桜のあやかしと共に31
京楽は、正直なところ、夜刀神の自分をよく思っていなかった。
自分より浮竹と一緒にいた時間が長く、そして友として普通に浮竹の傍にいれる。
京楽は、満月の夜にひっそりと夜刀神を呼び出した。
『どうしたの、こんな時間に』
「十四郎と、あまり仲良くしないで」
『え、何嫉妬?かわいいねぇ』
「ボクは本気だ!」
京楽は、感情が高ぶって、桜鬼の姿になっていた。
『桜の王と仲良くしようが、しまいが、ボクの気の向くままさ』
「君って人は‥‥」
『ボクは人じゃないからね?あやかしだけど、同時に神でもある』
そう言って、夜刀神はこうもり姿になって飛んで消えていってしまった。
「十四郎‥‥ボクは‥‥」
朝になって、京楽は何食わぬ顔で浮竹を起こして朝食を作ってもらい、早起きの白哉を呼んで、3人で朝食をとった。
「京楽、何かあったのか?桜鬼の気配が強い」
「ん?何にもないよ」
「嘘をつくな。ばればれだぞ、京楽。兄は、隠し事がへたくそだ」
「んー。夜中に夜刀神とあって、ちょっと喧嘩しちゃった」
「夜刀神、しばく」
「ううん、悪いのはボクだから。浮竹は気にしないで?」
次の日、夜刀神と術者の浮竹と会った。
浮竹は無防備に夜刀神に近づいて、そっと耳うちされて笑っていた。
ギシリ。
桜鬼の感情が、歪みを覚える。
それは、闇そのもの。
「だめだ、しっかりしないと。ボクは十四郎の影で、十四郎を守る存在なんだから」
京楽は自分にしっかり言い聞かせる。
けれど、内に秘めた闇は増大するばかり。
夜刀神と、視線があった。人型をとっていた夜刀神は、ニタリと笑って、浮竹を抱きしめる。
「何をする、夜刀神!」
浮竹は怒って、ハリセンでびしばし夜刀神を殴る。
「どいて。浮竹は、ボクのものだよ。ベタベタしないで」
京楽は、桜鬼の姿になっているのにも気づかず、浮竹を奪い返す。
「京楽、桜鬼になっているぞ!落ち着け!」
「落ち着いてるよ。それなのに、わざと夜刀神が君に‥‥」
京楽が、桜色の瞳から血のような深紅の瞳に変わっていた。
『少し、闇に飲まれたようだな。精霊の俺、桜鬼の京楽を正気づかせるために少し扱いが乱暴になるが、許してくれ』
「京楽、俺が分からないのか、京楽!」
『名前言っても無駄だよ。闇に飲まれてる』
「京楽!」
「おいしそう。血をちょうだい?」
京楽は、そう言って浮竹に近づく。
「精霊の俺、こっちだ!このままじゃ、忠告した通りになってしまう」
術者の浮竹がバリアをはるが、浮竹は首を左右に振った。
「もともと、桜鬼は俺だ。俺の血をすすれば、正気に戻る」
「愛してるよ、十四郎」
闇に飲まれてもなお、恋心は消えていなかった。
京楽は浮竹の肩に噛みついて、血をすする。
それを、浮竹は受け入れる。
「あ、ボクは、なんてことを‥‥‥!」
すぐに正気に戻った京楽は、部屋を飛び出していった。
「あ、京楽!」
『今は、そっとしていおいてあげよう。自己嫌悪にひたって、帰ってくるだろうから』
「元をただせば、夜刀神、お前が!」
『うん。わざとあおったよ。それで闇に飲まれたまま帰ってこないようじゃ、桜鬼になったのは間違いだからね?』
浮竹は、ただひたすら待った。
術者の浮竹も、夜刀神も、浮竹と一緒に待った。
夜になって、京楽はずぶ濡れになって戻ってきた。
外で、どこか水のある場所で頭をひやすついでに飛び込んできたのだろう。
まだ寒いので、風邪をひかないようにと、浮竹はバスタオルをもってくる。
「浮竹、ボクが怖くないの?」
「怖くない。桜鬼はもともと俺だ。俺が桜鬼だった頃は、もっと闇に飲まれていた」
「うん‥‥‥」
「京楽、嫌なことは嫌って言ってくれ。俺には時折お前が何を考えているのか分からない時がある」
「うん、ごめんね。あと、君の血って今までのどんなおいしい料理より美味だった」
「ばか」
闇に完全に飲まれずに戻ってきた京楽は、浮竹を抱きしめて、術者の浮竹が治した噛み後に噛みついた。
「いたたた」
「ボクのものだっていう、証だよ」
「ばか‥‥」
浮竹は真っ赤になった。
心配していた術者の浮竹も夜刀神も、生温かい眼差しでこちらを見ていた。
『ラブラブだな』
『ラブラブだね。心配して損した』
『元を言えば、お前が精霊の俺を抱きしめて、わざと闇に落とすような真似をするからだ!』
術者の浮竹は、怒って、こうもり姿にもどっていた夜刀神をソファーに投げ捨てた。
『ご、誤解だよ!あれはわざとであって』
『なお、悪い』
術者の浮竹は、怒って夜刀神を放り出して、浮竹と京楽の輪に交じる。
京楽はおちついて、風呂に入りに行った。
「俺も風呂に入ってくる」
『お、しっぽりかい?』
「お前の脳内はそういうことしかないのか!違うバスルームを使うに決まっているだろう!」
『なーんだ、つまんないの』
『京楽?精霊の俺をからかうのも、ほどごどにな?桜鬼の京楽を闇に落としたりして、今日は本当に疲れた』
京楽が嚙みついた痕は、術者の浮竹が治療してくれたが、浮竹は京楽に治癒してもらいたがっていた。
傷が少し深かったので、却下されたが。
『あーあ、精霊の俺も、俺の二の舞だな。自己犠牲は愛だけど普通の愛じゃないって言ってたのに。言い出しっぺがこうなると、もうどうにもならないな』
風呂からあがってきた浮竹と京楽は、ペアルックのパジャマを着ていた。
『うわぁ、ラブパワー全開だ』
「ち、違う。パジャマは今これしかなくて、洗濯しているんだ」
『じゃあ、普通の服着ればいいのに』
もっともな夜刀神の言葉に、浮竹も京楽も赤くなった。
『どうせ、白哉くんもいないし、ボクたちがいなかったら、しっぽりしてたとこでしょ?』
「だから、お前の脳はそれしかないのか!」
逃げようとしたこうもり姿の夜刀神を、術者の浮竹は手で持って固定する。
『ちょ、浮竹ぇ!?』
『ハリセンいちゃって』
「助かる」
スパーンと、本日最大に痛いハリセンを食らって、夜刀神は涙目になった。
「ボクもハリセンで殴りたい」
『どうぞどうぞ』
術者の浮竹は、京楽のほうに夜刀神を向けた。
スパーン。
浮竹だけでなく、京楽にまでハリセンではたかれて、がっくりした。
『桜鬼のボクは怖いんじゃなかったの?』
『こわいぞ。でも、お前のふざけかたが頭にきたから』
『うううう。ごめんなさい』
『じゃあ、俺たちは帰る‥‥いい匂い。夕飯ご馳走になってから、帰るな?』
今回は、ちゃんと夜刀神の分もあった。
「今帰った」
「遅かったな、白哉。夕飯の用意をしてあるから、手を洗ってこい」
「今日は、訪問者も一緒か」
「いやだったか?」
「いや、そんなことはない。賑やかになりそうだ」
白哉は手を洗いに、奥に消えてしまう。
『精霊の俺って、白哉君には甘いよな』
『そうだね』
「白哉は、十四郎の弟だから」
「俺は、普通に白哉と接してるつもりだが?」
『天然か』
『やだやだ、たらしじゃない』
「そこもまた、十四郎のいいところだよ」
「何がだ?」
浮竹は理解できないまま、ボロネーゼやチーズハンバーグといった夕食を食べるのであった。
『ああ、やっぱり精霊の俺の飯はうまいな』
『ボクも負けないよ!』
「負けるよ。何せ、十四郎は昔、人間に化けて、料理の学校に通っていたからね」
『何それ!チートじゃない』
夜刀神の頭を、ハリセンがうなる。
「ちゃんと、努力して料理の勉強したんだからな。チートなんかじゃない」
皆、明るく笑う。
京楽も、笑っていた。
浮竹は安堵する。夜刀神のように、傷つけたくないからと、なることがなくて。
その日、就寝した白哉の部屋に結界をはって、浮竹と京楽は久しぶりに睦みあうのであった。
自分より浮竹と一緒にいた時間が長く、そして友として普通に浮竹の傍にいれる。
京楽は、満月の夜にひっそりと夜刀神を呼び出した。
『どうしたの、こんな時間に』
「十四郎と、あまり仲良くしないで」
『え、何嫉妬?かわいいねぇ』
「ボクは本気だ!」
京楽は、感情が高ぶって、桜鬼の姿になっていた。
『桜の王と仲良くしようが、しまいが、ボクの気の向くままさ』
「君って人は‥‥」
『ボクは人じゃないからね?あやかしだけど、同時に神でもある』
そう言って、夜刀神はこうもり姿になって飛んで消えていってしまった。
「十四郎‥‥ボクは‥‥」
朝になって、京楽は何食わぬ顔で浮竹を起こして朝食を作ってもらい、早起きの白哉を呼んで、3人で朝食をとった。
「京楽、何かあったのか?桜鬼の気配が強い」
「ん?何にもないよ」
「嘘をつくな。ばればれだぞ、京楽。兄は、隠し事がへたくそだ」
「んー。夜中に夜刀神とあって、ちょっと喧嘩しちゃった」
「夜刀神、しばく」
「ううん、悪いのはボクだから。浮竹は気にしないで?」
次の日、夜刀神と術者の浮竹と会った。
浮竹は無防備に夜刀神に近づいて、そっと耳うちされて笑っていた。
ギシリ。
桜鬼の感情が、歪みを覚える。
それは、闇そのもの。
「だめだ、しっかりしないと。ボクは十四郎の影で、十四郎を守る存在なんだから」
京楽は自分にしっかり言い聞かせる。
けれど、内に秘めた闇は増大するばかり。
夜刀神と、視線があった。人型をとっていた夜刀神は、ニタリと笑って、浮竹を抱きしめる。
「何をする、夜刀神!」
浮竹は怒って、ハリセンでびしばし夜刀神を殴る。
「どいて。浮竹は、ボクのものだよ。ベタベタしないで」
京楽は、桜鬼の姿になっているのにも気づかず、浮竹を奪い返す。
「京楽、桜鬼になっているぞ!落ち着け!」
「落ち着いてるよ。それなのに、わざと夜刀神が君に‥‥」
京楽が、桜色の瞳から血のような深紅の瞳に変わっていた。
『少し、闇に飲まれたようだな。精霊の俺、桜鬼の京楽を正気づかせるために少し扱いが乱暴になるが、許してくれ』
「京楽、俺が分からないのか、京楽!」
『名前言っても無駄だよ。闇に飲まれてる』
「京楽!」
「おいしそう。血をちょうだい?」
京楽は、そう言って浮竹に近づく。
「精霊の俺、こっちだ!このままじゃ、忠告した通りになってしまう」
術者の浮竹がバリアをはるが、浮竹は首を左右に振った。
「もともと、桜鬼は俺だ。俺の血をすすれば、正気に戻る」
「愛してるよ、十四郎」
闇に飲まれてもなお、恋心は消えていなかった。
京楽は浮竹の肩に噛みついて、血をすする。
それを、浮竹は受け入れる。
「あ、ボクは、なんてことを‥‥‥!」
すぐに正気に戻った京楽は、部屋を飛び出していった。
「あ、京楽!」
『今は、そっとしていおいてあげよう。自己嫌悪にひたって、帰ってくるだろうから』
「元をただせば、夜刀神、お前が!」
『うん。わざとあおったよ。それで闇に飲まれたまま帰ってこないようじゃ、桜鬼になったのは間違いだからね?』
浮竹は、ただひたすら待った。
術者の浮竹も、夜刀神も、浮竹と一緒に待った。
夜になって、京楽はずぶ濡れになって戻ってきた。
外で、どこか水のある場所で頭をひやすついでに飛び込んできたのだろう。
まだ寒いので、風邪をひかないようにと、浮竹はバスタオルをもってくる。
「浮竹、ボクが怖くないの?」
「怖くない。桜鬼はもともと俺だ。俺が桜鬼だった頃は、もっと闇に飲まれていた」
「うん‥‥‥」
「京楽、嫌なことは嫌って言ってくれ。俺には時折お前が何を考えているのか分からない時がある」
「うん、ごめんね。あと、君の血って今までのどんなおいしい料理より美味だった」
「ばか」
闇に完全に飲まれずに戻ってきた京楽は、浮竹を抱きしめて、術者の浮竹が治した噛み後に噛みついた。
「いたたた」
「ボクのものだっていう、証だよ」
「ばか‥‥」
浮竹は真っ赤になった。
心配していた術者の浮竹も夜刀神も、生温かい眼差しでこちらを見ていた。
『ラブラブだな』
『ラブラブだね。心配して損した』
『元を言えば、お前が精霊の俺を抱きしめて、わざと闇に落とすような真似をするからだ!』
術者の浮竹は、怒って、こうもり姿にもどっていた夜刀神をソファーに投げ捨てた。
『ご、誤解だよ!あれはわざとであって』
『なお、悪い』
術者の浮竹は、怒って夜刀神を放り出して、浮竹と京楽の輪に交じる。
京楽はおちついて、風呂に入りに行った。
「俺も風呂に入ってくる」
『お、しっぽりかい?』
「お前の脳内はそういうことしかないのか!違うバスルームを使うに決まっているだろう!」
『なーんだ、つまんないの』
『京楽?精霊の俺をからかうのも、ほどごどにな?桜鬼の京楽を闇に落としたりして、今日は本当に疲れた』
京楽が嚙みついた痕は、術者の浮竹が治療してくれたが、浮竹は京楽に治癒してもらいたがっていた。
傷が少し深かったので、却下されたが。
『あーあ、精霊の俺も、俺の二の舞だな。自己犠牲は愛だけど普通の愛じゃないって言ってたのに。言い出しっぺがこうなると、もうどうにもならないな』
風呂からあがってきた浮竹と京楽は、ペアルックのパジャマを着ていた。
『うわぁ、ラブパワー全開だ』
「ち、違う。パジャマは今これしかなくて、洗濯しているんだ」
『じゃあ、普通の服着ればいいのに』
もっともな夜刀神の言葉に、浮竹も京楽も赤くなった。
『どうせ、白哉くんもいないし、ボクたちがいなかったら、しっぽりしてたとこでしょ?』
「だから、お前の脳はそれしかないのか!」
逃げようとしたこうもり姿の夜刀神を、術者の浮竹は手で持って固定する。
『ちょ、浮竹ぇ!?』
『ハリセンいちゃって』
「助かる」
スパーンと、本日最大に痛いハリセンを食らって、夜刀神は涙目になった。
「ボクもハリセンで殴りたい」
『どうぞどうぞ』
術者の浮竹は、京楽のほうに夜刀神を向けた。
スパーン。
浮竹だけでなく、京楽にまでハリセンではたかれて、がっくりした。
『桜鬼のボクは怖いんじゃなかったの?』
『こわいぞ。でも、お前のふざけかたが頭にきたから』
『うううう。ごめんなさい』
『じゃあ、俺たちは帰る‥‥いい匂い。夕飯ご馳走になってから、帰るな?』
今回は、ちゃんと夜刀神の分もあった。
「今帰った」
「遅かったな、白哉。夕飯の用意をしてあるから、手を洗ってこい」
「今日は、訪問者も一緒か」
「いやだったか?」
「いや、そんなことはない。賑やかになりそうだ」
白哉は手を洗いに、奥に消えてしまう。
『精霊の俺って、白哉君には甘いよな』
『そうだね』
「白哉は、十四郎の弟だから」
「俺は、普通に白哉と接してるつもりだが?」
『天然か』
『やだやだ、たらしじゃない』
「そこもまた、十四郎のいいところだよ」
「何がだ?」
浮竹は理解できないまま、ボロネーゼやチーズハンバーグといった夕食を食べるのであった。
『ああ、やっぱり精霊の俺の飯はうまいな』
『ボクも負けないよ!』
「負けるよ。何せ、十四郎は昔、人間に化けて、料理の学校に通っていたからね」
『何それ!チートじゃない』
夜刀神の頭を、ハリセンがうなる。
「ちゃんと、努力して料理の勉強したんだからな。チートなんかじゃない」
皆、明るく笑う。
京楽も、笑っていた。
浮竹は安堵する。夜刀神のように、傷つけたくないからと、なることがなくて。
その日、就寝した白哉の部屋に結界をはって、浮竹と京楽は久しぶりに睦みあうのであった。
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