桜のあやかしと共に32
浮竹は、妖狐になった元術者の浮竹を見て、ため息を零した。
「いつか、こうなるんじゃないかと思っていたんだ」
『そうなのか?』
「半妖と神では、生きる時間が違いすぎる。俺は、俺と同じ時を生きるように京楽と不老の契約を結ばせた。生きる時間が違う、それはいつか死の別れがあるということだ。俺たちあやかしは、死を嫌う」
『まぁねぇ。浮竹、美人でしょ?』
夜刀神の京楽がそう自慢すると、負けてはいられないとばかりに京楽が反論する。
「ボクの浮竹のほうが美人だよ」
『お、言うようになったねぇ。ここは、勝負でも‥‥」
『やめろ、京楽』
「夜刀神はからかって楽しんでいるだけだ。本気にするな」
浮竹がそう言うと、妖狐の浮竹が口を開く。
『まぁ、俺もからかいたいんだがな』
「命を捧げた相手が夜刀神だからな。性悪なところが受け継がれたんだろう」
『ってういか、ぶっちゃけ今の俺は桜鬼の京楽が嫌いで、桜の王のお前が苦手だ』
「ぶっちゃけすぎだな。もう会わないほうがいいか」
『あ、それはそれで寂しいからだめだ』
「どっちなんだ」
『浮竹には、油上げがきくよ』
こそっと、夜刀神に耳打ちされて、浮竹はキッチンに行き、冷蔵庫にあった油あげを妖狐の浮竹の前でちらつかせた。
『あ、油あげ!』
「妖狐のお前は俺が苦手じゃなーい苦手じゃなーい」
『油あげ、くれ!苦手じゃなーい、苦手じゃなーい』
本能にすりこませるように、浮竹は何度も苦手じゃないと繰り返し、油あげをちらつかせた。
「ほら、油あげやるぞ。俺のことが苦手じゃなくなったら、もっとやろう」
『もう苦手じゃない!油あげ、もっとくれ』
「京楽が嫌いなのは、さすがに治せないか」
『桜鬼の京楽は嫌いだ。「春」が混じっているから。「春」も嫌いだ。夜刀神を傷つける原因になったから』
浮竹は、嫌いと言われてちょとショックを受けている京楽の頭を撫でる。
「お前には、俺がいるだろう?それで十分だろう?」
「それもそうだね。十四郎、今夜は‥‥‥」
『お、しっぽりするのか?』
『しっぽりするんだね?』
とりあえず、似たりよったりな反応を示す二人をハリセンで殴ってから、浮竹は妖狐の浮竹と夜刀神の新しい館を見る。
「おんぼろだな」
『そりゃ、金なんてないからね。どこぞのぼんぼんと違って』
「金はあったほうがいいよ。浮竹が高級思考なのに、金がないとやっていけないからね」
『あー、生まれながらの金持ちってヤダなぁ。ボクも浮竹も節約思考なのに、高級思考なところがやだ』
「夜刀神、お前は財に興味がないだけで、俺は長く生きてるからけっこうためこんでるぞ」
『え、桜の王まで金持ちだったの?』
「半分は、「春」が残した遺産だがな」
『「春」もそういえばぼんぼんだったね。生まれ変わってもぼんぼんとか、なんか恨めしい』
浮竹は、ため息をつく。
「祓い屋稼業続けて、金を稼げばいいだろう。少しお前たちの噂を聞くようになった。仕事はけっこうこなしているようだな」
『桜の王と桜鬼の京楽には負けるけどな』
妖狐の浮竹は、油あげをかじりながら、浮竹への苦手意識がなくなっているのに気づく。
『桜の王は苦手じゃなくなった。ただし、桜鬼の京楽は嫌いなままだ。近づいたら燃やす』
「そうまで言われて、近づいたりしないよ」
京楽は肩をすくめた。
こんこん。
扉をたたく音がして、妖狐から人に姿に化けた浮竹が出る。
『はい、なんでしょう:』
「あの、最近ここに狐のお化けが出るんです。尻尾が3本で‥‥怖いので、退治してもらえませんか」
『へぇ、尻尾が3本でこういうお化け?』
妖狐の浮竹は、人間の姿を解いてあやかしの姿になった。
「ひいいい、狐のお化けええええ!!!」
『めんどうだね。消す?』
物騒な夜刀神に、浮竹がまったをかける。
「俺が、記憶だけを消しておこう」
『いいなぁ。桜の王の力、人の精神や記憶に干渉できる。いいなぁ』
「ほしがっても身につかんぞ。これは「桜の王」独自の力だ」
『桜の王はずるいね。自分だけ綺麗になっちゃって』
それは、京楽に桜鬼を譲り渡したことを意味していた。
「俺は、京楽を傷つけるなら、お前たちとも戦う」
『へぇ。力ではかなわないと、分かっているのに?』
浮竹は、威嚇する。
「桜の王の力があると言っただろう。その気になれば、夜刀神、お前から妖狐の俺の記憶を抹消できるんだぞ」
『そんなことする前に、殺すよ?』
「お前に俺が殺せるのか?ただ一人の友を」
『う‥‥‥‥』:
夜刀神にとって、浮竹はただ一人の友で、長年付き合ってきた腐れ縁だった。
それを自分の手で壊すことは、できなかった。
『精霊の俺、京楽を困らせるな』
「それはこっちの台詞だ。妖狐になっても、人間の残滓が強いぞ、今のお前は。さっきの依頼人のように、人に正体を明かさいことだな」
『考えておく』
「今のお前たちといても、全然楽しくない。京楽、帰るぞ」
「浮竹、いいの?おみやげももってきてるんでしょ?」
「あげる必要はない。帰る」
浮竹は機嫌を損ねて、京楽と一緒に異界渡りをして帰ってしまった。
『よかったの、浮竹』
『んー。うまくいかないものだな。思考が人に近い精霊の俺とは、仲良くしたいが、怒らせてしまう』
『まぁ、妖狐の力のコントロールをするついでに、精霊の君との仲直りの仕方でも考えておくといいよ。ボクは、夕ご飯作ってくるね」
『稲荷寿司と、きつねうどんで!』
『はいはい。ほんとに、油あげがすきだねぇ』
『狐だからな』
その頃、浮竹と京楽は、二人のいらつかせた存在を忘れるために、白哉に結界をはってもらい、しっぽりするのであった。
「いつか、こうなるんじゃないかと思っていたんだ」
『そうなのか?』
「半妖と神では、生きる時間が違いすぎる。俺は、俺と同じ時を生きるように京楽と不老の契約を結ばせた。生きる時間が違う、それはいつか死の別れがあるということだ。俺たちあやかしは、死を嫌う」
『まぁねぇ。浮竹、美人でしょ?』
夜刀神の京楽がそう自慢すると、負けてはいられないとばかりに京楽が反論する。
「ボクの浮竹のほうが美人だよ」
『お、言うようになったねぇ。ここは、勝負でも‥‥」
『やめろ、京楽』
「夜刀神はからかって楽しんでいるだけだ。本気にするな」
浮竹がそう言うと、妖狐の浮竹が口を開く。
『まぁ、俺もからかいたいんだがな』
「命を捧げた相手が夜刀神だからな。性悪なところが受け継がれたんだろう」
『ってういか、ぶっちゃけ今の俺は桜鬼の京楽が嫌いで、桜の王のお前が苦手だ』
「ぶっちゃけすぎだな。もう会わないほうがいいか」
『あ、それはそれで寂しいからだめだ』
「どっちなんだ」
『浮竹には、油上げがきくよ』
こそっと、夜刀神に耳打ちされて、浮竹はキッチンに行き、冷蔵庫にあった油あげを妖狐の浮竹の前でちらつかせた。
『あ、油あげ!』
「妖狐のお前は俺が苦手じゃなーい苦手じゃなーい」
『油あげ、くれ!苦手じゃなーい、苦手じゃなーい』
本能にすりこませるように、浮竹は何度も苦手じゃないと繰り返し、油あげをちらつかせた。
「ほら、油あげやるぞ。俺のことが苦手じゃなくなったら、もっとやろう」
『もう苦手じゃない!油あげ、もっとくれ』
「京楽が嫌いなのは、さすがに治せないか」
『桜鬼の京楽は嫌いだ。「春」が混じっているから。「春」も嫌いだ。夜刀神を傷つける原因になったから』
浮竹は、嫌いと言われてちょとショックを受けている京楽の頭を撫でる。
「お前には、俺がいるだろう?それで十分だろう?」
「それもそうだね。十四郎、今夜は‥‥‥」
『お、しっぽりするのか?』
『しっぽりするんだね?』
とりあえず、似たりよったりな反応を示す二人をハリセンで殴ってから、浮竹は妖狐の浮竹と夜刀神の新しい館を見る。
「おんぼろだな」
『そりゃ、金なんてないからね。どこぞのぼんぼんと違って』
「金はあったほうがいいよ。浮竹が高級思考なのに、金がないとやっていけないからね」
『あー、生まれながらの金持ちってヤダなぁ。ボクも浮竹も節約思考なのに、高級思考なところがやだ』
「夜刀神、お前は財に興味がないだけで、俺は長く生きてるからけっこうためこんでるぞ」
『え、桜の王まで金持ちだったの?』
「半分は、「春」が残した遺産だがな」
『「春」もそういえばぼんぼんだったね。生まれ変わってもぼんぼんとか、なんか恨めしい』
浮竹は、ため息をつく。
「祓い屋稼業続けて、金を稼げばいいだろう。少しお前たちの噂を聞くようになった。仕事はけっこうこなしているようだな」
『桜の王と桜鬼の京楽には負けるけどな』
妖狐の浮竹は、油あげをかじりながら、浮竹への苦手意識がなくなっているのに気づく。
『桜の王は苦手じゃなくなった。ただし、桜鬼の京楽は嫌いなままだ。近づいたら燃やす』
「そうまで言われて、近づいたりしないよ」
京楽は肩をすくめた。
こんこん。
扉をたたく音がして、妖狐から人に姿に化けた浮竹が出る。
『はい、なんでしょう:』
「あの、最近ここに狐のお化けが出るんです。尻尾が3本で‥‥怖いので、退治してもらえませんか」
『へぇ、尻尾が3本でこういうお化け?』
妖狐の浮竹は、人間の姿を解いてあやかしの姿になった。
「ひいいい、狐のお化けええええ!!!」
『めんどうだね。消す?』
物騒な夜刀神に、浮竹がまったをかける。
「俺が、記憶だけを消しておこう」
『いいなぁ。桜の王の力、人の精神や記憶に干渉できる。いいなぁ』
「ほしがっても身につかんぞ。これは「桜の王」独自の力だ」
『桜の王はずるいね。自分だけ綺麗になっちゃって』
それは、京楽に桜鬼を譲り渡したことを意味していた。
「俺は、京楽を傷つけるなら、お前たちとも戦う」
『へぇ。力ではかなわないと、分かっているのに?』
浮竹は、威嚇する。
「桜の王の力があると言っただろう。その気になれば、夜刀神、お前から妖狐の俺の記憶を抹消できるんだぞ」
『そんなことする前に、殺すよ?』
「お前に俺が殺せるのか?ただ一人の友を」
『う‥‥‥‥』:
夜刀神にとって、浮竹はただ一人の友で、長年付き合ってきた腐れ縁だった。
それを自分の手で壊すことは、できなかった。
『精霊の俺、京楽を困らせるな』
「それはこっちの台詞だ。妖狐になっても、人間の残滓が強いぞ、今のお前は。さっきの依頼人のように、人に正体を明かさいことだな」
『考えておく』
「今のお前たちといても、全然楽しくない。京楽、帰るぞ」
「浮竹、いいの?おみやげももってきてるんでしょ?」
「あげる必要はない。帰る」
浮竹は機嫌を損ねて、京楽と一緒に異界渡りをして帰ってしまった。
『よかったの、浮竹』
『んー。うまくいかないものだな。思考が人に近い精霊の俺とは、仲良くしたいが、怒らせてしまう』
『まぁ、妖狐の力のコントロールをするついでに、精霊の君との仲直りの仕方でも考えておくといいよ。ボクは、夕ご飯作ってくるね」
『稲荷寿司と、きつねうどんで!』
『はいはい。ほんとに、油あげがすきだねぇ』
『狐だからな』
その頃、浮竹と京楽は、二人のいらつかせた存在を忘れるために、白哉に結界をはってもらい、しっぽりするのであった。
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