温もり(恋白)
「お前は温いな・・・・・・」
逢瀬の後、湯浴みも終わり、髪も乾かして同じ布団で眠っていた白哉が、ふと呟いた。
「隊長、寒いんですか?」
「お前の温もりが心地よいだけだ」
なんという殺し文句だと思いながら、もう手は出せないので、白哉の黒髪を手で梳いた。
「寝ないのか?」
「それはこっちの台詞です。ああ、明日は休みか。でもそれでも、早起きするんでしょう?」
「いつも6時には起きる」
「うわ、あと6時間しか寝れないじゃないですか。早く寝てください!」
恋次が、明かりを消した。
流魂街にいた頃は、こんな贅沢な暮らしができるなど、思ってもみなかった。
せいぜい平隊士になれて、こつこつと貯金して生きていくんだと思っていた。
真央霊術院で特進クラスになれて、これは将来期待できるかもしれないと思った。まさか、4大貴族の当主に惚れるなんて、ちっとも考えていなかった。
ルキアを養子にと迎えにきたあの日、これは運命なんだと思った。
それまでルキアばかりを追っていたのに、いつの間には白哉を追うようになっていた。
死神になり、6番隊に配属されなかったことがとても不満だった。
だがやがて実力をつけて、6番隊の副隊長を任せられようになった。憧れの人のすぐ傍にいることができた。
決死の覚悟でアタックした。
想いは実り、憧れの白哉に振り向いてもらえるようになった。
体を重ねあう関係になった。
逢瀬を重ねる時に使う館では、いつも口にできないような豪華な食事と高級酒を口にした。他の誰よりも恵まれていると思った。
ふと、隣で白哉がくすぐったそうにしていた。
いつの間にか、恋次の手は白哉の頭を撫でていた。
「あ、すんません。寝るのに邪魔ですよね」
「もっと撫でても、構わぬ。お前に触れられるのは、嫌いではない」
そう言われて、我慢の糸が切れる気がした。
でも、もう抱くわけにもいかないし、出すものもないくらい睦みあったので、ただ白哉の頭をなで、その黒髪を手で梳いた。
いつの間にか、白哉は眠ってしまっていた。
薄暗いが、少し照明があるので、ぼんやりと白哉の寝顔が目に入った。
あどけない。
そう思った。
中性的な美貌をもつ白哉の顔は、人形のようによく整っていた。美しいと思う。男性に対して使う言葉ではないが、本当に美しかった。
これで、6番隊の隊長で朽木家の現当主というのだから、女は放っておかないはずだ。何度も何度も、見合いの話が舞い込んできた。
それを、白哉は後添えはいらぬと、頑なに断った。
一度だけ、どうしてもと見合いをしたことがあるが、恋次の登場で滅茶苦茶になった。
そんなことはしなくても断るつもりだったのだと、言われた。
今頃、朽木家では本当の死神になり、ルキアの婿養子にきた一護とルキアも睦みあった後で、一緒に眠っているかもしれない。
一護が白哉の傍にいるのは、奇妙な感覚だったが、ルキアしか目に入っていない様子で、安心できた。
そのうち、恋次も眠くなり、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・」
ふと気づきくと、白哉の温もりが遠かった。
布団からはみ出してしまいそうな形で眠っていたので、毛布と布団をかけ直して、傍に寄り添って眠ることにした。
次に目覚めると、朝の9時だった。横では、白哉がまだ寝ていた。
いつもは6時には起きるのに、珍しいことだ。
まさか熱でもあるのかと、額に手を置くと、白哉が目覚める。
ばっと時計をみて、眉を寄せた。
「寝過ごして・・・しまった。恋次の温もりに安堵していたら・・・」
なにその殺し文句。
「ああ、めちゃかわいい」
そう言ってキスをすると、白哉は急いで出勤しようとして・・・・今日は休日だったのを思い出して、動きが鈍くなった。
「そうか。今日は休みをとっていたのだ・・・」
「二度寝しますか?」
「もう十分寝た。6時間寝れば十分なのに・・9時間近く眠ってしまった。恋次のせいだ」
「なんで俺のせいなんですか」
「お前の温もりが、とても心地よかったせいだ」
恋次が溜息を零す。
本当に、隊長はこれで誘っていないつもりなのだろうに、誘っているとしか受け取れなかった。
「隊長、寒くて眠れない時あったら、伝令神機でいつでも呼んでください。添い寝しにいきますから」
「そのようなこと、不要だ」
白哉はそっけなかった。
そのそっけない態度と、さっきの言葉が妙にチグハグで、恋次は笑っていた。
「何がおかしい」
「隊長って、かわいいなと思って」
「戯言を・・・」
白哉の手が、長い恋次の髪を掴む。
「あいててて、髪は勘弁してください!」
「ならば、戯言など言うな」
「いや、本気なんすけど」
また髪の毛を引っ張られた。結んでいた髪ゴムが切れて、ばさりと紅蓮の色が広がった。
「焔のようだな。お前の髪は。業火を思わせる」
「そんな綺麗なもんじゃないですよ」
「そうか?私はお前の髪の色が好きだ。炎のようで」
紅蓮色の髪を、恋次は新しい髪ゴむで大雑把にまとめあげた。
「嘘でも、嬉しいです」
「嘘などついて、何になる・・・」
「それより、朝食どうします?」
昨日の夕飯を作ってくれた料理人は、帰った後だった。
「仕方ない。お前も来い。我が屋敷で朝食をとる」
言葉通り屋敷へつくと、一護とルキアが出迎えてくれた。
「白哉、どうしたんだ、遅かったな」
「貴様、兄様は無駄なことはせぬ!何かあったのだ」
「寝坊しただけだ」
白哉の言葉に、ルキアが驚く。
「兄様が寝坊!明日は槍が降る・・・・・」
「大げさだな、ルキア。寝坊なんて、誰にでもあるぜ」
恋次は笑って、4人で食堂で朝食をとった。
一護が婿養子にきてからというもの、朽木家は少し騒がしくなった。
一護の存在が、ルキアも、ひいては白哉も明るくさせているのだ。
一護は、今は13番隊の3席だ。
まだ死神業務になれておらず、いずれ副隊長になるだろうが、今はルキアが隊長で副隊長は小椿だった。
「今日は、俺も屋敷にいていいんですか?」
「好きにするがよい」
そう言われて、恋次は白哉の傍に、鬱陶しいと怒られるまで、傍にいるのであった、
逢瀬の後、湯浴みも終わり、髪も乾かして同じ布団で眠っていた白哉が、ふと呟いた。
「隊長、寒いんですか?」
「お前の温もりが心地よいだけだ」
なんという殺し文句だと思いながら、もう手は出せないので、白哉の黒髪を手で梳いた。
「寝ないのか?」
「それはこっちの台詞です。ああ、明日は休みか。でもそれでも、早起きするんでしょう?」
「いつも6時には起きる」
「うわ、あと6時間しか寝れないじゃないですか。早く寝てください!」
恋次が、明かりを消した。
流魂街にいた頃は、こんな贅沢な暮らしができるなど、思ってもみなかった。
せいぜい平隊士になれて、こつこつと貯金して生きていくんだと思っていた。
真央霊術院で特進クラスになれて、これは将来期待できるかもしれないと思った。まさか、4大貴族の当主に惚れるなんて、ちっとも考えていなかった。
ルキアを養子にと迎えにきたあの日、これは運命なんだと思った。
それまでルキアばかりを追っていたのに、いつの間には白哉を追うようになっていた。
死神になり、6番隊に配属されなかったことがとても不満だった。
だがやがて実力をつけて、6番隊の副隊長を任せられようになった。憧れの人のすぐ傍にいることができた。
決死の覚悟でアタックした。
想いは実り、憧れの白哉に振り向いてもらえるようになった。
体を重ねあう関係になった。
逢瀬を重ねる時に使う館では、いつも口にできないような豪華な食事と高級酒を口にした。他の誰よりも恵まれていると思った。
ふと、隣で白哉がくすぐったそうにしていた。
いつの間にか、恋次の手は白哉の頭を撫でていた。
「あ、すんません。寝るのに邪魔ですよね」
「もっと撫でても、構わぬ。お前に触れられるのは、嫌いではない」
そう言われて、我慢の糸が切れる気がした。
でも、もう抱くわけにもいかないし、出すものもないくらい睦みあったので、ただ白哉の頭をなで、その黒髪を手で梳いた。
いつの間にか、白哉は眠ってしまっていた。
薄暗いが、少し照明があるので、ぼんやりと白哉の寝顔が目に入った。
あどけない。
そう思った。
中性的な美貌をもつ白哉の顔は、人形のようによく整っていた。美しいと思う。男性に対して使う言葉ではないが、本当に美しかった。
これで、6番隊の隊長で朽木家の現当主というのだから、女は放っておかないはずだ。何度も何度も、見合いの話が舞い込んできた。
それを、白哉は後添えはいらぬと、頑なに断った。
一度だけ、どうしてもと見合いをしたことがあるが、恋次の登場で滅茶苦茶になった。
そんなことはしなくても断るつもりだったのだと、言われた。
今頃、朽木家では本当の死神になり、ルキアの婿養子にきた一護とルキアも睦みあった後で、一緒に眠っているかもしれない。
一護が白哉の傍にいるのは、奇妙な感覚だったが、ルキアしか目に入っていない様子で、安心できた。
そのうち、恋次も眠くなり、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・」
ふと気づきくと、白哉の温もりが遠かった。
布団からはみ出してしまいそうな形で眠っていたので、毛布と布団をかけ直して、傍に寄り添って眠ることにした。
次に目覚めると、朝の9時だった。横では、白哉がまだ寝ていた。
いつもは6時には起きるのに、珍しいことだ。
まさか熱でもあるのかと、額に手を置くと、白哉が目覚める。
ばっと時計をみて、眉を寄せた。
「寝過ごして・・・しまった。恋次の温もりに安堵していたら・・・」
なにその殺し文句。
「ああ、めちゃかわいい」
そう言ってキスをすると、白哉は急いで出勤しようとして・・・・今日は休日だったのを思い出して、動きが鈍くなった。
「そうか。今日は休みをとっていたのだ・・・」
「二度寝しますか?」
「もう十分寝た。6時間寝れば十分なのに・・9時間近く眠ってしまった。恋次のせいだ」
「なんで俺のせいなんですか」
「お前の温もりが、とても心地よかったせいだ」
恋次が溜息を零す。
本当に、隊長はこれで誘っていないつもりなのだろうに、誘っているとしか受け取れなかった。
「隊長、寒くて眠れない時あったら、伝令神機でいつでも呼んでください。添い寝しにいきますから」
「そのようなこと、不要だ」
白哉はそっけなかった。
そのそっけない態度と、さっきの言葉が妙にチグハグで、恋次は笑っていた。
「何がおかしい」
「隊長って、かわいいなと思って」
「戯言を・・・」
白哉の手が、長い恋次の髪を掴む。
「あいててて、髪は勘弁してください!」
「ならば、戯言など言うな」
「いや、本気なんすけど」
また髪の毛を引っ張られた。結んでいた髪ゴムが切れて、ばさりと紅蓮の色が広がった。
「焔のようだな。お前の髪は。業火を思わせる」
「そんな綺麗なもんじゃないですよ」
「そうか?私はお前の髪の色が好きだ。炎のようで」
紅蓮色の髪を、恋次は新しい髪ゴむで大雑把にまとめあげた。
「嘘でも、嬉しいです」
「嘘などついて、何になる・・・」
「それより、朝食どうします?」
昨日の夕飯を作ってくれた料理人は、帰った後だった。
「仕方ない。お前も来い。我が屋敷で朝食をとる」
言葉通り屋敷へつくと、一護とルキアが出迎えてくれた。
「白哉、どうしたんだ、遅かったな」
「貴様、兄様は無駄なことはせぬ!何かあったのだ」
「寝坊しただけだ」
白哉の言葉に、ルキアが驚く。
「兄様が寝坊!明日は槍が降る・・・・・」
「大げさだな、ルキア。寝坊なんて、誰にでもあるぜ」
恋次は笑って、4人で食堂で朝食をとった。
一護が婿養子にきてからというもの、朽木家は少し騒がしくなった。
一護の存在が、ルキアも、ひいては白哉も明るくさせているのだ。
一護は、今は13番隊の3席だ。
まだ死神業務になれておらず、いずれ副隊長になるだろうが、今はルキアが隊長で副隊長は小椿だった。
「今日は、俺も屋敷にいていいんですか?」
「好きにするがよい」
そう言われて、恋次は白哉の傍に、鬱陶しいと怒られるまで、傍にいるのであった、
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