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比翼の鳥のよに

恋次が、負傷した。

流魂街の親子を守って、素早い虚に右目をやられた。

「隊長、そんな心配しなくても、移植手術でなおりますって」

白哉は、右目を欠いて、不自由そうな恋次の傍にいた。

「目の移植手術は、神経系統が複雑なため、成功確率は50%だと聞いている」

「大丈夫ですってば。たとえ失敗したとしても、俺にはまだ左目があります。京楽総隊長だって、左目だけでやってるじゃないですか」

「京楽は、大戦の戦時中であるために、移植手術を行わなかった。戦後、移植手術に望んだが、失敗したのだ」

50%の可能性に負けたのだと、白哉は悲し気な顔をした。

「だから、大丈夫ですって隊長」

「何を根拠にそんなことが言える」

「俺には、隊長がいるから。京楽隊長には、もう浮竹隊長がいない。でも、俺にはまだあんたがいる」

恋次は、抱き締めてくる白哉を抱き締め返した。

「怖いのだ。このまま、恋次が光を失ってしまうのが」

「まだ左目があるじゃないっすか」

「右目を失明したら、左目しか残らない。もしも、もう片方の目まで失えば・・・残っているのは、闇だ」

「でも・・・・元隊長の東仙は、盲目でも隊長をしてました」

「それはそうだが・・・・・」

不安げな白哉にキスをして、頭を撫でた。

「とにかく、移植手術にいってきます」

恋次は、手術室に運びこまれた。

待合室で、白哉はなんともいえない不安を抱えながら、待った。

やがて、手術が終わった。

「虎鉄隊長、容体は?」

「喜んでください。移植手術は成功です。あとは回道をかけ続けて、瞳が光を取り戻すのを待つだけです」

「そうか・・・・・・」

白哉はほっとした。

ほっとしたら、今までの疲れがどっと押し寄せてきて、移動もめんどうなので仮眠室を借りて仮眠した。

恋次は、普通の病室に移された。

そこで数日を過ごし、退院となった。

傍には白哉がいた。

まだ右目には眼帯がされてあったが、光を取り戻すのは、時間の問題だと言われた。

いつも、逢瀬の時に使う館へきていた。

「恋次、右目を見せてくれ」

白哉にそう言われて、眼帯を外す。恋次の鮮やかな髪の色と同じ紅蓮の瞳がそこにあった。

「どうだ、見えるか?」

「まだぼやけてますが、見えます」

「そうか・・・・・」

白哉は、心底ほっとした。

「抱いてもいいですか」

「好きにしろ」

今日は酒のみだった。夕飯は、朽木邸で白哉と恋次とルキアと、ルキアの婿養子にきている一護とでとった。

家族の時間を大切にする。

それが、白哉の導き出した答えだった。

恋次も、もはや家族同然であった。

伴侶なのだ。白夜の。

「ん・・・・・」

口づけられて、白哉が少し身動ぎした。

「どうしたんすか」

「なんでも、ない・・・」

白哉は、何度も恋次の紅蓮の右目に、口づける。

「こそばゆい」

「どうだ、焦点はあってきたか?」

「はい。もうはっきり見えます」

褥に押し倒された。

「あんたの姿が、はっきりと見える。しっかり刻みつけないと」

「恋次・・・愛している。お前の片目が失われなくてよかった」

「隊長・・・俺も愛してます。右目、きっと隊長のお陰ですね。隊長の祈りが通じたんだ」

白哉は、薄く微笑んだ。

「そうだと、よいのだがな・・・んっ」

死覇装で見えない場所に、キスマークを残していく恋次。

「ああっ!」

潤滑油に濡れた指が入ってきた。

そのまま前立腺を刺激されて、白哉のものは先走りの蜜を零した。

それを躊躇なく、口に含む。

「ああ!」

ねっとりと絡みついてくつ咥内に、白哉はあっという間に熱を放ってしまった。

「やっぱり薄いですね、あんたの・・・・」

それを嚥下する。

「恋次・・・こい」

もう前戯はいいのだとばかりに、白哉が求めてくる。

恋次は、己の熱を白夜のそこに宛がい、一気に貫いた。

「ひあああああ!」

白哉の黒曜石の瞳から、生理的な涙が流れた。

「あ・・・・あ・・ああっ」

ズチュズチュと中を犯してくる熱に、恋次のこと以外何も考えられなくなる。

「恋次・・・キスを・・」

恋次が、それに応える。

舌が絡まるキスを繰り返しながら、何度も白哉の中を抉り、突き上げ、かき乱した。

「あああ!」

白哉が前立腺を貫かれて、二度目の熱を放つ頃には、恋次も熱を白哉の中に放っていた。

「もう1回だけ、していいっすか」

「好きにせよ・・・・・」

舌が絡み合うキスをしながら、恋次が再び入ってくる。

「んう・・・・」

激しくはなく、緩慢な動きだった。

ゆるゆると動かれて、白哉も余裕がなくなってくる。

「あ、もういけ・・・・」

「もう少し、このままで・・・・」

白哉のなかを堪能するように、恋次が浅く前立腺をつきあげた。

「ひう・・・!」

白哉が三度目の熱を放つ頃には、恋次も二度目になる熱を、白哉の中に放っていた。

「湯殿いきましょうか・・・・・」

ふらつく白夜を支えて、湯殿までくると、白哉の中に吐きだしたものをかき出す。

「ん・・・・・・」

白哉の眉が寄った。

牽星箝(けんせいかん)を外した黒髪は、サラサラだった。

湯をまずは浴びせて、お互いの髪と体を洗う。時折、白哉は恋次の視力の戻ったばかりの、紅蓮の瞳に口づけた。

「最近のお前は怪我がおおい。注意を怠るな。庇うなら、もっとうまく庇え」

「はい・・・・おっしゃる通りです。すみません」

この前の遠征でも、仲間を庇って酷い怪我をした。

あの時の背中の傷跡は、まだ残っていた。

白哉の場合なら治すように勧めるだろうが、恋次は自分の体の傷を、勲章としている。

「このような傷を、残して・・・・・」

恋次の背中を、白哉の白く美しい指がなぞる。

恋次の体には、傷跡がたくさんあった。白哉には傷一つない。

白哉は、自分の体に傷跡が残るのを嫌う。だから、大戦のおりに負った大けがは全て4番隊で傷跡がなくなるように処置してもらった。

そうしないと、恋次が怒るのだ。

「あんたの体は、傷一つでも許せねぇ」

そういって、口づけてくる。

それにこたえながら、湯の中に入った。

「私は、お前の痛みを知らぬ。だが、お前も私の痛みを知らぬ。だからこそ、右目は失って欲しくなかった。お前が失えば、私の右目も疼くのだ」

「隊長・・・・・・」

湯の中でキスを繰り返しあっていた。

ちゃぷんと、お湯が音をたてる。

どちからが傷つけば、もう片方も傷つくのだ。

まるで、比翼の鳥のように。

恋次が右目の視力を失ったときいて、白哉の右目に痛みを感じた。

きっと、目のみえない何か糸のようなもので、お互いに繋がっているのだ。きっと、糸の色は恋次の髪や目の色と同じ、焔の色だ。

比翼の鳥は、糸を絡めあいながら羽ばたいていくのであった。





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