温もり
「ん・・・・・京楽?」
「どうしたの」
ふと眠っていると、隣にあったはずの体温が消えていて、不安げな声を出していた。
「京楽、傍にいてくれ」
素直に甘えてくる浮竹は可愛かった。
「どうしたの、何が悪い夢でも見たの?」
「違う・・・ただ、隣に温もりがなくて」
その日は雨乾堂に泊まっていた。
仕方ないねぇと、京楽は僅かな明かりをつけて、浮竹の隣で寝そべりながら小説を読みだした。
「これくらいの光なら、寝れるでしょ?ちゃんと隣にいるから、もう一回寝なよ」
「京楽は、寝ないのか?」
「ちょっと今日は昼寝しすぎちゃってね・・・・眠くないんだ」
いつもなら、眠剤を飲むところだが、小説の続きが気になって仕方なかった。
「なんの小説を読んでいるんだ?」
「青春白書。他愛もない生徒と教師の禁断のラブストーリー」
「生徒と教師・・・なんか萌える設定だな」
「そうでしょ」
1巻を浮竹に渡すと、浮竹も読みだした。5巻で完結だった。
最初は面白くて読んでいたが、眠気にまけて、そのうちスースーと静かな寝息をたてだした浮竹に、苦笑して毛布と布団を肩までかけてやる。
「風邪引かないようにね・・・・・」
眠っている浮竹の顔は、あどけない。学院時代と変わらぬ寝顔だった。
確かにあの頃よりは年は重ねてしまったが、浮竹の寝顔のあどけなさはちっとも変わっていなかった。
実際の年よりも、大分幼く見えた。
「僕も君も、いい年をした大人なのにね」
浮竹と同じ布団で眠っていた。まだ肌寒い季節だ。
京楽も、小説に栞を挟み、横になる。
やっとのことでやってきた睡魔だ。これで寝れなかったら、薬を飲んで寝ようと思った。
次の日の朝、寒さで目が覚めた。
見ると、寝返りを打った浮竹に毛布も布団もとられていた。
なんとか自分の上に毛布と布団をかけて、もう一度眠りだす。
寝た時刻が遅かったので、京楽は昼過ぎまで寝てしまった。
「寝すぎた!」
隣で浮竹はまだ寝ていた。
「ねぇ、浮竹、いい加減に起きなよ」
起こすと、寝ぼけ眼で浮竹が起き出した。
「今何時だ?」
「昼の1時」
「どうせ今日は互いに休日だ。いくら寝ても、誰にも文句は言われないさ」
それでも、寝すぎると夜に眠れなくなるからと、まだ眠り足りなさそうな浮竹を布団から追い出して、布団を畳んで押し入れになおした。
「この時間だと、朝餉は流石にないか。昼餉を食べに行こう」
「ふあ~」
浮竹は大きな欠伸をしてから、伸びをした。
「ふーよく寝た。13時間かな」
「君、それ眠りすぎだから・・・・・」
浮竹は、たまに怠惰だ。それは院生時代から変わっていない。
院生時代は登校時間ぎりぎりまで寝ていて、よく朝食を食べなかった。
13番隊の隊舎にいき、食堂で昼餉を食べた。
それからすることもないので、互いにごろごろしながら、青春白書という、夜に読んでいた小説を読みだす。
浮竹は読むのが早いのか、もう2巻を読み終わってしまった。
今、京楽が読んでいるのが3巻だ。
「早く3巻を渡せ」
そう言われて、読んでいる最中だったが、3巻を浮竹に渡した。
途中なので、4巻を読むわけにもいかず、浮竹のサラサラな白髪を手ですいたり、三つ編みにして遊んでいたら、30分ほどで浮竹は3巻を読み終えてしまった。
「そんなに早く読み終わるの?」
「早読みは得意なんだ」
学院時代、国語の成績は常に学年TOPだったことを思い出す。
古典もだ。
問題文を読むのが早いので、その分回答に時間が回せるのだ。そもそも秀才だ。影で努力をして学年TOPを維持していた。
「なんだか、早読みできるのって、羨ましいけど時間がつぶせなくなって、悲しくもあるね」
「遅く読もうと思ったら、それもできる」
「じゃあ4巻からは遅く読んでみれば?どうせ今日すること何もないんだし」
3巻を京楽に返す。
「そうしてみる」
今度は遅かった。2時間かけて、4巻を読み終えた。京楽は3巻を読み終えたが、4巻を浮竹が読んでいるので、ごろ寝をしていたり、浮竹の膝の上に頭を乗せて寝たりしていた。
「今日は寒いな・・・・」
火鉢にあたりだす。
毛布をだしてきて、それを羽織った。
「大丈夫?」
「お前の温もりが欲しい」
浮竹を抱き締めた。その暖かさに安堵して、浮竹は目を細める。
「お前は、いつでも暖かいな・・・・・」
「ちょっと、体温が高いのかもね」
平熱も、いつも36度7分とかそんなだ。
微熱の範囲など、京楽にとっては熱にならない。
「もっと、温もりが欲しい」
二人は、乱れ合って畳の上に転がった。
「ん・・・・・」
口づけられて、浮竹もそれに応えだす。
いざ衣服を脱がそうとすると、寒いからと駄目だと言われた。
半殺し状態にされて、そんな殺生なと、情けない声をあげる京楽。
「布団をしいて、ぬくぬくしよう」
仕方なしに布団をしいて、睦みあうでのもなしにごろごろしながら、温もりを浮竹に与えた。
「お前は暖かいな・・・人間ホッカイロみたいだ」
「君にだけだよ」
「分かってる」
京楽が、誰かと床を共にするとしたら、浮竹以外にいない。
結局、その日はお互いを抱き締めあいながら、横になって体温を共有しあい、小説の感想など他愛もないことを口にしながら、夜を迎えた。
少し早めに夕餉をとり、明日の朝に京楽は8番隊隊舎に戻るので、一緒に湯浴みをして少し早めに眠った。
その日も寒かった。
「はっくしょん」
京楽は、寒気で目が覚めた。
浮竹がまた、一人で毛布と布団を占領していた。仕方なしにもう一組、布団をしくと、浮竹が目覚める。
「京楽、傍にいろ。お間の温もりが欲しい」
「じゃあ、毛布と布団の独り占めはやめてね」
その声に、自分が京楽の分まで占領していたのだと知って、赤くなった。
赤くなる浮竹もかわいいなぁと、京楽は呑気だった。
次の日は朝の8時に起きた。互いに仕事をがあるので、しばらくのお別れだ。
「また、温もりをくれ」
「今度は抱いてもいい?」
そう耳元で囁くと、浮竹は真っ赤になってバカといいながも、了承してくれるのだった。
「どうしたの」
ふと眠っていると、隣にあったはずの体温が消えていて、不安げな声を出していた。
「京楽、傍にいてくれ」
素直に甘えてくる浮竹は可愛かった。
「どうしたの、何が悪い夢でも見たの?」
「違う・・・ただ、隣に温もりがなくて」
その日は雨乾堂に泊まっていた。
仕方ないねぇと、京楽は僅かな明かりをつけて、浮竹の隣で寝そべりながら小説を読みだした。
「これくらいの光なら、寝れるでしょ?ちゃんと隣にいるから、もう一回寝なよ」
「京楽は、寝ないのか?」
「ちょっと今日は昼寝しすぎちゃってね・・・・眠くないんだ」
いつもなら、眠剤を飲むところだが、小説の続きが気になって仕方なかった。
「なんの小説を読んでいるんだ?」
「青春白書。他愛もない生徒と教師の禁断のラブストーリー」
「生徒と教師・・・なんか萌える設定だな」
「そうでしょ」
1巻を浮竹に渡すと、浮竹も読みだした。5巻で完結だった。
最初は面白くて読んでいたが、眠気にまけて、そのうちスースーと静かな寝息をたてだした浮竹に、苦笑して毛布と布団を肩までかけてやる。
「風邪引かないようにね・・・・・」
眠っている浮竹の顔は、あどけない。学院時代と変わらぬ寝顔だった。
確かにあの頃よりは年は重ねてしまったが、浮竹の寝顔のあどけなさはちっとも変わっていなかった。
実際の年よりも、大分幼く見えた。
「僕も君も、いい年をした大人なのにね」
浮竹と同じ布団で眠っていた。まだ肌寒い季節だ。
京楽も、小説に栞を挟み、横になる。
やっとのことでやってきた睡魔だ。これで寝れなかったら、薬を飲んで寝ようと思った。
次の日の朝、寒さで目が覚めた。
見ると、寝返りを打った浮竹に毛布も布団もとられていた。
なんとか自分の上に毛布と布団をかけて、もう一度眠りだす。
寝た時刻が遅かったので、京楽は昼過ぎまで寝てしまった。
「寝すぎた!」
隣で浮竹はまだ寝ていた。
「ねぇ、浮竹、いい加減に起きなよ」
起こすと、寝ぼけ眼で浮竹が起き出した。
「今何時だ?」
「昼の1時」
「どうせ今日は互いに休日だ。いくら寝ても、誰にも文句は言われないさ」
それでも、寝すぎると夜に眠れなくなるからと、まだ眠り足りなさそうな浮竹を布団から追い出して、布団を畳んで押し入れになおした。
「この時間だと、朝餉は流石にないか。昼餉を食べに行こう」
「ふあ~」
浮竹は大きな欠伸をしてから、伸びをした。
「ふーよく寝た。13時間かな」
「君、それ眠りすぎだから・・・・・」
浮竹は、たまに怠惰だ。それは院生時代から変わっていない。
院生時代は登校時間ぎりぎりまで寝ていて、よく朝食を食べなかった。
13番隊の隊舎にいき、食堂で昼餉を食べた。
それからすることもないので、互いにごろごろしながら、青春白書という、夜に読んでいた小説を読みだす。
浮竹は読むのが早いのか、もう2巻を読み終わってしまった。
今、京楽が読んでいるのが3巻だ。
「早く3巻を渡せ」
そう言われて、読んでいる最中だったが、3巻を浮竹に渡した。
途中なので、4巻を読むわけにもいかず、浮竹のサラサラな白髪を手ですいたり、三つ編みにして遊んでいたら、30分ほどで浮竹は3巻を読み終えてしまった。
「そんなに早く読み終わるの?」
「早読みは得意なんだ」
学院時代、国語の成績は常に学年TOPだったことを思い出す。
古典もだ。
問題文を読むのが早いので、その分回答に時間が回せるのだ。そもそも秀才だ。影で努力をして学年TOPを維持していた。
「なんだか、早読みできるのって、羨ましいけど時間がつぶせなくなって、悲しくもあるね」
「遅く読もうと思ったら、それもできる」
「じゃあ4巻からは遅く読んでみれば?どうせ今日すること何もないんだし」
3巻を京楽に返す。
「そうしてみる」
今度は遅かった。2時間かけて、4巻を読み終えた。京楽は3巻を読み終えたが、4巻を浮竹が読んでいるので、ごろ寝をしていたり、浮竹の膝の上に頭を乗せて寝たりしていた。
「今日は寒いな・・・・」
火鉢にあたりだす。
毛布をだしてきて、それを羽織った。
「大丈夫?」
「お前の温もりが欲しい」
浮竹を抱き締めた。その暖かさに安堵して、浮竹は目を細める。
「お前は、いつでも暖かいな・・・・・」
「ちょっと、体温が高いのかもね」
平熱も、いつも36度7分とかそんなだ。
微熱の範囲など、京楽にとっては熱にならない。
「もっと、温もりが欲しい」
二人は、乱れ合って畳の上に転がった。
「ん・・・・・」
口づけられて、浮竹もそれに応えだす。
いざ衣服を脱がそうとすると、寒いからと駄目だと言われた。
半殺し状態にされて、そんな殺生なと、情けない声をあげる京楽。
「布団をしいて、ぬくぬくしよう」
仕方なしに布団をしいて、睦みあうでのもなしにごろごろしながら、温もりを浮竹に与えた。
「お前は暖かいな・・・人間ホッカイロみたいだ」
「君にだけだよ」
「分かってる」
京楽が、誰かと床を共にするとしたら、浮竹以外にいない。
結局、その日はお互いを抱き締めあいながら、横になって体温を共有しあい、小説の感想など他愛もないことを口にしながら、夜を迎えた。
少し早めに夕餉をとり、明日の朝に京楽は8番隊隊舎に戻るので、一緒に湯浴みをして少し早めに眠った。
その日も寒かった。
「はっくしょん」
京楽は、寒気で目が覚めた。
浮竹がまた、一人で毛布と布団を占領していた。仕方なしにもう一組、布団をしくと、浮竹が目覚める。
「京楽、傍にいろ。お間の温もりが欲しい」
「じゃあ、毛布と布団の独り占めはやめてね」
その声に、自分が京楽の分まで占領していたのだと知って、赤くなった。
赤くなる浮竹もかわいいなぁと、京楽は呑気だった。
次の日は朝の8時に起きた。互いに仕事をがあるので、しばらくのお別れだ。
「また、温もりをくれ」
「今度は抱いてもいい?」
そう耳元で囁くと、浮竹は真っ赤になってバカといいながも、了承してくれるのだった。
PR
- トラックバックURLはこちら