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桜の木の下で

いよいよ卒業式の日がやってきた。

珍しく、一護の父親も参加していた。

「生徒代表、石田雨竜」

式はすんなりと終わって、一護は女子生徒たちに囲まれた。第一ボタンをくれだのどうのこうの・・・・どうでもいいので、てきとうに追い払った。

ルキアは、たくさんの男子生徒に囲まれていた。

「ルキアちゃんは就職するの?」

「僕と付き合ってよ、ルキアちゃん」

「ずるいぞ、最初に朽木さんを好きになったのは俺だ!」

「ほほほほほ・・・・・・」

ルキアは、猫を被った笑顔を振りまいていた。

むっとなって、男どもをかき分けて、ルキアの細い体を肩上に抱き上げた。

「一護!?」

「ルキアは、俺と約束があるから」

「おい、貴様、ばかやめろ」

ルキアを抱き上げたまま移動して、大きな桜の木の下におろした。

「無防備に、笑顔ふりまいてるんじゃねぇよ。告白されてたじゃねーか」

「別に、冗談であろう?たかが卒業で・・・・・」

ポロリと、紫紺の瞳から涙が零れた。

「どうしたんだよ!何処か痛いのか!?」

「違う・・・・・貴様や井上や石田や茶虎との生活もこれで終わりかと思うと、胸の奥が苦しくなって・・・・・」

「そういう時は、好きなだけ泣け」

ルキアに胸をかしてやった。

ルキアは、大声を出して泣いた。もう現世ともうすぐお別れなのだ。次にいるこれるのかは分からない。

「うわあああああ」

ルキアは、子供のように泣いた。見れば、周囲でも女生徒たちが友人と、あるいは彼氏につきそわれて泣いていた。

「見ろよ、ルキア」

「ん・・・・・」

「桜、綺麗だろ?」

「ああ・・・・・・」

大分落ち着いたのか、ルキアは一護の傍に佇んでいた。

「卒業旅行は、空座町の隣町にした」

「何?そんな近場でかまわないのか?」

「場所なんて、どこでも構わないんだ。桜の綺麗な場所に温泉旅館があるんだ。二泊三日の予約、いれといた」

「そうか・・・・・」

石田も井上も茶虎も、大学に進学が決まっていた。ただ、井上とは同じ大学だった。井上の心は知っているが、一護の胸の中にはもうルキアが住んでいる。

卒業式の後、呼び出されて告白された。でも、ルキアが心の中にもういるのだと伝えたら、大粒の涙を零して去ってしまった。

そして、旅行当日。

隣町なので、徒歩で出かけた。

遠くの温泉宿や、北海道や沖縄・・・・・いろいろ悩んだけど、子供の頃によく泊まりにいった馴染みのその旅館にした。

荷物を広げて、寛いでいると、ルキアは緊張でカチンコチンになっていた。

「そんなに緊張すんなよ。別にとってくいやしねーから」

「本当であろうな?」

「多分な」

「うっ・・・・・」

1日目は、何事もなく過ぎた。

2日目も、何もなく過ぎて行った。

「杞憂だったか・・・・?」

3日目。

3日の夕方に、宿を出る予定だった。

桜の名所であるというところに連れていかれて、その桜の花のちらちら降る桜の雨に、ルキアは息をのんだ。

「綺麗だろ」

「ああ・・・・・兄様の千本桜に適う桜はないと思っていたが・・・・・これは、なんて美しい・・・・・・」

「ルキア。綺麗だぜ」

「一護・・・・・」

「ずっと言いたかっんだ。お前が好きだ。俺と付き合ってくれ。そして、人生の伴侶になってほしい」

「一護・・・・・・・」

ルキアは目を見開いた。

アメジストをあしらった指輪を、一護はルキアの指にはめた。一護の指にも、同じアメジストあしらった指輪がされてあった。

「絶対大切にする。泣かせるような真似はしない。何者からも守ってみせる。だからお願いだ、この手をとってくれ!」

ルキアは、アメジストの瞳から大粒の涙を零しながら、一護の手をとった。

「たわけが・・・・付き合うだけなら・・・・そう思ったのに、人生の伴侶か。婚約ではないか」

「そのつもりで、告白している。手をとってくれたのは、YESととっていいんだな?」

「たわけが・・・・・私は、貴様と出会ったのを運命と感じていた。尸魂界まで助けに来てくれた時には、もう私の心の中には貴様が住んでいた・・・・・」

「俺もだ。ルキアと出会ったのが運命だと思っている。尸魂界に捕らわれたお前を助けに行ったのは、ただ仲間だったからじゃない。好きだったからだ」

二人は、お互いを抱きしめあった。

そして、初めてではないが、キスをした。

「大切にするから・・・・」

「ああ・・・・」

口づけは、優しかった。

何度もキスを交わした。

桜の雨が降る。その下で、恋人同士になった。婚約は、まだ周囲には納得をさせてはいないが、二人の間では成立した。

「すっげー嬉しい」

「私もだ、一護・・・・・・」

その後、温泉に入った。大胆にも混浴風呂だった。

まだ体を許したわけではないので、お互いバスタオルを巻いていた。

「ルキアの肌は白くてすべすべだな」

「そういう貴様は、細いようでよく鍛え上げられた体をしているな」

互いの背中を流しあって、髪を洗った。

温泉に浸かっていると、これからの困難もなんとかなっていく。そんな気がした。

卒業旅行が終わり、ルキアが現世を立つ日がきた。

「伝令神機のメールアドレスを書いておいた」

チャッピーの絵とかがのった壊滅的なものだったが、メルアドなんとか読めた。

「じゃあ、またな、ルキア。現世にこれる日があったら、絶対にこいよ!」

「ああ、またな、一護!」

決してさよならは言わない。

これは、二人にとっての始まりなのだ。ルキアが消えて、一護は早速携帯でメールを送ってみた。

(今、何してる?)

(兄様に、今回のことを報告した)

(ま、まさか婚約のこともか?)

(そうだ。全部包み隠さず話した。近いうちに、尸魂界に来いとのことだ)

一護は、空を仰いだ。

「白哉か・・・・・一番の難関だな・・・・」

でも、未来は明るい。



(一護からもらった指輪も、クリスマスにもらったペンダントも、大切にして毎日に身につけている)

(ルキアは、やっぱり瞳と同じ色のアメジストが似合うからな。離れていても愛してるぜ、ルキア)

(今度の日曜日、空いているか?兄様が、貴様に会いたいそうだ)

(なんとかあけておく)

(尸魂界にしばらく滞在できそうか?)

(大学の1回生で、必須科目とかの授業がみっちり入ってるから、あまり長居はできそうにない)

(それは残念だ。大学が確か井上と同じだったな。浮気はするなよ)

(そういうお前こそ、恋次と浮気するなよ)

(たわけ。、私が愛しているのは一護、貴様だけだ)

(俺も、ルキアだけを愛してる)

尸魂界に行き、白哉と会うのは、また別のお話である。





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