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小説掲載プログ
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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます

神掛を行った結果、ミミハギ様を失った浮竹は、肺の病が進行して死んだ。

はずだった。

「あれ・・・・」

自分の体を見る。半分透けていて、足がなかった。

そして、眠っている京楽の背後にいた。

「もしかして、俺は成仏できずに京楽に憑いている・・・・・?」

京楽は総隊長になっていて、忙しい。

その毎日を見守れたらいいなと、死ぬ前に未練たらしく思った。

霊子で存在するはずの尸魂界で、幽霊状態でいる自分は、虚に近いのだろうか。そう思いながらも、愛しい京楽をまた見れてよかったと思った。

「ん・・・・・」

京楽が目覚める。

「おはよう」

「ああ、おはよう浮竹・・・・・って、ええ!?」

結局、隊首会を開いての協議となった。

幽霊浮竹を、どうやって成仏させるかという議題だった。

「俺は、別にこのままでも構わないのだけどな・・・・虚じゃないなら」

憑かれている京楽は言う。

「浮竹は虚ではない。でも、霊子の塊というわけでもなく、はっきりいってどうやって存在しているのか謎だ」

「いっそ、魂葬したらどうだ?」

日番谷の言葉に、京楽が苦笑する。

「尸魂界で魂葬しても尸魂界に戻るだけだよ」

「それもそうか・・・だが、やってみる価値はあるだろう」

斬魄刀の柄の先で、幽霊浮竹に触れようとするが、透明になっていて触れることは叶わなった。

「だめだ。触れない」

「京楽総隊長に憑いているのだろう。成仏するまで、面倒を見てやることだ」

白哉が、どうしようもないとばかりに声を出す。

そのまま、結局どうしうもないと隊首会は解散となった。

一応、高僧である者のお祓いやら、祈祷やらも受けたが、浮竹が成仏する様子はなかった。

「僕としては、嬉しいんだけどね。例え幽霊で触れることができなくても、また君とこうして会話できるなんて・・・・・・」

「俺もだ」

はにかみながら笑う幽霊浮竹。

「できれば、このままでいたいな・・・・」

「僕もそう思う」

触れることができなくても、死別したはずの恋人と話せるというだけで、随分と変わるものだ。

「おはぎが食べたい・・・・」

ふと、浮竹がそう言った。

「供物として、供えればいいのかな?」

おはぎを甘味屋まで買いにいって、テーブルの上に置く。それを、浮竹は食べた。

幽霊状態なのに、食せるらしい。

「どうなってるの、君の体」

「わからない・・・でも、食べることはできるようだ」

「そうかい。じゃあちょっと・・・・・」

京楽は席を外す。でも、憑いているので浮竹も一緒に移動した。

「厠なんだけど・・・・・」

「ああっ、しかし憑いてるから一緒に動いてしまう。目をつぶって耳を塞いでおく」

「なんか浮竹にみられながらするって、すごい罪悪感」

厠を終えて、京楽は仕事を始めた。

「ここ、間違ってるぞ」

「あ、本当だ。ちょっと浮竹、その調子で書類整理手伝って」

「ああ、いいぞ」

夕方になった。夕餉を、念のために二人分用意してもらった。

幽霊の浮竹は、夕餉を食した。

食べようと思ったものは、さっと消えていく。どうやって食べているのかも分からない。

「味は美味いな」

「味覚あるんだ。幽霊なのに」

「そう、幽霊なのに」

「そろそろ湯あみにいくんだけど、一緒にくるよね?」

「お前にとり憑いているからな」

二人して、仲よく風呂入った。幽霊だけど、温度が分かるらしくて、湯船に浸かっていた。

「流石に体を洗ったり髪を洗ったりはできないが・・・・・湯の温度は感じられる。きもちいいな」

夜になり、京楽は眠った。浮竹も寝た。幽霊なのに寝れるのかと、朝起きて京楽に驚かれた。

「なんだか・・・・死んだって実感がしない」

「僕もだよ。君を失って嘆いて・・・でも、戻ってきてくれたかんじがする」

仲睦まじい夫婦のような関係は、今も健在だ。

「ただ、君に触れられないのが、残念だ」

「それは俺もだ」

それから1か月は共同生活をした。

やがてある日。

「京楽、もしかしたら浮竹を成仏させることができるかもしれないぞ」

日番谷が、そう持ち掛けてきた。

「現世で魂葬するんだ」

「ああ、いいよ。今のままで」

「何言ってるんだ、京楽!」

「俺も今のままがいいな」

二人して、もう浮竹は幽霊でいるのが当たり前になっていて、魂葬で成仏させるなんて勿体なくてできないと考えていた。

「まぁ、虚になるわけじゃねぇから、いいが・・・・本当に、このままでいいんだな?」

「ああ」

「うん」

「いつか、別れがくるかもしれないぞ。それも覚悟の上だな?」

「ああ」

「うん」

「そうか。じゃあ、俺はもう何もいわねぇよ」

そのまま、また数週間が過ぎた。

食事をとることで、どうやら幽霊としてのエネルギーを使っているらしくて、京楽は毎日浮竹と朝餉、昼餉、夕餉を共にした。

時には甘味屋にいって、二人分の代金を払い、注目される中堂々と二人で食べていた。

問題があるとしたら、厠までついていくことくらいか。

ふと、浮竹にしか見えない光が見えた。

ああ、あの先に本来あるべきすべての終わりがあるのだと、本能的に悟った。

光のことを京楽に話すと、絶対にそっちへ行ってはいけないと言われた。

光も、遠くにあるだけで、浮竹を吸い込む様子もない。

そのまま、二人は幽霊と死神という、奇妙な関係のまま数百年を生きた。

「ああ・・・・あれが、君が言っていた光か」

京楽の体内から、魂魄がにじみ出る。

「一緒に行こうか」

「ああ、そうだな」

もう、十分に生きた。浮竹も、京楽の最期まで一緒に在れて、満足していた。

光の先は虚無。

色のない世界。

二人は、もつれあいながら落ちていく。

京楽春水の死という形で、幽霊浮竹も二度目の死を迎えるのだった。



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