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狂気に似た愛

浮竹十四郎が死んだ。

僕を残して。

ユーハバッハとの大戦で、ミミハギ様を手放し、神掛をして死んでしまった。

京楽の心に、ぽっかりと穴が開いた。

それは、狂気に似た愛が奏でる悲しいメロディー。

世界が色を失っていく。

何も食べたくない。眠りたくない。何もしたくない。

ただ、君に会いたい--------------。



京楽は、涅マユリのところに来ていた。

前々から、浮竹の死が近いと悟っていた京楽は、準備をさせていた。

それはしょせんただの霊骸。

けれど、その形はとても愛しい浮竹のものと同じだった。

彼が漂っている、母の羊水に似た液体を全部抜くと、浮竹の形をした霊骸は瞬きをした。

「俺は・・・誰だ。お前は誰だ」

「僕は京楽春水。君は浮竹十四郎。これを飲んで」

特別に作らせた、義魂丸。

浮竹の生前の記憶の一部を、残したもの。

それを、浮竹の霊骸は黙って飲み込んだ。

「京楽・・・・俺は、死んだのか」

「うん。でも、こうしてまた会えた」

「京楽、これがどういうことなのか分かっているのか。俺は死んだんだぞ。こんな風に蘇るなんて、望んではいない」

「僕は、君が本物とか偽物とかもうどうでもいいんだ。ただ君を愛している」

「とんだ道化だネ」

涅マユリの言葉を無視して、浮竹に死覇装を着せて、京楽は瞬歩で浮竹を連れ去ってしまった。

浮竹が連れられてきたのは、京楽家が管理する館の一つだった。

「ここが今日から君の家だよ。使用人は好きに使ってもらって構わない。でも、僕がいない時は外に出ないこと。いいね?」

「京楽!俺を閉じ込める気か!」

「そうだよ。君は小鳥だよ。翼を切られた小鳥。その体には霊圧はほとんどない。戦闘は不可能だ。ただ、僕の傍にいて僕の傍で愛を囀ってくれたらいい」

「京楽・・・・・・」

浮竹は泣いていた。

「泣かないで」

「こんな風になるなんて、思わなかった。京楽はもっと強いと・・・・俺が先に死んでも、しっかり俺の分まで生きてくれると、思っていた」

「生きてるよ。今の僕は、君がいるから生きてる。本当の君を失った時、僕の世界が壊れたんだ。世界は色をなくして、眠れないし食べれないし何もしたくなくなった。ただ君に会いたかった」

京楽も、涙を流していた。

「君が、好きなんだ。たとえクローンでも・・・君がいてくれるだけで、僕は・・・・」

「京楽・・・・」

浮竹は、京楽を抱きしめていた。

仮初に与えられた命でも、その浮竹は京楽の知る「浮竹」であった。

「毎日会いにくるから。夜まで、おとなしくしててね」

京楽は、後のことを使用人に任せて、一番隊の隊者に戻っていった。



--------------------------------------

「聞いてますか、隊長!」

「ああどうしたの、七緒ちゃん」

「それが、なんでも幽霊が出るそうで。浮竹隊長に似た幽霊が、時折人通りの少ない夜道に現れるそうで・・・・でも、すぐ消えちゃうんだそうです」

「へぇ・・・そうなの」

「京楽隊長、ちゃんと墓参りに行ってますか?」

「もちろんいってるよ」

クローン浮竹を囲っているだなんて、誰にも気づかれてはいけない。

「七緒ちゃん、その幽霊を見たっていうのはどの子?いつ頃?」

「ええと確か、10番隊の7席で名前は・・・・」

京楽は、七緒とその10番隊の7席の記憶を、記憶置換で浮竹の幽霊のことにだけ関して忘れさせた。

「ごめんね、七緒ちゃん。でも、知られるとだめだから」

館に帰ると、浮竹が出迎てくれた。

「浮竹、深夜に外に出てるでしょ」

ぎくりと、浮竹の体が強張る。

「外に出てはいけないと、言っているのに。君の存在は、公にできないんだ。この館で、静かに暮らそうよ。僕がいれば、何もいらないでしょう?ほしいものなら、なんだって取り寄せてあげるから」

「・・・・自由がほしい」

「それだけは、叶えてあげられない。おいで、十四郎」

浮竹を手招きして傍に呼ぶ。

「愛してるよ、十四郎」

「春水、俺は偽りだ。それでも、愛を囁くのか?」

「君は偽りなんかじゃない。浮竹十四郎だ。僕の恋人の。確かに、13番隊隊長ではなくなったけれど、君は浮竹十四郎だ・・・・・」

まるで、自分に言い聞かせるように京楽はその言葉を繰り返した。


------------------------------------


「おいで、十四郎」

「あっ」

京楽は、浮竹を愛した。

「ほら・・・もうこんなになってる」

「や、いうな・・・・」

浮竹は、京楽に死覇装を脱がされて、着ているもの全てを奪われていた。

京楽も隊長羽織と女ものの打掛と、死覇装を脱いだ。

「んっ」

キスを何度もされた。

おずおずと唇を開けば、京楽の舌がぬめりと、浮竹の縮こまった舌を吸い上げて、歯茎や上あご、下あごを舐めて、唾液を溢れさせる。

「ふあ・・・・・」

飲み込みきれなかた唾液が、顎から布団のシーツに滴った。

鎖骨を甘噛みして、キスマークを残す。

自分のものだと主張するように、首筋にも胸にもキスマークをいっぱい残した。

「ん・・・・・・」

胸の先端をいじられると、それだけで浮竹の花茎はとろとろと先走りの蜜を零していた。

「もうこんなに硬くなってる」

「それは、お前もだろっ」

「うん。僕も限界かな。僕の、舐めてくれって言ったら、舐めてくれる?」

「分かった」

浮竹は、京楽のものに唇を這わせる。

「ん・・・そう、うまいね」

夜の知識も、浮竹は持っている。

京楽の大きなものを、全体は無理なので先端だけ口に含み、あとは手でしごいた。

じゅるじゅると音をたてて、舐めあげたり吸ったりしていると、京楽が限界を迎えて、浮竹の口の中に欲望を吐き出した。

「んっ」

「飲み込んで」

ごくりと飲み込んだ。

京楽は満足して、浮竹の額にキスをした。

潤滑油を手にとって、浮竹の蕾に塗りたくる。濡れないそこを、指を一本一本増やしていきながら、ゆっくりと解していく。

「あっ」

中のしこりを触られて、浮竹がびくりと体を動かした。

「ここ、君のいい場所。何度でも、気持ちよくさせてあげる」

前立腺ばかり刺激を受けて、浮竹は涙を浮かべていた。

「やあ・・・・でるっ」

指だけで、浮竹は後ろだけでいってしまった。

「いれるよ」

自分の分身にも潤滑油をぬりたくり、ゆっくりと浮竹の蕾に埋めていく。

「ひああ・・・ああ・・・・あ」

浮竹は、掠れた喘ぎ声を出していた。

数分動かずに、京楽の大きさに浮竹の体が馴染んだ頃を見計らって、律動を開始する。

「んあっ、あ、あ!」

浮竹は、シーツを握りしめていた。

「気持ちいいかい、十四郎」

「あ、あ、きもちいい・・・・・もっとお」

「かわいいね、君は」

「やあっ」

最奥を突き上げると、浮竹は頭を真っ白にさせて、快楽の波にさらわれていく。

「もっと、求めて?」

「あ、春水・・・・も、ああ、うあ・・・・」

じゅぷじゅぷと結合部は水音をたてて、泡立っていた。

正面から抱き合っていたのを、くるりと反転させて、背後から京楽が浮竹を突き上げる。

「んあ・・・・・ああ・・・・・・」

浮竹は、啼くことしかできなくなっていた。

「や、もういく・・・・・」

「僕もいくよ。一緒にいこう」

「やあっ」

最奥を突き上げて、浮竹のものに手を這わせてしごきあげて、30秒ほどのずれがあったが、同時に精液を浮竹は自分の腹に、京楽は浮竹の腹の奥にぶちまけていた。

「あ・・・・・・」

抜かれると、ずるりという音とともに、京楽の吐き出した白い液体が太ももを伝って落ちていく。

「お風呂に入ろうか。中のかき出さなきゃいけないし」

肌を重ね合わせる前も風呂に入ったが、事後処理のためにもまた風呂に入る。

「ん・・・腰が痛い。風呂まで連れて行ってくれ」

「お安い御用だよ」

浮竹を抱き上げて、京楽は広い檜の風呂場にくると、浮竹を抱き下ろして、中に放ったものをかきだすと、湯を体にかけてやった。

「あったかい・・・・・・」

湯船に浸かって、浮竹はふわりと笑った。

その表情が、生きていた頃の浮竹のものにあまりに似ていたので、京楽は言葉を飲み込んだ。

「君は、ずっと僕の傍にいてね。いなくならないでね」

「京楽・・・こんな形でも、与えられた命だ・・・・傍に、いる」

京楽はほっとして、浮竹を風呂の中で抱きしめて、キスをした。

「んあっ」

「大好きだよ、十四郎」

「俺も好きだ、春水」

風呂からあがり、長い白髪の水分をタオルでふいてもらったあと、ドライヤーで乾かしてもらって、浮竹は遅めの夕食を口にしていた。

久しぶりに半日休暇をとれたので、夕方から睦みあっていたのだ。

「おはぎ、あるよ」

「食べる」

食の細い浮竹は、京楽の3分の2ほどしか食事をとらない。

でも、甘味物はよく食べた。

「夕飯の後でね」

「ああ」

夕飯を食べ終えた浮竹は、おはぎを2個もらって嬉しそうに平らげた。

「もっと食べたい」

「明日にしよう。あんまり甘いものばかり口にしても、体に悪いからね」

「・・・・・・わかった」

物わかりのいい浮竹は、あまり昔の浮竹のように我がままを言わなかった。


------------------------------------


浮竹との甘い生活が続く。

けれど最近の浮竹は元気がない。

肺の病で血を吐くこともあるのだが、下手に4番隊になどに診せれないので、高価な薬湯や薬を買って、なんとか凌いだ。

「俺は・・・この世界に、生きている意味はあるのだろうか」

「君は、僕のためだけに生きてくれたらいい」

「京楽のためだけか・・・・それも、また別の意味でいいのかもな」

浮竹は熱を出して寝込むようになった。

京楽は総隊長としての責任と責務があるので、弱弱しい浮竹を使用人に任せて、仕事に出る。

でもある日、高熱を出して生死の堺を彷徨い始めて、京楽は責任も責務も放棄して、浮竹の傍にいた。

「京楽・・・・俺は、死ぬのかな」

「死なせない。もう二度と、君を失ったりしない!」

京楽は泣いていた。

「嫌だよ・・・・君まで、本当の浮竹のように僕を置いて行ってしまうのかい?君の命は、僕のものだ・・・・僕の寿命をあげるから、どうか生きて!」

12番隊の涅マユリの元に浮竹を瞬歩で連れ出して、京楽はこう言った。

「僕の命を、この子に分け与えてやってほしい」

「簡単にいうけどね、キミ、けっこう難しいんだヨ」

「できないの?」

「ふん、私にできないことはない。その浮竹を寝かせて、君はこの装置をつけなさい」

血を、抜きとらえれて、それが生命エネルギーに変換されて、浮竹の中に入っていく。

高熱で苦しそうにしていた浮竹の顔色が、熱が下がったのか安からなものになっていく。

「はい、終わり。言っておくけど、高くつくからネ!」

「金なら、いくらでも払うよ」

生気を取り戻した浮竹を抱き上げて、京楽は館に帰っていった。



「ん・・・・・」

「浮竹、目覚めたかい?気分はどう?」

「大丈夫・・・・臥せっていたのが嘘みたいに、体が軽い」

京楽は、浮竹を抱きしめた。

総隊長が数日も無断欠勤していたことで、居場所を特定されて、浮竹の存在が明るみになってしまった。

でも、京楽は揺るがない。

「この子は、浮竹だ。この子を殺すなら、僕も死ぬ。この子を閉じ込めるなら、僕も一緒に閉じこもる」

何を言っても聞かない京楽に、皆がため息をつく。

「浮竹十四郎は死んだ。この者は、浮竹十四郎の紛いものだ」

白哉の言葉に、京楽は冷静に答えた。

「でも、ちゃんと浮竹の記憶をもっているし、霊圧がないだけで生前の浮竹と同じだ。僕の大切な愛しい恋人なんだ」

本来なら、無に還す案件なのだが、京楽はもう、浮竹がいなければ命を捨てると言い出すので、仕方なしに13番隊の隊長、副隊長たちは浮竹の存在を認めた。

京楽は、とても喜んだ。

「君は、自由だ。もう、閉じ込めなくてもいい。好きな時に好きな場所へ行っていいんだよ」

「俺の居場所は、京楽の隣だ」

「うん。そうだね」

それは、狂気に似た愛から生まれたもの。

でも、こんなにも純粋に愛されて、狂気から生まれ落ちた浮竹は、幸せというものを手に入れた。

「浮竹、今後もよろしくね」

「俺も、よろしく」

浮竹の居場所は、相変わらず京楽の館だった。

でも、人の目のある中で普通に一番隊隊舎を訪れて、京楽の元を訪ねたり、日番谷や白哉の元に顔を出したりして、本当に浮竹が生き返ったかのようだった。

今の浮竹は、限りなく亡くなった浮竹に近かった。

肺の病を患っているが、ミミハギ様がいなくても生きていられる程度のもので、体が弱いところなども変わらない。

ただ、浮竹としての霊圧はなく、戦闘は不可能で、京楽のための浮竹ということで、居場所は固まった。

浮竹は、幸せだった。

たとえ、仮初の命だったとしても、また京楽に会えて、愛されて。

京楽もまた幸せだった。

愛した者を、また手に入れることができて。


それは狂気に似た愛。

けれど、ひたむきなまでに純粋なもの。



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