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桜のあやかしと共に38

「そういえば、京楽は花鬼になれたのだから、猫にもなれるな?」

「え?猫?」

京楽は、浮竹の言葉に首を傾げた。

「俺と白哉はたまに子猫になるだろう。桜の高位精霊は、みんな猫になれる。京楽の存在も、桜の高位精霊と同じだから、猫になれるはずだ」

「犬になったりしてな」

白哉がからかうと、京楽は猫になれると自信ありげにのたまった。

「ボクも猫になれるよ」

「じゃあ、なってみろ」

「うん‥‥‥あれ?」

なかなか猫になれない。

「京楽、ぱっとしてすっとすると、猫になれるぞ」

浮竹は、久しぶりにオッドアイの白猫の子猫になっていた。それを真似て、白哉も黒い子猫になる。

「ぱっとしてすっと‥‥‥全然分からない」

「猫になるイメージを脳で描けばいい。そうれば、猫になれる」

白哉の分かりやすい言葉に、京楽はかわいい猫を思い描くのではなく、山猫を思い描いた。

ぼふん。

京楽の姿が変化する。

「‥‥‥なんだそれ。あっはっはっは」

「ひしゃげたあんぱんだな」

なんとも珍妙な生き物なってしまい、浮竹はツボにはまったのがかなり笑っていた。白哉の適格な言葉に、また浮竹が笑う。

「あははははは!!」

「え、ええ!も、もう一度!」

白哉の言葉と浮竹の態度に、ショックを受けながら、もう一度、今度は普通のアメリカンショートヘアをイメージした。

「‥‥‥なんだそれは」

「山でみたことがあるな。たぬきだな」

白哉の言葉に、京楽はまたショックを受ける。

浮竹はというと、5千年生きているが、たぬきなど見たこともないという珍しいほうなので、京楽がたぬきになっても、それがなんだかわからなかった。

「あはははは。たぬきか。それはそれで似合っているぞ」

たぬきだが、割と愛らしい顔をしていて、浮竹は気に入ったみたいだった。

「ええと、元に戻るには‥‥」

「あ、やばい。久方ぶりの変化で、きっと時の呪いが発動している。元に戻るのに時間かかるぞ。白哉はどうだ?」

「あいにく、私もだ。数時間はこのままの恰好だな」

「え、じゃあボクも元に戻れないの?」

「京楽なら、元に戻れるだろう。元に戻るとイメージしてみるといい」

ぼふん。

たぬきのままだったが、今度は信楽焼のたぬきになっていて、その不格好さに浮竹が笑う。

「あーっはっはっは。京楽、お前、俺を笑い殺したいのか。金玉が‥‥ひー」

子猫の姿で、床をたしたしとたたきながら、浮竹は爆笑する。

「も、もう一回!」

ぼふん。

今度は、元のたぬきに戻っていた。

「このままでは何も解決せぬな。浮竹、京楽、兄らの友人を読んだらどうだ。あちらも、変化するのであろう?」

「ああ、そうだな。妖狐の俺の電話番号はっと‥‥」

器用に子猫姿でスマホの電話番号を押して、妖狐の浮竹と夜刀神にヘルプを求めた。

2時間ほどして、二人がやってくる。

『子猫のままって‥‥ほんとだ。かわいいなぁ』

妖狐の浮竹が、鍵をあけておいた玄関から入ってきて、オッドアイの白い子猫になった浮竹を抱き上げ、頬にすりすりする。

「妖狐の俺、俺とそっちの黒猫は白哉で、時間が経てば元に戻るんだが、京楽が元に戻れないんだ。お前も狐に変化してから元の姿に戻るだろう?」

『俺も狐になる』

「へあ?」

浮竹は、動物だらけの部屋で、元々こうもりだった夜刀神が、狐になった妖狐の浮竹の頭の上にいいるのを見て、マヌケな声を出す。

「人間の手がほしかったんだが」

『じゃあ、俺が元に戻る』

妖狐の浮竹は元に戻ろうとするが、できなかった。

『なんでだ?元に戻れない』

「あー。俺と白哉の元に戻れない時の呪いを受けたか」

『そんなもの、あるのか?』

「ああ。元には戻れるが、時間がかかる」

「ボクはどうすればいいわけ?」

京楽の声に、夜刀神が反応した。

『桜鬼のボクは、猫じゃなくってたぬきなの。なんかおもしろいね』

「面白がっている場合か。夜刀神、お前も元に戻れないぞ」

「へ?あ、まじだ」

こうして、浮竹と白哉は子猫に、京楽はたぬきに、妖狐の浮竹は狐に、夜刀神はこうもりと、まるで小さな動物園ができたかのようであった。

『桜鬼の京楽、元に戻れるんだろう?方法が分からないだけで。戻り方を伝授してやろう』

「うん、ありがとう」

妖狐の浮竹は、擬音ばかりの戻り方の説明で、京楽には理解できなかった。

「えーと。夜刀神のボク、ざっくりでいいから翻訳できる?」

『いいよ。えっとね‥‥‥‥」

夜刀神の京楽の説明も、妖狐の浮竹とほとんど変わらなかった。

「ごめん、何を言っているのか理解ができないよ」

白哉が、説明する。

「頭の中で人間のイメージをして、全身の血液が心臓に集まっていることを意識すればいい、だそうだ」

「え、白哉君、この二人の言葉わかるの?」

「ざっくりだが、何とかわかる」

「うーん。試してみるね」

京楽は、たぬきから桜鬼の姿に戻れた。

「なんか、ボクだけ人の姿なのもあれだし、たぬきでいいから、変化しよっと」

ぼふん。

「あ、ばか!」

「へ?」

京楽も時の呪い受けて、人の姿に戻れなくなっていた。

「わあああ、どうしよう。みんな動物じゃない」

「世話をしてくれる者が必要だな。仕方ない、恋次を呼ぼう」

白哉は、浮竹のスマホから恋次に電話を入れる。

「はい、阿散井です」

「恋次、私だ。後で説明する故、京楽の家にきてほしい。鍵はあいている」




「なんじゃこりゃああああああああ」


恋次が動物の群れを見て、大声で叫んだのは言うまでもない。



「助かった、恋次」

チュールを恋次からもらいながら、白哉は礼を言う。

「白哉さんって、黒猫の子猫になれるんすね。今日、一緒のベッドで寝てもいいっすか?」

「ああ、よかろう」

ちなみに、他のメンバーの食事は、浮竹にはキャットフード、京楽と妖狐の浮竹にはドックフード、夜刀神にはフルーツだった。

『京楽だけずるいぞ。でも、狐のままでいるせいかドッグフードがとてもおいしく感じれる』

『それにしても時の呪いねぇ。またやっかいな呪詛受けてるねぇ』

「時折子猫になったまま戻れぬだけだ。そう不自由ではないので、放置していた。俺の呪いは、人の姿から動物になる者にうつることを、すっかり失念していた」

『時の呪いは神の呪いだよ。これまた、どうして』

「西洋の桜の女神に求婚された。「春」がいたので断った。そしたら、呪われた」

『あちゃあ。西洋の女神かぁ。呪い、そうそう解呪できないね』

「妖狐の俺でも無理か」

妖狐の京楽は、狐姿で3本の白い尻尾を揺らした。

『さすがに、西洋の神の呪いは理屈が分からない。おまけに力ある女神の呪いだろう?』

「ああ。世界樹の女神の一人だそうだ」

『さすがのボクにも無理だねぇ。神としてのレベルが違う』

夜刀神は、ため息をつく。

「もともと、夜刀神になんて何も期待してない」

『言うね。新しいハリセン、あげないよ』

「夜刀神はかっこいいなぁ」

『はぁ。そんなんだから、西洋の上位女神に呪われるんだよ』

「求婚を断っただけだぞ。それに、当時俺には「春」がいた。断って当り前だろう」

『まぁ、そうだねぇ』

『精霊の俺に非はないだろう。その女神とやらが性悪なんだ』

妖狐の浮竹は、水を飲みながらそう言って、浮竹を庇ってくれた。

京楽は、時の呪いの存在を知らなくて、しょんぼりしていた。

「時の呪いとか、教えてもらえなかった」

「春水、かけられた張本人の俺も忘れていた呪いだ」

「うん。十四郎、呪いも一緒に受けるよ」

「まぁ、変化するあやかしにうつるから、春水も呪われたようなものだな」

『ボクらもね』

「夜刀神は、一応神だろう。呪いは多分今回きりだ。その力の恩恵を受けている、妖狐の俺もだ。桜関係のあやかしは、うつりやすいし、どうにもならん。もう、諦めている。そんなに頻繁に呪いが発動するわけでもないしな」

浮竹は、からりとしていた。

『はぁ。西洋の桜の女神か。とりあえず、注意しておくよ。またいつ来るか分からないし』

「多分こないぞ。同じ世界樹の子である、楓の男の神と結婚して、子供を産んだらしい。俺の存在も、忘れているだろう。多分だが」

「十四郎、呪いを受けるのも一緒で嬉しいよ」

『一人、壊れてるのがいるね』

「まぁ、闇に飲み込まれるよりはましだろう。ああ、春水、ずっと一緒だ。何もかも」

恋次は、できている二人の世界をぽかんと見ていた。

「恋次、眠くなってきた。共に眠ろう」

白哉の言葉に我に返り、顔を輝かせる。

「もふりまくっていいですか」

「もう、十分もふったであろう」

「まだ、足りません」

最近できたばかりのカップルを、浮竹や京楽たちは、興味深そうに見ているのであった。


「じゃあ、俺と白哉さんはちょっと仮眠いってきます」

「右のゲストルーム使ってね?左は、もう一人のボクらが使うから」

『たぬきと狐って、どっちが強いんだろう』

ふと、妖狐の浮竹がそんなことを言う。

「勝負とかするなよ?春水も、妖狐の俺も」

『いや、かわいさで』

『もちろん狐でしょ』

夜刀神が即答する。

「たぬきだってかわいいぞ。な、京楽」

「ボクは、十四郎がそう言うなら、もっとかわいくなるよ」

そう言って、ぼふんと音をたてて、子たぬきになる。

「春水、かわいい」

「十四郎は綺麗だね。子猫でこんな美人な子、みたことがないよ」

二人だけの世界に入っていく浮竹と京楽を、にまにましながら、妖狐の浮竹(狐)と夜刀神(こうもり)は、見つめるのであった。

夜になり、それぞれパートナと眠りにつく。

夜が明けて朝になる頃には、時の呪いは解けて、人の姿になっていた。なので、白哉は早めに恋次をねかせたまま。リビングに移動していた。

「おはよう、白哉」

「おはよう、浮竹。京楽はどうした?」

「まだ寝ていたから、初めての変化で疲れているだろうから、まだ寝かせておいた。白哉も、絵恋次くんを寝かせたままなのだろ?」

「うむ」

「皆の分の朝食を作る。白哉、手を貸してくれ」

「兄がそれを望むのであれば」

浮竹と白哉は、6人分の朝食を用意するのであった。




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