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浮竹が二人

「俺が本物だ」

「いいや俺だ」

二人の浮竹は、互いを睨みあう。

「いやぁ、両手に花だね」

右と左に浮竹を並べて、ご満悦気味の京楽に本物の浮竹は鳩尾に蹴りをいれた。

「いたたた」

「大丈夫か、京楽!」

偽浮竹が、京楽に駆け寄って、肩をかした。

「いやぁ、君が本物かな?」

「そうだぞ、京楽」

「違う、京楽そいつは偽物だ」

「何を言う。偽物はお前のほうだろう」

偽浮竹は、京楽に抱き寄せられていた。



事の起こりは数時間前。

涅マユリに、半ばさらわれるように12番隊の技術開発局に連れられて、偽浮竹を見せられた。

「これは・・・・?」

「君の髪の細胞から作り出した霊骸だヨ。いってしまえばクローンみたいなもんだ」

「お前、勝手にそんなこと!」

浮竹は怒ったが、他にも違う隊長のクローンが並んでいたし、京楽のクローンも見つけた。

「今日は、このクローンで君の恋人が、本物か偽物か区別つくか試そうと思ってネ」

「ちょっと待て!クローンってことは、声も姿かたちも、霊圧まで同じなんだろう!」

「ついでにいうと、記憶もだヨ。まぁ、中に入っている義魂丸のせいだが。ただ分かりやすいように、性格はちょっと変えてあるがネ」

性格が少し違うくらいで、はたして京楽には分かるのだろうか。

でも、京楽ならきっと俺が本物と分かってくれる。

そう思って、クローンを起動することに同意をしたのだ。




京楽は、二人いる浮竹に口をぽかんとあけて間抜けな顔をしていた。

「こっちが、霊骸の、いわゆる偽物だ」

「京楽、大好きだ!」

今にも京楽に抱き着かんばかりの偽物を、浮竹が止めた。

「こっちが本物ならいいなぁ。素直で、かわいい」

ぴき。

浮竹の頭に血管マークができる。

「京楽、お前は偽物のほうがいいのか?」

「いやだなぁ。そんなことないよ。僕の愛する浮竹は君一人・・・・・」

偽物が、瞬歩で本物の浮竹を連れて雨乾堂まできてしまった。

「お前、何を考えている!」

偽物を糾弾すると、偽浮竹は

「今日から俺が浮竹十四郎だ。もう、あんな試験官の中はごめんだからな。たとえ義魂丸とはいえ、俺はお前の記憶をもっている。京楽は、俺のものだ」

といって、本性を現した。

姿形、声、指紋から霊圧、霊骸に入っている義魂丸は同じ記憶をもつのだ。偽浮竹のきもちも分からないでもないが、譲れないものがある。

性格が少しひんまがっている・・・・・これなら、きっと京楽も分かるはず。

そう思った。

瞬歩で追いかけてきた京楽は、どっちがどっちだ分からなくて困惑気味だった。

「俺が本物だ!」

「いいや俺だ!」

どちらがどちらか分からなくて、京楽は問いをかけた。

「浮竹が、欲情したときにするくせは?」

「そんなの言えるか!」

「唇をなめることだ」

ぺろりと、偽浮竹は自分の唇をなめた。

「ふむ・・・・じゃあ、僕の名前を下で呼ぶときはどんな時?」

「お前、そんな恥ずかしいこといえるわけないだろう!」

「かんじたりいってるとき」

「ふむ・・・・・」

京楽が、あごに手をやる。

「俺が本物だ」

「いいや俺だ」

二人の浮竹は、互いを睨みあう。

「いやぁ、両手に花だね」

右と左に浮竹を並べて、ご満悦気味の京楽に本物の浮竹は溝降りに蹴りをいれた。

「いたたた」

「大丈夫か、京楽!偽物は酷いやつだな。京楽を蹴るなんて」

偽浮竹が、京楽に駆け寄って、肩をかした。

「いやぁ、君が本物かな?」

「そうだぞ、京楽」

「違う、京楽そいつは偽物だ」

「何を言う。偽物はお前のほうだろう」

偽浮竹は、京楽に抱き寄せられていた。

かっと、全身が沸騰しそうな怒りを覚えた。

「もういい、お前は消えろ」

偽物の自分を解放した斬魄刀で葬ろうとすると、京楽が制してきた。

「京楽、お前俺が本物だって分からないのか!」

ショックだった。

たとえ同じ姿形でも、魂が違うのだ。分かってくれると思っていた。これはただの自惚れなのだろうか。

涙が零れそうになった。

「消えろ!」

偽浮竹が、偽の斬魄刀で本物の浮竹に切りかかった。

「なぜ・・・?京楽?」

その体を、京楽の花天狂骨が貫いていた。

「浮竹はね、恥ずかしがりやだから、素直に言葉にしない時があるんだ。おまけに足癖が悪くて、怒ると蹴ってくるんだよ。それにね、君からは花の香がしない」

かつて赤子の頃、花の神、別名椿の狂い咲きの王に愛され、祝福を受けた浮竹からは、髪や肌から甘い花の香がした。

「そんなことで・・・・・俺も同じ、「浮竹」なのに・・・・」

「君は違うよ、同じ姿をもつただの霊骸で、浮竹の記憶をもつただの義魂丸が君の正体」

霊骸の口の中から義魂丸を出して、花天狂骨で粉々に砕いた。

魂をうしなった浮竹の霊骸は、さらさらと灰になっていった。

「京楽!」

浮竹は、涙を浮かべて京楽を思い切り抱きしめた。

「いやぁ、両手に花もいいけど、君を殺そうとするなんてばかな子だね」

「いつから分かった?俺だが本物だって」

「最初からだよ。君からは甘い花の香がしたけど、偽物からはしなかった」

「なっ、全部わかっててあんなことを言ったのか」

浮竹は怒って、京楽の頭をなぐった。足を蹴ると、京楽は

「本当に足癖の悪い子だねぇ」

と言って足首をつかみ、噛みつくようなキスを足首にした。

「京楽・・・」

「浮竹、大好きだよ。偽物の君なんていらないから。どんなに俺好みでも、本物以外はいらない」

浮竹を抱き寄せて、口づける。

「うんっ・・・・・」

舌が絡むみあう。口腔を思う存分蹂躙されて、浮竹はたっているのがやっとだった。

「雨乾堂もそこだし、ちょっと、ね?」

情欲したらしき京楽の首に手をまわし、布団を出すとその上で性急に交わった。

「ん・・・春水っ」

いった時に、京楽の下の名を呼んでいた。そして、まだ足りないのだと自分の唇を舐める。

「十四郎。欲情してる?」

「そんなこと、聞くなっ・・・・ああっ」

貫いて揺さぶられて、生理的な涙が流れた。

「十四郎、愛しているよ・・・・・・」

最奥を貫くと、京楽の熱が浮竹の腹の奥で弾けた。

「ああっ!」

浮竹たもう二度ほど精を放ったが、京楽はまだ一回だけだ。硬さを失わない京楽の雄に侵されて、浮竹が甘い声をあげる。

「ああん」

「君の花の香は、くらくらするね」

「んっ・・・・俺のせいじゃない・・」

生まれた赤子の頃、両親が病弱な子供に少しでも長生きしますようにと、花の神に捧げられた。

花の神に愛されて、浮竹は肌や髪から、自然と花の香がするようになっていた。

その甘い香りに、理性なんてとっくの昔に飛んでいた。

二人してぐずぐずになるまで溶け合った、

もう二度と偽物など作らないように、涅マユリに強くいい聞かせようと決めて、二人は泥のように眠るのだった。

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