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僕_

桜のあやかしと共に69

「どうして人間が好きかだって?そう言われてもなぁ」

鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹に問われて、浮竹は首を傾げる。

「気づいたら、人間に混じって生活していた。そのせいかな?確かにいやな人間はいるけど、いい人間も多い」

「ボクも、人間だったしね」

「そうだな。俺がお前たちみたいに人間が嫌いだったら、「春」とも京楽とも出会わずに、出会っても無関心で一緒になれなかっただろうな。俺は、人間が好きでよかったと思っている」

『甘いね』

『甘い。人間は臆病で強欲だ』

「それもまた、人間の一面だ。それが全てじゃない。いい一面もある」

『どうであろうと、ボクは人間が嫌いだ』

『俺も嫌いだ』

浮竹は、それでもいいと思った。

「別に、無理をして人間を好きにならなくてもいいんじゃないか。人それぞれで。俺と京楽は人間ががそこそこ好きで、そっちは人間が嫌い。それでいいじゃないか」

『それはそうだけど』

『でも、俺たちは術者に祓われそうになったことが何度もある』

「でも、返り討ちにしたんだろう?」

『ああ。彼岸花にしてやった』

『ちょっと、浮竹、それは』

鴆の京楽が、彼岸花の精霊の浮竹が人を殺したと言っているようなものなので、止めようとする。

「襲ってきたんだろう?その場合は、正当防衛で不問にする」

『よかった‥‥‥君たちに祓われたんじゃ、悲しすぎるからね』

「そうだな。俺も京楽も、友人であるお前たちを祓いたくない。無意味な人殺しは厳禁だぞ」

『わかっているが‥‥襲ってくるのは、いつも人間のほうだ』

「術者だろうからな。あやかしを見れば祓おうとするだろう」

『彼岸花の養分にしてやるがな』

彼岸花の精霊の浮竹は、くすくすと妖艶に笑う。

「まぁ、ほどほどにな。お前たちの退治の依頼がきても引き受ける気はないが」

『桜の王は、人間に優しすぎる』

「そうでもないぞ?祓ってこようとする人間を今まで何百人と殺してきた」

『わお。思ったより、殺してる』

鴆の京楽が驚く。

「5千年も生きているからな。かつては人やあやかしの血をすする妖怪として、桜鬼というあだ名がついた」

『それが、桜鬼のボクのルーツなんだね』

「ああ。人を殺して食べていたら、外見が鬼のようになった。それを京楽が後から身代わりとして受け継いでくれて、人間からあやかしになった」

『そうなんだよねぇ。桜鬼のボクは元人間なんだよねぇ』

「そうだぞ。中身は人間の頃とあまり変わっていない。あくまで性格だが」

『彼岸花の種が‥‥』

彼岸花の精霊の浮竹は、それ以上は何も言わなかった。

「それより、お前たちしっぽりしてからこのマンションにきたな?」

『ええ、なんでばれてるの』

「鴆の京楽から、彼岸花の精霊の俺のにおいがする」

『花鬼って不思議だね。においに敏感なのかな』

『俺もにおいでわかるぞ。お前たちはおとついしっぽりしたな?』

「ぐ、正解だ」

しっぽりしっぽりいうものだから、二人の京楽はなんとも言えない顔をする。

「しっぽり禁止令が発動すると、京楽たちは死にそうだな」

『俺が欲求不足で死ぬ』

「お前は、一人でも俺とでも‥‥‥げふんげふん」

京楽が、にーっこりと笑う。

「十四郎?浮気は許さないからね?」

「し、しないぞ」

『そうだぞ。もうしない』

そう言いながら、彼岸花の精霊の浮竹は、浮竹にキスをして抱きしめて、クスクスと笑っていた。

「だから、そういうことをボクの十四郎にしないで」

『浮竹、お仕置きされたいのかな?』

二人の京楽が、彼岸花の精霊の浮竹に少しだけ怒る。

『冗談だ』

「冗談でも、もうしないでね」

『そうだよ。ボクという存在がありながら』

鴆の京楽は、淡泊なように見えて意外と嫉妬する。

『じゃあ、ボクらは戻るね。浮竹、帰ったらちょっとお仕置きだからね』

『お仕置きされるの、嫌いじゃない』

『君、もしかしてわざと?』

『だとしたら?』

妖艶に微笑む彼岸花の精霊の浮竹を、浮竹は京楽の腕の中で見ていた。

「んっ」

京楽に深く口づけられて、そのまま京楽は二人に言う。

「じゃあ、ボクらもしっぽりするから、鴆のボクもがんばってしっぽりしてね」

『ああ、しっぽりする』

「俺の意見は聞かないのか。勝手にしっぽりすることにされてる」

『ふふふ、俺は歓迎するぞ?一度、一緒にしっぽりしてみたいな?』

『恥ずかしいからだめ!』

「無理だよ」

「俺が恥ずかしさで逃げ出す」

彼岸花の精霊の浮竹は、鴆の京楽に腕をひかれて、クスクスと妖艶に笑いながら去っていくのであった。

「さて、しっぽりしようか?」

京楽に向き合って、浮竹は京楽の頭をハリセンではたく。

「しっぽリはしない。するとしても夜だ」

「そんなぁ。その気になってたのに」

「知るか」

「兄らは、私がいることを完全に忘れているな」

「あ、白哉いたのか」

「浮竹、兄は‥‥まぁいい。しっぽりするなら、結界をはってくれ」

「白哉、今日一緒に寝よう」

「は?」

「たまには兄弟水入らずで、仲良くしよう」

「別に私はいいが、京楽はどうするのだ」

「放置プレイ」

「ふむ。放置プレイか。京楽、兄も変態になったものだな」

白夜の呆れた声に、京楽は「それはないよ~」と悲し気につぶやくのだった。

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