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流産と足抜け

一護は、本当に毎日ルキアを買いにきた。抱く日もあれば、ただ一緒に眠る時もあった。
圧倒的に、ただ一緒に眠る日が多かった。

廓の主人に金塊を投げつけたおかげか、ルキアが他の客・・・・・恋次以外に抱かれることはなくなった。

「なぁルキア。恋次のことも好きなのか」

「すまない一護。お前にここまでしてもらっているのに、恋次に抱かれた。だが、恋次も好きなのだ・・・・一護のことが好きで愛しているように、恋次も好きで愛しているのだ」

褥の上で、ただ寄り添いあい、眠ろうとしている二人。

一護は、恋次のことで怒りはしなかった。恋次とルキアと一護の3人でやってきたのだ。恋次がルキアのことを好きで愛していると知っていたし、恋次がルキアを抱くであろうことは分かっていた。

「俺の子供はできないか?」

「そればかりは、運を天に任せるしかない」

もう、子供ができないように薬を飲むことはなくなった。

「恋次の子でもいい。俺の子ということにして、お前を身請けして育てる」

「一護・・・・好きだ、愛している」

「俺もだ、ルキア」

その日、一護が帰ると、同じ廓の違う花魁と遊女たちが、こちらを見ていた。

「やぁねぇ。犯罪者で苦役で花魁してるくせに、4大貴族様に目をかけられたからって、他に客をとらないなんて。花魁失格じゃない」

「どぶ臭いねずみの匂いがするわ。流魂街の貧しい地区の生まれのくせに」

「元死神だからって、調子にのってるんじゃないわよ」

そんなことをいう遊女たちを無視して、自分の部屋に戻ろうとすると、足払いをかけられて転んだ。

懐から、一護にもらったアメジストの髪飾りが転がり落ちた。

「やだ、これ石は安いやつだけど、純金じゃないの。お前なんかにはもったいないわ。あたしがもらってあげる」

「やめろ、返せ!」

一護から昔、誕生日プレゼントとしてもらったものだった。

他のもの全てを没収されても、その髪飾りだけは手放さなかった。

「返せ!」

「やぁねぇ、ねずみが何か言ってるわ」

「くさーい」

かっとなったルキアは、髪飾りをもっていこうとした、この廓一番の花魁にと飛びかかった。

「きゃあ!」

その美しい顔(かんばせ)を、これでもかというほどに殴りつけて、髪飾りを奪う。

「生意気な」

「やっちまいな」

1VS多数の乱闘になった。

霊圧を封印されて、一般市民と同じくらいにまでになっても、元死神。戦闘で得た経験から、遊女や花魁たちを返り討ちにしていった。

「見てなさいよ!お前なんか、この廓にいられなくしてやる!」

アメジストの髪飾りを最初に奪った花魁が、廓の主人を呼びにいった。

そして、遊女のほとんどが顔を殴られ、はれあがらせているのを見て、激怒した。

「4大貴族に気に入られているからって、調子に乗るな!」

そのまま、無理やり地下室に連れ込まれて、仕置きを受けた。気絶すると水をかけられて、顔は殴らないが胸や腹を何度も殴られた。

「あ・・・・・・」

何かが、秘所から流れ落ちてきた。

「わ、私・・・・・」

一護の、子供だった。

血と一緒に、流れ落ちていく胎児。

「なっ、まさか4大貴族様のお子か!?」

「貴様、許さん!」

ルキアは仕置きを受けているというのに、懲りた様子もなく、廓の主人を睨んだ。

「知らん、俺は知らんぞ”!お前が悪い!」

縄を解かれて、自由になっても、目から涙があふれ出して止まらなかった。

「一護との、愛の結晶・・・・・」

流れ落ちていった血の中にいた、小さな胎児を手に掬い取り、抱き締めた。

「うわああああああああああ!」

ルキアは泣いた。

花魁になって、こんな感情が揺さぶられて、泣いたのははじめてだった。

一護と会った時も泣いたが、こんなショックはなかった。

廓の主人は逃げるように仕置き部屋を後にした。

「一護・・・・・・」

私はもう、だめかもしれない。

こんなこと、あと3年も我慢できない。

その日から、一護がこなくなった。

まるで、ルキアの罪を知ってるように。

一護は、四楓院夜一との結婚話が出ていて、それを潰すのに躍起になっていて、ルキアの元に通うことも禁じられていた。

それでも、なんとか抜け出してルキアの元にきた。

「ルキア、すまない毎日お前を買いに来るって言ったのに・・・・ルキア?」

「流れてしまったのだ・・・貴様との、子が」

「なんだって!なんで流れた!」

「仕置きを受けたのだ」

「この廓の主人か!」

一護は怒りに任せて廓の主人のところに行った。

「ルキアを、仕置きしたって本当か。ルキアが俺の子供を身籠っているかもしれないと、少しも考えなかったのか」

「ひ、ひい・・・・・・・」

「貴様みたいなやつ!」

背中の斬月を抜き放つ。

「だめだ、一護!人を手にかけてはだめだ!」

ルキアが、寸でのところで止めに入った。

「だがルキア・・・・・・」

「きつく言い聞かせればよい。4大貴族のお前の言うことなら、無碍にできぬはずだ。一護が、私なんかのために殺人をおこすことはない」

「ルキア・・・・・・・!」

一番傷ついているのはルキアなのに。

「おい、廓の主人。二度とルキアに手を出すな。今度仕置きなんてしたら、その右手をもらう」

「一護・・・」

「行こう」

ルキアと、ルキアに与えられた部屋に戻る。

「子供なら、また作ればいい」

「ああっ、一護・・・・・」

一護に抱かれ、乱れていく。

ルキアの耳にも、四楓院夜一との結婚話が一護に出ているのは知っていた。

「一護・・・・四楓院家の姫と、結婚しないでくれ・・」

なんて自分勝手な我儘。そう思っても、言わずにはいられない。

「安心しろ。あと少しで破談になる」

一護はルキアに夢中になった。

そして、殴られたであろう胸や腹に、回道を与えた。

「少しは、痛みましになったか?」

「ああ、お陰で大分楽になった」

その日、ルキアは一護に笑顔を向けていた。本当は泣きたいのに。

もういやだった。花魁であるのも、一護に無理をさせるのも。

数日後、恋次がやってきた。

恋次に全てを話すと、足抜けしようと言われた。

躊躇もあったが、ルキアは恋次と足抜けを試みた。でも、花街の入口で、特殊な霊圧を遮断する結界があったせいで、恋次の瞬歩が使えなくなってしまった。

恋次が、花魁であるルキアを抱いていたので、足抜けはすぐにばれて、ルキアは仕置き部屋で気絶するまで折檻を受け、恋次は右手の骨を折られた。

「ああ・・・・私は・・・・・」

何処まで、誰かを犠牲にすれば気が済むのだろうか。

もう、生きていたくない。

そう思って、カミソリで手首を切った。



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