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桜のあやかしと共に40

港町で、人魚が現れて漁場を荒らしているから、退治してほしいという依頼を受けた。

「人魚か。本当にいるんだろか。もうほとんどいないと聞く。肉を食べれば不老不死になると言われているが、実際は毒で、不老不死になってもすぐに死んでしまう」

「人魚じゃ、ないかもね?」

「多分、人魚もどきだろう」

京楽が運転する高級車で、港まで向かった。

異界を通っても、その漁場には行ったことがないので行けない。なので、車での移動になった。

「見えてきた。この港町だ」

車を駐車場に置いて、依頼人の家にまずは行った。

「人魚が本当に出るんです。若い男は、人魚の歌声に惑わされて、食われそうになりました。網にかかった魚を食い荒らして、困っているんです。人も食おうとするし、退治してください」

「その人魚は歌って、人間の男を惑わすんだね?」

「はい、その通りです」

「多分、セイレーンだね。外国の人魚だ。船かなんかについてきて、住み着いてしまったんだろう。セイレーンは人を襲う。退治しよう」

「セイレーンでもなんでもいいです。ぜひ、退治してください」

京楽と浮竹は頷いで、人魚というか、セイレーンが現れる岩場にきた。

そこには、尼僧が立っていた。

「お前は、元鬼女の八百比丘尼じゃないか!600年ぶりだな!」

「あら。桜の王じゃないですか。人魚を退治しに?」

「そうだ。お前は?その姿を保つために、相変わらず魚を生で食ってるのか?」

「生で今も食ってますよ。昨日はタイを生で食いました。久しぶりに、セイレーンでいいから、人魚の肉を食べたくなったので」

八百比丘尼は、浮竹の知り合いであった。

「俺たちは、退治しにきたんだ」

「じゃあ、肉は私にくださいな。食べます」

「浮竹、いいの?」

「ああ。八百比丘尼は元々鬼女だが、人間に害をなすあやかし退治をしてくれる。気まぐれなので、依頼しても引き受けてくれないことが多いがな」

「八百比丘尼のルカと申します、桜の王のパートナーの方」

「これはどうも。京楽春水といいます。術者ですが、桜鬼です」

桜鬼という言葉に、ルカは驚いた。

「桜の王から、桜鬼を引き継いだのですか?」

「うん、そうなるね。堅苦しい言葉使いはやめよう」

「ふふふ。桜の王に、愛しい方ができてしまったけれど、死んでしまったと聞きました。また、新しい愛しい人を見つけたのね」

浮竹は赤くなった。

「ふふ、桜の王は相変わらず恥ずかしがり屋ですね」

「オオオーン」

ふと、人の声が岩場からして、3人は岩に身を隠して様子をみる。

「ララララ~~~~」

綺麗な声で歌う人魚がそこにいた。いや、セイレーンか。

西洋の人魚なので、人魚ではないとは言い切れない。

セイレーンは、人がしかけた網を手に、かかっていた魚を生で丸かじりしだした。

「姿は美しいけれど、野蛮で醜いこと。でも、食べがいがありそう」

ルカはどう調理しようかと、思案する。

「セイレーン、そこまでだ。漁場を荒らし、人を食おうとする。退治する」

浮竹がセイレーンに姿を現してそう言うと、セイレーンは歌いだした。

普通の人間の男なら、幻惑されて誘惑され、セイレーンの元に行くのだが、浮竹は桜の王であやかしである。セイレーンの歌声は通用しなかった。

「く、あやかしか!」

セイレーンは、海の中に逃げようとする。

「縛!」

「な、動けない!?」

「肉は残しておくんだよね?」

「はい」

八百比丘尼のルカは、頷いた。

「じゃあ‥‥天嵐(てんらん)!」

激しい竜巻に、セイレーンは岩場で頭を打ち、意識を失った。

「念のため、俺がとどめをさすがいいな?」

浮竹が桜の花びらを鋭い刃物に買えて、セイレーンの心臓を貫く。

「ぎゃっ!」

意識を失っていたセイレーンは、短い悲鳴をあげて息絶えた。

「鍋にしようと思って。よかったら、一緒にどう?」

「たまにはいいかもな。人魚の肉は美味だ」

「ぞの代わり、人が食べると毒ですけどね。あやかしが食べると毒は効かないし、不老不死にもなりません。私は、伝説の人魚を食せたので、元鬼女であったので、毒はきかないで若いままの姿でいられるけれど。食べた人魚が、偶然不老不死の力をもっていたせいで800年も若いまま」

「セイレーンの肉っておいしいの?」

京楽は、あやかしを食べるのは初めてなので、不思議そうな顔をしていた。

上半身が人の姿をしているので、普通の人間なら食べたいとは思わない。

京楽も、すっかり桜鬼に染まっていた。

「うまいぞ。俺も人魚の鍋を、八百比丘尼に食わせてもらったが、とてもおいしかった」

「じゃあ、今晩は宿の厨房でもかりて、鍋にしましょう」


ということで、まずは外でセイレーンを解体して、食べる部分だけを残し、後は冷凍して八百比丘尼のルカの住まいである寺まで、クール宅急便で届けてもらうことにした。

野菜やきのこ、鮭やらホタテを入れた鍋に、一口サイズに切ったセイレーンの肉をぶちこむ。

湯であがると、鮮やかな深紅になった。

「うん、久しぶりに食うけど、うまいな」

「でしょう。桜の王の料理の腕のせいもあるかもしれませんが」

「セイレーンだと思うと、ちょっとあんまり食欲わかないけど‥‥‥匂いとかおいしそうだし、ボクもいただくよ」

京楽は、初めて食べる人魚ことセイレーンの肉のうまさに、目を見開いた。

「おいしい!!!」

「ほらほら、俺の分もやるから食え」

「ありがとう、十四郎」

あやかしがあやかしを食うのは珍しいことだが、食用のあやかしもいる時代である。

ルカと浮竹と京楽は、セイレーン鍋を楽しみ、酒を飲んだ。

「あ、十四郎はオレンジジュースだよ」

「えー。コーラがいい」

「明日にでも買ってあげるから、今日はオレンジジュースで我慢して」

「あははは、桜の王、酒に弱かったですね。酒乱で、昔は歌いまくって意識を失いましたっけ」

「むう、昔の話はするな」

浮竹がむくれる。

「京楽さん、昔の桜の王のこと、聞きたくない?」

「いや、ボクは今の十四郎が好きだから。過去は詮索しないよ」

「あら、つまらないわ。まぁ、セイレーンだけど人魚の肉を食べれるのは数百年に一度程度。あやかしはほぼ不老なので、わざわざ人魚を食べるもの好きな輩は私たちくらいね」

「人魚が絶滅しかけているのは、やはり人間のせいか?」

浮竹がルカに聞くと、ルカは頷いた。

「人にとっては毒だというのに、不老不死のために密漁されています」

「そうか‥‥」

浮竹も京楽も、どうしようもなかった。

「でも、セイレーンがいるなら、セイレーンが今後の人魚になりそうね」

「セイレーンは厄介だな。人魚に似ているが、人を食う」

「まぁ、どれも人間が招いた結果。私たちは、今を楽しみましょう?桜の王、セイレーンの肉、少し持って帰りません?」

「ん。ああ、いただこう。妖狐の俺と夜刀神は食いたくないだろうから、白哉にでも食わせてみるかな」

「十四郎、一発やらせて」

「はぁ!?」

ルカの前で迫ってくる、京楽の頭をハリセンでたたく。

「あら、忘れていたわ。人魚の肉と酒は、一緒にとると男性は性欲がましましになってギンギラギンになるってこと」

「それを早く癒え!」

「ねぇ、十四郎の胎の奥にボクのもの、いっぱい出していい?」

「教育的指導!」

そう言って、浮竹は桜の術で京楽を寝かせた。

「あら、つまらない」

「面白がるな!」

「ふふふ。鍋も終わりだし、今日はもう寝ましょうか。性欲ましましになった京楽さんも、明日には元に戻っているでしょう」

「今日は、京楽と同じ部屋で寝ないことにする」

「それが正解ね。人魚の肉と酒におぼれた男は、死ぬまでやるから」

「うわー、そんな京楽いやだ」

こうして、人魚ことセイレーン鍋を食べて、退治しおわったことを翌日依頼人に言って、報酬金をもらった。

「そういえば、この前妖狐の俺と夜刀神にも人魚の件がきたらしいが、セイレーンだろうな。人魚は、今の時代じゃあほんとにお伽話の存在だ。八百比丘尼のルカが食った人魚が、多分人里で見れた最後の人魚だろうな」

「ボク、あんまり覚えていないんだけど、すごく十四郎とやりたくなって、それで頭がいっぱいになったところで寝ちゃったんだよ。もう少し起きていたかったねぇ」

「俺はごめんだ」

「うーん、なんで寝ちゃったんだろう?」

「さぁな?」

桜の術でわざと寝かせたと言えなくて、浮竹は適当に誤魔化す。

そしてセイレーンの肉を持って帰り、白哉にも食べさせて、非常に美味であると言わせることに成功するのであった。

ちなみに、妖狐の浮竹と夜刀神は、肉は受け取ったが、食したかどうかは分からないままであった。




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