銀杏
銀杏の木の下で、銀杏(ぎんなん)を拾った。
1つ、2つ、3つ・・・・。
ちらちらと、銀杏が黄色い葉を落とす。風は少しだけ冷たくて、でも身震いを起こすよな寒さでもなくて。
夏の残暑も過ぎ去り、過ごしやすい季節になった。それでも真昼になって晴天にでもなれば、じわりとした暑さを覚えた。
尸魂界にきた秋の訪れは、少し早かった。現世ではまだ猛暑がうだるような暑さを大気に含ませているというのに、尸魂界ではもう紅葉がはじまり、銀杏などの木は葉を黄色くしてそして風に揺れて葉を落としていく。
「そんなに銀杏ひろってどうするの?」
いつも傍らにいる男が、不思議そうに浮竹の行動を見ていた。
4つ、5つ・・・・拾っているうちに数が分からなくなって、それでもいいかと、大地に影を落とす。
「茶碗蒸しに入れてもらおうと思って」
浮竹の答えに、なるほどと京楽が納得した。
13番隊の夕餉はけっこう凝っていて、美味いからだ。茶碗蒸しもでてくるのだろう。8番隊の食事は、京楽が金をだしているせいもあって豪華だが、13番隊の食事も浮竹のためにと、一部資金援助をしているせいで、他の隊では味わえないようなメニューがついてくる。
甘いものと果物がすきな浮竹のために、いつも昼食と夕餉にはデザートがついてきた。
「そんなこと言われたら、茶わん蒸しが食べたくなってきたよ」
「どこかに、食いにいくか?」
「それもいいねぇ。でも、銀杏の食べすぎには注意だよ。食中毒を起こすからね」
「それくらい、知っている」
京楽の言葉に、銀杏を拾っていた手を止める。
自分と京楽の分くらいでいいのだ。そんなにたくさん拾い集めても、捨てるだけになる。
でも、清音と仙太郎の分も作ってもらうかと、また銀杏を拾いだす。
「そういえば、そろそろ柿が旬だね」
「ああ、そうだな」
柿はあまり甘味がないので好きではないが、雨乾堂のすぐ近くに大きな柿の木があった。それによじのぼり、京楽はいくつか柿をもぎとると、浮竹に向かって投げる。
なんとか無事にキャッチすると、拾い集めていた銀杏を零してしまった。
また後でとりにくるかと、雨乾堂の中に戻った。
京楽は、柿の実にそのままかじりついた。
皮ごと食えるからと、京楽は次々と食べていく。
浮竹も、京楽の真似をした。柿を口にすると、林檎とは違うが、しゃりっとした食感が口いっぱいに広がり、ほのかな甘みが舌を刺激する。
今にも落ちそうなほどに熟して柔らかくなった柿よりは、硬さを保ったままの柿のほうが好きだった。
3つほど食べると、夕餉が近いことを思いだして柿を食べるのをやめた。
「京楽、夕餉食べていくだろう?」
隣でまだ柿をほうばっている京楽に聞くと、
「食べて帰る」
という答えが返ってきた。
仙太郎を呼び出して、京楽の分まで夕餉を出してもらうように伝える。
一番困るのは、食事を任させている厨房係なのだが。流石に隊長である浮竹の食事は特別で、他の隊士のものより値の張るものばかりが用意されてある。それをいきなり2人前にしろなどと、まさに厨房係を泣かせるようなものだ。
分かってはいるのだが、京楽と時間を共に過ごしたくて、浮竹は外食する時以外は大抵、雨乾堂に遊びに来た京楽と夕餉を共にする。
1時間ほどして、夕餉が運ばれてきた。
茶碗蒸しがついていた。それは嬉しかったのだが、デザートの果物を見ると、柿だった。
「はぁ・・・・柿はもういい・・・・」
「同じく」
腹がすいているままに柿を食べていた京楽は、もう柿は見たくないのだと避けていた。
茶碗蒸しを口にすると、流石に隊長クラスの食事を任されている厨房係の腕のよなさがわかった。
「僕の隊も、お金を出しているからけっこういい料理出してくれるんだけど・・・この茶碗蒸しのできは、真似できないね」
茶碗蒸しの中には、銀杏が入っていた。
そういえば、広い集めた銀杏は結局落としてしまったままだ・・・そんなどうでもいいことを考えながら、夕餉を食してていく。
あまり食べない浮竹の食事の量は、京楽の分の3分の2くらいだった。
たくさん出しても残してしまうので、食事の量にも配慮があった。
夕餉を終えると、薬の時間だ。肺の病の薬の、漢方薬は、最近苦いものからシロップの味のついた甘いものに変わって、飲み辛くなくなった。
それが京楽のせいであるということは知っていた。
浮竹の給料の大半は親族へのもので消えてしまう。肺の病の薬にはけっこうな金がかかった。効果があるものは大抵苦い。
数回、苦いと零していたら、いつの間にか処方される漢方薬の苦い薬が甘い味のものに変わっていた。
そんな細かなとこまで配慮してくれる京楽の優しさに感謝しつつ、何も返せないでいる自分の無力さに溜息が零れる。
「俺は、お前の優しさに何を返せるだろう」
薬を飲み終えてそう聞くと、京楽はだらしない笑みを零した。
「「君」をもらえると嬉しいなぁ」
「人が本気で感謝いているというのに!」
京楽の脛を蹴り飛ばすと、その足を掴まれた。
ちゅっと、音をたてて足首にキスをされて、体のバランスが崩れる。床に倒れそうになったのを、手でひっぱられて京楽の腕の中に体がすっぽりと収まる。
「痛い、痛い!ひげあるのに頬ずりするな!」
「いいじゃない、たまには」
「おい、どこに手をいている!」
「気のせいだよ」
着物の裾から薄い胸板を触るように侵入してきた手をひねって、浮竹は抵抗しとうとするが、押さえつける力のほうが遥かに強くて、結局は京楽の思いのままにされてしまう。
「んっ・・・・・京楽」
「週に2回・・・・・ちゃんと守ってるよ?今日はその2回目の日だけど、いいかな?」
「今更了承をとるなっ・・・・・・」
長い白髪が畳の上に乱れて流れていた。
翡翠の目を閉じると、黒い京楽の瞳と目を閉じる瞬間、目線が合わさる。
上気した白い頬とか、乱れた死覇装からのぞく鎖骨のラインに、京楽の喉が鳴る。
「もう、好きにしろ・・・・・」
半ばやけになって、体から力をぬくと、布団を敷かれてその上に抱き寄せられた。
「愛してるよ、十四郎」
耳元で囁かれて、ぞくりとした。
お返しだとばかりにその肩に噛みつく。でも、それさえ快楽に変えてしまう京楽の動きに翻弄される。
「君は言ってくれないの?」
「・・・・・・俺も、愛している」
ひらりと、庭で銀杏の葉が零れ落ちた。
本当に、この男はどうしてこう、性欲があるのだろうかと、本気で謎に思う。この年で週に2回はかなりきつい。なのに、京楽は足りないという。
最近は浮竹が嫌がるのと体調がわるかったせいで、週1かそれ以下になっていたが、今は小健康状態なので、京楽も我慢した分貪りたいのだろう。
「銀杏・・・明日、拾わないと」
「今は僕以外のことは考えないで」
銀杏が、また葉を落としていく。
結局、拾い集められた銀杏なその存在を忘れられてしまい、庭の掃除をする仙太郎の手でごみとして処理されてしまうのであった。
1つ、2つ、3つ・・・・。
ちらちらと、銀杏が黄色い葉を落とす。風は少しだけ冷たくて、でも身震いを起こすよな寒さでもなくて。
夏の残暑も過ぎ去り、過ごしやすい季節になった。それでも真昼になって晴天にでもなれば、じわりとした暑さを覚えた。
尸魂界にきた秋の訪れは、少し早かった。現世ではまだ猛暑がうだるような暑さを大気に含ませているというのに、尸魂界ではもう紅葉がはじまり、銀杏などの木は葉を黄色くしてそして風に揺れて葉を落としていく。
「そんなに銀杏ひろってどうするの?」
いつも傍らにいる男が、不思議そうに浮竹の行動を見ていた。
4つ、5つ・・・・拾っているうちに数が分からなくなって、それでもいいかと、大地に影を落とす。
「茶碗蒸しに入れてもらおうと思って」
浮竹の答えに、なるほどと京楽が納得した。
13番隊の夕餉はけっこう凝っていて、美味いからだ。茶碗蒸しもでてくるのだろう。8番隊の食事は、京楽が金をだしているせいもあって豪華だが、13番隊の食事も浮竹のためにと、一部資金援助をしているせいで、他の隊では味わえないようなメニューがついてくる。
甘いものと果物がすきな浮竹のために、いつも昼食と夕餉にはデザートがついてきた。
「そんなこと言われたら、茶わん蒸しが食べたくなってきたよ」
「どこかに、食いにいくか?」
「それもいいねぇ。でも、銀杏の食べすぎには注意だよ。食中毒を起こすからね」
「それくらい、知っている」
京楽の言葉に、銀杏を拾っていた手を止める。
自分と京楽の分くらいでいいのだ。そんなにたくさん拾い集めても、捨てるだけになる。
でも、清音と仙太郎の分も作ってもらうかと、また銀杏を拾いだす。
「そういえば、そろそろ柿が旬だね」
「ああ、そうだな」
柿はあまり甘味がないので好きではないが、雨乾堂のすぐ近くに大きな柿の木があった。それによじのぼり、京楽はいくつか柿をもぎとると、浮竹に向かって投げる。
なんとか無事にキャッチすると、拾い集めていた銀杏を零してしまった。
また後でとりにくるかと、雨乾堂の中に戻った。
京楽は、柿の実にそのままかじりついた。
皮ごと食えるからと、京楽は次々と食べていく。
浮竹も、京楽の真似をした。柿を口にすると、林檎とは違うが、しゃりっとした食感が口いっぱいに広がり、ほのかな甘みが舌を刺激する。
今にも落ちそうなほどに熟して柔らかくなった柿よりは、硬さを保ったままの柿のほうが好きだった。
3つほど食べると、夕餉が近いことを思いだして柿を食べるのをやめた。
「京楽、夕餉食べていくだろう?」
隣でまだ柿をほうばっている京楽に聞くと、
「食べて帰る」
という答えが返ってきた。
仙太郎を呼び出して、京楽の分まで夕餉を出してもらうように伝える。
一番困るのは、食事を任させている厨房係なのだが。流石に隊長である浮竹の食事は特別で、他の隊士のものより値の張るものばかりが用意されてある。それをいきなり2人前にしろなどと、まさに厨房係を泣かせるようなものだ。
分かってはいるのだが、京楽と時間を共に過ごしたくて、浮竹は外食する時以外は大抵、雨乾堂に遊びに来た京楽と夕餉を共にする。
1時間ほどして、夕餉が運ばれてきた。
茶碗蒸しがついていた。それは嬉しかったのだが、デザートの果物を見ると、柿だった。
「はぁ・・・・柿はもういい・・・・」
「同じく」
腹がすいているままに柿を食べていた京楽は、もう柿は見たくないのだと避けていた。
茶碗蒸しを口にすると、流石に隊長クラスの食事を任されている厨房係の腕のよなさがわかった。
「僕の隊も、お金を出しているからけっこういい料理出してくれるんだけど・・・この茶碗蒸しのできは、真似できないね」
茶碗蒸しの中には、銀杏が入っていた。
そういえば、広い集めた銀杏は結局落としてしまったままだ・・・そんなどうでもいいことを考えながら、夕餉を食してていく。
あまり食べない浮竹の食事の量は、京楽の分の3分の2くらいだった。
たくさん出しても残してしまうので、食事の量にも配慮があった。
夕餉を終えると、薬の時間だ。肺の病の薬の、漢方薬は、最近苦いものからシロップの味のついた甘いものに変わって、飲み辛くなくなった。
それが京楽のせいであるということは知っていた。
浮竹の給料の大半は親族へのもので消えてしまう。肺の病の薬にはけっこうな金がかかった。効果があるものは大抵苦い。
数回、苦いと零していたら、いつの間にか処方される漢方薬の苦い薬が甘い味のものに変わっていた。
そんな細かなとこまで配慮してくれる京楽の優しさに感謝しつつ、何も返せないでいる自分の無力さに溜息が零れる。
「俺は、お前の優しさに何を返せるだろう」
薬を飲み終えてそう聞くと、京楽はだらしない笑みを零した。
「「君」をもらえると嬉しいなぁ」
「人が本気で感謝いているというのに!」
京楽の脛を蹴り飛ばすと、その足を掴まれた。
ちゅっと、音をたてて足首にキスをされて、体のバランスが崩れる。床に倒れそうになったのを、手でひっぱられて京楽の腕の中に体がすっぽりと収まる。
「痛い、痛い!ひげあるのに頬ずりするな!」
「いいじゃない、たまには」
「おい、どこに手をいている!」
「気のせいだよ」
着物の裾から薄い胸板を触るように侵入してきた手をひねって、浮竹は抵抗しとうとするが、押さえつける力のほうが遥かに強くて、結局は京楽の思いのままにされてしまう。
「んっ・・・・・京楽」
「週に2回・・・・・ちゃんと守ってるよ?今日はその2回目の日だけど、いいかな?」
「今更了承をとるなっ・・・・・・」
長い白髪が畳の上に乱れて流れていた。
翡翠の目を閉じると、黒い京楽の瞳と目を閉じる瞬間、目線が合わさる。
上気した白い頬とか、乱れた死覇装からのぞく鎖骨のラインに、京楽の喉が鳴る。
「もう、好きにしろ・・・・・」
半ばやけになって、体から力をぬくと、布団を敷かれてその上に抱き寄せられた。
「愛してるよ、十四郎」
耳元で囁かれて、ぞくりとした。
お返しだとばかりにその肩に噛みつく。でも、それさえ快楽に変えてしまう京楽の動きに翻弄される。
「君は言ってくれないの?」
「・・・・・・俺も、愛している」
ひらりと、庭で銀杏の葉が零れ落ちた。
本当に、この男はどうしてこう、性欲があるのだろうかと、本気で謎に思う。この年で週に2回はかなりきつい。なのに、京楽は足りないという。
最近は浮竹が嫌がるのと体調がわるかったせいで、週1かそれ以下になっていたが、今は小健康状態なので、京楽も我慢した分貪りたいのだろう。
「銀杏・・・明日、拾わないと」
「今は僕以外のことは考えないで」
銀杏が、また葉を落としていく。
結局、拾い集められた銀杏なその存在を忘れられてしまい、庭の掃除をする仙太郎の手でごみとして処理されてしまうのであった。
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