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新婚旅行と白哉

ルキアと一護と白哉は、義骸に入り現世にきていた。

正確にはルキアと一護の新婚旅行なのだが、なぜか白哉もついてきていた。ルキアの我儘でもあった。それを許した一護は、けっこう寛大だと死神仲間は思うのだが、白哉は当たり前と感じているらしかった。

「ここが大阪だ」

「わぁ、人がいっぱいだな!」

「食い倒れとかいって、ここらの・・・ほら、あのカニのやつとか、すごいだろ」

カニ道楽の動く看板に、ルキアも白哉も、ぽかんとしていた。

「あのカニは本物なのか?随分巨大だが・・・・・」

「あほか。ただの宣伝用の看板だ。かに道楽っていうんだ」

「カニ大使・・・・・」

白哉に至っては、思考が違う領域にいっていた。

「どうでもいいから、中に入るぞ。ちょうど昼食時だ」

かに道楽というだけあって、カニのメニューが揃っていた。値段もそんなに驚くほど高くはなく、手頃な場所というイメージだった。

「ふむ、なかなかの美味だ。しかし、現世のカニは安いのだな」

「そりゃ、海のない尸魂界でカニ食うのに比べたたら安上がりだろうぜ」

「ふむ、悪くない。カニ大使・・・カニを使った菓子ではないカニ大使・・・・」

「白哉、悪いことはいわねぇから、カニ大使はやめとけ」

何故知ってるという顔をされた。

「兄様のカニ大使!ぜひ見たいです!」

「ああ!ルキアも白哉に火をつけるのをやめろ!」

「ふふふふ・・・・カニ大使」

「とりあえず、放置して出ようか」

一護の腕を、がしっと白哉が掴んだ。

「試食第一号は、兄だ」

「ああああああ、もう、ルキアが火をつけるから!」

「え、私のせいなのか?一護も食べたくないか、兄様のカニ大使」

「全然食いたくねぇ!」

外にでて、道頓堀を散策する。

「あそこが、日本一うまいらしい、銀だこ。たこ焼きの店だ」

「ほう、買ってくる!」

「おい、さっき昼食食べたばっかだろ!」

「一人分を3人で分ければよかろう!」

「それもそうか・・・・・」

地方によって考え方は変わるが、たこ焼きは間食のイメージだった。

ルキアが、12個入りのたこ焼きを買ってきた。爪楊枝が、3本あった。

「立ったままはなんだから、あそこに座って食べようぜ」

近くの雑居ビルの階段を指さすと、白哉はあからさまに嫌そうな顔をした。、

「あのような、貧乏くさいところで・・・・ここで立ちながら食したほうがましだ」

そう言って、立ながらルキアがもっているたこ焼きから、爪楊枝で器用にたこ焼きをとって口にいれる。

「たこ焼き大使・・・・・・・」

「もう、つっこまないからな!」

「兄様、たこ焼き大使も美味しそうですね!」

「だから、ルキアは白哉に火をつけるよな真似はやめろ。今の白哉は油なんだ。火をつけたら、燃え上がる」

「大阪か。よいところだな。カニ大使にたこ焼き大使・・・・・」

「そういう問題かよ」

道頓堀で、ナンパで有名な橋を渡ると、ルキアが他の人間の男に声をかけられた。

「そこのかわいいこ、俺とお茶しない・・・・・ひいっ」

ごごごごごご。

その背後に修羅の面を被った一護と、殺気を漲らせた白哉。

何度かルキアは声をかけられていたが、結局全員一護と白哉の顔を見て逃げ出した。

「なんなのであろうな?」

「なんぱだよ」

「なんぱ?なんだそれは」

「異性に、声をかけること。無論下心ありありで」

「なっ」

かっと、ルキアの頬が朱くなる。

「そのような不埒な輩、切り捨ててくれる」

「白哉、現世に新婚旅行に行くにあたって、斬魄刀は置いてきたからな」

「む、そうであった・・・ならば鬼道で」

「やめろやめろ。なんの罪もない一般市民だぞ」

「それもそうであったな・・・」

ルキアのことになると、性格が攻撃的になるのは、勘違いではなさそうだった。

「これが道頓堀川。汚くて臭い川だけど、阪神とかいう野球の球団が優勝すると飛び込むばかがいる」

「野球?」

白哉が首を傾げる。

「ああ、もう説明めんどいから簡単にな。野球っていう、スポーツがあるんだよ。それをしながら、グループごとで争って、一番になったやつが優勝な」

「蹴鞠のようなものか?」

「それはサッカーだろ」

「私は野球もサッカーも知っているぞ!」

自慢げなルキアであったが、ただ単に現世にいた時間が長かったからに他ならない。

その日は道頓堀でも有名な飲み屋で夕食をとって、夜のうちに淡路島に移動し、温泉街で宿をとった。

「間違ってる!絶対に間違ってる!」

一護が、そう叫んでいた。

部屋を2つとったのはいいが、一護と白哉が同室になったのだ。

ルキアはどう見ても未成年で、まだ十代半ばに見えるせいもあり、一人部屋を与えられたのだ。

「何処へ行く」

「ルキアの部屋だよ。白哉と同室なんて、ストレスで胃に穴が空く!」

「婚姻まで待つことができたのだし、新婚だし・・・仕方ない、許可しよう」

「誰も白哉の許可なんていらねーよ!俺の自由意思だ」

一護は、結局ルキアの部屋に泊まった。

新婚旅行というだけあって、逢瀬をした。

次の日は、その温泉宿でだらだらした。

白哉は何度も温泉に入っていた。温泉が好きなようだ。

一護はつまらないと思いながらも、ルキアといちゃいちゃできたので満足だった。

「ルキア、好きだせ」

「私もだ、一護・・・」

白哉が温泉に入っている間、二人の時間を大切に使った。

「夕食の時間だ。行こうぜ」

夕食は、またカニだった。

昨日食べたばかりなので、少し辟易とするが、美味いことには変わらなかった。

そのまま、その夜もルキアの部屋で泊まった。その日は、ただ一緒の布団で寝るだけだった。

次の日は、触れ合い動物園に行った。

「かわいいな・・・・・」

ルキアが、100円玉をいれて、カットされた人参の入ったボール玉を買う。

その人参をモルモットやうさぎにあげていた。

「うさぎのソテー・・・・」

「おい白哉、ここのうさぎがいっとくが、愛玩用だからな。とって食おうなどとするなよ」

「うさぎのシチュー・・・・・」

「だから白哉・・・・・ああもう、妄想は好きなだけしてくれ」

「うさぎ大使・・・・・」

「ちょ、待て!また大使かよ!?」

カニ大使にたこ焼き大使に、次はうさぎ大使。なんでも大使にすればいいってもんじゃないとくどくど口にすると、白哉は一護を無視しだした。

「無視かよ!」

「ルキア、私にも人参を」

「はい、兄様。人参を食すのですね?」

「違うだろ、ルキア。人参で餌やりたいんだろ」

「おっと、私としたことが。ごめんなさい、兄様」

人参の入ったボール玉を渡すと、面白いほどにわらわらとうさぎやモルモットが寄ってきた。

「ふむ・・・術の効果はあるようだ」

「術!?なんか変な鬼道でも使ったのか!?」

白哉は、全部の人参をやり終えた。わらわら集まっていたうさぎもモルモットも去っていく。

「ねぇ、あの人かっこよくない?」

「ほんと、かっこいい・・・・美人」

女性客がざわざわと、白哉を見て騒ぎ出す。モルモットやうさぎがいっぺんに集まったせいで、女性客の視線が集中していたのだ。

その白哉を隠すように、次のコーナーに移動する。

犬猫コーナーだった。

「もふもふだぞ!」

さっきのうさぎとモルモットコーナーでは抱き上げてはいけなかったので、自由に抱き上げれるその場所で、ルキアは思う存分猫をもふもふしていた。

「くー犬も捨てがたい」

次は犬をもふもしだした。

白哉は、恐らく血統書つきであろうシャム猫を抱きかかえていた。

「白哉も動物好きなのか・・・・・意外だな」

「猫鍋・・・・・」

「え!?」

さすがの一護も、猫鍋は聞き捨てにできなかった。

「おい、白哉、お前は尸魂界で猫を鍋にして食うのかよ!?」

「違う。子猫を鍋の中にいれて、蓋をあけたらふわふわと出てくる様はかわいいだろうと思って」

「なんだ、そういう意味か」

一護はほっとした。

まさか、貴族は猫を食べるのが当たり前とか言われたらどうしようと思っていた。

「黒猫は嫌いだ。夜一を思い出す」

「へー、白哉は夜一さんのことが苦手なのか」

「兄様、尸魂界に戻ったら、猫を飼いませんか!?」

「思案しておく」

「やった!」

まだ飼うと決まったわけではないが、ルキアの我儘は大抵聞き入れる白哉のことだ。きっと、猫を飼いだすに違いない。

次のコーナーにいくと、カンガルー、ワラビー、羊にアルパカだった。

それらに餌をやって、温泉街に戻る前に牧場を訪れた。

そこの牛の臭さに辟易となり、酪農家はすごいと、3人とも思った。

特別販売のミルクアイスを食して、温泉街に戻った。

その次の日は京都に2日、その次は奈良に2日。

まるで、中学生か高校生の修学旅行のような内容になったが、現世にあまりこない白哉は特に楽しんでいたようだし、修学旅行には結局いけずじまいだったルキアも楽しんでくれた。

現世での6泊7日の新婚旅行も終わった。

「楽しかったか、ルキア?」

「ああ、一生の思い出だ!」

「猫鍋・・・・・」

「白哉、怖いから猫鍋っていうのやめてくれ」

白哉も連れてきてよかったと思う一護であった。

尸魂界に戻ると、白哉は血統書つきのオッドアイの白猫の子猫を、ルキアに与えた。

「いいのですか、兄様!」

「思案するといっていただろう」

「嬉しい!大好きです、兄様!」

義妹に抱き着かれて、白哉は朱くなっておろおろしていた。

その様子が可愛かったので、一護は伝令神機で写メをとった。

白猫は、琥珀、と名付けられた。

ルキアは、家にいる間中琥珀に構っていて、一護を構ってくれないので、一護が琥珀を白哉の部屋に置いてきた。

「琥珀は?」

「たまには、夫の俺にも構ってくれよ」

「なんだ、一護、貴様琥珀に嫉妬しているのか?」

「そうだよ、悪いかよ」

「貴様もかわいいところがあるのだな」

ルキアが、一護に膝枕をした。

「ちゃんと貴様のことも思っておる」

触れるだけのキスをしてきた。ルキアからのキスは珍しいので、一護はすっかり機嫌を直した。

「琥珀、何故ここにいる?」

「にゃああ」

白哉は、琥珀を抱き上げた。

「そうか。兄も、あの二人の邪魔をするなと、弾かれたのか。私と一緒だな」

小さく微笑んで、琥珀を抱き締める白哉の姿があった。









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