忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 26 27 28 29 30 12

看病

「京楽・・・・・・・?」

「ああ、いいから寝てなさいな。40度の熱があるんだよ」

頭ががんがんと割れるように痛かった。

酷い眩暈がする。意識が朦朧としていたが、京楽が近くにいることだけは感じとれた。

風邪を悪化させた浮竹は、そのまま救護詰所で入院となった。

肺炎をおこしかけていたのだ。

点滴の管が痛々しかったが、浮竹が発作以外で入院するのは本当に久しぶりで、京楽も焦った。

看病を兼ねて訪れてみると、浮竹は高熱でうなされていた。

それなのに、京楽がきたら気づくのだ。

「傍に・・・・・いてくれ・・・・」

「ああ、いるとも」

ベッドの傍の椅子に座って、浮竹の手を握りしめる。

暖かな手。

力なく握り返してくる浮竹を思いながら、浮竹の病室のソファーで、京楽は眠った。

起きると、浮竹はまだ熱でうなされていた。

もうここ4日は熱が下がっていない。

京楽は、泊まりこみで浮竹の看病をした。

5日目。やっと、浮竹の熱が下がった。

卯ノ花が回道を何度もかけてのことだった。

肺炎にはならずにすんだ。

「京楽・・・・もしかして、ずっと看病していてくれたのか。一度、8番隊の隊舎に戻ったほうがいい」

「うん。それもそうだね。君の熱も下がったことだし、仕事片付けて、また夜にはくるよ」

まともな食事も睡眠もとれていないだろうに。

それでも、京楽は浮竹を優先する。

そんな京楽が倒れたと聞いて、浮竹が吃驚した。

「ただの寝不足と、軽い貧血ですね」

「まいったねぇ。僕まで病人になちゃった」

念のため1日の入院となった京楽は、卯ノ花の配慮で浮竹の病室にベッドが運び込まれて、二人で一部屋となった。

「京楽、お前はばかか。俺なんて看病して倒れて・・・・・」

「でも、本当に心配したんだよ。高熱が下がらないから」

「だからって、倒れるまで看病するやつがあるか。ちゃんと食事をして寝ろ」

「うん。今後気を付けるよ。今はもう、後の祭りだから」

「はぁ・・・・・・」

京楽も、点滴を打たれた。

「点滴、お揃いだね」

「こんなことでお揃いになっても嬉しくない」

「そうだね」

京楽は、少し困ったような顔をした。

「まさか、この僕が倒れるなんてねぇ。君を心配しすぎたのかな」

「そうだぞ。看病にきて倒れるとか、ばかみたいじゃないか」

「まぁ、僕の不注意だからね。ごめんね」

「謝るな。俺が悪いんだから」

浮竹が、唇をかみしめる。

「元々、倒れた俺のせいだ」

「違うよ、浮竹」

「何が違うんだ」

「僕が倒れたのは僕の不注意だから。泣かないで」

その時、始めて自分が涙を流しているのだと気づいた。

「なんで、涙なんて・・・・・・」

「ねぇ、泣かないで」

「分かっている」

病院服の襟で涙をぬぐって、浮竹はなんとか弱弱しい笑みを刻んだ。

「でも・・・・わざわざ看病しにきてくれて、ありがとう」

浮竹の言葉に、京楽もほっこりする。

「君が入院すると見舞ったり看病する癖がついちゃってるからね」

同じ病室でいることが、とても安心できた。

お互い、退院は明日になった。

次の日、すっかり元気になった浮竹と、調子のよくなった京楽は退院した。

「京楽隊長、看病しに来た方が倒れて入院なんて、笑い話にもなりませんよ。以後気をつけてくださいね」

「ああ、卯ノ花隊長、病室を同じにしてくれてありがとう。お陰で心を伝えあえたよ」

「京楽隊長は、献血してもらわねばなりませんから。早くもっと元気になってくださいね。浮竹隊長も、風邪には気をつけてください」

「卯ノ花隊長、世話になった」

浮竹と京楽は、手を繋ぎあいながら雨乾堂に戻った。

布団をしいて、体を重ねるわけでもなく、ただ抱き締めあいながら、横になった。

「君が肺炎になりかけてるって聞いて、傍から離れられなくなった」

「風邪をこじらせたせいだ。だが、今後は本当に気をつけてくれ。俺を看病して倒れるなんて、これっきりにしてくれ」

「分かってるよ」

唇を重ね合わせる。

それからしばらくごろごろして、二人で風呂に入った。

夕餉を食べて、一緒に床につく。

「こうやって、一緒に寝るのも久しぶりだね」

「ああ、そうだな。流石に体を重ね合わせる元気はまだないが」

「僕もだよ。まだちょっと疲れが残ってる」

二人で会話して、笑い合って、ふざけあって、そして眠りについた。

それ以降、京楽が浮竹の看病で倒れることはなかった。

浮竹が発作をおこして入院せず、雨乾堂に入る時は、京楽は泊まりこみの看病をするが、ちゃんと自分の休息も入れた。

浮竹にとって、京楽はアキレス腱でもある。

親友で恋人で。

京楽が倒れたと聞いたあの時は、本当に驚いたのだ。

浮竹が風邪をひいてこじらせ、熱を出すのもいつものことだが。京楽が看病にやってくることも、いつものことなのだ。

「俺は・・・・京楽を失うと、きっと発狂する」

「突然どうしたの」

「今の関係が永遠に続けばいいのに」

「大丈夫、ずっと続くよ」

きっと。

きっと・・・・・。

でも、それが永遠に続くことはなかった。

浮竹の死で、京楽は一人残され、涙を流すのだ。











拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"