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海燕と浮竹と京楽と スイカ

「京楽、スイカが冷えてるんだ。食べていかないか」

雨乾堂に遊びにきた京楽は、浮竹にそう声をかけられた。

「あーうん、いいね。こう暑いと、冷えたスイカは美味しいだろうね」

海燕がスイカを切り分けてくれた。

「ほら、京楽お前の分だ」

スイカは丸ごとの分を三等分されて、さらには食べやすいように赤い果肉の部分だけを切り分けられていて、フォークを突き刺して食べた。

「甘いね」

「今年のスイカは甘いらしいぞ」

「うん、甘い。それによく冷えていておいしいよ」

京楽は、まだ手がつけられていない海燕の分まで少し食べた。

「あんた、自分の分があるでしょう。意地汚く人の分まで食べないでください」

スイカの皮を捨てに行った海燕が雨乾堂に入ってくるのと、京楽が海燕の分のスイカをフォークでさして口にもっていったのはほぼ同時だった。

「いいじゃない、ちょっとくらい」

「よくありません」

「けち」

「上流貴族のくせに、意地汚いですね!スイカなんていくらでも買えるでしょう!それこそ瀞霊廷中のスイカ買い占めることだってできるでしょうに!」

「あ、それいいね」

「おい、京楽・・・・」

「いや、ウソウソ。冗談だよ。そんなにスイカばかり買って食べても飽きるだけだから。ああ、浮竹もう食べちゃったの。僕の分も食べるかい?」

浮竹がもっと食べたそうな顔をしていたので、京楽は自分の分を分けてあげようとした。

「浮竹隊長、俺の分をどうぞ」

「いや、浮竹が食べるのは僕の分でしょ!」

「いや、俺の分です」

浮竹は、ほわりと笑って、京楽と海燕、両方の皿からスイカをフォークでぶっさして、食べた。

「喧嘩両成敗だ」

「はい、すみませんでした」

「ごめん」

また、浮竹はほわりと笑った。

「なんか機嫌いいね」

「朝からあの調子なんです」

京楽は、浮竹の額に触れた。

「やっぱり。熱あるよ、浮竹」

「そうか?全然苦しくないんだが・・・・・」

海燕が体温計で測ると、37.8度という体温が出た。

「微熱だけど・・・・一応、解熱剤飲んで横になろうか?」

京楽がそう言うと、浮竹は素直に頷いた。

「分かった」

「なんか今日の浮竹は一段とかわいい・・・って、何その手は」

「隊長に手出しする前に帰ってもらおうと思いまして」

解熱剤を飲ませようと浮竹に伸ばした手を、海燕に捕まえられた。

「そんなことするわけ・・・・ないとは言い切れないけど」

「半年前、微熱の隊長を襲って高熱ださせましたよね?」

「う・・・・・」

過去のことを出されて、ちょっとその気があった京楽は言葉を詰まらせた。

「じゃあ、キスだけ」

「分かりました。キスだけなら、許しましょう」

海燕に自由を与えられて、京楽は浮竹の頬に手を当てた。

「浮竹、好きだよ」

触れるだけのキスかと思うと、舌が絡みあうディープキスに変わっていく。

「んあ・・・ふあっ」

ぴちゃりと、音がした。

「んん・・・・」

「長い!」

どこからもちだしたのかわからないハリセンで頭をはたかれて、京楽が海燕をにらんだ。

「ちょっとくらい、いいじゃない」

「3分以上キスしてたでしょう。長すぎです」

「たかだか3分くらい」

「3分もです」

ぎゃあぎゃあと言い争っていると、浮竹がハリセンを奪って、京楽と海燕の頭をどついた。

「喧嘩はだめだぞ」

「はい」

「ごめん」

布団がしかれて、浮竹は素直に横になった。

水と解熱剤を飲んで、眠りにつく。

その横で、京楽は浮竹にうちわで風をおこしてあげながら、海燕を見た。

海燕は、京楽の様子を見ていたが、大丈夫と判断したのか、隊舎のほうに下がっていった。

「浮竹、七夕そういえばすぎちゃったね。今年は雲で星が見えなかったし・・・・また来年かな」

「んー」

浅い眠りについている浮竹は、京楽の声に少し反応する。

「やっぱり、キスだけじゃ無理だよ」

浮竹の鎖骨にキスマークを残した。

「ん・・・・・・」

鎖骨を甘噛みして、満足する。

「早く元気になってね」

君の笑顔が、見たい。

甘いスイカを、用意させよう。

熟れて、それで大きくて、冷えたものを。

スイカなら、食欲があまりなくても多分食べられるだろう。

そう思いながら、京楽は浮竹が目覚めるまで畳の上でうたた寝をはじめるのであった。


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