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桜のあやかしと共に39

「天狗?」

「はい。娘が、天狗にさらわれてしまったのです。嫁にすると言って。娘は半年後、結婚式を挙げる予定なのです。どうか、娘を取り返してください!」」

必死な様子の依頼人に、京楽が励ます。

「絶対に取り返してみせますので、ご安心ください」

「ありがとうございます。少ないですが、前払い金です」

依頼人は、200万の札束を置いて帰っていった。

「どう思う?」

「ただ、天狗にかどわかされただけじゃないのか。天狗は人を食わない。助ければいいだろう」

京楽が浮竹に意見を求めると、もっともな意見が返ってきた。

「それならいいんだけどねぇ」

依頼人は、大手の会社の社長だった。

裏に何かある気がした。


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「ここが、その天狗の住処の森だ」

「人の手があまり入っていないようだね。自然のままだよ」

「天狗をどうやっておびき寄せる?森を破壊するとかか?」

「君、かりにも植物のあやかしの王でしょ。もっと平和な方法はないの?」

浮竹は、森中に響き渡るような声を出す。

「やーい、天狗のあんぽんたん!ばーか!まぬけ!」

「十四郎‥‥そんな方法で出てくるはずが」

「誰があんぽんたんだ!人の子の分際で、森からたたき出してやる!」

「誰が人の子だって?こちとら、桜の王と桜鬼だぞ」

出てきた天狗に、浮竹が言い返す。

「げ、桜の王‥‥」

「な、お前は岩凪(いわなぎ)」

「知り合い?」

「古い知り合いだな」

京楽が、岩凪という名の天狗を見る。普通の天狗だった。

「君、人間の女の子かどかわしたでしょう。その子を返してもらうよ」

「俺はかどわかしてなんていない!サキが、俺が好きだからと、嫁にくるといってやってきたんだ」

岩凪は、弁解する。

「ほーら、やっぱり裏があった。前金で200万も払ってくるから、何かあると思ったんだよね」

「そのサキとやらはどこにいる?」

「あ、俺の木の上の小屋にいる」

「とりあえず、会ってみていいかい?」

「桜の王の連れなら、仕方ないな。お前、術者だがあやかしだな?」

「うん。ボク、桜鬼だよ」

「うげぇ」

岩凪は、サキという女性がいる自分の家を指さす。

「あの小屋から、普通の屋敷へのゲートがある。サキはその向こう側だ」

「おじゃまするよ」

「ほぅ、天狗の家を見るのははじめてだが、普通、里で暮らす者が多いが、中から里に繋がる屋敷に出るのか」
浮竹と京楽と岩凪は、木の上にある小屋に入り、岩凪の屋敷までワープした。

「いっちゃん、お帰り。この人達誰?」

「いっちゃん?」

浮竹が首を傾げる。

「サキがつけた俺のあだ名だ」

「ふむ。いっちゃん」

「やめろおお、桜の王!お前にそんな風に呼ばれたら、鳥肌が立つ!」

「十四郎の古い知り合いなんだってね?」

京楽は、あまり岩凪に好印象を抱いていないようだった。

岩凪が見た目がいい。

「い、言っておくが、俺は桜の王とただ知り合いなだけで、特別な関係とかじゃないぞ。友人でもない。ただの、知り合いだ」

「そうだぞ、京楽。嫉妬するなよ」

「自制してる」

嫉妬の心は闇を生み出す。もう、闇に飲まれないように、京楽は精神的な訓練も受けた。

「京楽、顔が怖い」

「ふふふ。元からこんな顔だよ?」

浮竹を抱き寄せる。

「桜の王、この連れはパートナーなのか」

「ああ、そうだ。そして、桜鬼に俺のためになってくれた」

「ボクは、十四郎だけのもので、十四郎もボクだけのものだよ」

「春水、こういうのは後でしよう」

「後ならいいんかい!」

岩凪は、ついついツッコミを入れていた。

「サキ、おいで」

「何、いっちゃん」

岩凪は、サキという人間の女性を横に立たせる。

「サキ、君を迎えにきた術者だ。父親の元に帰るか?」

「いやよ!私、いっちゃんといる!父のところに帰ると、あのヘンタイ男の嫁にされちゃう」

サキは、身の上話を語った。

北条というグループの会社の社長の娘であるが、政略結婚のためにある男の元に嫁がねばならないという。その男がSMが趣味で、何度か会いにいったサキをいたぶり、喜んでいた。それを父親に伝えると、「それくらい我慢しろ。誰のおかげで裕福に暮らせていると思うんだ。絶対に結婚させる」と言ってきたそうだ。

そして、サキは家出して、森の中で迷い子になり、足をくじいたところを岩凪に発見されて手当てされて、岩凪に惚れて嫁になると言い出して、一緒に暮らしだしたのだそうだ。

「うーん。でも、ボクは君を連れて帰れと依頼されてるからねぇ」

「いやよ!」

「サキとやら、一度だけ帰ってくれ。その後で、岩凪とまた暮らせばいい」

「いいの、十四郎」

「俺たちの任務は、このサキを連れ帰ることだけ。その後のことは依頼されてないし、依頼されても断るといい」

「ということで、サキちゃん、一緒にきてくれるかな?」

「いいわよ。またいっちゃんと暮らせるなら」

こうして、浮竹と京楽はサキを社長の元に連れ帰った。

サキは、1週間は大人しくしていたが、父親の金庫から金銀財宝をもちだして、岩凪の元へいき、嫁として里で迎えらえれた。

サキの父親は、再び京楽に、今度は岩凪を含めた天狗の駆除の依頼を出したが、京楽は引き受けなかった。

「たまには、依頼人の依頼を断る必要もあるんだね」

「あやかしの全てが悪いわけじゃないからな。人と結婚か‥‥最後まではうまくいかないだろうが、まぁ仕方ない」

「人は寿命が短い。あの岩凪って子なら、多分サキちゃんを天狗にしちゃうんじゃないかな。だから、里の者も反対しなかったんだよ」

「そうかもな。もしくは、俺とお前のように、契約をするか」

浮竹は、触れるだけのキスを京楽にする。

京楽は、浮竹を抱きしめる。

「ボクらのように、なれるといいね?」

「ああ、そうだな」

浮竹と京楽は、互いを抱きしめあいながら、キスを続けてから、マンションに戻った。

マンションでは、白哉と恋次が今まさにラブシーンに突入しようとしていて、浮竹と京楽は、異界の浮竹の家にこもって、二人の邪魔をしないようにしたのだが。

「きょうが冷めた」

と、白哉は途中で恋次に待ったをかける。

白哉と恋次の恋仲は良好ではあるが、肉体関係にまではなかなかいかないのであった。










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