桜のあやかしと共に72
「花嵐‥‥‥‥また出会えたのに、また失ってしまった」
「十四郎、落ち着いて」
「俺は、何度なくせばいいんだろう。「春」も‥‥。いつか、お前も白哉も、俺の前からいなくなって失ってしまうのか?」
ただ涙を流す浮竹を、京楽は抱きしめた。
とても残酷だった。
花嵐の生首が、京楽のマンションの入り口に置かれていたのだ。深紅の血を流して、その顔は痛そうに歪んでいた。
元が綺麗な花鬼だっただけに、無残な姿に変わり果てた花嵐を見て、浮竹は気を失い、今やっと起きたところだった。
「本当に酷いことをするね」
生首の横には、文が置かれていた、
(近いうちに、お前の大切な友人、恋人、家族がこうなるだろう)
そう書かれてあった。
改めて字を読むと癖があり、それが藍染の手書きの文字であることが分かった。
「藍染‥‥‥許さない。殺してやる」
「十四郎、今は落ち着いて。藍染がどこにいるのかも分からないんだよ?」
「俺の大切な人たちに手を出すやつは、皆殺しにしてやる」
浮竹の瞳は、翡翠色から血のような深紅に変わっていた。
京楽が桜鬼を継いでいなければ、桜鬼になっていたであろう。
京楽は、鴆の京楽のところに浮竹を連れていき、花嵐のことと、精神安定剤のようなものを処方してくれと頼んだ。
『鴆のボク、彼岸花の精霊の浮竹も、用心してね。今まで刺客を送りこんできただけの藍染が、花嵐を殺したんだよ」
『ええ、花嵐ちゃん殺されちゃったの?』
『どうしてわかったんだ?』
「家の前に、生首が置かれていたの」
『酷いね』
『あやかしでも、そうそう残酷なことをするやつは珍しいぞ』
鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹派、わずかな時間であったが、共に過ごした者が頃されてショックを受けていた。
「いやだ‥‥‥もう、失いたくない」
浮竹は、京楽に抱きしめられながら、泣いていた。
『よく眠れるようになる薬、処方しておくから。あと、気分を安らげる薬も』
「ごめん、ありがとう、鴆のボク」
浮竹を抱っこして、京楽は自分の家に戻っていく。
『それにしても、ついに死人が』
『用心しておいたほうがよさそうだな』
『うん。桜の王、大丈夫かな?』
『俺が冥界に送ったと思って首を絞めてきたくらいだからな。平静ではいられないだろうな。しばらく無理にでも眠らせるしかない』
『後で、桜の王の様子見に行こうか』
『ああ、そうしよう』
「くすくすくす‥‥‥」
どこからか、女の笑い声を聞こえてきた。
浮竹をベッドで眠らせて、買い物の帰り道だった。
浮竹は白哉のことをとみると、花嵐が生きていると錯覚して落ち着くので、白哉にはお留守番としばらくの間の浮竹の精神安定剤の代わりになってもらっていた。
「誰だい。どこにいる!」
「くすくす‥‥あの桜の上級花鬼、いい声で啼いたのよ。あなたも、いい声で啼いてくださる?」
それは、藍染の愛人でもある濡れ女だった。
「まさか、君が花嵐ちゃんを?」
「そうよ?一人で無防備にいるから、連れ去って藍染様に忠誠を誓わせようとしたけど、拒否したから見せしめに殺してやったのよ。さんざんいたぶってね」
「殺してやる‥‥‥‥」
京楽は、桜鬼になっていた。
買い物のスーパーの袋を地面に置いて、鋭い爪で濡れ女に襲いかかるが、するりと交わされてしまう。
「ふふ、その程度なの?」
「天空破邪!天炎!」
「きゃああああああああ」
いきなり起こった黄金の炎に飲まれて、濡れ女は悲鳴をあげる。
「こ、こんな術ごときで!」
濡れ女は、焼かれながら京楽に刃で切りかかる。
「桜鬼ごときに!」
「花嵐ちゃんを殺した報い、受けてもらうよ!縛!」
「ぎゃあ!」
濡れ女は束縛されて動けなくなった。そこへ、京楽が追加の炎を叩きこむ。
「天空破邪、天炎、天炎、天炎!!!!」
「ぎいやあああああああああ」
死なないようにしながら生きながら燃やされて、濡れ女は苦痛の悲鳴をあげる。
京楽は、それでも気がおさまらずに、日本刀を取り出すと、濡れ女の指から徐々に切り落としていく。
「あああああ、ひと思いに殺してえええ」
「君が、花嵐ちゃんに味わわゼた地獄を、君も味わえ」
「京楽、そこまでだ」
「十四郎!?起きてて大丈夫なの?」
浮竹が、立っていた。
「こいつが、花嵐を殺したのか」
「うん」
しゅぱん。
浮竹の桜の花びらでできた刀で、濡れ女は生きたまま首をはねられる。
「ああああ、藍染様が、許さないんだから。私を、こんな、目に、あわせて」
「藍染も殺してやるから、安心しろ」
「藍染さまぁ、愛していますうううう」
それきり、濡れ女は動かなくなった。
浮竹は、濡れ女の生首を、焦げた髪をもちあげて、式を出した。
「主人のところへ届けてやれ」
式である白い烏は、濡れ女の首を髪をくわえてかなたに消えていった。
「ううっ」
ふらりとぐらつく浮竹を、京楽が抱きとめる。
「十四郎、無茶しちゃだめだよ」
「でも、仇は討てた」
「そうだね。花嵐ちゃんが味わったのと同じくらい苦しみを与えてやったから」
「うう‥‥我は桜の花神。我の依り代を泣かせるのはどこのどいつだ」
「十四郎?」
「我は‥‥俺は、桜の花神。花嵐が封印していた、もう一人の俺」
浮竹は、背中に桜色の翼を6枚生やしていた。
「十四郎!!!」
「時がくれば、また俺は覚醒する。それまで、俺を大切にしてくれ」
桜の花神は、濡れ女の死体を桜の木に変えて、満開の桜にした。
「花嵐‥‥仇はとったぞ。今は、ただ静かに眠れ。京楽」
「はい!」
「桜の花神である俺は、神に叙されている。くれぐれも、桜の王を悲しませるな。俺がでてくると、全てがいずれ壊れてしまう」
「花神‥‥‥」
「俺は、桜の名はついているが、藍染と同じ災厄をもたらす神だ。もっとも、藍染は神のなりそこないだがな」
桜の花神は、桜の花吹雪を巻き散らす。
「桜の花神として生まれた俺は、先代の長老神であった者に封印されて、その封印は代々俺に近しい上級花鬼がもっていた。封印とも知らずに」
「うん」
「桜の花神は、四季の王であるもう一人の俺より強い。京楽、お前に何かあれば覚醒するかもしれない。くれぐれも、俺を外に出すな。俺を守れ」
「うん、守るよ」
「俺はまた眠りにつく。藍染と闘うのはきっと俺だ。もしくは、完全に覚醒して桜の花神となった桜の王かもしれない」
「最終決戦は近いの?」
「分からない。藍染の出方次第だ」
京楽は、浮竹が桜の花神を宿していることには驚かなかった。
四季の王になるくらいなのだから、神になっていてもおかしくはないのだ。
「では、俺は眠る」
「十四郎」
「ん?どうしたんだ‥‥ああ、もう一人の俺が出てきていたのか。花嵐が殺されたことで封印が解けた。まぁ、俺は神になんてなりたくないから、そんな顔をするな」
京楽の顔は、悲壮と困惑を浮かべていた。
「十四郎が、十四郎じゃなくなっちゃうってことじゃないよね?」
「眠りについたりもするが、基本は俺をベースにできている。桜の花神の俺は、もう一人の俺というのと、俺自身でもある。二重人格とは、少し違うな。俺の意思もそこにあるから」
「うん。十四郎、何があっても君を愛しているよ。たとえ邪神だったとしても、愛している」
「勝手に、俺を邪神にするな」
浮竹は、ハリセンで京楽の頭を殴る。
「花嵐はいなくなったが、白哉がいる。封印は、多分白哉に移った」
「白哉くんにも、いろいろ説明しないとね?」
「その前にしっぽりだろ?」
「え、なんで分かったの」
「顔に書いてある。桜の花神になった俺が変わってないか、確かめたいんだろう?」
「だめかい?」
「いや、いいぞ。俺も、まだ花嵐が殺されたショックがある。忘れたい」
しっぽりして、一時的な安らぎを得る。
浮竹は、くつくつと笑った。
「覚えておけ、藍染。お前の大切にしているもの、全て壊してやる」
「怖い怖い。十四郎を怒らせると、命がいくつあっても足りないね」
浮竹は、今まで静観してきたが、藍染への反撃を決意するのであった。
「十四郎、落ち着いて」
「俺は、何度なくせばいいんだろう。「春」も‥‥。いつか、お前も白哉も、俺の前からいなくなって失ってしまうのか?」
ただ涙を流す浮竹を、京楽は抱きしめた。
とても残酷だった。
花嵐の生首が、京楽のマンションの入り口に置かれていたのだ。深紅の血を流して、その顔は痛そうに歪んでいた。
元が綺麗な花鬼だっただけに、無残な姿に変わり果てた花嵐を見て、浮竹は気を失い、今やっと起きたところだった。
「本当に酷いことをするね」
生首の横には、文が置かれていた、
(近いうちに、お前の大切な友人、恋人、家族がこうなるだろう)
そう書かれてあった。
改めて字を読むと癖があり、それが藍染の手書きの文字であることが分かった。
「藍染‥‥‥許さない。殺してやる」
「十四郎、今は落ち着いて。藍染がどこにいるのかも分からないんだよ?」
「俺の大切な人たちに手を出すやつは、皆殺しにしてやる」
浮竹の瞳は、翡翠色から血のような深紅に変わっていた。
京楽が桜鬼を継いでいなければ、桜鬼になっていたであろう。
京楽は、鴆の京楽のところに浮竹を連れていき、花嵐のことと、精神安定剤のようなものを処方してくれと頼んだ。
『鴆のボク、彼岸花の精霊の浮竹も、用心してね。今まで刺客を送りこんできただけの藍染が、花嵐を殺したんだよ」
『ええ、花嵐ちゃん殺されちゃったの?』
『どうしてわかったんだ?』
「家の前に、生首が置かれていたの」
『酷いね』
『あやかしでも、そうそう残酷なことをするやつは珍しいぞ』
鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹派、わずかな時間であったが、共に過ごした者が頃されてショックを受けていた。
「いやだ‥‥‥もう、失いたくない」
浮竹は、京楽に抱きしめられながら、泣いていた。
『よく眠れるようになる薬、処方しておくから。あと、気分を安らげる薬も』
「ごめん、ありがとう、鴆のボク」
浮竹を抱っこして、京楽は自分の家に戻っていく。
『それにしても、ついに死人が』
『用心しておいたほうがよさそうだな』
『うん。桜の王、大丈夫かな?』
『俺が冥界に送ったと思って首を絞めてきたくらいだからな。平静ではいられないだろうな。しばらく無理にでも眠らせるしかない』
『後で、桜の王の様子見に行こうか』
『ああ、そうしよう』
「くすくすくす‥‥‥」
どこからか、女の笑い声を聞こえてきた。
浮竹をベッドで眠らせて、買い物の帰り道だった。
浮竹は白哉のことをとみると、花嵐が生きていると錯覚して落ち着くので、白哉にはお留守番としばらくの間の浮竹の精神安定剤の代わりになってもらっていた。
「誰だい。どこにいる!」
「くすくす‥‥あの桜の上級花鬼、いい声で啼いたのよ。あなたも、いい声で啼いてくださる?」
それは、藍染の愛人でもある濡れ女だった。
「まさか、君が花嵐ちゃんを?」
「そうよ?一人で無防備にいるから、連れ去って藍染様に忠誠を誓わせようとしたけど、拒否したから見せしめに殺してやったのよ。さんざんいたぶってね」
「殺してやる‥‥‥‥」
京楽は、桜鬼になっていた。
買い物のスーパーの袋を地面に置いて、鋭い爪で濡れ女に襲いかかるが、するりと交わされてしまう。
「ふふ、その程度なの?」
「天空破邪!天炎!」
「きゃああああああああ」
いきなり起こった黄金の炎に飲まれて、濡れ女は悲鳴をあげる。
「こ、こんな術ごときで!」
濡れ女は、焼かれながら京楽に刃で切りかかる。
「桜鬼ごときに!」
「花嵐ちゃんを殺した報い、受けてもらうよ!縛!」
「ぎゃあ!」
濡れ女は束縛されて動けなくなった。そこへ、京楽が追加の炎を叩きこむ。
「天空破邪、天炎、天炎、天炎!!!!」
「ぎいやあああああああああ」
死なないようにしながら生きながら燃やされて、濡れ女は苦痛の悲鳴をあげる。
京楽は、それでも気がおさまらずに、日本刀を取り出すと、濡れ女の指から徐々に切り落としていく。
「あああああ、ひと思いに殺してえええ」
「君が、花嵐ちゃんに味わわゼた地獄を、君も味わえ」
「京楽、そこまでだ」
「十四郎!?起きてて大丈夫なの?」
浮竹が、立っていた。
「こいつが、花嵐を殺したのか」
「うん」
しゅぱん。
浮竹の桜の花びらでできた刀で、濡れ女は生きたまま首をはねられる。
「ああああ、藍染様が、許さないんだから。私を、こんな、目に、あわせて」
「藍染も殺してやるから、安心しろ」
「藍染さまぁ、愛していますうううう」
それきり、濡れ女は動かなくなった。
浮竹は、濡れ女の生首を、焦げた髪をもちあげて、式を出した。
「主人のところへ届けてやれ」
式である白い烏は、濡れ女の首を髪をくわえてかなたに消えていった。
「ううっ」
ふらりとぐらつく浮竹を、京楽が抱きとめる。
「十四郎、無茶しちゃだめだよ」
「でも、仇は討てた」
「そうだね。花嵐ちゃんが味わったのと同じくらい苦しみを与えてやったから」
「うう‥‥我は桜の花神。我の依り代を泣かせるのはどこのどいつだ」
「十四郎?」
「我は‥‥俺は、桜の花神。花嵐が封印していた、もう一人の俺」
浮竹は、背中に桜色の翼を6枚生やしていた。
「十四郎!!!」
「時がくれば、また俺は覚醒する。それまで、俺を大切にしてくれ」
桜の花神は、濡れ女の死体を桜の木に変えて、満開の桜にした。
「花嵐‥‥仇はとったぞ。今は、ただ静かに眠れ。京楽」
「はい!」
「桜の花神である俺は、神に叙されている。くれぐれも、桜の王を悲しませるな。俺がでてくると、全てがいずれ壊れてしまう」
「花神‥‥‥」
「俺は、桜の名はついているが、藍染と同じ災厄をもたらす神だ。もっとも、藍染は神のなりそこないだがな」
桜の花神は、桜の花吹雪を巻き散らす。
「桜の花神として生まれた俺は、先代の長老神であった者に封印されて、その封印は代々俺に近しい上級花鬼がもっていた。封印とも知らずに」
「うん」
「桜の花神は、四季の王であるもう一人の俺より強い。京楽、お前に何かあれば覚醒するかもしれない。くれぐれも、俺を外に出すな。俺を守れ」
「うん、守るよ」
「俺はまた眠りにつく。藍染と闘うのはきっと俺だ。もしくは、完全に覚醒して桜の花神となった桜の王かもしれない」
「最終決戦は近いの?」
「分からない。藍染の出方次第だ」
京楽は、浮竹が桜の花神を宿していることには驚かなかった。
四季の王になるくらいなのだから、神になっていてもおかしくはないのだ。
「では、俺は眠る」
「十四郎」
「ん?どうしたんだ‥‥ああ、もう一人の俺が出てきていたのか。花嵐が殺されたことで封印が解けた。まぁ、俺は神になんてなりたくないから、そんな顔をするな」
京楽の顔は、悲壮と困惑を浮かべていた。
「十四郎が、十四郎じゃなくなっちゃうってことじゃないよね?」
「眠りについたりもするが、基本は俺をベースにできている。桜の花神の俺は、もう一人の俺というのと、俺自身でもある。二重人格とは、少し違うな。俺の意思もそこにあるから」
「うん。十四郎、何があっても君を愛しているよ。たとえ邪神だったとしても、愛している」
「勝手に、俺を邪神にするな」
浮竹は、ハリセンで京楽の頭を殴る。
「花嵐はいなくなったが、白哉がいる。封印は、多分白哉に移った」
「白哉くんにも、いろいろ説明しないとね?」
「その前にしっぽりだろ?」
「え、なんで分かったの」
「顔に書いてある。桜の花神になった俺が変わってないか、確かめたいんだろう?」
「だめかい?」
「いや、いいぞ。俺も、まだ花嵐が殺されたショックがある。忘れたい」
しっぽりして、一時的な安らぎを得る。
浮竹は、くつくつと笑った。
「覚えておけ、藍染。お前の大切にしているもの、全て壊してやる」
「怖い怖い。十四郎を怒らせると、命がいくつあっても足りないね」
浮竹は、今まで静観してきたが、藍染への反撃を決意するのであった。
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