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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます7 闇鍋

11月。

肌寒い季節になった。

「ふう、少し寒いね」

「ほんとだな」

こたつを用意してあったので、その中に入った。

「あったかい・・・・・・」

幽霊浮竹は、温度が分かるようで、暖かいこたつの中に、京楽と一緒に半身をもぐりこませた。

「そうだ。今日は鍋にしよう」

「お、いいな。カニ鍋にしよう!」

「いや、闇鍋だ」

「何故に!?」

浮竹が突っ込むが、京楽は悪戯心から、浮竹にいつの日か闇鍋をさせようと思っていのだが、生前にはできなかったことを思い出す。

今の幽霊浮竹は、食事もできるので、闇鍋をどうしてもしたくなった。

「じゃあ、料理人に、適当に材料入れてもらってくるから、浮竹はここにいてね」

ぽつんと、浮竹は残された。

最近は、少しの時間なら、少しくらい遠く離れても大丈夫なようになっていて、もはや京楽に憑いているのかも怪しい。

やがて、鍋がやってきた。

ことことと、音をたてて、いい匂いをさせている。

お腹がすいた浮竹は、闇鍋というものをあまり詳しく知らなかった。

京楽と並んで、食べることにする。

京楽が、鍋からとりだしたものを、さっと浮竹は食べた。浮竹は、食べようとしたものをさっと消し去る。それが浮竹の食事であった。

「これは・・・・バナナ?んー意外といける」

もっきゅもっきゅと、かんで味を確かる。

バナナも甘い。

鍋も甘かった。砂糖が入っているのか、鍋は甘ったるい匂いで満ちていた。

京楽が、次をとりだす。

りんごだった。それを、京楽は食べたけど微妙な顔をしていた。

「んー悪くはないけど、鍋にいれるもんじゃあないね」

「でも、闇鍋だろう」

「そう、闇鍋。僕も何が入っているのか知らないんだ」

京楽が次を鍋の中から取り出す。

また、りんごだった。それを浮竹はさっと食べた。

「ただのりんごだな・・・・ただ、シロップ漬けになってるみたいでけっこういい」

「ええ、僕は同じりんご食べた時、そんな風には思わなかったよ」

闇鍋には砂糖がたっぷり入っていた。

「んー。汁が甘いね。これじゃあ、闇鍋だけど、フルーツ鍋だね」

京楽が次を取り出す。幽霊浮竹は、実体化しない限りものに触れられないので、京楽がすくってくれたものを食べた。

「柿か・・・・僕はいらない。浮竹食べたら?」

さっと、柿が消える。

「んー。普通の柿より甘い」

もっきゅもっきゅと、柿を口にする。

次から次へと闇鍋に入っていたものをとりだす。

りんご、メロン、苺、りんご、ばななだった。

それで、闇鍋の中身は終わりだった。

京楽は食欲を失せさせて、全部浮竹が食べた。

「んーちょっと普通より変な味はするけど、これはこれでうまい」

「普通の鍋、もってきてもらうよ。今度こそ、ほんとのカニ鍋で」

「そうか。俺ももう少し食えるから、ご相伴に預かろうかな」

今度は、正真正銘のカニ鍋だった。

ぐつぐつと、良い匂いがして、入れたカニは鮮やかな朱色になって、食べごろだと伝えてくる。

京楽が、浮竹の分をすくうと、さっとカニの中身だけを食べたのか、殻が残された。

「器用だね、君の食べ方」

「そうか?」

「いちいち、身をほじくらなくていいとか、便利だね」

「カニもうまいな。俺的には、さっきの闇鍋もよかったが」

甘いものが大好きな浮竹の口にあったのだろう。

料理人に、闇鍋にしてくれとは頼んだが、フルーツものばかりにしてくれとは頼んでいなかったし、砂糖をあんなに入れるとは思っていなかったのだ。

「はぁ。普通のカニは美味しいね」

「うん。カニも美味い」

浮竹の分を皿にのせると、浮竹は殻だけ残して器用に中身だけを口にする。

「あ、餅が入ってる」

「食べるかい?」

「ああ」

もちをおいしそうにほうばる、浮竹はかわいかった。

鮭や海老も入っていた。カニと一緒に、京楽も浮竹も食べた。

「俺はもういい。お腹いっぱいだ」

浮竹にしては食べたほうだろう。フルーツの闇鍋が、甘味物になるのかわからないが、多分別腹状態で食べていたのだろう。

残りのカニと海鮮物を、京楽は一人で食べた。

「僕もおなかいっぱいだ。流石に雑炊まではむりだね」

カニ鍋のあとの、出汁のしみた雑炊はうまいが、今回はなしだ。

「それにしても、あの料理人、浮竹のことを思ってあんな闇鍋にしたのかな」

「さぁ?」

1番隊の料理人は、浮竹が甘党で、果物や甘味物に目がないことを知っていた。

まさか、浮竹に懸想しているのではあるまいな。

そういえば、あの料理人はいつも浮竹の方を見ていた。

「幽霊になっても・・・君は、罪づくりな男だね」

「は?」

あの料理人には、違う隊にいってもらおう。

そう決意する京楽であった。


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