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白哉の家にお泊り

朽木邸の食堂に、浮竹が混じっていた。

ルキアは何故と白哉を見るが、白哉はいたって平常運転だった。

「今日から1週間、浮竹が我が家で泊まることになった」

「ええ、浮竹隊長がですか!?」

浮竹の誕生日に、何か一つだけ願いを叶えてやると言ったら、浮竹は白哉の家に1週間お泊りしたいと言い出したのだ。

なんでも願いを叶えてやると言ったが、健康な体が欲しいとか言われたらどうしようと、遅まきながら焦っていた白哉は、浮竹の朽木邸に泊まりたいという、些細な願いなら構わないと判断した。

「そういうわけだ、朽木、よろしくな。おっと、白哉も朽木だったな。俺が朽木と呼ぶのは朽木ルキアのほうで、白哉は白哉と呼んでいる」

「はぁ・・・・」

ルキアは、驚きを隠せないまま、浮竹の言葉を聞いていた。

「それにしても、朝から豪華だなぁ。流石4大貴族の朽木家」

食卓を共に囲むが、浮竹がいるだけでその場が明るくなった気がした。

いつもは、ルキアは朝食をとる時はあまり白哉と話さない。話しても、昨日は何をしただの、簡単な話題ですぐに沈黙が訪れる。

ルキアと白哉の仲が悪いわけではない。昔のように溝があった頃に比べたら、格段に進歩しただろう。

朝食の席で、このまえチャッピーのリュックサックが限定発売されて、それが欲しいのだと話していたら、次の日白哉はチャッピーの限定のリュックサックをくれた。

金に物を言わせてだが、素直に嬉しかった。

「おかわり」

浮竹は、遠慮というものをしなかった。

おかわりをして、それぞれ6番隊と13番隊の隊舎に別れて歩きだす。

「どうしたんですか、浮竹隊長。朽木家に泊まるなんて」

「いや、一度4大貴族の生活というものを体験してみたかったのと、白哉ともっと仲良くなろうと思ってな」

「兄様とは、十分に仲がいいと思いますが」

「正直を言うと、京楽が遠征にいっていてな・・・寂しいから、ちょっと甘えてみた」

「ああ、今回の遠征は8番隊でしたね」

「そうなんだ。京楽がいないのに慣れなきゃいけないんだが、毎日のように会っているから、ちょっと寂しくてな」

クスリと、ルキアが笑った。

「浮竹隊長も、かわいいところあるんですね」

「こら、朽木、笑うな」

それぞれ、隊舎と雨乾堂について、別れた。

いつもは雨乾堂で夕食をとるのだが、朽木家に泊まりにいっているので、ルキアと一緒に朽木家に帰還した。

「夕飯の準備が整っております」

白哉の付き人である清家が、二人にそう言った。

出された夕食も豪華で、浮竹はお泊りを楽しんでいるようだった。やがて風呂の時間になり、浴衣姿の浮竹が客間で寝ることになった。

朽木家は広い。

客間は10部屋はある。

「白哉・・・・」

浮竹の客間に、白哉が行ったのを見て、ルキアはどうしたんだろうと思った。

「あ、白哉・・・・そこだ、そこそこ」

「?」

襖に聞き耳を立てる。

「くーきくなぁ」

「何をしている、ルキア」

襖を開けられて、ルキアは真っ赤になって縮こまった。

「兄様が、浮竹隊長の部屋に入っていくのを見てしまい、気になってしまいました」

「ただ、腰を揉んでいただけだ」

「そうだぞ、朽木。白哉、こう見えてけっこうマッサージが上手いんだ。前から揉んでもらおうと思っていたんだ」

「そ、そうでしたか!」

まさかできているのではと、少しでも疑った自分が恥ずかしかった。

やがて夜を迎えて、3人はそれぞれ別々の部屋で就寝した。

それから1週間はあっという間だった。

楽しかった浮竹隊長のお泊りも、終わりだ。

朝になり、朝食をとろうとした席に、京楽が乱入してきた。何処から入ってきたのか、止める者はいなかった。

「浮竹、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたって本当かい!?」

吃驚する浮竹に、京楽は浮竹を背中に隠して、白哉と対峙する。

「なぜそのような話になる。浮竹は、ただ1週間ばかり、我が家の客人になっていただけだ」

「え、本当のなの?」

「ああ、そうだぞ。誕生日に何か願いごとを叶えてやると言われたから、白哉の家に1週間お泊りを希望したんだ」

京楽が、肩の力を抜く。

「仙太郎君と清音ちゃんが、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたっていうから・・・・」

「あの二人のことを真に受けるだけ無駄だぞ」

「そうだね。何もなかったようだし。雨乾堂に帰ろう、浮竹」

「あ、朝食を食べてからな。せっかくだし、京楽も食っていけ」

「ええ、いいのかい。朽木隊長は?」

「私は別に構わぬぞ。朝食がにぎやかになってよいことだ」

京楽の分も追加で朝食が用意された。

「美味いね・・・僕のとこのろ料理長の朝食と、ためはれるよ」

「浮竹隊長は、京楽隊長が遠征でいなくて寂しいので、我が家に泊まられていたのです」

「こら、朽木、余計なこと言うな」

「はっ!す、すみません」

京楽が、朝食を食べ終えてにんまりと笑んだ。

「へー。僕がいなくて寂しかったの。でも、だからって朽木隊長の家にお泊りは、ちょっとねぇ・・・・」

「別にどこに泊まろうといいだろう!」

「僕が嫉妬する。さぁ、帰ろうか、浮竹」

ひょいっと肩に担がれて、浮竹は白哉に礼を言った。

「白哉、1週間泊めてくれてありがとう。楽しかった」

「造作もないことだ。また泊まりにきたくなったら、言うがよい」

「朽木隊長、うちの子はもう泊まりにこないからね」

「それを決めるのは、兄ではないだろう」

ばちばちと、目線で争いあう。

白哉にとって、浮竹は実の兄のような関係だった。

「じゃ、雨乾堂に戻るよ。荷物は後で僕が引き取りにいくから」

「あ、白哉ありがとな。朽木も」

再度礼を言って、浮竹は京楽の肩に担がれて、瞬歩で雨乾堂まで移動した。

「ねえ、浮竹。僕がいなくて、そんなに寂しかった?」

「当たり前だろう。最近はずっと一緒にいたのに、急に遠征でいなくなるから・・・・」

にんまりと、京楽は笑むと、布団をしいてそこに浮竹を押し倒した、

「君に、教えてあげなきゃね。寂しいからって、他の男の家に泊まりにいくなんて許せないってことを」

「おい、朽木もいたんだぞ。それに、ただ泊まっただけだ」

「それでも、僕は嫉妬するよ」

「京楽!」

唇を奪われた。

後は、なし崩しに抱かれて、そのまま眠ってしまった。

長い白髪を撫でて、京楽は独り言をいう。

「君が朽木隊長のところに行ったと言われて、腸(はらわた)が煮えくり返りそうになったよ」

「ん・・・・」

浮竹が身動ぎするが、まだ眠ったままだ。

「君は僕のものだ。たとえ朽木隊長であれ、渡さない」

頬にキスをして、京楽も眠った。

8番隊の遠征は終了し、またいつもの日常が戻ってくる。

京楽は、また毎日のように雨乾堂に顔を出して、仕事をもってきては一緒に仕事をした。

それから、8番隊でまた遠征があったが、浮竹が白哉の家に泊まることはなかったという。


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