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小説掲載プログ
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水底で揺れるために

「京楽・・・・・好きだ」

それは、院生時代の出来事。

高熱にうなされた浮竹は、京楽に身の想いを告げてしまった。

「浮竹・・・・ごめん、君の想いには答えられない」

「それでも構わない。ただ、傍にいさせてくれ」

同じ寮の部屋に住んでいたので、毎日顔を合わすことになる。ただ、傍に在れればいいと、浮竹は本気で思っていた。

京楽は、次の日女の子とデートしていた。

それを、浮竹は微妙な心境で見送った。

「ただ、傍にいれればいい、そうだろう、浮竹」

自分自身に言い聞かせる。

それから長い間浮竹は京楽だけを見ていた。京楽は、告白はなかったものとして、浮竹と親友という関係を続けていた。

ある日、自室の寮の部屋に戻ると、浮竹が倒れていた。

ベッドのシーツは、吐血したであろう、真紅に染まっていた。

「浮竹!」

「あ・・・・きょうら・・く・・・ごほっごほっ・・・服が・・よごれ・・・・」

「そんなことどうでもいいでしょ!医務室に連れていくよ!」

京楽に抱き上げられて、浮竹は医務室に運ばれた。

幸いにも4番隊の隊士がその日の医務室の保険医として滞在していた。

「すみません、血を吐いたんです。元から肺の病があって、吐血したみたいで」

「そこのベッドに寝かせて」

「はい」

てきぱきと治療が進んでいく。

4番隊隊士のお陰で、浮竹はすぐにはでないが、元気を取り戻せそうだった。

「今日は、この医務室で休んで、明日は寮の部屋に戻りなさい。念のため、1週間は学院を休むように」

「はい・・・・・」

浮竹は、項垂れた。

「どうしたの、浮竹。ああ、ご飯か・・・・食堂で、弁当買ってくるね」

「すまない」

浮竹が真っ赤な血を吐くのは、久しぶりだった。

まだ、京楽の心臓はどくどくと、早鐘を打っていた。

「浮竹・・・・・・・・」

名を呼ぶと、はにかむように笑う浮竹の顔が頭から離れない。

一緒に行動することが、本当に幸せであるかのようで。

「僕は・・・・・」

浮竹のことを考えると、ズキリと胸が痛んだ。

最近、女の子と付き合っているが、行為の最中浮竹の顔がちらついて、最後までできないでいた。

「誰か他の子のこと、考えてるでしょ」

付き合っていた子には、そう言われて振られてしまった。

何、女の子など他にたくさんいる。そう言い聞かせた。誰でもない、自分自身に。

「浮竹が・・・頭から離れないって、かなり重症かな」

食堂で、唐揚げ弁当の二人分買って、医務室に戻った。

「唐揚げ弁当だけど、食べれる?」

「ああ、大丈夫だ」

大分発作もおさまり、ゆっくりではあるが弁当を食べた。

「口元についているよ」

京楽が、浮竹の口元についていたご飯粒をとって、食べてしまった。

それに、浮竹が少し朱くなった。

「すまない・・・・その、こういうことをして平気なのか?」

「何が?」

「いや、なんでもないんだ」

「変なの」

京楽は気づいていない。浮竹に、まるで付き合っていた女子のように接していることを。

次の日になって、寮の自室に帰る日になった。

「ごほっごほっ」

また咳をしだした浮竹に、薬を飲ませようとしても、飲んでくれない。

仕方ないので、京楽は口移しで薬を飲ませた。

「んっ」

浮竹が、戸惑いがちに薬を飲み干す。

「やばい・・・・・」

京楽は、浮竹の声と、口移しで飲ませた時の表情で、たってしまっていた。

すぐにトイレにいって抜いてきた。

「戻ろう、浮竹」

まだ歩けない浮竹を抱きかかえて、寮の自室に戻る。

「すまない・・・・・」

「いちいち、謝らなくていいから」

「あ・・・・・・」

離れていく京楽の服の裾を掴む、浮竹の愛らしい表情に、気づけば京楽は浮竹にキスをしていた。

「京楽?」

「ああ、もう・・・・君のせいだよ。君が僕のこと好きだっていうから、そんな目で君を見てしまう」

「俺は、それでも構わない」

「浮竹・・・・・」

その日、最後まではできなかったが、体の関係を結んだ。浮竹がまだ病症の身であるため、互いに抜きあうだけだったが、すごい快感と、浮竹を愛らしいと思った。

今まで感じてきたどの子よりも、愛らしく見えた。

「浮竹・・・」

「京楽・・・」

互いにキスをしあえば、それはより深いものになった。

「んうっ」

「浮竹・・・・多分、僕は君が好きなんだ。まだはっきりとはしないけど、こんな行為をするんだから」

「京楽、俺はお前が好きだ。初めて告白するずっと前から、好きだった」

「その想いを抱えたまま、僕が女の子と付き合ったり、廓にいったりするのを、じっと我慢していたのかい?」

「そうだ」

「本当に君は・・・・健気な子だね」

1週間は、あっという間に過ぎた。

本調子になった浮竹は、1週間の休んだ間を取り戻そうと必死になっていた。

「破道の17はね・・・・」

新しく習った鬼道を、つきっきりで浮竹に教える京楽。

もう、京楽の周りに女の子はいなかった。

その日、寮の自室に戻って、京楽は浮竹を押し倒した。

「僕が好きなんでしょ?僕を受け入れられる?」

「受け入れられる」

「ああもう、ほんとに君って子は・・・・・」

大事にしたいのに、滅茶苦茶にしたかった。

「好きだよ、浮竹」

その言葉に、浮竹は花が綻ばんばかりの笑顔を浮かべた。

それが余計に愛らしく見えて、京楽は浮竹を抱いた。

その日は、最後まで関係をもった。

「責任はとるから。付き合おう」

「京楽・・・・」

ただ傍にいれればよかっただけなのに。浮竹は京楽を手に入れることができて、とても幸せそうだった。

そのまま6回生の終わりまできた。関係をもったのは4回生の時。2年も付き合っていた。京楽は付き合っても長続きしないと有名だったので、3か月もてばいいほうだったが、浮竹と付き合いだして2年の歳月が流れていた。

時折体を重ねる程度の関係ではあるが、お互いを大切にしあった。

「僕は、8番隊の3席だ」

「俺も同じ3席だ。13番隊だが」

「卒業旅行に行かないかい。現世にでも」

「でも、今現世は戦国時代だろう。野盗とかもでるし、危なくないか?」

「いや、いい無人島を知っているんだ。海の幸が豊富にとれる。キャンプでもしよう」

「ああ、いいな」

浮竹が、京楽に想いを寄せるようになって、4年が経っていた。

そのまま卒業と同時に、お互い死神になった。でも、その前に卒業旅行にいった。無人島であったが、それなりに楽しめたし、夜はお互いを貪りあった。

「俺は、3席から服隊長への昇進が決まったんだ・・・・・・」

「僕は3席のままだよ。おめでとう、浮竹」

「お前と同じじゃなくなる・・・」

「僕も、すぐに追いつくから」

それから数十年の時が流れ、お互い隊長になっていた。

「浮竹、行くよ」

「ああ!」

尸魂界で2つしかないと言われる、二刀一対の斬魄刀をもつ二人は、互いに背中を預けながら虚退治にいそしんだ。

夜になると、雨乾堂に、京楽が泊まりにやってくる。

1週間に一度の頻度で、抱き合った。

行為の後の気だるい雰囲気をもったまま、浮竹が言う。

「学院の頃、勇気を出してお前に告白してよかったと思う。こうなるとは思っていなかったが」

「僕もこうなるとは思ってなかったよ」

くすりと笑いあい、キスをする。

「あっ・・・・」

また熱をもちはじめた京楽に押し倒された。

「君は、いつまで経っても愛らしいね。白い髪もこんなに伸びた」

「お前が切るなというから・・・・・・・」

褥の上で、二人は乱れる。

素百年と、関係を保ったまま時は流れる。



「君はずるいね・・・・・」

先に逝ってしまった浮竹を想い、今日もまた雨乾堂の跡に作られた墓石に酒を注いだ。

「僕も、いつかそっちに逝くから、それまで見守っていてくれ」

愛しい、愛しい、浮竹。

いつか、迎えにきてね。

それから更に数若年の時が流れた。

尸魂界は何度か争いは起こったが、今は平和だった。

死去して魂魄がこちらにきた黒崎一護が、今の総隊長だった。

京楽は、年と病を抱えて引退した。

夢を見ていた。

「迎えにきたぞ・・・・・・」

まだ、若かった頃の院生の姿のままで、浮竹がやってきた。

「ああ、僕もそっちへ行くよ」

京楽の姿も、いつの間にか院生の頃の姿になっていた。

白い髪の麗人を抱き締めながら、キスを交わす。

「いこう、一緒に・・・・」

「ああ・・・・・・・」

京楽は、そのままこの世を去った。

浮竹に想いをつげられて、千年以上の時が経っていた。

まるで、永遠に似た世界を共に生き、そして失った。

また、永遠がその先にある。

二人は、永遠の時を色のない世界の水底で過ごす。

「愛してる」

「僕も愛してる」

永遠を刻む。

永遠(とわ)を永久(とこしえ)に。

ゆらりと、今日も水底で、精神存在(アストラル)になった二人は、愛を囁くのであった。


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