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狂気

隊首会が終わり、解散となった。

卯ノ花と談笑している浮竹が、突然身を折った。

「どうしたのですか、浮竹隊長!」

「なんでも・・・・ごほっごほっ」

ここ3か月、全く発作が出ないので、周囲の者も安心していた。

それが、いきなりだ。

「ごほっごほっごほっ」

咳込んで、苦しげに息をしているかと思うと、口から大量の血をはいた。

「浮竹!」

傾ぐ体を、京楽が受け止める。

「着物が・・・・・」

浮竹が吐いた血で、京楽の値のはる女もの着物は真っ赤になった。

「そんなことはどうでもいいから!」

酷い発作であったが、たまたまそこに卯ノ花が残ってくれていたおかげで、回道ですぐに手当てをうけたことで、大事に至らずにすんだ。

浮竹の肺の病は、とても気まぐれだ。2~3か月発作をおこなさい小健康状態もあれば、毎日血を吐くような酷い発作もある。

浮竹は、手当てが早かったお陰で、京楽に抱き上げられて雨乾堂に帰宅した。

「隊長!」

「隊長、大丈夫ですか、京楽隊長!」

雨乾堂に戻ると、仙太郎と清音が心配そうにしていた。

地獄蝶を事前に飛ばしていたので、布団はすでにしかれていた。

「着換えを」

仙太郎がだしてきた着物で、京楽が浮竹を着換えさせた。

布団に横にして、タオルを湯につけて、口元を綺麗にふいてやる。血を吐いたせいで、浮竹の着ていた隊長羽織と死覇装は、もう使い物にならないだろう。

「今回の発作は酷かったからね。しばらく休養になると思う」

一度大量に吐血したその後は、数日吐血を続けたりする。もしくは、意識をなくしたままか。

代われるものなら代わってやりたいが、どうにもできない。

自分の無力さを痛感しつつ、京楽は浮竹の傍にいた。意識の戻らない浮竹のために、点滴が用意された。

数日に1回、卯ノ花が自ら様子を見にきては、回道で手当てをしてくれた。

仕事をこなして、午後~夕暮れ時まで、毎日京楽は浮竹の様子を見に来てくれて、傍にいてくれた。

そして、看病をする。それには、仙太郎と清音も舌をまくくらいだ。

1週間が過ぎた頃、やっと浮竹の意識が回復した。

「大丈夫かい?」

その言葉に、

「おはぎが食べたい・・・・あと苺大福」

というので、苦笑をこぼした。

「もう少しよくなったら、差し入れしてあげるから」

点滴の管が痛々しかった。

かわいそうなほどに細くなってしまって、まずは体力をつけるのが先だ。

流動食を口にして、次におかゆ、次に消化のいいメニュー、そして最後に普通の食事がとれるようになった。

その頃には起き上がることもできるようになっていて、京楽は約束通りおはぎと苺大福を差し入れた。

「全く我ながら嫌になる体だ」

「自分を嫌いにならないで」

その言葉に、翡翠の瞳は悲しそうではあるが、瞬く。

「大丈夫だ。もう数百年の付き合いになるしな」

「君が元気になってくれてよかったよ。好きだよ、浮竹」

抱き締めると、浮竹も抱き締め返してくれた。

「俺も好きだ、京楽・・・毎度毎度、すまないな」

「いいんだよ。君の病さえ愛しい。この気持ちに言葉があるならきっと狂気だね」

「俺も、狂おしいほどにお前を愛している」

「僕もだよ」

二人は、寄り添いあった。

互いが大切で仕方ないのだ。

それはまるで狂気に似た想い。







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