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桜のあやかしと共に24

「雪女?」

「はい。実は妻が雪女だったんです。でも、彼女を愛しているんです。正体がばれたから、一緒にいられないと故郷の雪山に戻ってしまって‥‥‥どうか彼女を説得して、一緒にいられるようにしてください」

「君は、妻があやかしだと分かっていても、愛してるんだね?」

京楽が、依頼人の男性を見る。

まだ20代前半の見目のいい若者だった。

「妻は‥‥泪(るい)は、きっとまだ俺のことを愛しているはずなんです。俺も泪を愛している」

「事情は分かりました。できうる限りのことはしてみましょう」

浮竹が、依頼人にから前払い料金をもらい、依頼人を玄関まで送り届ける。

依頼人は、はじめ3億もするタワーマンションで便利屋として祓い屋をしている京楽のことを、ただのぼんぼんの遊びかと思っていたのだが、傍にいる二人の浮竹と白哉という桜のあやかしが、そんな依頼人の心を察知して、術を見せた。

依頼人は、これなら大丈夫だと思い、前払いまで払った。

「さて、どうする?雪山は遠いぞ」

「一番近くの町に、昔私が立ち寄ったことがある。私が異界通りをすれば、面倒な移動は簡単にすませれるであろう」

白哉は、異界通りをすすめた。

「浮竹も白哉君も、長い間生きてるだけあって、いろんなところに行ってるね?」

「京楽、兄も浮竹と同じ時間を生きるのだ。異界通りには慣れておけ。手をつながずとも、迷い子にならぬように」

「う、うん」

白哉が、異界へのゲートをあける。

そこに、冬服に着替えて防寒対策をした京楽と、普通の恰好の浮竹が入る。先頭を歩くのは白哉だ。

異界を抜けて、寂れた街に出た。

「ここから、数キロ先に雪山がある。雪女も住んでいるであろう。私は恋次の元に行く。恋次の祓い屋の手伝いをせねばならぬので、ここで一度お別れだ。帰りは浮竹が異界を通って帰ればよい」

「ありがとうな、白哉」

「浮竹、兄にはいつも世話になっている。これくらい、なんてことはない」

白哉は、異界を通って元来た道を戻っていった。

「さて、雪山にいってみるか」

「すでに寒い。雪女の住む雪山‥‥さぞかし寒いんだろうね。浮竹、そんな薄着で平気?」

「桜の術をかけてやろう」

浮竹は、桜の花びらをふっと京楽にふきかける。

すると、京楽は全く寒くなくなり、体がぽかぽかしてきて、防寒衣装を脱いだ。

「体があったかい。すごいね、浮竹は」

「べ、別にお前が風邪をひいたら困るとかでかけたわけじゃないらな!」

京楽は、クスっと笑って、浮竹と並んで雪山へと歩きだす。

数時間歩いて、雪山の中腹あたりまできた。

「雪女の泪とやら、いるなら返事をしてほしい!」

珍しい桜の王がきたと、雪女たちはこぞって浮竹を囲んで、自分をアピールする。

「俺は、もうパートナーがいる。他に手を出すつもりはない」

「桜の王‥‥つれないお方。でも、麗しくて綺麗」

「泪とやらはいないかい!」

「あたしが泪よ」

着物を着た、清楚な女性をイメージしていた浮竹と京楽は、泪のいけいけギャルの姿にしばし唖然となった。

「君の夫が、帰ってきてほしいと言っているんだ」

「まさか。あたしは雪女よ?それを知った、あの方が私を怖がることはあれど、愛してくれることなんて」

泪は、涙をこぼした。

「ああ。あたしは、まだあの方に必要とされているの?」

「そうだぞ。お前の夫の依頼人が、わざわざ俺たちに頼みに来るくらいだ」

「決めた。あたし、あの方の元にいくわ」

「泪!正体がばれた雪女は、もう二度と同じ人間の前に現れてはいけないという、掟を破るのか!」

おばあさんの雪女が、叫んだ。

「泪、行ってはだめよ。人間は、すぐに気が変わるわ」

「泪、あなたはここで私たちを暮らせばいいのよ」

京楽は、札を取り出す。

「眠れ‥‥」

泪を除く他の雪女たちが、ばたばたと倒れて眠っていく。

「さぁ、泪とやら。俺たちを一緒に、依頼人の元へ帰ろう」

「でも、どうやって?ここからあの町じゃあ、数日はかかるわ」

「俺が異界送りをする。異界を通ればすぐだ」

「異界!聞いたことはあるけど、なれないあやかしや人が入ると、迷い子になって二度と出れないという?」

「俺と手をつないでいれば平気だ。京楽も、帰るぞ」

浮竹は、雪女たちが泪を連れ戻しに来ないように、桜の花びらを散らして、記憶から泪のことを抹消した。

「こんなこと、本当はしたくないんだが‥‥雪女は仲間意識が高いからな」

異界を通って、浮竹、京楽、泪は3億のタワーマンションの一室に戻っていた。

「すごい!あっという間についちゃったわ」

「依頼人に電話しよう」

京楽が、頷いてスマホを取り出す。

依頼人はすぐにやってきた。

「泪!」

「あなた!」

二人は抱きしめあいながら、京楽と浮竹を見た。

「ありがとうございます。泪を説得してくれて」

「あなた、あたしは雪女のあやかしよ?それでも愛してくれるの?」

「当り前だ、泪。俺は、君だけを愛しているんだ。それに、お腹の子も‥‥‥」

「気づいていたの?」

「うん」

どうやら、泪のお腹には依頼人の子がいるらしい。

半妖となるので、世間の風当たりは冷たくなるかもしれないが、この二人なら乗り切ってしまいそうな、そんな気がした。

「では、残りの報酬金を払います」

「いいよいいよ。お腹の子のために、とっておいて。ボクは見ての通り、金に困っていないからね」

「ありがとうございました」

「ありがとう、桜の王に祓い屋さん」

二人は、手を繋いで帰っていった。

「いいことしたねぇ」

「どうだろうな。半妖は差別される。まぁ、母親が生きているうちは、守ってくれるだろう」





「泪。ちゃんと俺の‥‥‥私の子を産むのだよ?」

「はい、藍染様。桜の王と契約者はそこそこの力があるようです」

「それは知っているよ。わざわざ人間の体になって、会いに行ったんだからね?君を私の元に戻してくれという依頼で」

「全て愛染様の御心のままに」

泪は、藍染に忠誠を誓うように膝まづいた。

「京楽春水‥‥‥面白いね。私が殺した「春」の生まれ変わり。「春」を反魂していきついた先は京楽春水の体の奥で、魂として眠りについている。「春」、またお前の愛しい桜の王に、会わせてやろう‥‥‥」

くつくつと、藍染は笑うのだった。




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