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桜のあやかしと共に23

それは、今から500年も前に遡る昔話である。

浮竹は、京楽とも「春」とも出会うことなく、ただ一人で桜の王として生きていた。

実に4500年もの間、孤独に生きていた。それでよかった。春がくれば桜を咲かせて、桜の王として世界に春を告げる。

『君さぁ。4500年もの間、一人ぼっちなんだってね?ボクと一緒だね?もっとも、ボクは500年だけど』

ふと、桜の大樹の中で眠っていた浮竹を起こす、大きな妖力を感じて、浮竹は人の姿をとって、世界に顕現する。

「誰だ。俺の眠りを妨げるのは」

『ボクは京楽春水。夜刀神だよ。よければ、友達にならない?』

「友達?他を探せ。俺は桜の王だ。桜のあやかしだけでなく、春に咲く花のあやかしの頂点に君臨する王」

『孤独な王様って悲しくない?』

「うるさい。神だか何だか知らんが、消えろ」

浮竹は、桜の花びらを手のひらに集めてふっとふくと、たちまち竜巻ができて夜刀神を襲った。

『わお。歓迎されてる』

「どこだが!」

桜の王である浮竹は、それから毎日定期的に同じ時間にやってくる夜刀神に、根負けして友人になることを約束した。

『わーい、ボクにも友達ができた』

「仮初の友だ。俺は桜の王。孤独を生きる王。春を統べる者」

『ボクは災禍を与える神だよ』

「俺にも災禍を与えるのか」

『さぁ、それは分からない。ボクの意思とは関係なしに周囲に災禍を降り注がせる時もあるから』

浮竹は、夜刀神とそれから時折会うようになった。

「血の匂いがする。人かあやかしでも食ったか」

『うん。あやかし食べたよ。味なんてしないけど、一応栄養補充しないと神として存在できないから』

「いつか、俺も食うのか」

『さぁ、どうだろうねぇ。でも、君はとてもおいしそうだけど、友達だから食べたくないな』

桜の王は、桜の咲く時期だけ王として君臨し、桜が散ると眠りに入る。

それを妨げるのは、夜刀神であった。

『ねえ、釣りに行こうよ』

「なんで俺なんだ」

『だって、ボクの存在を知っても、怖がらないのは君くらいだから。他のあやかしは、食べないでくれ、災禍を与えないでくれって泣き出すんだもの』

「俺はそこらの小者じゃない。桜の王だ」

『うん、知ってる。あやかしの王なら、ボクを怖がらないと思ったんだけど、大正解だったね』

「お前など、微塵も怖くない。災禍など、与えられてもはねのけてやろう」

結局、その日は夜刀神に言いくるめられて、一緒に釣りをした。

「釣れない」

『そりゃ、君の針にはエサがついてないからね』

「あんなうねうねしたきもち悪い虫、触れるか!」

『桜の王ってさ、王であることが悲しくならない?』

「いや、別に」

それは嘘だった。

浮竹は、人間に焦がれていた。

ある日、夜刀神が酒をもって現れた。

「俺にも飲ませろ」

酒を飲んだことのない浮竹は、自分が下戸であることを知らず、アルコール度の高い酒を浴びるように飲んで、ぶっ倒れた。

『ちょっと、桜の王!?』

「抱いてやる。脱げ」

『はいいいい????』

「ぬげえええええええ」

浮竹は夜刀神の衣服をはごうとする。

『ちょ、ま、まじで簡便。君を抱くならまだしも、抱かれるのはごめんだよ!』

夜刀神は、残りの酒を全部浮竹に飲ませた。

浮竹は眠ってしまった。

『酒乱だとは‥‥』

次の日。

「うーん、頭が痛い。飲みすぎた‥‥‥」

『ねぇ、君、昨日のこと覚えてる?』

「何かあったのか?」

『ボクに抱いてくれって泣きついてきた』

「そんなわけあるか!」

ハリセンが、夜刀神の頭に炸裂した。

『痛い‥‥』

「俺は桜の王だ。誰も抱かないし、誰にも抱かれない」

『君、下戸で酒乱だよ。もうお酒は飲まないほうがいいよ』

「酒乱?下戸なのはわかるが‥‥‥」

夜刀神は、昨日のことは内緒にしてあげた。

プライドの高そうな桜の王にはショックだろうからと。

それから時折遊びにくる夜刀神の相手をしているうちに、浮竹は桜の散った季節でも活動するようになっていた。

お互い孤独だが、共にいると少しだけ心が温かくなった。



それから数百年経った。

「紹介する。人間の「春」だ。俺の契約者にして、人生のパートナーだ」

『へぇ、桜の王って、誰にも抱かれないといっておきながら‥‥あべし!』

浮竹のハリセンが、夜刀神に炸裂する。

「はるか昔の言葉など忘れろ!」

『もう、出会って数百年か。ボクは君たちの行く末を見ながら、生きることにしよう』

それからさらに100年経った。


「「春」、「春」!!!」

『だめだ、桜の王。もう死んでる』

「同じ時を生きると約束したんだ。俺の命を、「春」に‥‥」

『だめだよ、桜の王。君がいなくなってしまうと、世界のバランスが崩れる』

「でも、「春」が。うわああああ!!」

浮竹の周囲をとんでもない妖力が集まり、爆発する。

そこに残ったのは、大事な大事な人間の「春」を失って、生きることを諦めたあやかし。

桜の王は、抜け殻のようになって、心を閉ざした。

どんなに夜刀神が話しかけても、何をしてもだだった。

やがて、3年の月日が流れた。

弟のような存在であった朽木白哉の献身的な介護と、夜刀神の接触で、浮竹は心を取り戻した。

でも、昔のように笑うことはなくなっていた。

「夜刀神、俺は少し眠ることにする。「春」の夢を見ながら‥‥‥10年くらい経ったら、気が向いたら起きる」

『ちょっと、ボクが寂しくなるじゃない』

「お前も俺も、元々は孤独だったろう?」

『そうだけど‥‥寂しくなるね』

やがて10年が経ち、桜の王はは再び目覚めた。

「みつけた。「春」の生まれ変わり」

『久しぶりに妖力を感じて起きたと思ったら、「春」の生まれ変わりを見つけたって?』

「そうだ」

『どうするの』

「当たって砕けない。俺のものにしてみせる」

『むしろ、抱かれるのは君のほうで‥‥‥あべし!』

久しぶりのハリセンは、夜刀神の脳を揺さぶった。

『うへぇ』

「お前も見つけれるだろう。大切に思える存在を」

『そうかなぁ‥‥‥』

やがて、夜刀神は術者の浮竹と巡りあう。

本当に、心から愛しいと思える存在に。

桜の王である浮竹は、人間の京楽に恋焦がれ、子猫の姿になって接触する。


さぁ、物語をはじめようか。

災禍ともたらす夜刀神と、その愛しい半妖の物語と。

桜の王と、「春」の生まれ変わりの人間との物語を。










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