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小説掲載プログ
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京楽と海燕

「入りますよ」

海燕が雨乾堂の中にはいると、京楽の膝枕でうとうとしている浮竹がいた。

この二人、関係を隠す気がないのか、いちゃついているところを、良く見せられた。

「京楽隊長、浮竹隊長を布団でねかせてあげてください」

「いやいや、浮竹はこのままがいいんだよ」

「そうだぞー。あったかい」

「一つの布団で寝たほうがあったかいですよ」

冗談のつもりだった。

「その手があったか」

浮竹は、起き上がり、布団をしきだした。

そして、ぽんぽんと枕元をたたく。

「はいはい」

京楽は、笠をぬいで、布団に横になった。その隣に浮竹が体を横たえる。そのまま、抱き合って
二人は横になった。

おいおいおい。

副官の前で、ここまでするか。

二人とも、幸せそうな顔をしている。

「あっ」

浮竹の少し甲高い声が漏れた。

「京楽、海燕が見てるから・・・・」

「僕らの関係多分知ってるから大丈夫」

いやいやいや。

うすうす感づいてはいたが、いきなり目の前でおっぱじめるか普通?

腕の中の浮竹に口づける京楽。

浮竹は、されるがままに任せている。

「俺がいる前で・・・・・」

「そうだぞ、京楽・・・・・」

「じゃあ、海燕君がどこかに行けばいいんだね。っていうことで、下がってくれるかな」

京楽にそう言われて、少し腹が立った。

「海燕、下がっていてくれ」

「はいはい」

浮竹にまで言われては、下がるしかない。

13番隊の隊舎まで戻って、二人のことを考える。

院生時代のからの付き合いらしい。もう500年以上は関係を保ったまま、隊長をしているという。

そこまで相手を理解し、理解しあえる相手がいるのは正直羨ましかった。

「俺も、恋人作ろうかな・・・・・・」

「どうしたの、海燕」

「都か・・・・いやな、浮竹隊長が・・・・いや、なんでもない」

「浮竹隊長と京楽隊長でしょう?二人ができてるの、有名よ」

「そうなのか・・・・・・」

都と数分話して、事務作業に戻った。

4時間ほどして、夕餉の時刻になる。まだ居座っているだろうと思って、雨乾堂を訪れると、情事の痕が残る浮竹と、京楽がいた。

「ちょっと、あれから4時間はたってるんすよ!二人とも、だらだらしすぎです!」

「ん・・・ああ、ちょっと京楽がしつこかったから」

「浮竹が誘うからだよ・・・・」

二人は、海燕に追い立てられて、湯あみをしにいった。

情事のあとが残る布団をかたづけて、シーツを洗濯物の籠にいれる。それから、夕餉の用意をっ二人分した。

「ああ、いい湯だった」

湯あみからあがってきた浮竹は、色っぽいと思った。

その気のない海燕から見ても、容姿の整った上官は、京楽の目にうつればそれはそれは、美しい麗人に見えることだろう。

「浮竹、髪ちゃんとかわかさないと風邪ひくよ」

京楽が少し遅れてやってきて、京楽のために何故か雨乾堂においてある着換えの服を着て、浮竹の長い髪の水分を、バスタオルでふいていた。

「今日の夕餉は、ウナギのかば焼きか」

「お、おいしそうだね」

うなぎは美味い。庶民には少し贅沢品だ。

その他お吸いもの、つけもの、果物と、いろいろあった。

浮竹の膳の果物は、京楽の2倍になってある。果物などの甘いものの好きな浮竹のために、料理人が気を配っているのだ。

「じゃあ、俺はこれで」

去ろうとしたところを、呼び止められる。

「海燕、お前もここで食べろ」

「は?」

「いいから、夕餉をもってきてここで食べろ」

浮竹の言葉に、仕方なく同じうなぎのかば焼きの夕餉をもってきて、雨乾堂で食した。

「ほら、酒を飲め」

どうやら、酒盛りをさせるために、夕餉をここでとらせたらしい。

浮竹の飲む甘い果実酒を口にしながら、海燕は二人の様子を見る。

本当に、仲睦まじい、まるで夫婦のようだ。

「僕の酒も飲みなよ」

京楽から酒を注がれて、かっと喉を焼く高級酒に、どれだけ金がかかっているのだろうと思いつつも、飲み干す。

しばらくの間、酒を飲みあった。

浮竹と京楽は、院生時代の他愛もない昔話に花を咲かせていた。

その輪に交じる海燕は、二人の馴れ初めをなどを聞いて、少し苦手な京楽のことを見直した。

「で、酒に酔った勢いでお互いの想いを告げながら、そのまま体の関係までいってしまって、ゴールインしたんだ」

浮竹の話す、赤裸々な過去話。

「そこで、互いに隊長になって、それでもいつまでの一緒にいようと誓ったんだ。ほら、今数百年もそれから経っているのに、お互い傍にいるだろう?」

「ずっと、仲が良かったんですね」

「そうでもないぞ。こいつ、見合いをしそうになったり、女の尻を追いかけたり・・・たまに、振ってやろうかと思う」

「全部誤解だったでしょ!浮竹、僕を振るなんて、浮竹が後悔するよ」

「それもそうだな。俺を抱きとめれるのは、京楽くらいだ」

けらけら笑う浮竹は、酔っているらしかった。

頬に、ほんのり朱が混じっている。

酔うと、少し饒舌になるらしい。

「ふあー、世界が廻ってる・・・・」

「浮竹、もうお酒はそこまでにしなさい」

「嫌だ、もっと飲む」

「いい子だから・・・・」

「ふあっ」

目の前で、キスをされた。

そして、くたりと浮竹は意識を失った。

「どうしたんですか」

「眠っただけだよ」

「酒に弱かったっけ・・・・隊長」

「僕の酒を飲んでたからね」

「ああ、京楽隊長の酒は強いから」

浮竹を布団の上に寝かせて、京楽と海燕という珍しい組み合わせで飲みあった。

「君には、いろいろ苦労をかけるね」

「もう、慣れました」

「それでも、深く感謝してるんだよ。君が浮竹の副官でよかった」

「よしてください。気持ち悪い」

「褒めてるのに、気持ち悪いはないでしょ」

「京楽隊長は、いつもひらひひらしと、飄々としている様が似合ってますから」

「でも、浮竹の前ではそうでもないって言いたいんでしょ」

「そうですね。もっと軽い男だと思ってました。少し見直しました」

「酷い言われようだ」

酒をあおりながら、くつくつと笑う。

海燕も、酒を飲みながら笑った。

「浮竹のこと、頼むね」

「はい」

大切な上官だ。

頼まれなくても、精一杯守り、世話をして、助ける。

京楽と飲んだ次の日は、海燕も二日酔いになった。

浮竹は二日酔いになる前に寝てしまったので、いつも通り海燕を呼ぶ。

「海燕、おはぎ買ってきてくれないか」

「今日はちょっと・・・自分で買ってきてください」

「お、いいのか!じゃあいってくる♪」

浮竹を外に出すと、違う場所までいって夜まで帰ってこない。でも、止める元気もなかった。

夜になって、京楽に抱えられた浮竹の姿があった。

「参ったよ。甘味屋巡りの上に、酒屋で酔いつぶれて・・・・・」

「苦労する分、愛しているんでしょう?」

「う、うん。まぁそうなんだけど・・・・・」

「じゃあいいじゃないですか。京楽隊長が浮竹隊長持って帰ってくるの、もういつものことだし」

慣れたと、海燕は布団をしいた。

その上に浮竹を寝かせる。

「今日は夕餉はいりませんね」

「うん。ごめんねぇ、用意してもらっていたみたいで」

「いいえ。別の席官が食べるので、問題はありません」

「そうかい」

二人で、眠っている浮竹を見る。

「海燕、飛んで行ったぞー。京楽がとんでいった・・・・・・むにゃむにゃ」

わけのわからない寝言に、海燕と京楽は、二人して笑みを零す。

浮竹と一緒にいてくれる京楽のことが、少しだけ好きになりそうだった。

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