桜のあやかしと共に37
京楽は、桜鬼の姿でぼんやりと立っていた。
「京楽」
「十四郎、どうしたの」
浮竹の言葉にしか、反応しない。
一度妖狐の浮竹と夜刀神のところにいったのだが、やっぱりぼーっとして、浮竹の言葉に主に反応を示した。
しかし、妖狐の浮竹の尻尾をもふもふもして寝てしまったり、少しは桜鬼のまま闇にとらわれているのが薄くなってきた。
「京楽‥‥いや、春水。心配しなくても、俺はどこにも行かないし、お魔の傍にいる」
「うん。信じてる」
京楽は幸せそうな顔をする。
その頭を、浮竹は撫で続けた。
「河童の子供がいたずらをするんです」
いつだったか、河童の子供のを退治してくれと言われて、後まわしにしてそのまま忘れていたので、依頼者が再度京楽と浮竹の元を訪れた。
京楽は桜鬼の姿のままだったので、浮竹がさ蔵の術で人の姿に戻していた。
「河童の子供。興味ないね」
「あ、すみません。河童の子供の件は引きうけます。たざし、退治ではなく説得して悪戯をやめさせるか、移動させるかになると思います」
京楽の代わりに、浮竹が依頼を引き受けた。
依頼人は、河童の子供の悪戯がなくなれば、それでいいということで落ち着いて、帰っていった。
「春水、早く元に戻ってくれ」
浮竹は、京楽の頭をただひたすら撫でるのであった。
「河童の子供が出るのはこの辺りか」
依頼人に教えてもらった池に、きゅうりの罠をしかける。
2時間もしないうちに、河童の子供は罠にかかった。
「何するんだこんちくしょう!俺がこの池の主の河童の三平(さんぺい)と知っての仕業か!」
河童の子供、三平は、姿を現した浮竹に泥を投げた。
足首が罠にかかって移動できないでいるが、手は自由だった。
「浮竹に危害をくわえるの?消すよ?」
京楽が、桜鬼の姿になって、術を詠唱しだす。
「極滅破邪!天雷!」
「わあああああああああ!!!」
三平が悲鳴をあげる。だが、三平を浮竹が庇った。
浮竹は、額から血を流す。
「十四郎どうして!」
「こいつは、ただ悪戯を寂しいからして、人間にかまってもらいたいだけなんだ。そうだな?」
「う、うん」
三平は、震えながら頷く。
「春水、元に戻ってくれないなら、俺は一度桜の中で眠る」
「やだ、やだよ。いなくならないで。いつまでも一緒にいるって約束したじゃない」
「お前も、一緒に眠るんだ」
「ボクも?」
京楽は、浮竹の言葉に首を傾げる。
「半月ほど、お互い休眠しよう。桜に包まれて眠れば、お前の中の闇も消えるだろう。俺も一緒に眠るから」
「うん。十四郎が一緒なら、眠ってもいいよ」
河童の三平は、もう悪戯はしないと泣いて、池に戻っていった。
「眠ろう。闇も眠りにまではついてこない。目覚めた時は、元通りだ」
浮竹は、河童の三平の説得を終了したことを依頼人に報告してから、異界にある本体の桜の大樹の中に、京楽を抱きしめながら入り、眠りについた。
白哉にだけは、理由を説明しておいた。
浮竹と京楽がいなくなったと、少し騒ぎになったが、白哉が休みをとっているのだと、言い触れてくれた。
半月が経った。
京楽は目覚めた。
「十四郎、起きて」
浮竹の反応はない。
「十四郎が起きてくれないなら、ボクはもう一度眠るよ?そして起きてもまた十四郎が眠っていたなら、永遠の眠りに二人でついてしまおう」
「春水、そういう考えはよせ。俺はお前を失いたくないし、お前といれるこの時間が大切なんだ」
浮竹は起きた。
京楽の中の闇は消えていて、桜鬼の姿でもなかった。
「もう、闇に飲まれるな」
浮竹は、自分の唇を噛み切って、京楽にキスをして血を飲ませる。
「俺の、闇にとらわれないようにと言霊をこめた血だ。飲め」
「うん。君の血は甘美だね。何よりもおいしい」
「俺以外の血を、飲むなよ?」
「桜鬼になっても、十四郎以外の血はいらない」
京楽は、強く浮竹を抱きしめる。
大きな桜の木は満開で、ちらちらと花吹雪が二人を包み込む。
二人は、桜の大樹の下で近いあうように、深い口づけを交わし合う。
「もう、ボクは大丈夫。闇に飲まれても、十四郎が祓ってくれるから」
「約束だぞ、春水。俺を置いていくな。俺の傍にいろ。俺だけを見ていろ」
「うん」
浮竹は、子供のように我儘をいう。
それを、京楽は浮竹を抱きしめながら受け止める。
「ボクは君だけのもの。君だけのために生きて、死ぬ」
「死ぬときは、一緒だからな?」
浮竹涙を流しながら、京楽の背中に手を回す。
「泣かないで、十四郎。もう、ボクは大丈夫だから」
「本当だな?」
「うん。妖狐の君や夜刀神といちゃいちゃしていても、自制するから」
「いちゃいちゃなんてしない!」
浮竹が声をあげると、京楽はきょとんとなる。
「でも、妖狐の浮竹とキスしてたよね?」
「あ、あれはあいさつみたいなものだ」
「そう。ならいいんだけど」
京楽は、何度か桜鬼の姿になっては人に戻ることを繰り返していた。
「うん。桜鬼から普通に戻れる。夜刀神が言ってたね。ボクは人からあやかしになったから、闇に飲まれやすいみたいなこと。もしも、またボクが闇に飲まれたら、十四郎が元に戻して」
「仕方ないな‥‥‥」
そう言いながらも、闇を追い払い、元に戻った京楽の姿に浮竹は心から喜び、もしも京楽はまた闇に飲まれるようであれば。言霊を混ぜた血を与えて正気づかせるか、それでもだめなら、また桜の大樹で休眠しようと思うのだった。
「京楽」
「十四郎、どうしたの」
浮竹の言葉にしか、反応しない。
一度妖狐の浮竹と夜刀神のところにいったのだが、やっぱりぼーっとして、浮竹の言葉に主に反応を示した。
しかし、妖狐の浮竹の尻尾をもふもふもして寝てしまったり、少しは桜鬼のまま闇にとらわれているのが薄くなってきた。
「京楽‥‥いや、春水。心配しなくても、俺はどこにも行かないし、お魔の傍にいる」
「うん。信じてる」
京楽は幸せそうな顔をする。
その頭を、浮竹は撫で続けた。
「河童の子供がいたずらをするんです」
いつだったか、河童の子供のを退治してくれと言われて、後まわしにしてそのまま忘れていたので、依頼者が再度京楽と浮竹の元を訪れた。
京楽は桜鬼の姿のままだったので、浮竹がさ蔵の術で人の姿に戻していた。
「河童の子供。興味ないね」
「あ、すみません。河童の子供の件は引きうけます。たざし、退治ではなく説得して悪戯をやめさせるか、移動させるかになると思います」
京楽の代わりに、浮竹が依頼を引き受けた。
依頼人は、河童の子供の悪戯がなくなれば、それでいいということで落ち着いて、帰っていった。
「春水、早く元に戻ってくれ」
浮竹は、京楽の頭をただひたすら撫でるのであった。
「河童の子供が出るのはこの辺りか」
依頼人に教えてもらった池に、きゅうりの罠をしかける。
2時間もしないうちに、河童の子供は罠にかかった。
「何するんだこんちくしょう!俺がこの池の主の河童の三平(さんぺい)と知っての仕業か!」
河童の子供、三平は、姿を現した浮竹に泥を投げた。
足首が罠にかかって移動できないでいるが、手は自由だった。
「浮竹に危害をくわえるの?消すよ?」
京楽が、桜鬼の姿になって、術を詠唱しだす。
「極滅破邪!天雷!」
「わあああああああああ!!!」
三平が悲鳴をあげる。だが、三平を浮竹が庇った。
浮竹は、額から血を流す。
「十四郎どうして!」
「こいつは、ただ悪戯を寂しいからして、人間にかまってもらいたいだけなんだ。そうだな?」
「う、うん」
三平は、震えながら頷く。
「春水、元に戻ってくれないなら、俺は一度桜の中で眠る」
「やだ、やだよ。いなくならないで。いつまでも一緒にいるって約束したじゃない」
「お前も、一緒に眠るんだ」
「ボクも?」
京楽は、浮竹の言葉に首を傾げる。
「半月ほど、お互い休眠しよう。桜に包まれて眠れば、お前の中の闇も消えるだろう。俺も一緒に眠るから」
「うん。十四郎が一緒なら、眠ってもいいよ」
河童の三平は、もう悪戯はしないと泣いて、池に戻っていった。
「眠ろう。闇も眠りにまではついてこない。目覚めた時は、元通りだ」
浮竹は、河童の三平の説得を終了したことを依頼人に報告してから、異界にある本体の桜の大樹の中に、京楽を抱きしめながら入り、眠りについた。
白哉にだけは、理由を説明しておいた。
浮竹と京楽がいなくなったと、少し騒ぎになったが、白哉が休みをとっているのだと、言い触れてくれた。
半月が経った。
京楽は目覚めた。
「十四郎、起きて」
浮竹の反応はない。
「十四郎が起きてくれないなら、ボクはもう一度眠るよ?そして起きてもまた十四郎が眠っていたなら、永遠の眠りに二人でついてしまおう」
「春水、そういう考えはよせ。俺はお前を失いたくないし、お前といれるこの時間が大切なんだ」
浮竹は起きた。
京楽の中の闇は消えていて、桜鬼の姿でもなかった。
「もう、闇に飲まれるな」
浮竹は、自分の唇を噛み切って、京楽にキスをして血を飲ませる。
「俺の、闇にとらわれないようにと言霊をこめた血だ。飲め」
「うん。君の血は甘美だね。何よりもおいしい」
「俺以外の血を、飲むなよ?」
「桜鬼になっても、十四郎以外の血はいらない」
京楽は、強く浮竹を抱きしめる。
大きな桜の木は満開で、ちらちらと花吹雪が二人を包み込む。
二人は、桜の大樹の下で近いあうように、深い口づけを交わし合う。
「もう、ボクは大丈夫。闇に飲まれても、十四郎が祓ってくれるから」
「約束だぞ、春水。俺を置いていくな。俺の傍にいろ。俺だけを見ていろ」
「うん」
浮竹は、子供のように我儘をいう。
それを、京楽は浮竹を抱きしめながら受け止める。
「ボクは君だけのもの。君だけのために生きて、死ぬ」
「死ぬときは、一緒だからな?」
浮竹涙を流しながら、京楽の背中に手を回す。
「泣かないで、十四郎。もう、ボクは大丈夫だから」
「本当だな?」
「うん。妖狐の君や夜刀神といちゃいちゃしていても、自制するから」
「いちゃいちゃなんてしない!」
浮竹が声をあげると、京楽はきょとんとなる。
「でも、妖狐の浮竹とキスしてたよね?」
「あ、あれはあいさつみたいなものだ」
「そう。ならいいんだけど」
京楽は、何度か桜鬼の姿になっては人に戻ることを繰り返していた。
「うん。桜鬼から普通に戻れる。夜刀神が言ってたね。ボクは人からあやかしになったから、闇に飲まれやすいみたいなこと。もしも、またボクが闇に飲まれたら、十四郎が元に戻して」
「仕方ないな‥‥‥」
そう言いながらも、闇を追い払い、元に戻った京楽の姿に浮竹は心から喜び、もしも京楽はまた闇に飲まれるようであれば。言霊を混ぜた血を与えて正気づかせるか、それでもだめなら、また桜の大樹で休眠しようと思うのだった。
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