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桜のあやかしと共に17

「桜の王よ・・・・どうか、慈悲を」

今にも枯れそうな金木犀に宿るあやかしが、桜の王である浮竹に会いにやってきた。

「治癒は、術者の俺が専門なんだが・・・まぁ、あやかしに力を与えるなら、俺か」

浮竹は、ふっと桜の花びらを、金木犀のあやかしに吹く。

すると、老婆のようであったあやかしはみるみる若くなり、その本体である金木犀も狂ったように咲いて、秋の深まりを知らせる。

本体である金木犀を、あやかしの鏡で映しながら、浮竹は金木犀のあやかしを褒めた。

「よく耐えたな。枯れかけていたのに」

「桜の王の慈悲のおかげです」

金木犀のあやかしは、金木犀のにおいがする香水をお礼にと置いていった。

「金木犀の甘い香り・・・・嫌いじゃない」

自分に少しだけふりかけてみる。

「あれ、十四郎さっき来ていたおばあさんは?なんか若い女性が玄関から帰ってったけど・・・・」

「ああ、同一人物だ。本体の金木犀が枯れかけていたせいで、老婆のようになっていただけだ。本来なら、帰った時の姿の若い姿が本物だ」

「枯れかけると、しわしわになっちゃう植物のあやかしもいるんだね。あ、なんかいい匂いする・・・・・」

「お礼にと置いていった金木犀の香水を少し使ったんだ。それより白哉、調子が悪そうだが大丈夫か?」

「問題ない・・・と言いたいところだが、仮初の本体である桜の木が人間に傷つけられた。枝を勝手に伐採された・・・・。浮竹、兄の桜の術でなんとかしてくれまいか」

「それは大変だ!公園に急ごう」

浮竹と白哉は、35階のベランダから飛び降りる。

残された京楽は、玄関から出てすぐ近くにある公園に急ぐのだった。

「大分、枝を切られているな」

「頭が痛い」

「今、再生させてやる」

浮竹は、自分の生命力を燃やして、ふっと桜の花びらで、白哉の桜を包み込んだ。

伐採された枝が再生し、元の姿に戻る。

「すまぬ、浮竹」

白哉はすぐに元気になった。

「おーい、十四郎に白哉君、問題はどうしたの」

「兄がちんたら歩いている間に、浮竹が命を分け与えて再生してくれた」

「命を分け与えるって・・・術を使う時、再生させるときはいつもそうなの?」

「いや、妖力を与えるだけだ。白哉は弱っていたので、生命力を分け与えた。白哉は繊細だからな。本体の桜に何かあると、体調が悪くなるんだ」

「すまぬ。改善したいのだが、生まれつきなのでどうしようもない」

「桜の王の俺がついているから、安心しろ」

「では、私はネモフィラ畑に行ってくる」

「うん、一護君とルキアちゃんによろしく言っておいてね」

「白哉、夕方までには帰ってくるんだぞ」

まるで、白哉は浮竹の弟のような存在であるが、この二人の夫婦のような関係から見ると、子供のようであった。

「あ、この公園にも金木犀あるね」

「さっきの金木犀のあやかしは、ここら一帯の金木犀のあやかしの長だからな」

「そんな偉い人だったんだ」

「金木犀の香水・・・術者の俺と、夜刀神にも分けてやるか」


術者の浮竹の家にいくと、夜刀神が出た。

『どうしたの』

「金木犀のあやかしを元気にしてやったら、金木犀の香水をくれた。人工のものではない、自然のものだから香りがすごくいい。分けてやろうと思って」

『桜の王は、甘いものも甘い匂いも好きだからねぇ』

「悪いか」

『いやー、女の子みたいだねぇって思うだけー』

浮竹のハリセンが、夜刀神の頭に炸裂する。

『あいたたた』

「誰が女の子だ」

「十四郎、でも確かに甘いの好きだよね」

「昔は甘いものなどほとんどなかったからな。「春」がいた時は、よく果物を買ってきてくれた」

「十四郎、帰りにパイナップルでも買って帰ろうか」

『んー、騒がしいなぁ。あ、桜の王の俺、来てたのか。おい京楽、なんで知らせてくれないんだ』

寝ぼけ眼で起きてきた術者の浮竹が、浮竹と京楽の姿を見て、京楽をせめる。

『だって君、依頼で徹夜あけで寝てたでしょ?そのまま寝かせておくのがいいかなと思って』

『二人が訪ねてきたなら、起こせ』

『はいはい。今度から、そうするよ』

午後だったので、香水を渡してそのままおしゃべりをした。

夕方になり、浮竹は術者の浮竹と一緒に夕ご飯を作り始めた。

それを、二人の京楽は幸せそうに見ている。

『そこ、ボケっとしてる暇があったら、皿を出してくれ』

「京楽も、お茶をいれてくれ。お前のいれる紅茶はとてもうまいからな」

ああだこうだとしているうちに、夕飯ができあがり、浮竹が主に作っただけあって、三ツ星レストランの味がした。

『やっぱり、桜の王の俺が作る料理は違うな。俺も同じものを作っても、ここまで美味しくならない』

「まぁ、俺は料理が趣味だからな。料理と買い物と片付け以外の家事は、全部京楽にやらせてる」

『こき使われるわりには、幸せそうな顔をするね?』

夜刀神が、京楽をからかうと、京楽はにんまりと笑んだ。

「家事の分担って、夫婦みたいでいいじゃない」

『確かに、それは言えてるね。ボクも、浮竹と家事を分担してるから』

「あ~、十四郎の手料理が毎日食べれるボクは幸せだなぁ」

『ボクの浮竹も、料理の腕は大分上達したんだから』

「全部、ボクの浮竹が教えてるからじゃない」

『自力でもがんばってるよ』

言い合いをする京楽達に、二人の浮竹は金木犀の香水をふきかける。

「うわ、あっま・・・・」

『うわー、金木犀のにおいだらけになっちゃった』

「ケンカはするな」

『京楽、便利屋の京楽と仲良くしろ』

それだけ言うと、二人はキッチンに戻って、デザートを作り始めた。

「苺パフェだ」

『温室栽培で、昔と違って苺は少し高いけど、いつでも買えるからな』

ちなみに、術者の浮竹は半妖で、生まれて50年は経っている。

浮竹は5千歳をこえているし、夜刀神の京楽も千歳をこしている。

一番若いのは、京楽だった。

生まれて、まだ30年ほどだった。

苺パフェを皆で食べて、浮竹と京楽は雑魚寝でいいから泊まっていくらしい。

とりあえず、空いていた部屋に布団の予備をしいて、4人は夜遅くまで騒ぎあう。

最初に睡魔に負けて寝たのは術者の浮竹で、次が京楽だった。

『なんか、君と二人で起きて一緒にいるってのも、数十年ぶりだね』

「「春」との夜をさんざん邪魔したくせに、京楽との夜には邪魔しにこないんだな」

『ボクにも浮竹がいて、人を愛するって意味が分かったからね』

「できれば今のままでずっといてくれよ。春水との夜を邪魔されるのはごめんだ」

『ボクも、浮竹のとの夜を邪魔されたくないからね』

「俺は、お前みたいな真似はしない」

『まぁ、そう答えるよ思ったよ』

浮竹は、眠ってしまった術者の浮竹と京楽に毛布をかけてやる。

『ねぇ。「春」とどっちが大事?』

「言えない。どっちも大切で、選べない」

浮竹の悲しそうな顔を見て、夜刀神は台所からくすねてきた白ワインを取り出した。

「酔っぱらって寝ちゃえば?悲しい時は」

そのまま白ワインを飲んで、浮竹はへべれけに酔って、術者の浮竹と同じ布団ですうすうと眠る。

『寝てれば、桜の王もかわいいんだけどねぇ』

500年に及ぶ腐れ縁でも、一緒に夜を過ごすことはほとんどなかった。

いつも「春」が近くにいた。

『もう一人のボク・・・・どうか「春」のように、桜の王を置き去りにしないでね』

京楽は、眠っていた。

「春」の夢を、また見ていた。

「春」は反魂で一時蘇り、また眠りについた。

浮竹の中には、また「春」への想いが一時蘇り、そして沈殿していった。

『「春」・・・君は浄化されても、また蘇るんでしょう?君の魂は、桜の王と共にある。どうか、もう一人のボクが傷つくような真似はしないでほしいね』

白ワインの入ったグラスを片手に、夜刀神は、今は静かに眠りについている「春」のことを思いだすのであった。









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