満開の梅の花の枝を一本手折った。

白百合の活けてある花瓶に、梅の枝をいれる。

「梅の花は、綺麗だがあまり匂いがしない」

「そういえばそうっすね」

花を間近でかいでも、あまり匂いがしなかった。

「そんなことろが謙虚でいいと、あれは・・・・」

「隊長、俺がいる前であの人の話はしないでください」

「恋次?」

「俺は自分の目の前にいる隊長が、たとえ死んでいても思っていた人のことを口にするのは嫌です」

死人にどれだけ嫉妬しても、無駄だからと、恋次は白哉の耳元で囁いた。

「すまぬ・・・だが、梅の花を見るために緋真のことを思い出すのだ」

「隊長、好きです・・・・・」

そんな言葉を受けながら、食事をして酒を飲み交わしあった。

やがて、夜が訪れる。

睦み合うために、わざわざ館を用意してあるのだが、その関係はルキアや一護にはばれているが、他の6番隊の者にあまりばれていなかった。

睦みあった次の日は非番の時が多いので、お互いの体から同じシャンプーと石鹸の匂いがするが、二人がただ同じ風呂を使ったのだろうと思うだけで、仲まで勘繰ってくる者などいなかった。

「恋次・・・・」

恋次は、梅の花を一輪手にとると、くしゃくしゃにして白哉の顔の前で花びらをひらひらと舞わせた。

「この梅の花と同じだ、緋真さんは。もう散ってしまった」

「あ・・・・」

恋次の心は、傷口をぱっくり開けていた。

いつまでたっても、愛してくれないと言っていたあの頃に戻ったように。

「恋次、すなぬ、私は今はお前を愛している・・・・」

「じゃあ、証明してみせてください」

「恋次・・・・・」

白哉は、おずおずと自分から恋次の体を抱き寄せて、その筋肉質の体を抱き締めて、口づけた。

「ふあ・・・・・・」

キスをしていると、恋次が白哉と舌を絡めだす。

「これでは、証明にならぬか?」

「いえ、十分です」

白哉は性的なことに疎い。恋次が覚えさせたことを、白哉はなぞっているにすぎないが、日頃決してそのような行為をせぬ白哉が、自分から口づけをしてくること自体とても珍しいのだ。

「抱きますよ。いいですか」

「構わぬ」

白哉の衣服を脱がせ、貴族の証であるものを全てはぎとると、さらりと黒髪が褥に広がった。

「隊長の髪・・・綺麗ですね」

「お前の髪も綺麗だ。紅蓮のようで」

白哉が、ぱさりと落ちてきた長い恋次の髪を一房とって、口づけた。

「んんっ・・・・・・」

ぴちゃりと、舌が絡まるキスを何度も繰り返す。

手の平全体で、体の輪郭を確かめるように愛撫した。

「んっ」

脇腹をなであげて、鎖骨から胸にかけてキスマークを残された。

「あ、恋次・・・・」

求められて、また浅く深く口づけする。

胸を弄っていた手が、先端をきゅっと摘みあげた。

「あ!」

びくんと、白哉が動く。

くりくりと転がしてやれば、硬くなったそこは快感となって白哉に襲いかかった。

「ん・・・・」

舌で甘噛みして、段々と位置をずらしていく。

反応しかけた花茎を口に含むと、白哉は喘いだ。

「ああああ!」

ねっとりとした咥内にいれられて、そのままちろちろと舌を這わされた。口に入りきらぬ部分は手でしごかれた。

自虐もしない白哉は、薄い精液を恋次の口の中に放った。

今度は、白哉が恋次のものを口に含んだ。

こんなこと、教え込んだのは自分だ。恋次は罪悪感を抱きながらも、白哉の奉仕を受ける。

「ん・・・・」

びゅるるると、勢いよく恋次が精液を吐きだした。

「ぐ・・・・」

飲み込むには無理があって、こほこほとせきこむ白哉にティッシュを渡す。だが、白哉はできる限りを飲み込んだ。

「隊長、無理しなくていいから!」

「よいのだ。私がこうしたいと思ったのだ」

白哉を組み敷いて、潤滑油を指にかけて体内に潜り込ませる。

何度か前立腺をいじり、解していくうちに、白哉は自分の手の甲を噛んでいた。

「隊長、声我慢でしないでください。聞かせて?」

白哉の歯型がついてしまった手に、口づける。指には、エンゲージリングが光っていた。

「ああ!」

ぐりっと、指で前立腺を刺激されて、白哉はたらたらを花茎から蜜を零していた。

「挿入れますよ」

「んん・・・ああああ!!」

指とは比較にならならいものに引き裂かれて、白哉は涙を零した。

いつも、行為は快感と痛みをまぜこぜのしたものだった。

「ん・・・・」

痛みで溢れた涙を吸い取ってやれば、あとはただ快楽に墜ちていくだけ。

ゆるりと中を突き上げてやれば、白哉は二度目になる熱を放っていた。

「・・・・・あああ!」

恋次もその締め付けにたまらず、白哉の中に放つ。

「んう・・・・」

何度も突き上げながら、浅く深くキスを繰り返した。

「ひあああ!」

最奥をこじあけて、中に侵入する。

「あ、あ、あ!」

最奥はひくついて、恋次を離さなかった。

「ひあ!」

最奥で精をぶちまける恋次の、熱い熱を感じた。

「んう・・・・」

前立腺を突き上げながら、いつの間にかいってしまったらしい白哉の萎えかけたものをしごく。

少しだけ精液を吐きだして、後は透明な蜜をたらたらと零すだけだった。

「んあ!」

ぐちゃりと音と立てて中を犯してやると、白哉はドライのオーガズムで達していた。

「・・・・・んああ!あ!あ・・・・・」

何度が中を抉って体位を変えて貪っていると、流石の恋次も果てて、それ以上でなくなてしまった。

「ん・・・・・」

少し意識を飛ばしていたらしい白哉の、黒髪を撫でた。

「・・・恋次?」

「ちょっと、無茶させてしまいましたか?すんません」

「別に構わぬ。お前ががっつくのはいつものことだ」

もう、白哉も慣れてしまっている。

白哉もまだ若いが、恋次はもっと若い。1回のセックスで3~4回出すことがおおい。

「湯浴みに・・・・」

ふらつく白哉を抱き上げて、湯殿にいくと、まずは白哉の体内に出したものをかきだした。

「腹の奥・・・まるで、孕むかと思った」

「ぶはっ」

恋次は、すごい殺し文句に、顔を真っ赤にさせた。お互いの裸など見慣れているが、白哉の白い肌はやはり恋次を煽ってきて、心臓に悪いと思った。

体を洗い、お互いの髪を洗いあって、湯船に浸かる。

湯殿から出て、下着をつけて浴衣に着替えて、その上から上着の着物を着た。

「まだ寒いから、湯冷めしないでくださいね」

ぽたぽたと雫を落とす、少し長くなった白夜の黒髪を、タオルで水分をとってやった。

恋次はすでに紅蓮の髪をふいた後だ。そのまま、タオルを首に巻いた。

浦原の手で大分電化製品が普及した。

この館にも、掃除機、洗濯機、炊飯器、冷蔵庫などがあった。

自家発電機は安くないが、これらの便利な電化製品を取り入れる家は多く、浦原が開発した自家発電機は飛ぶように売れていた。この館の自家発電機も、浦原のところから買ったものだった。

ドライヤーを手にして、まずは白哉の髪を乾かした。最後に自分の髪を乾かして、褥とは違う布団に横になる。

「忘れるな。私は、確かに緋真を愛している。だが、お前も愛している。緋真のことを愛するなと言われてでもそれはできぬ。だが、お前を愛せと言われればそれはできる」

「はい、隊長。今は、それで充分です。愛しています、隊長」

「私も愛している、恋次・・・・」

口づけを交わして、一組の布団で抱き締めあって寝た。

「ふあ~。あれ、隊長まだ寝てるんですか」

スースーと、白哉はまだ寝ていた。

「こうしてる人形みたいに綺麗だけど、かわいいなぁ・・・・」

白磁のような肌は、ほんのり色づいている。生きてるのだと、分かる。

「隊長、起きてください、朝ですよ」

「ん・・・恋次?今何時だ?」

「8時です」

「そうか。起きる。朝餉は用意されてあるはずだから、もってくる」

「いいですよ!俺がやりますから、隊長はそこにいてください!」

館であるが、少し広い。

朽木邸の屋敷ほどではないが。個人がもつ家にはしては広いほうだろう。

やはり迷子になったのか、恋次が声をあげた。

「隊長、どこですかー。俺はどこにいるんですかー」

白哉ははそれがおかしくて、笑った。

「私はここだ。そのまま前へと進んで左に曲がれ」

声の位置から大体の場所を察知して、白哉は叫んだ。朝餉を手に、恋次が現れた。

「やっぱ、この館も大分広いですね」

「この程度の広さで迷子になるなど、情けない」

「すみません」

犬のようにしゅんとしょげる恋次の紅蓮の髪を、くしゃくしゃと撫でまわして、白哉は笑んでいた。

「隊長?」

「お前の存在で、私はどれほど救われたことか・・・・」

愛しい者がいるということは、生きようとする意志になる。

思いの果てに愛があり、愛の果てに幸せがあると、ルキア言っていた。

「愛の果てだ」

「は?」

「私は幸せ、ということだ」

「隊長が幸せなら俺も幸せです」

少し冷めてしまっているが、朝餉を食べながら、今日はすることもないのでこのまま恋次と、戯れあうのもいいかもしれないと思った。

「隊長、見てくださいバナナですよ。現世では珍しくないですけど、こっちで食べるのは久しぶりです」

「そうか。これは、バナナというのか」

黄色い果物を口にする。

ほんのりと甘かった。

まるで、恋次と過ごす日常のようだと思った。











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