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桜のあやかしと共に88

「たまには俺も、祓い屋の仕事の手伝いをするぞ」

「いや、君がくると神の気配にあやかしたちがびっくりして、退治するやつも出てこないから」

「じゃあ、妖力を極限にまで抑えて子猫姿になる。それなら、同行してもいいだろう?」

「うん、それならね」

こうして、浮竹は久しぶりに京楽の祓い屋の仕事を手伝うとことになった。

祓い屋稼業をしてすでに京楽は10年以上になっていた。

最初の頃は力量以上のものは避けて、浮竹と出会ってから、力あるあやかしも退治できるようになった。

最近の浮竹は封印が解けて、桜の花神であったことが分かり、神の気配に退治するはずのあやかしが恐れをなして出てこないので、京楽一人で退治していた。

「今回の依頼はなんだ?」

子猫姿で、浮竹は流暢に人の言葉をしゃべる。

「滝夜叉姫が出たそうなんだ。若い姿を保つために、少女をさらって食ってしまうそうだよ」

「滝夜叉姫か。女は怖いからな」

「人が食われるのは最悪のケースだ。早く依頼をこなさないと、次の犠牲者が出る」

「ふむ。じゃあ、俺は滝夜叉姫が出てきたら、元の姿に戻って攻撃するな?」

「うん、それなら問題ないかも」

滝夜叉姫が出るという渓谷に、京楽の高級車でやってきた。

依頼人は、村全体だった。

渓谷に来る前に、村に立ちよって、次の生贄として選ばれた少女と行動を共にすることにした。

「あの、本当に大丈夫なんでしょうか」

「任せておけ」

「ひい、子猫がしゃべった!化け物!」

「化け物は酷いな。本来なら、こんな姿だ」

少しだけ人型をとると、少女は頬を赤らめた。

「かっこいい‥‥美人‥‥」

「ちょっと十四郎、何人の子に好かれてるの」

「俺は本体を見せただけだぞ」

「君の姿を見たら、たいていの女の子は惚れちゃうよ」

「心配するな、俺が惚れているのは京楽、お前だけだ」

「あの、お二人の関係は?」

子猫姿に戻っていた浮竹が、隠しもせずにいう。

「恋人同士というか、伴侶だ」

「きゃああああ、イケメン同士で」

少女は、鼻血をふきだした。

とりあえずティッシュを与えて、滝夜叉姫が出るという渓谷にくると、生贄の少女を結界で守りながらさしだす。

「ほほほ、わらわの永遠の若さのために、そなたを食らうことにしよう」

「きゃあああああああ」

滝夜叉姫を見て、少女が悲鳴をあげる。

それが合図だった。

ばちっと、結界に弾かれて、滝夜叉姫は目をかっと深紅にして、牙を生やして怒る。

「おのれ、術者か!前の術者のように、わらわの栄養源にしてくれるわ!」

「うわぁ、ヒステリーっぽいおばさんだなぁ」

元の姿に戻った浮竹の言葉に、滝夜叉姫は敵意を浮竹に向ける。

「おのれ、桜の王か!人と慣れ親しみ、落ちたそなたなぞに負けはせぬわ」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いた。

「ぎゃあああああああああ」

桜の花びらごと炎に包まれて、滝夜叉姫は水を生み出すと、それで鎮火する。

「おのれえ、わらわの美貌を台無しにしようとしおって」

「美貌っていうけどね、君、それほど美人じゃないよ」

「なにぃ!?」

滝夜叉姫は、術者である京楽を殺そうと、鬼火を放つが、それは京楽は出した桜の文様のある日本刀で一丁両断されてしまう。

「本当の美人は、自分が美人だなんて自慢しないし、心も綺麗だよ。君は、そうだね、少女たちを食らってできたつぎはぎの整形手術失敗したような、醜い化け物だよ」

「おのれええ、わらわを誰と心得る!伝説の滝夜叉姫ぞ!」

「じゃあ、俺は5千年も生きている桜の王だ」

「桜の王ごときに‥‥」

「てい」

浮竹は、まぶしい光を放って、滝夜叉姫の目を焼いた。

「いまだ、京楽!」

「うん!天空破邪、天炎、天雷、縛、滅!」

「ぎいやあああああああああ」

すごい悲鳴をだして、滝夜叉姫は首だけになって、浮竹の傍に転がった。

「さ、桜の王、わらわが伴侶になって、子を産んでやろう。だから、命までは‥‥」

「君、もう5人も食い殺してるんだってね?その分際で、しかもそんな姿で浮竹に近づかないでくれえる?浮竹が汚れちゃう」

「おのれええ、術者の人間がああああああ」

「あ、ボク人間じゃないから。桜鬼だからね」

桜鬼の姿になって、首だけになった滝夜叉姫を京楽は踏みつぶした。

「くくく、もともとわらわは霊魂の存在。肉体なぞ、いくらでも‥‥」

「縛!禁!」

「な、霊魂のわらわをしばる術だと!?」

にじみ出てきた滝夜叉姫の霊魂を、京楽が動けないようにする。

「霊魂ごと滅びよ。桜よ、食らいつくせ」

桜の花びらが、じわりじわりと滝夜叉姫の霊魂を食っていく。

「いやじゃ、こんなところで死にたくない、桜の王よ慈悲を!」

「そんなもの、人を食らったところでもう存在しない」

「桜鬼と呼ばれていたそなたも、散々人を食らったではないか!」

「そうだな。そんな時もあったが、反省している。今は、人間と共存しているさ。滅べ」

「いやじゃあああああああ。わらわの美貌があああああ」

それだけ叫び言い残して、滝夜叉姫は完全にこの世から消えた。

「霊魂、食べちゃったの?」

「ああ。俺の桜は悪食だから」

「あーあ、霊魂まで食われると、冥界にもいけやしないね」

「それでいいんじゃないか。生まれ変わりができるとかいやだしな」

「そうだね」

結界で守られていた生贄の少女は、気を失っていた。

「このまま、村まで運ぼう。ああ、この水晶に滝夜叉姫は宿っていたんだな。割れて粉々だけど。退治した証拠品として提出しよう」

「あ、一応浄化かけとくね?」

「ああ、すまんな」

京楽は、割れた水晶に浄化をかけておいた。

長らく滝夜叉姫を宿らせていたので、水曜は闇に満ちていた。

完全に浄化しおわると、水晶は虹色に煌めいていた。

「瑠璃虹水晶か」

「そうみたい」

「道理で、滝夜叉姫を宿しても壊れないわけだ」

瑠璃虹水晶は、神をも宿す。

「もう使えないように、粉々にくだいていこう。藍染なんかが、手にしたら大変だ」

「そうだね。国内でも、もう5つもないんじゃないかな」

生贄だった少女を乗せて、高級車で浮竹と京楽は村まで戻った。

退治した報酬金として、500万が現金で支払われた。

「ありがとうございました、術者の方々。そちらの白い髪のお方は最初いなかったような?」

「ああ、気にするな。こいつの式神だから」

「なるほど」

村人たちは、手と手をとりあって、滝夜叉姫の消滅を喜んだ。

「なぜ、もっと早くに‥‥そうすれば、うちの子は死なずに済んだ」

一部の、子を失った親たちの憎しみを受けながら、浮竹と京楽は早々と村をあとにする。

子を生贄にされた親にとって、京楽と浮竹の存在はいいものではない。なので、早めに帰った。

「喜ばれる一方で、憎しみもぶつけられる。祓い屋稼業は、これだからあまり好きでない」

「まぁまぁ、浮竹。ボクの生業だしね」

「ああ」

マンションに戻ると、どこか色っぽい白哉と風呂あがりの恋次と遭遇した。

「あ、赤ハエ!」

「恋次、逃げろ!」

「えええええええ!!!」

「殺虫スプレーで退治してくれる!」

本当に殺虫スプレーを、恋次にかける浮竹であった。


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