桜のあやかしと共に26
浮竹と京楽は、術者の浮竹と夜刀神のもとにきていた。
しばらく術者の浮竹の様子を見ていた浮竹は、術者の自分が夜刀神に全てを捧げるようにしているのに気づく。
そして、夜刀神がそれを指摘できないでいることも。
「散々傷つけたから、言えないのか」
『君に何が分かるの』
「分からない。だが、少なくとも、俺は術者の俺がお前に全てを、命さえも捧げる気でいるのを見ていられない」
『え?俺のことか?』
術者の浮竹は、自分を指さす。
「そうだよ。浮竹の言う通りだよ。君、夜刀神のボクに命さえもさしだすつもりでしょ」
『夜刀神が、それを望むなら‥‥』
浮竹は、そんな術者の自分をハリセンではたいた。
「もっと自分を大切にしろ。それでなくても、夜刀神の存在は危険なんだ。夜刀神が、お前を食ってしまったら、夜刀神は残されて狂うぞ」
『え‥‥』
『ボクは食べないよ!浮竹を食べたりしない!』
夜刀神は、激しく首を横に振った。
「でも、この間血をすすっていただろう。もっと飲んでたら、術者の俺は今頃あの世行きだ」
『それは‥‥‥』
「術者の俺、夜刀神に全てを捧げようとするな。それは自己犠牲で、愛の一種でもあるが、普通の愛じゃない」
『うん。俺、夜刀神が望むならそうしようと思ってたんだ。寂しい感情が流れてきて、このまま放置しておけないと思って血を与えて好きなようにさせていた。それが、間違いだったんだな』
術者の浮竹は、つきものがはれたような顔をする。
「そうだぞ。夜刀神は、お前を散々傷つけたから、自分で指摘できないんだ」
『ボクは!』
「だまれ、夜刀神。お前は術者の俺を傷つけるのが怖いんだろう」
『そうだよ。悪い?』
「悪くはない。だが、だからといって、自分の愛しい者のだめな部分から目を背けるな」
「浮竹の言う通りだね。夜刀神のボク、術者の浮竹を失いたくないのなら、大切にするだけじゃなくって、だめだところはだめって言わなきゃ」
『う‥‥』
浮竹は、夜刀神の頭をハリセンではたいた。
術者の浮竹の時のように力を抜いてではなく、思いっきり。
『痛い』
「痛いと思うなら、反省しろ。大切な術者の俺の血をすすった件もだ。本当に大切にしたいなら、我を失うな。何があっても、守り通せ」
『無茶なことを言うね』
「無茶でもだ。守り抜け」
「そうだよ。夜刀神のボク。ボクは浮竹を何があっても守ってみせる」
『口で言うのは簡単なんだよ』
スパーン。
すかさず、浮竹がハリセンで夜刀神の頭をはたく。
「術者の俺、夜刀神を愛しているなら、自分を捧げようとする真似はやめろ。分かったな?」
『ああ、分かった』
「まったく、夜刀神よりも術者の俺のほうが素直だし、ちゃんということを聞く」
『まるで、ボクがいうことを聞かない子供みたいな言い方だね?昔は、ボクと同じように人を食っていたのに』
「確かに、俺の桜の木の下には俺がエナジーを吸い取った人間の死体が埋まっている。人を愛することを知らなかった故の、過ちだ。過去に戻れるなら、俺は人を食べていた俺を殺している」
「十四郎‥‥」
「京楽、そんな顔をするな。あくまでもの話だ。俺はもう、人もあやかしも食べない」
浮竹の場合、食べるというより血をすすり、エナジーを自分のものとして吸収していた。
5千年も生きてきたのだ。
己を保つのに、他の生命力が必要だった。
「十四郎、ボクはこの前も言ったけど、どんな十四郎でも愛しているから。たとえその手が血でまみれていようとね」
「春水‥‥」
「ボクは、「春」と一つになって、君の大切さがさらに強くなった。もう、残したりしないから。死ぬ時は一緒だよ」
「ああ。春水、約束だ」
浮竹と京楽は、術者の浮竹と夜刀神の京楽を放置して、二人だけの世界に入りだす。
『ちょっと、ボクをしかっておきながら、何自分たちの世界を作ってるのさ』
『そうだぞ、精霊の俺に便利屋の京楽。かっこよかったのに、台無しだぞ』
「あー、とにかく術者の俺は夜刀神を憐れまないで、自分を大切にすること。夜刀神は、術者の俺を傷つけたくないのは分かるが、だめな部分はちゃんとだめって指摘すること」
浮竹は、ちょっとめんどくさそうに言い終えると、術者の浮竹から茶とあやかしまんじゅうをもらった。
「あやかしまんじゅうだが‥‥‥作っている小豆とぎたちが行方不明になっていて、しばらく販売中止だそうだ」
『ええ!困る!俺のお気にいりなのに!』
「俺と京楽で、小豆とぎたちを行方を追っている最中だ。多分、違うところ働いているんだろう。小豆とぎの給料は普通の小豆だからな。高級小豆でも与えられているんだろう」
「うん。じゃあ、ボクたちは小豆とぎを探しにいくから、これ、お店で売った最後のあやかしまんじゅうだよ」
『俺たちも手を貸そうか?』
『いや、「春」と魂が混じりあった京楽の力を見たいから、今回は俺たちだけで解決する」
『あやかしまんじゅう、また元に戻るようにしてね。浮竹の一番のお気に入りのものだから』
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹と京楽がは、あやかしまんじゅうを作る小豆とぎの捜索に出かけるのであった。
「あー、小豆とぎたちかい?集団でひっこしてったよ。高級小豆がもらえるって、はしゃいでたね」
牛頭が、ミルク石鹸の店を開いていて、あやかしまんじゅうを作っている小豆とぎたちとは知り合いだった。
「ありうがとう。石鹸を4つもらえるか」
「毎度」
「小豆とぎたちが向かった方角は分かるかい?」
「北だね」
「北か‥‥森が広がっているが、工場があるんだろう」
浮竹と京楽は、北に向かっていく。
途中で小豆とぎの妖力を察知して、よく探すと枯れ葉でカモフラージュされた隠し階段があった。
「小豆とぎたちは、この中だ」
「強制労働させられているわけじゃないみたいだし、話し合いかな」
「そうだな。小豆とぎたちを雇っていた店の主人は、最高級小豆を給料に出すと言っていた。説得して、戻ってもらおう」
浮竹と京楽は、工場で働く小豆とぎたちに話をして、最高級あずきをもらえるなら、元の職場に戻ってもいいということになった。
「ということだ。すまないな、かまいたち」
小豆とぎたちを雇用していたのは、かまいたちだった。
「残念です。でも、最高級あずきを出せるほどの財力はないので、今回は諦めます。仕事についていない小豆とぎたちを誘って、工場を再稼働させることにします」
「ああ、そうしてくれ」
「出会ったのも何かの縁。小豆とぎたちに作らせていたおはぎをあげましょう」
浮竹と京楽は、おはぎをもらった。
自分たちでは食べずに、大事にしまった。
小豆とぎたちは無事元の職場に戻り、あやかしまんじゅうの販売がまた始まった。
『お、あやかしまんじゅう売ってる!精霊の俺と便利屋の京楽、うまくいったんだな』
『そうみたいだね。とりあず、買う?』
『5つください』
「らっしゃい。毎度ありがとうございます」
少しだけ値上げされていたが、まだまだ財布にやさしい値段だった。
小豆とぎたちに最高級小豆を給料に出すのに、あやかしまんじゅうを値上げするほかになかったのだ。
あやかしまんじゅうを買い終えて、家に戻ると浮竹と京楽がきていた。
『無事、小豆とぎたちを元に戻せたんだな』
「京楽の力を見るまでもなかった。話し合いだけで、無事解決した。これは、おみやけだ」
そう言って、浮竹は牛頭の店でかったミルク石鹸2つと、おはぎをとりだした。
『おおお、それはおはぎ!』
「小豆とぎたちが作っていたから、味はいいはずだよ。かまいたちが、高級小豆を給料にするっていって、小豆とぎたちを元の職場から引き抜いて作らせていたんだよ」
『食べていいのか?』
きらきらした瞳で見つめられて、浮竹も京楽も頷いた。
「お前と夜刀神のために、もらった分をわざわざ持って帰ってきたんだ」
おはぎを食べながら、術者の浮竹は、少しすまなさそうな顔をした。
『お前たちの分はないのか?』
『なしでいいんじゃない。ボクたちに食べさせるために持って帰ってきたみたいだし』
夜刀神は、おはぎを頬張りながら、浮竹と京楽を見る。
「おはぎは、他の老舗で買ってるからな。小豆とぎがつくったものより、きっとうまい」
「まぁ、値段が値段だからねぇ」
『これだから、金持ちは‥‥』
「何か言ったか?」
『げふんげふん、このおはぎ、絶品だね。すごくおいしいよ。食べれないってかわいそうに』
『精霊の俺、食べかけでよければ少し食うか?』
「いや、いい。老舗で買ったおがぎがここにある」
『老舗のおはぎ‥‥』
「食うか?」
『いや、俺は高価なものはだめだから。お前たちで食ってくれ』
ちゃっかり、夜刀神は老舗のおはぎを食べていた。
『うーん、甲乙つけがたいね。でもボクは小豆とぎが作ったっていうおはぎのほうが好きかな』
「お前は勝手に食うな!」
『えー。浮竹はよくて、ボクはだめなの?』
「そうだ」
「十四郎、夜刀神が食べてもいいじゃない」
「よくない。夜刀神にやるくらいなら、豚のエサにする」
浮竹の言葉に、京楽は笑った。
「酷い言われようだね」
『そうだよ、酷いよ!』
浮竹は、コウモリの姿をしていた夜刀神にハリセンを食らわせる。
『動物虐待反対!』
「なにが動物虐待だ。夜刀神のくせに」
睨みあう二人をおいて、京楽と術者の浮竹は、それぞれ違う場所で手に入れたおはぎを食べながら、お茶を飲むのであった。
しばらく術者の浮竹の様子を見ていた浮竹は、術者の自分が夜刀神に全てを捧げるようにしているのに気づく。
そして、夜刀神がそれを指摘できないでいることも。
「散々傷つけたから、言えないのか」
『君に何が分かるの』
「分からない。だが、少なくとも、俺は術者の俺がお前に全てを、命さえも捧げる気でいるのを見ていられない」
『え?俺のことか?』
術者の浮竹は、自分を指さす。
「そうだよ。浮竹の言う通りだよ。君、夜刀神のボクに命さえもさしだすつもりでしょ」
『夜刀神が、それを望むなら‥‥』
浮竹は、そんな術者の自分をハリセンではたいた。
「もっと自分を大切にしろ。それでなくても、夜刀神の存在は危険なんだ。夜刀神が、お前を食ってしまったら、夜刀神は残されて狂うぞ」
『え‥‥』
『ボクは食べないよ!浮竹を食べたりしない!』
夜刀神は、激しく首を横に振った。
「でも、この間血をすすっていただろう。もっと飲んでたら、術者の俺は今頃あの世行きだ」
『それは‥‥‥』
「術者の俺、夜刀神に全てを捧げようとするな。それは自己犠牲で、愛の一種でもあるが、普通の愛じゃない」
『うん。俺、夜刀神が望むならそうしようと思ってたんだ。寂しい感情が流れてきて、このまま放置しておけないと思って血を与えて好きなようにさせていた。それが、間違いだったんだな』
術者の浮竹は、つきものがはれたような顔をする。
「そうだぞ。夜刀神は、お前を散々傷つけたから、自分で指摘できないんだ」
『ボクは!』
「だまれ、夜刀神。お前は術者の俺を傷つけるのが怖いんだろう」
『そうだよ。悪い?』
「悪くはない。だが、だからといって、自分の愛しい者のだめな部分から目を背けるな」
「浮竹の言う通りだね。夜刀神のボク、術者の浮竹を失いたくないのなら、大切にするだけじゃなくって、だめだところはだめって言わなきゃ」
『う‥‥』
浮竹は、夜刀神の頭をハリセンではたいた。
術者の浮竹の時のように力を抜いてではなく、思いっきり。
『痛い』
「痛いと思うなら、反省しろ。大切な術者の俺の血をすすった件もだ。本当に大切にしたいなら、我を失うな。何があっても、守り通せ」
『無茶なことを言うね』
「無茶でもだ。守り抜け」
「そうだよ。夜刀神のボク。ボクは浮竹を何があっても守ってみせる」
『口で言うのは簡単なんだよ』
スパーン。
すかさず、浮竹がハリセンで夜刀神の頭をはたく。
「術者の俺、夜刀神を愛しているなら、自分を捧げようとする真似はやめろ。分かったな?」
『ああ、分かった』
「まったく、夜刀神よりも術者の俺のほうが素直だし、ちゃんということを聞く」
『まるで、ボクがいうことを聞かない子供みたいな言い方だね?昔は、ボクと同じように人を食っていたのに』
「確かに、俺の桜の木の下には俺がエナジーを吸い取った人間の死体が埋まっている。人を愛することを知らなかった故の、過ちだ。過去に戻れるなら、俺は人を食べていた俺を殺している」
「十四郎‥‥」
「京楽、そんな顔をするな。あくまでもの話だ。俺はもう、人もあやかしも食べない」
浮竹の場合、食べるというより血をすすり、エナジーを自分のものとして吸収していた。
5千年も生きてきたのだ。
己を保つのに、他の生命力が必要だった。
「十四郎、ボクはこの前も言ったけど、どんな十四郎でも愛しているから。たとえその手が血でまみれていようとね」
「春水‥‥」
「ボクは、「春」と一つになって、君の大切さがさらに強くなった。もう、残したりしないから。死ぬ時は一緒だよ」
「ああ。春水、約束だ」
浮竹と京楽は、術者の浮竹と夜刀神の京楽を放置して、二人だけの世界に入りだす。
『ちょっと、ボクをしかっておきながら、何自分たちの世界を作ってるのさ』
『そうだぞ、精霊の俺に便利屋の京楽。かっこよかったのに、台無しだぞ』
「あー、とにかく術者の俺は夜刀神を憐れまないで、自分を大切にすること。夜刀神は、術者の俺を傷つけたくないのは分かるが、だめな部分はちゃんとだめって指摘すること」
浮竹は、ちょっとめんどくさそうに言い終えると、術者の浮竹から茶とあやかしまんじゅうをもらった。
「あやかしまんじゅうだが‥‥‥作っている小豆とぎたちが行方不明になっていて、しばらく販売中止だそうだ」
『ええ!困る!俺のお気にいりなのに!』
「俺と京楽で、小豆とぎたちを行方を追っている最中だ。多分、違うところ働いているんだろう。小豆とぎの給料は普通の小豆だからな。高級小豆でも与えられているんだろう」
「うん。じゃあ、ボクたちは小豆とぎを探しにいくから、これ、お店で売った最後のあやかしまんじゅうだよ」
『俺たちも手を貸そうか?』
『いや、「春」と魂が混じりあった京楽の力を見たいから、今回は俺たちだけで解決する」
『あやかしまんじゅう、また元に戻るようにしてね。浮竹の一番のお気に入りのものだから』
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹と京楽がは、あやかしまんじゅうを作る小豆とぎの捜索に出かけるのであった。
「あー、小豆とぎたちかい?集団でひっこしてったよ。高級小豆がもらえるって、はしゃいでたね」
牛頭が、ミルク石鹸の店を開いていて、あやかしまんじゅうを作っている小豆とぎたちとは知り合いだった。
「ありうがとう。石鹸を4つもらえるか」
「毎度」
「小豆とぎたちが向かった方角は分かるかい?」
「北だね」
「北か‥‥森が広がっているが、工場があるんだろう」
浮竹と京楽は、北に向かっていく。
途中で小豆とぎの妖力を察知して、よく探すと枯れ葉でカモフラージュされた隠し階段があった。
「小豆とぎたちは、この中だ」
「強制労働させられているわけじゃないみたいだし、話し合いかな」
「そうだな。小豆とぎたちを雇っていた店の主人は、最高級小豆を給料に出すと言っていた。説得して、戻ってもらおう」
浮竹と京楽は、工場で働く小豆とぎたちに話をして、最高級あずきをもらえるなら、元の職場に戻ってもいいということになった。
「ということだ。すまないな、かまいたち」
小豆とぎたちを雇用していたのは、かまいたちだった。
「残念です。でも、最高級あずきを出せるほどの財力はないので、今回は諦めます。仕事についていない小豆とぎたちを誘って、工場を再稼働させることにします」
「ああ、そうしてくれ」
「出会ったのも何かの縁。小豆とぎたちに作らせていたおはぎをあげましょう」
浮竹と京楽は、おはぎをもらった。
自分たちでは食べずに、大事にしまった。
小豆とぎたちは無事元の職場に戻り、あやかしまんじゅうの販売がまた始まった。
『お、あやかしまんじゅう売ってる!精霊の俺と便利屋の京楽、うまくいったんだな』
『そうみたいだね。とりあず、買う?』
『5つください』
「らっしゃい。毎度ありがとうございます」
少しだけ値上げされていたが、まだまだ財布にやさしい値段だった。
小豆とぎたちに最高級小豆を給料に出すのに、あやかしまんじゅうを値上げするほかになかったのだ。
あやかしまんじゅうを買い終えて、家に戻ると浮竹と京楽がきていた。
『無事、小豆とぎたちを元に戻せたんだな』
「京楽の力を見るまでもなかった。話し合いだけで、無事解決した。これは、おみやけだ」
そう言って、浮竹は牛頭の店でかったミルク石鹸2つと、おはぎをとりだした。
『おおお、それはおはぎ!』
「小豆とぎたちが作っていたから、味はいいはずだよ。かまいたちが、高級小豆を給料にするっていって、小豆とぎたちを元の職場から引き抜いて作らせていたんだよ」
『食べていいのか?』
きらきらした瞳で見つめられて、浮竹も京楽も頷いた。
「お前と夜刀神のために、もらった分をわざわざ持って帰ってきたんだ」
おはぎを食べながら、術者の浮竹は、少しすまなさそうな顔をした。
『お前たちの分はないのか?』
『なしでいいんじゃない。ボクたちに食べさせるために持って帰ってきたみたいだし』
夜刀神は、おはぎを頬張りながら、浮竹と京楽を見る。
「おはぎは、他の老舗で買ってるからな。小豆とぎがつくったものより、きっとうまい」
「まぁ、値段が値段だからねぇ」
『これだから、金持ちは‥‥』
「何か言ったか?」
『げふんげふん、このおはぎ、絶品だね。すごくおいしいよ。食べれないってかわいそうに』
『精霊の俺、食べかけでよければ少し食うか?』
「いや、いい。老舗で買ったおがぎがここにある」
『老舗のおはぎ‥‥』
「食うか?」
『いや、俺は高価なものはだめだから。お前たちで食ってくれ』
ちゃっかり、夜刀神は老舗のおはぎを食べていた。
『うーん、甲乙つけがたいね。でもボクは小豆とぎが作ったっていうおはぎのほうが好きかな』
「お前は勝手に食うな!」
『えー。浮竹はよくて、ボクはだめなの?』
「そうだ」
「十四郎、夜刀神が食べてもいいじゃない」
「よくない。夜刀神にやるくらいなら、豚のエサにする」
浮竹の言葉に、京楽は笑った。
「酷い言われようだね」
『そうだよ、酷いよ!』
浮竹は、コウモリの姿をしていた夜刀神にハリセンを食らわせる。
『動物虐待反対!』
「なにが動物虐待だ。夜刀神のくせに」
睨みあう二人をおいて、京楽と術者の浮竹は、それぞれ違う場所で手に入れたおはぎを食べながら、お茶を飲むのであった。
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