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浮竹と京楽と海燕と 南の海

「夏だ!海に行こう!」

その年、山じいの許可なしに夏の暑い日に現世の海に出かけた。

山じいの許可をとっていたら、何カ月先になるか分かりゃしないという京楽の言葉に、悪いと思いつつも浮竹と海燕も現世にいった。

いつか、海燕に珊瑚礁を見せてやりたいと言っていた。

その年は、無人島の珊瑚礁のある南の島で、キャンプすることになった。

「うわぁ、本当に綺麗ですね。海がエメラルド色で宝石みたいだ」

海燕は、始めてみる南の海の珊瑚礁に、感嘆の声をあげていた。

「そうでしょ。ここ、僕と浮竹だけの秘密のスポットなの」

「え、いいんですか。そんな場所に俺を連れてきたりして」

「気にするな、海燕。昔院生時代からここにきたことがあって、ここはまぁ現世では馴染のあるところだからな」

「とにかく泳ごうよ。それから、夕飯になるような魚をとったり、貝をとったりしよう」

キャンプと決め込んで、食材は現地調達だった。もってきたものといえば、水と念のための保存食くらいか。

京楽は、海パン姿になって泳ぎだした。

「浮竹も、泳ごう。そのまま直射日光にやられる前に、泳いじゃないよ」

浮竹も、逡巡しながらも海パン姿になって泳ぎ出した。泳いでると言うか、おぼれていた。

「泳げないの忘れてた・・・・」

京楽に助けられて、浮竹は浅い海辺で海水浴となった。

海燕も、海パン姿になって、まずは珊瑚礁の海にもぐった。色鮮やか魚たちに、海燕は感動して言葉もでない。

もってきて網で、魚をとる。

海燕は、銛で魚をついてとった。

浮竹は、浜辺をほって貝探しだ。

夕日が傾く頃には、けっこうな量の魚と貝がとれた。無人島だが、川が流れているために、そこの川の水をくんで、鍋にした。

仕上げに味噌を溶かすと、いい匂いが漂ってきた。

「あ、うまいですねこれ。味噌とけっこう合う」

「焼いた魚もあるから、そっちも食べていいぞ」

魚は丸焼きで、塩をかけただけだったが、美味かった。

もちろん鍋も美味かったが。

夕食を終えて、寝袋にくるまり、3人で星を見ながら横になった。

「現世の星空は綺麗ですね。尸魂界とは比べものにならない」

「尸魂界の星は、現世の星とは違うからね」

「今日は月も綺麗だぞ」

浮竹が、下弦の月を見上げた。

「ほんとだ、綺麗ですね」

「海燕をここに連れてこれて、嬉しいんだ」

「どうしてですか?」

「海燕は俺と京楽にとっても大切な友人だからな・・・まぁ、上官とかそういうのは置いておいてな」

そう言われて、海燕はほろりと涙を零した。

「おい、泣くなよ」

「泣きますよ!自分の上官から、大切な友人なんて言われたら、泣きます!」

京楽が、茶々をいれる。

「浮竹が海燕君泣かせた~~」

「京楽、お前は黙ってろ」

ごきっと、寝袋から出した拳で鳩尾を殴られて、京楽は身もだえた。

「でも、お前はいてくれて本当によかったと思っている。今日は、いつものご褒美みたいなもんだけど思ってくれ・・・・・ただし、尸魂界に戻ったら先生がカンカンだろうけど」

京楽が忘れていたと、眉を顰めた。

「浮竹と海燕君は、僕の誘いに乗せられたってことで、僕だけ尻に火がつくんだろうなぁ」

「安心しろ京楽。俺も尻に火をつけられてやる」

「じゃあ、俺も」

3人揃えば、怖くないというのか、山じいの尻に火を体験したことのない海燕には、山じいの尻に火をつけられる熱さが想像できないのだろう。

無人島で一泊二日を終えて、3人は尸魂界に戻ってきた。

「こりゃ、春水、十四郎、それに志波海燕!」

山じいは、かんかんに怒っていた。

「勝手に現世に出かけおってからに!許可をとることくらいせぬか!」

「えーだって、現世に遊びにいくための許可なんて、通らないでしょ?」

「当たり前じゃ!遊びに現世にいくなど、言語同断!」

「じゃあ、やっぱり無断で遊びにいくしかないね」

「こりゃ春水!なぜそうなる!ええい、火をつけてくれる。流刃若火!」

京楽の尻に火がついた。

あちゃあちゃと、京楽が逃げ回る。

ついでに浮竹と、海燕にも尻に火がつけられた。

「あちちちち」

「あっついです!」

なんとか鎮火させるが、京楽の火だけはなかなか消えないのか、鎮火するのに数分を要した。

「やっぱり、山じい僕だけにきつくない?」

「お主が十四郎と志波を誘惑したんじゃろうが!」

「まぁ、否定はしないけどね」

実際は、京楽が発案して、浮竹がそれに同意して、海燕がそれに巻き込まれてついてきたかんじなのだが。

山じいは、3人を正座させてくどくどと説教をたれた。

ありがたいお説教のはずだが、3人とも聞いていなかった。

「分かったな、春水、十四郎、志波」

「え、あ、うん。わかったよ山じい」

「分かりました、先生」

「同じく分かりました」

山じいのお説教は、眠い。死神が現世にいくことは禁じられていないが、遊びにいくのには許可はそうそうおりない。

今後も現世に遊びに行くときは、山じいのお説教を覚悟の上でしようと思う、京楽と浮竹だった。

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