白薔薇姫
「少し、寒くなってきたね」
「ああ、そうだな」
10月の半ばに季節は移ろっていた。
今日は、浮竹の髪には白い薔薇が飾られていた。髪の色も白なので、あまりアクセントにはならなかったが、京楽はそれがお気に入りらしかった。
少し遅めの、月見をしていた。互いの杯に、互いの酒をいれ、飲み交わす。
浮竹の酒は、甘い果実酒だ。京楽の酒は、喉が焼けるような日本酒。しかもかなり高級な。今回は、浮竹を酔わせてはいけないと、京楽も浮竹が好むような甘いお酒を飲んでいた。
現世では、カクテルと呼ばれるものの一種だった。
わざわざ部下を現世にいかせて、買ってきてもらった一品である。
「この酒、甘いし美味いな・・・・・」
「そうでしょ。浮竹も気に入るような酒をもってきたから、じゃんじゃん飲んで。多分、酔っぱらって二日酔いになるとかはないと思うから」
浮竹は酒に弱いわけではない。ただ、京楽が酒に強すぎるのだ。喉が焼けるような日本酒を樽一つ分のもうが、酔わない。
「僕も、一度でいいから酔ってみたいけど・・・・・まぁ、前後の記憶がなくすくような酔い方はしたくないけどね」
浮竹は酔っぱらう時があるが、すぐに寝てしまうので、あまり酔っているという時間を過ごすことがない。
同じように、酔えない京楽。
二人は対極の位置にいながら、何処か似ていた。
「この酒・・・・もう終わりか」
浮竹の杯を満たす酒がなくなり、浮竹が残念そうな声をだす。
「違う味のもあるから、そっちを飲もう」
「ああ、そうだな」
違う味のカクテルは、蒼い色をしていた。
「この前の薔薇のような色だな。こんな色の酒、飲んでも大丈夫なのか?」
「大丈夫なようにできてるから、あるんだよ」
「そうか」
その銘柄はブルーハワイ。
よくかき氷などにある、あのブルーハワイだ。
「甘いな・・・・」
「このお酒も甘いけどね」
京楽の杯にいれた、浮竹の果実酒も大分甘い。
「今日は甘い酒ばかりだな。たまには、こういうのも悪くない」
空を見上げれば、新円より少し欠けた月が見えた。
「月見の季節も終わりだな」
「そうだね」
「こうやって、外で飲み交わすこともなくなるな」
「そうだね。まぁ、それ以外で、気分転換に外で酒を飲むこともあるけどね。春には花見をしながら、秋には紅葉をみながら」
「そういえば、そろそろ紅葉の季節だな・・・・・・」
遠くの山を見れば、黄色や赤にほんのり色づいている。
「今度は、それを肴に飲むかい?」
「それもいいな・・・・・・」
酒を飲むのに、別に時も場所もないが、つまみ以外の景色を肴にして飲むのも好きだった。
「君にもらった落ち葉で作った栞、まだ持ってるよ」
「まだ持っているのか。もう20年前にあげたやつだぞ」
「そ。大切にしてるんだ。君の手作りの贈り物だからね。正直、珍しい酒を飲むより嬉しかったよ。まぁ、一番うれしかったのは、誕生日に君自身をもらったことだけどね」
七緒にラッピングのリボンを巻かれて、そのまま京楽の部屋に閉じ込められてしまい、美味しくいただかれた過去を思い出す。
かーっと、酒のせいではないのに、頬が朱く染まった。
「あの件は忘れろ!記憶から抹消しろ!」
「いやだよ。僕が生きてきた中で、一番うれしい誕生日プレゼントだった。なんなら、今年の浮竹の誕生日プレゼントは、「僕」にしようか?」
「激しくいらない・・・・・・・」
ラッピングリボンが巻かれた京楽を想像して、寒気がして酒を一気に飲み干した。
「まぁ冗談はさておき、高価なものはいらないと言われてしまいそうだけど、いくつか用意しとくから」
「まぁ、屋敷とかじゃなかったら受け取る。ただ、髪飾りとかでもいいが、あまり値のはらないものにしてほしい・・・・」
「君が髪に飾るのなら、一級品がほしいから、高価になっちゃうかな」
「俺はあまり髪を結わないんだぞ。髪飾りや簪やその他高級品で、プレンゼントを置いている部屋がうもれそうだ」
絹でできた服だの、王冠だの、ペンダントだの、ブレスレットだの、指輪だの・・・・・。
大前田のように、じゃらじゅらと身に着ける癖はない。
「今年は・・・そうだね、お揃いの翡翠の指輪にしよう」
「お揃いか?俺がつければ、京楽も身に着けてくれるのか?」
乗り気な浮竹の反応に、指輪も悪くないと頭の中でリストに入れた。
「君のイニシャルをいれて、それを僕が。僕のイニシャルをいれて、それを君が・・・・・なんんか、現世の結婚式の指輪交換に近いかな」
「それ、欲しいかも・・・・・・・」
「じゃあ、今年の誕生日プレゼントは、翡翠の指輪できまりだね」
「翡翠は、こぶりなものでいいからな。グレードは普通で」
「はいはい」
きっと京楽のことだから、大きくはないが、一級品の翡翠をはめた指輪にするのだろうなと、想像できた。
いつの間にか、酒がお互い空っぽになっていた。
「寒くなってきたし、今日はここまでにしますか」
「そうだな」
雨乾堂に入って、寒かったので毛布をかぶった。京楽も一緒にだ。
「このまま寝るかい?」
時計を見ると、夜の10時だった。
「少し早いが、寝るか」
布団を二人分しいて、横になる。
「寒いでしょ。こっちにおいで」
京楽の布団に移動すると、京楽に抱きしめられた。
トクントクンと、心臓の鼓動が聞こえる。
ふっと、睡魔が訪れた。ほどなしくて、浮竹は眠ってしまった。
「おやすみ、いい夢を。僕の白薔薇姫」
浮竹の髪に飾らた白い薔薇は、一枚はらりと落ちた。
「ああ、そうだな」
10月の半ばに季節は移ろっていた。
今日は、浮竹の髪には白い薔薇が飾られていた。髪の色も白なので、あまりアクセントにはならなかったが、京楽はそれがお気に入りらしかった。
少し遅めの、月見をしていた。互いの杯に、互いの酒をいれ、飲み交わす。
浮竹の酒は、甘い果実酒だ。京楽の酒は、喉が焼けるような日本酒。しかもかなり高級な。今回は、浮竹を酔わせてはいけないと、京楽も浮竹が好むような甘いお酒を飲んでいた。
現世では、カクテルと呼ばれるものの一種だった。
わざわざ部下を現世にいかせて、買ってきてもらった一品である。
「この酒、甘いし美味いな・・・・・」
「そうでしょ。浮竹も気に入るような酒をもってきたから、じゃんじゃん飲んで。多分、酔っぱらって二日酔いになるとかはないと思うから」
浮竹は酒に弱いわけではない。ただ、京楽が酒に強すぎるのだ。喉が焼けるような日本酒を樽一つ分のもうが、酔わない。
「僕も、一度でいいから酔ってみたいけど・・・・・まぁ、前後の記憶がなくすくような酔い方はしたくないけどね」
浮竹は酔っぱらう時があるが、すぐに寝てしまうので、あまり酔っているという時間を過ごすことがない。
同じように、酔えない京楽。
二人は対極の位置にいながら、何処か似ていた。
「この酒・・・・もう終わりか」
浮竹の杯を満たす酒がなくなり、浮竹が残念そうな声をだす。
「違う味のもあるから、そっちを飲もう」
「ああ、そうだな」
違う味のカクテルは、蒼い色をしていた。
「この前の薔薇のような色だな。こんな色の酒、飲んでも大丈夫なのか?」
「大丈夫なようにできてるから、あるんだよ」
「そうか」
その銘柄はブルーハワイ。
よくかき氷などにある、あのブルーハワイだ。
「甘いな・・・・」
「このお酒も甘いけどね」
京楽の杯にいれた、浮竹の果実酒も大分甘い。
「今日は甘い酒ばかりだな。たまには、こういうのも悪くない」
空を見上げれば、新円より少し欠けた月が見えた。
「月見の季節も終わりだな」
「そうだね」
「こうやって、外で飲み交わすこともなくなるな」
「そうだね。まぁ、それ以外で、気分転換に外で酒を飲むこともあるけどね。春には花見をしながら、秋には紅葉をみながら」
「そういえば、そろそろ紅葉の季節だな・・・・・・」
遠くの山を見れば、黄色や赤にほんのり色づいている。
「今度は、それを肴に飲むかい?」
「それもいいな・・・・・・」
酒を飲むのに、別に時も場所もないが、つまみ以外の景色を肴にして飲むのも好きだった。
「君にもらった落ち葉で作った栞、まだ持ってるよ」
「まだ持っているのか。もう20年前にあげたやつだぞ」
「そ。大切にしてるんだ。君の手作りの贈り物だからね。正直、珍しい酒を飲むより嬉しかったよ。まぁ、一番うれしかったのは、誕生日に君自身をもらったことだけどね」
七緒にラッピングのリボンを巻かれて、そのまま京楽の部屋に閉じ込められてしまい、美味しくいただかれた過去を思い出す。
かーっと、酒のせいではないのに、頬が朱く染まった。
「あの件は忘れろ!記憶から抹消しろ!」
「いやだよ。僕が生きてきた中で、一番うれしい誕生日プレゼントだった。なんなら、今年の浮竹の誕生日プレゼントは、「僕」にしようか?」
「激しくいらない・・・・・・・」
ラッピングリボンが巻かれた京楽を想像して、寒気がして酒を一気に飲み干した。
「まぁ冗談はさておき、高価なものはいらないと言われてしまいそうだけど、いくつか用意しとくから」
「まぁ、屋敷とかじゃなかったら受け取る。ただ、髪飾りとかでもいいが、あまり値のはらないものにしてほしい・・・・」
「君が髪に飾るのなら、一級品がほしいから、高価になっちゃうかな」
「俺はあまり髪を結わないんだぞ。髪飾りや簪やその他高級品で、プレンゼントを置いている部屋がうもれそうだ」
絹でできた服だの、王冠だの、ペンダントだの、ブレスレットだの、指輪だの・・・・・。
大前田のように、じゃらじゅらと身に着ける癖はない。
「今年は・・・そうだね、お揃いの翡翠の指輪にしよう」
「お揃いか?俺がつければ、京楽も身に着けてくれるのか?」
乗り気な浮竹の反応に、指輪も悪くないと頭の中でリストに入れた。
「君のイニシャルをいれて、それを僕が。僕のイニシャルをいれて、それを君が・・・・・なんんか、現世の結婚式の指輪交換に近いかな」
「それ、欲しいかも・・・・・・・」
「じゃあ、今年の誕生日プレゼントは、翡翠の指輪できまりだね」
「翡翠は、こぶりなものでいいからな。グレードは普通で」
「はいはい」
きっと京楽のことだから、大きくはないが、一級品の翡翠をはめた指輪にするのだろうなと、想像できた。
いつの間にか、酒がお互い空っぽになっていた。
「寒くなってきたし、今日はここまでにしますか」
「そうだな」
雨乾堂に入って、寒かったので毛布をかぶった。京楽も一緒にだ。
「このまま寝るかい?」
時計を見ると、夜の10時だった。
「少し早いが、寝るか」
布団を二人分しいて、横になる。
「寒いでしょ。こっちにおいで」
京楽の布団に移動すると、京楽に抱きしめられた。
トクントクンと、心臓の鼓動が聞こえる。
ふっと、睡魔が訪れた。ほどなしくて、浮竹は眠ってしまった。
「おやすみ、いい夢を。僕の白薔薇姫」
浮竹の髪に飾らた白い薔薇は、一枚はらりと落ちた。
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