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浮竹と京楽と海燕と かき氷

「海燕、おはぎ食うか?」

「いきなりなんですか。なにかたくらんでるんでしょう!」

浮竹に声をかけられて、おはぎののった皿を差し出されて、海燕は警戒した。

「なんでそうなる。ただ、好物だからあげようと・・・」

「さては、おはぎで寝過ごすことを懐柔しようという作戦ですね!」

「いや、違うんだが・・・・・」

「甘い言葉には裏がある!隊長の優しさは打算でできている!」

「酷くないか、それ」

いつもの自分を顧みる。

意地汚く寝れるまで寝て、海燕を怒らせて、熱が下がったとたんに甘味屋に行ったりして怒られる。

「なんかあんまいいことないな、俺の人生・・・・・」

日々がそれなのだから、海燕に警戒されても仕方ないかもしれない。

「まぁ、ここに置いておくから、食べたい時に食べてくれ」

「まじですか」

海燕は、浮竹の額に手を当てた。

「平熱だ。明日雨が降る」

「そこまで言うか」

浮竹は苦笑するしかなかった。

「やあ、お邪魔するよ」

京楽がいつものように、遊びにやってきた。とはいっても、仕事を抱えていたので、浮竹のいる雨乾堂で一緒に仕事をしようという魂胆だ。

それでも仕事をしてくれるだけましだと、七緒は思うだろう。

七緒は副官になってまだ数年足らずだ。いろいろと海燕から習うことがあり、たまに酒を飲み交わしたりしている。

海燕は妻帯しているので、その気はない。

「おはぎもってきたよ」

京楽は、重箱にいれられたおはぎを見せた。

「もう食べた後なんだ」

浮竹は、それでもおはぎを持ってきてくれたことが嬉しいのか、笑顔だった。

「明日の分にとっておこう」

「あれ、そのおはぎ・・・・誰も食べないの?」

机の上に置いてあった、皿に乗ったおはぎを、京楽が見下ろす。

「これは、俺の分です」

海燕が、さっと皿をとった。

「海燕、さっきは散々詰っといて、結局は食うのか」

「食べますよ!隊長がせっかく用意してくれたものだし!」

「じゃあ、僕のもってきたおはぎは冷蔵庫にいれておこうか」

小さいが、冷蔵庫にいれて冷やしておくことにした。

この季節、食物は傷みやすい。

季節は5月の終わり。新緑も鮮やかで、葉桜が綺麗な季節だった。

庭では綺麗に紫陽花が咲いており、雨乾堂の花瓶にも紫陽花が活けられていた。

「そろそろ暑くなる季節だからねぇ。浮竹は、脱水症状と、直射日光に気をつけてね」

「ああ、分かっている」

蝉が鳴き出す季節まであと、2カ月。

今年も猛暑らしい。

あまりに暑い時は、井戸の水をかぶるのだが。水風呂に入る時もある。

梅雨の始まりの季節か、空気は湿っていてじめじめしていた。

「ああ、なんかこの季節はこれからどんどん暑くなっていくから、億劫だな」

「そうだね」

「夏が暑いのは当たり前でしょう」

皿の上に置いてあったおはぎを食べながら、海燕がいう。

「とにかく、隊長はあんまり水風呂に入ったり、井戸の水を浴びないこと!」

「えー、横暴だ」

「その度に風邪引いて熱だすのに、あんたもこりないな!」

「熱だしても涼しいほうがいい」

「あー、もぅ!」

浮竹の楽観的な思考に、海燕はいらっときた。

「まぁまぁ。浮竹、水風呂に入るのも井戸の水を浴びるのも、僕と一緒ね。僕と一緒なら、体を冷やし過ぎることはないから」

「それもそうですね。京楽隊長、うちの隊長をお願いします」

「うん。任して」

「なんか、俺が問題児みたいじゃないか」

「実際そうだから、言ってるんです」

海燕は腰に手を当てた。

「まぁ、あんまりに暑ければ僕のもっている氷室を開くから」

「お、いいな。かき氷食べたい。今すぐに」

「ええ、今すぐ?」

「ああ。喉もかわいているし、少し暑いし今かき氷が食べたい」

浮竹の我儘に、京楽はとても甘くて。

「じゃあ、氷室から氷もってきてもらうから、仕事を片付けておこう」

京楽家の人間あてに言伝を頼んで、京楽は浮竹の隣の黒檀の文机で仕事を始めた、

1時間ほどして、大きめの氷が届いた。

「かき氷機あるかい?」

「えっと、去年のがここらへんに・・・・あった」

押し入れを探して、かき氷機を見つけると、すでに用意されていたシロップを浮竹が味見していた。

シャリシャリと氷が削られていく。

浮竹は苺のシロップを選んだ。

京楽は宇治金時で。

いつもはそんな機会のない海燕も、メロンシロップをかけたかき氷を食べた。

「シロップって、すごい色してますね。体に毒じゃないんですか」

「まぁ、毒ではないし、過剰摂取しても大丈夫だよ。食べれるものでできているからね」

メロンシロップの鮮やかな緑が、目に痛かった。

今年も夏も、また浮竹は直射日光でやられたり、水浴びをして熱を出したりするんだろうなと思いつつも、海燕は夏がくるのを歓迎した。

全然起きてこない冬よりは、いいからだ。

冬の浮竹は、布団にしがみついて離れない。

廊下に転がしても、毛布を被って眠りだす。

そんな苦労のある季節よりは、夏のほうがましであった。





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