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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます6

「柘榴が食べたい」

急に、浮竹がそう言い出した。

「どうして?」

「いや、昔お前が柘榴の髪飾りをくれたのを思い出して」

「それ、院生時代のことじゃない?よくそんなの、覚えていたね。君が高価なものを嫌がるから、確か柘榴をかたどった色硝子でできた髪飾りをあげたんだっけ」

「けっこうお気に入りだったんだ。あれは、どこへいってしまったんだろう?」

「ああ・・・・まだ整理してなかったけど、君の遺品をまとめたものを、僕の屋敷の1つの部屋に置いてあるんだ・・・・見に行くかい?」

「ああ、見たい」

雨乾堂もなくなり、浮竹の数多い遺品は、京楽が引き取ったのだ。

京楽邸にいき、浮竹の遺品を入れた袋をひもとくと、院生時代から隊長時代までもらった髪飾りや簪、指輪に首飾り・・・・・たくさんの高価なものと安いものが混じったものがでてきた。
螺鈿細工の櫛とかもあった。

「懐かしいね、この螺鈿細工の櫛・・・・いつも、湯上りの君の髪をといてあげてた」

「あ、あった。柘榴の髪飾り」

色硝子でできた、少し地味な髪飾りだったが、よく浮竹が身に着けてくれていたのを思い出す。

「実体化するから、つけてくれないか」

「ああ、いいよ」

実体化したときに身に着けたものは、そのまま霊体の一部になる。

一房長い髪を手に取り、そこに柘榴の髪飾りをつけてあげた。

すーっと、霊体化して柘榴の髪飾りも浮竹の一部となった。

「どうせなら、翡翠のやつのほうがよかったんじゃない?君も、気に入ってたでしょう」

その言葉に、浮竹を首を横に振る。

「俺が身に着けると、なくなってしまうから、安いもののほうがいい」

「でも、君のものだ。こだわる必要なんてないのに。君の遺品は、処理するつもりもないし、気が向いたらいつでも言って」

「ああ・・・・・・遺品とか、すまないな。辛い思いをさせただろう」

「そうだね。君が死んだということを受け入れられずに、1週間くらい放心してたね。でも、僕も総隊長だから、いつまでもくよくよしているわけにはいかなかくてね。雨乾堂の取り壊しを決めたのも僕なんだ。君を思い出してしまうから。そこに、君の墓を建てた」

「この前、墓参りでいったな。立派な墓をありがとう」

「君がこうして、幽霊だけど居てくれて、僕はとても幸せなんだ」

「京楽・・・・・」

「浮竹、愛してるよ」

「ああ、俺もだ」

1分間だけ実体化し、舌が絡み合うキスをして、離れた。

「君に触れられるこの喜びを、どうすれば君に伝えれるだろう」

「もう、十分なくらい伝わっている」

「そうかい?」

「この前、散々俺を犯して想いをぶつけたくせに」

「あれは、まぁ、その、7年ぶりだったから」

「まぁいい。変な薬も使われたけど、俺も気持ちよかったし」

お互い、真っ赤になった。

何時間も睦みあった。濃い1日だった。

「螺鈿細工の櫛と、翡翠の首飾りだけ、お前の寝る一番隊の寝室に置いておいてもいいか」

「ああ、いいよ」

「髪をとくことはなくなったけど、思い出深いから、近くに置いておきたい」

京楽が寝る場所で、憑いている浮竹も眠る。

螺鈿細工の櫛と翡翠の首飾りを手に、1番隊の執務室までいったん戻り、それから寝室にきた。ベッドの上の横側においた。

「ここでいいかい?」

「ああ」

浮竹は、嬉しそうだった。

柘榴の髪飾りをした浮竹も、よかった。翡翠の髪飾りをと思ったのだけど、柘榴の色硝子はいろんな色があって、光をうけるとキラキラと輝いた。

浮竹の指には、ずっと前にあげたエンゲージリングも光っていた。

「そうだ、朽木の結婚式の動画を見たい。盛ったお前に連れられて、途中で抜け出したから」

「あ、うん。用意するよ」

動画を再生していくと、ぽたぽたと浮竹は涙を零した。

「朽木ーーー幸せになれよおおお」

「浮竹、言っとくけど、ルキアちゃんが結婚してもう1か月も経つんだよ」

「そうだな。そうだ、結婚したときのプレゼントを渡していなかった。とはいっても、俺は幽霊だし・・・・京楽は、何かあげたか?」

「僕は、アメジストの髪飾りをあげたよ。浮竹が寝ている間に買ったからね。浮竹も今からでもいいから、何か贈り物をするかい?」

「ああ。京楽が金を出すことになってすまないが・・・そうだな、宝石店に行こう」

二人で、高めの宝石店にやってきた。

「これはこれは京楽様と浮竹様。今日はどんなものが、お望みでしょうか」

この宝石店で、京楽は院生時代から浮竹に贈るものをずっと買ってきたのだ。老舗で、京楽はそこの常連であった。

浮竹が幽霊として半透明で京楽の隣にいた姿に、はじめはぎょっとしていた店員であるが、説明するとすぐに受け入れてくれた。

「アメジストの、何か装飾品はないだろうか」

浮竹が、いろんな宝石の入ったケースを見ていた。

「アメジストでしたら・・・・髪飾り、首代わり、指輪、ピアス、イヤリング、ブローチ、腕輪・・・一通りそろっておりますが。そうだ、こんなものもありますよ?」

店員が見せたのは、大きめのアメジストの結晶だった。

「こちらは置きものになりますので、身に着ける物にはなりませんが」

「これがいい」

一目見て、浮竹は気に入ってしまった。

見てみれば、値段も安めで、これがいいと思った。

「京楽、これを買ってくれ」

「わかったよ。これを買うよ。プレゼント用だから、できればかわいくラッピングしてほしいな」

「かしこまりました」

お金を払って、品物を受け取った。

アメジストなので、それを意識した紫色の箱にいれて、紫のリボンで包装された。

「京楽、今から朽木のいる13番隊に渡しにいっても大丈夫か?」

「ああ、いいよ」

京楽と浮竹は、アメジストの結晶をもって、13番隊の、新しく作られた執務室にやってきた。

「京楽総隊長に浮竹隊長、どうしたのですか?」

「浮竹がね、君に結婚記念の贈り物をあげたいって」

「そんな、お気持ちだけでけっこうです!」

「まぁ、そう言わずに受け取ってくれ。もう買ってしまったものだし」

浮竹の言葉に、京楽からラッピングされら紫の箱を受け取る。

「中身を拝見してもいいですか?」

「ああ」

「うわぁ・・・・・・」

大きなアメジストの、研磨していない結晶だった。

「綺麗」

「気に入ったか?」

「ありがとうございます、浮竹隊長!大切にします!」

光にすかすと、アメジストが紫色の光を反射させて綺麗だった。

「改めて、結婚おめでとう、朽木」

「ありがとうございます、浮竹隊長」

光に煌めいて、浮竹の柘榴の髪飾りも輝いていた。霊体の一部になっているが、輝くのだ。

「浮竹隊長も、その柘榴の髪飾りとても似合っています。清楚な感じがします」

「ありがとう、朽木」

浮竹の指と、京楽の指にエンゲージリングが光っているのに、前々から気づいていたが、それとは別に輝く浮竹の柘榴の髪飾りも、きっと二人の思い出がいっぱいつまったものなのだろうと思う。

「じゃあ、僕らはこれで戻るから。またね、ルキアちゃん」

「またな、朽木・・・いや、今は阿散井・・・ああめんどくさい、朽木のままでいいか」

ルキアは、苦笑して二人を見送った。



二人は、市場に来ていた。

「どうしたんだ、こんなところにきて」

「柘榴が食べたいって言ったでしょ。探してるの」

朝に言った言葉を覚えててくれたことに、浮竹は京楽の優しさにノックダウンされそうになった。本当に、京楽は優しい。甘えると、とことん甘やかしてくれる。

果物店で柘榴を二人分購入した。

「うん、甘くて美味しい。ほら、浮竹も食べなよ」

さっと、柘榴が消える。

「甘い・・・・」

ぺろりと、果汁が滴った唇を舐めようとして、実体化して、果汁にまみれたキスをしかけると、京楽が驚いた。

「浮竹、こんな人前で・・・」

「え」

見ると、市場にいる人たちの視線が釘付けになっていた。

幽霊なのだ。半透明の浮竹をなんなんだろうという視線と、総隊長である京楽を純粋に珍しがる視線などが集まっていた。

「か、帰ろう京楽!」

真っ赤になった浮竹を連れて、1番隊の寝室に戻るのであった。

今日1日は、浮竹のために使ったが、それもまたいいだろうと思う京楽がいた。

「柘榴、まだあるから食べなよ」

甘いものが大好きな浮竹は、夕餉の前に柘榴を食べつくしてしまうのだった。





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